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謎解き その3
しおりを挟む考えが煮詰まった様なので、ちょっと一服でも と部屋を出た。
ちょうどタイミングが良かったのか悪かったのか、鬼お兄さん達も休憩中らしく喫煙所は一杯だった。仕方なしに外に出ようとすると、モクモクの煙の中から話しかけられた。
👹「ミノス様、何か調べてるんすか?」
ミノス「ん? なんでー?」
👹 「いや、さっきここに来た奴がですね、地上での様子を人間から聞いたら、とりあえず報告をしろって。必要な情報ならば上にあげるからって。そう告げて次に回って行ったんです。な?」
👹「そうそう。少し前なら地上界が飢えて大変な事になってたから、状況把握だろうと。今後もますます死者の数が増えるのか、少しずつマシになるのかを掴む為にもってわかるんだけど。全部落ち着いて今さら?なんだ??って感じなんですよ~」
👹「それに、一体何を調べてるのかわからないと、何を報告したらいいのやらってみんなと愚痴ってた所なんです。」
👹「ミノス様は、何か知ってる感じで今、審判のお仕事してないっすよね?俺たちにも教えれる範囲でもいいから、情報くださいよ」
👹「そうですよ~。俺らが、なんでこんな事言うのかわかってるでしょう?そりゃ、俺たち下々の者は言われるがままに動きますよ。でも、、『特にデーメテール様の神殿の、近くの人間の話は全て報告する様に』なんて言われると、気になって皆んなソワソワしちまう。それを伝えにきた伝令を心配のあまりに追いかけて行ったやつもいてます。」
👹「で、何が起こってるんですか?」
うーーーん、すまねえ。
俺のやり方が不味かった。
皆の気持ちを考えなかったな。知ってたのにな~
コイツらの中にもまだまだペルセフォネちゃんがいるって事を。
箝口令を敷くか、又は情報開示をして協力体制の要請だな。
中途半端が一番いけない。すまないすまない。
ミノス「これは、前面的に俺が悪かった。お前達の言う通りだ。申し訳なかったよ。
でも、少しだけ待っててくれ。今から許可を取ってくるから。そしたら全部話す。話した上で皆んな手伝ってくれ。」
そう話すと、顔を見合わせて安心する様に頷いていた。
そのうちに、「あっそうだ」と言って、最近ここにやってきたある(死者の)話をしてくれた。
👹「そいつはキョロキョロと、辺りを見回して『なんだか、悪い子を迎えにくるっちゅう怪物はいないんですか?ゴーゴーと唸る様な声を出すやつは、、この音は何度も聞いたんですけどね~』って言う人間がいたんです。『どこでそんな話を聞いたのか?』って聞くと、『冥界の入り口の森から風に乗って聞こえくる』と言ってました。
そして、『そんなに音が似てるのか?』って俺が聞くと、『はい。ゴーゴーもグツグツもボーボーも、まさにこの音って感じです。あれはきっと地獄の怪物が吠えてる声だと皆んな思ってましたが、少し違うみたいですね。怖がらなくていいって皆んなに教えてあげたいなぁ』って、そいつが話してたんです。」
ミノス「アンタはどこでその話を?」
👹「は? もちろん、俺の職場の火の山🔥の麓の地獄めぐりの、一つですけど。何もサボったりしてませんよ」
👹「俺んところの血の池の地獄ツアーでも、そんなのが一人いました。『目を瞑るとこの音よね~そっくり~』って言ってるおばさんが(睨まれたからご婦人って言いなおしてたけど)いて。『何の音がそっくりなのか?』って聞いたら『グツグツ、ブクブク、ボコっボコってまるで何か煮込んでいるみたいな音がしてたのよ。私は怖くはなかったわよ。思わず、家に帰って煮物の鍋の火元を確認したわよ。まさか血の池の沸き出す地獄の釜の音だとは思わなかったけど、やっぱりお釜の音だったのね。』と、笑って話してたんです。」
うーーーーん。
いや?そんな、まさかな?
いやー そんな事ないはずだ。
でも、考えてみれば、無くはないか。
いやいや、それ以外の可能性を探してみないと。
そうそう、先入観は推理の邪魔をするだけだしな。
か⃝「そういえば、わしの仕事場は音で表現するならば、『ザーザー』や『チョロチョロ』とか『ピチャピチャ』とかじゃな。けど、ドンピシャで『まるで水が流れる様な音だ』と言った人間もいたんじゃろ?」
ミノス「カロン爺さん!!いつの間に?ビックリした。もう渡場の舟はいいのか?」
いつの間にか、カロン爺さんがここに来てニコニコと笑って座っていた。
気を取り直して、もう一度考える。
でもなー これはなー
もう、これは推理でもなんでも無くて皆んながそう思っているって事じゃないか。カロン爺さんなんて直球で言ってくる。
そう、他にも誰かが言ってた呻き声なんてこの冥界では、あちこちでも聞こえるし。
要するに、ここ冥府での音が地上界に漏れ出ているって事だよな?
そんでもって、その原因と手段を見つける様にしないと。
やっぱり、情報開示の許可を取る事もあるし、一度我が主に確認しに行かないといけないな。
じゃあ、クライアントを問い詰めに行くか。
探偵としての長年の勘が冴え渡る。
クライアントは何かを隠している。だから真相に辿り着かない。クライアントが隠してるjokerこそ、事件の鍵を握っている。
~本日の業務日誌より~
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