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謎解き その2
しおりを挟むミノス探偵の業務日誌
カロン爺さんの協力を得て、河原や舟などで情報収集をしたが、あまり芳しくはなかった。
何せ、地上からの死者の数がこの間迄と圧倒的に少ない。デーメテール様が地上できちんとお仕事をして、人間界は随分と安定している様だ。人間の肉体の限界や、もともと病気を抱えていた人々がここにやって来ただけで、きっと転生もすぐだろう。この後の地獄巡りツアーもきっと体験じゃなくて見学にぐらいでさらっと通り過ぎるだろう。
ネタ元が、少ねえ
まぁその少ない情報の中でも、ケイロン殿からの情報に反対の話はなかった。しかし、ペルセフォネ様の神殿(お家)の方からの泣き声は、ケイロン殿が確かめる事が出来なかったから、こちらは有効だった。やはり聞こえてくる泣き声は若い女の様子で、それは微かな音らしい。風に乗ってたまたま音を拾っただけで他の音がうるさい時や無風の時は聞こえない様だ。
ただ、気になった情報はあるんだ。
けどソースがねぇ。 年中アルコール漬けになってる酔っ払いのじいさんの話だからなぁ。
「その日も酔って、のどが渇いて井戸の水を飲もうとして、手に力が入らなくてふらっとしたら、その時井戸に落ちてーーー(あーそれが死因か)ーーーで、落ちたのかと思ったら、それは何とか回避して危ねえと思ったら、後ろから野良犬が吠えてビックリして持ってた水をぶちまけてしまったら今度は野良犬が怒って爺さんに鋭い犬歯で襲ってきて、カブっと喉もとを噛みつかれてーーー(こっちが死因か)ーーーーと、思ったらペロペロ舐めるだけだったけど、(は?違うの?)ーーよろけてこけた時に井戸の淵で頭を打ったらしくてよ~~ 頭の後ろ側から血がドバーッと出ててな、それで御陀仏したーーー(紛らわしい‼︎結局転けて後頭部打撲かよ)ーーー。けどよ、なんだか眩しくてあー俺天国に来ちまったンダなって思ってたらな。なーんだかここの天使様っちゅうのは、うちのばあさんに似てるなあ。そうだ、ばあさんも昔は可愛い女の子だったもんな、天使様がばあさんに似てても おかしかないか?と思ってたらよ、その天使様がワシの頭をペチペチと叩き出してな、おや?これは地獄の方にきたのか?と思ったら『何度言ったらわかるんだ!また皆様にご迷惑をかけて!何度倒れてるって運んでもらったと思ってるんだ、もう!それにあんた野垂れ死ぬの構わないが、井戸に落ちて死ぬのだけはダメだよ。皆んなが飲み水が使えなくなっちまう。最後まで迷惑をかけるなんてやめとくれよ。いつも言ってるだろう?酔った時は井戸には近づいたらダメだって。うちの可愛い犬を、酒の臭いのしてるアンタが近づいたら吠える様に躾けてあるんだよ。賢い犬だろう?ちっとはアンタも飼い犬に似てくれたらいいのに。』そんなばあさんも昔は可愛くて
ーーーー以下、永遠に続くーーーー
まぁその 年がら年中酔っ払って外で寝ている爺さんの情報だった。
最近になってデーメテール様の神殿の方からは夜になると女の子の泣き声が、微かにした。これは爺さん以外にも何人も話してたらしい。
それに森の向こうから聞き慣れない恐ろしさ呻き声や、ある時は話し声や、風の音や、焚き火でもしている様な燃えている音などなど色んな音がした。これもケイロン殿の情報に近いよな。
爺さんの愛妻ばあさん曰く、聞く人に寄ってその心の声が聞こえる??
『アンタにはバカバカって言われてても、酒酒って聞こえるらしいよ』
『その音だか、声だかはね、死者の国の入り口があるって言われてる森の奥から聞こえるってみんなが言うから見に行った子どもがいたらしいよ。きっとお母ちゃん達の話を聞いてたんだよ。そしたらさぁ、なんと森の奥じゃ無くて丘の方に抜けた辺りから聞こえたらしい。とっても綺麗な花畑で、天国みたいだってその子達は言ってたよ。しばらく秘密基地だなんて内緒にしてたらしいけど、どこで遊んでるのかわからずに問い詰めた親からバレたんだね。まぁ危険が無いならとは思うけど、やっぱり中には乳飲児の兄弟を亡くした子どももいてね、その子の親は神経質って言うか誰よりも不安が強いからさ。そこに行くのは禁止したんだ。もう行ったらおやつ無しなんて言われると、他にも遊び場所はあるから。でも、中には禁止されると行きたくなる子どももいてるだろう?その子が親に怒られて話した秘密が、ある花が喋ってる、その花から声や音が聞こえるって話なんだよ。信じられるかい?コレー様じゃあるまいしね』
うーん、その爺さんの『うちのばあさん』の方が話を聞きたい。いや、秘密基地に最後まで行ってた坊やに一番に聞きたいが、まだまだこっちに来てはダメだから。
とりあえず、ばあさん来たら俺に知らせてもらえる様には渡場で頼んできた。(お花さんやお草さんに…‥ …いや、カロン爺さんがお手伝いの皆んなにそう言ってくれてるのを俺も横でよろしくって言っただけなんだけどさ。これ、どうやって連絡来るんだろうってちょっと謎なんだけどな。まぁそっちの謎解きは置いといて。)
喋る花ねぇ。
地上で人間にも聞こえる花って言えば、俺が知る限り一つしかないけどな。
自ら喋るんじゃ無くて、通話出来る花だな。俺が知ってる唯一の喋る様に見える花はアレだな。
そう、『界渡りの花』
もう以前にデーメテールの丘に置いてた界渡りの花は、もうペルセフォネちゃんが、冥府に来た時に持ってたよな?俺も見たから間違いない。あれは通信も出来るからその時の会話で横から聞いてても、人間にも花が喋ってる様には聞こえると思う。
けど、新しく界渡りの花を地上界のデーメテール様の近くに植えたなんて聞かないし、もうあそこには置く必要がないってハデス様が言われてたよな。
(それはそれでデーメテール様への未練がもう無くなったのかとか、元々なんでそこに置いてたのか?とか色々と考えてしまったけど。それもまた別の謎解きで)
それに、アレが作動するにはさまざまな条件がいるから。まぁ前回はペルセフォネちゃんが、コレー様として花の女神としての力を注ぎ込んでしまったからの誤作動だったけど。
まず、界渡りの花じゃないだろう?
それに、万が一、界渡りの花だったとしてスイッチには神の力がいるし、
通信するこちら側とあちら側にその力を使う者と関する物が必要になる。
まぁ片方は、通話する本人だから問題ないが、こちら側にも何か絶対本人とわかる関係する物を置いておかないとスイッチが作動しないはずだ。だから設置して使う時にこちらのモニター室には地上に出ている出る予定の神の血やら指やら骨?肝臓?目玉?などなど何か不気味な物が並んでいる。かなりのグロテスクな光景だった。しょっちゅう地上界にお仕事に出かけてる死神と呼ばれるタナトスは『心臓』を置いてってる。こっちに戻ってきても面倒だからとこの部屋に置いたままにするらしい。だからお前は心がこもってないって言われてもそれはそうだと答えてる。
話は逸れたが、そうだ界渡りの花だとしても通信には、ここに何か身体の一部なり置いておく必要なんだ。不可能だろう?
その時の俺はまだ、真実に至るまでの情報が向こうではなくここに隠されている事を知らなかった。
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