冥界の愛

文字の大きさ
上 下
54 / 107

冥界王の癒し

しおりを挟む



 (ハデス視点の言い訳)




 お前たちは、その子の側で眩しく無いのか?

 実際には、モニターで見るのとは訳が違う。圧倒的な光に目眩がおきないのか?まともに見る事が出来るのか?まぶしくて目が開けられない事はないのか? 
あの子がここに来るとなって、何か光を遮れる物を置いてもらった。

 お前たちは、平気でそばで話しかけれるのか?凄いな。やっぱりミノスは仕事人って皆から頼られてるし、ヘカテーは女王様って呼ばれてるようだし、ケイロンは賢者様で、カロン爺は年の功が理由だな。



 あの子は、
 冥界に流れ落ちてきた時から まるで地上の夜空の彗星の様に光り輝きながら現れた。



 俺は、現れたと同時に地上の監視室へと急いだ。

 この光はあの子だ!間違いない。
 でも、なぜここであの子の光を感じるのか?地上から流れてきたのか?
 どうなってるんだ?まさか地上で何か起きたのか?
 それでデーメテールがこちらに寄越したのか?



 ずっと見守るつもりで見ていたデーメテールの丘で、花々の中に笑顔の女の子が、彼女の娘コレーだった。成長していく中で色々な葛藤もあり泣いている姿もあった。
 いつも間にか見守っているつもりが、俺の安らぎになっていた。
 あの子を守ってやりたいと思う自分に驚き戸惑っていたが、どうしても目を逸らす事が出来なかった。

 もちろん他の世界にも見張りの水仙花を送り込んでいる。 色々と世界は陰謀や、どこに悪が隠れて生まれているか、闇の支配が始まっているかなど見張っていなければならないから。
 でも、地上界のこの水仙の花だけは別室(モニター)で見守ってる。


 最初は泣いているデーメテールが気になった。それでも自分の決断に、後悔はしてほしくなかったから、落ち込んでいる姿を見るのが辛くもあった。

 けれど、この大地で生きていくと決意したデーメテールは 小さき人たちの営みと一緒に楽しんでる、喜んでいる、泣いている、働いている、苦しんでいる、それはともに生きている。その姿はやっぱりデーメテールは[大地神で豊穣神]だった。君の決断は正解だったよ。

 遠い昔のデーメテールの涙と決意を懐かしく思い出す。



 その後もデーメテールと娘には関わる事は無かった。俺はこの冥界に居続ける宿命だし。関わりは避けるつもりだったがもう会う事もないと思っていたから。

 だけど、宿命とは何より強いものなんだろう。


 今回、こんな形であの子がこの世界にやってきてしまう。
 何がデーメテールが寄越しただ?こっちの水仙が誤作動して界渡りをおこしてしまったじゃないか。


 避けなければならないと思っていたが、どうも時間もない様子でそんな配慮はしてやれなくなって来ていた。
 そんな中で俺に会いたいとあの子が伝えてくる。
 冥界に来て落ち込んでいたあの子に少しでも元気に戻してやりたかった。花も結界もあの子を守ってやりたかった。
 無事に地上界に帰せるまで、界渡りの花ももう少しだった。

 あの子は、冥界のあちこちで眩しい笑顔と膠着した問題を破壊して解決する力を振りまいて、ここの皆に好かれていった。人間の優しく強い魂が傷付いていたのさえ救っていった。



 そしてここでの名前が欲しいと、俺の前に来ている。

 しかし、名をつける事によって私とあの子に関係が生まれる。出会い関係ができる事を、避けたかった。

 一度でも繋がった絆で、優しいあの子は私が消滅する時に心が引きずられない事を願うだけだ。
 優しい君だからと心配だ。しかし逃れる事ができないから宿命なのか。

 せめて、出来る限りの事はしたかった。避けれるだけ接点を少なくする。面会しないといけないなら、顔を見られないようにカーテンを用意する。もちろんまぶしくて用意したと言う理由もあるが。




ーーーーーーーー







 ハデス様。ここ現代の人間界では、盗撮とか、ストーカー規制法にかかります。
 いえ、それ以外にも色々ともっと大きく問題はありますが…。
 まぁあくまで、遠いギリシャの神々の舞台設定なので平に御容赦くださいませ。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

邪魔しないので、ほっておいてください。

りまり
恋愛
お父さまが再婚しました。 お母さまが亡くなり早5年です。そろそろかと思っておりましたがとうとう良い人をゲットしてきました。 義母となられる方はそれはそれは美しい人で、その方にもお子様がいるのですがとても愛らしい方で、お父様がメロメロなんです。 実の娘よりもかわいがっているぐらいです。 幾分寂しさを感じましたが、お父様の幸せをと思いがまんしていました。 でも私は義妹に階段から落とされてしまったのです。 階段から落ちたことで私は前世の記憶を取り戻し、この世界がゲームの世界で私が悪役令嬢として義妹をいじめる役なのだと知りました。 悪役令嬢なんて勘弁です。そんなにやりたいなら勝手にやってください。 それなのに私を巻き込まないで~~!!!!!!

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~

saku
恋愛
竜人族が治める国で、生まれたルミエールは前世の記憶を持っていた。 前世では、一国の姫として生まれた。両親に愛されずに育った。 国が戦で負けた後、敵だった竜人に自分の番だと言われ。遠く離れたこの国へと連れてこられ、婚約したのだ……。 自分に優しく接してくれる婚約者を、直ぐに大好きになった。その婚約者は、竜人族が治めている帝国の皇帝だった。 幸せな日々が続くと思っていたある日、婚約者である皇帝と一人の令嬢との密会を噂で知ってしまい、裏切られた悲しさでどんどんと痩せ細り死んでしまった……。 自分が死んでしまった後、婚約者である皇帝は何十年もの間深い眠りについていると知った。 前世の記憶を持っているルミエールが、皇帝が眠っている王都に足を踏み入れた時、止まっていた歯車が動き出す……。 ※小説家になろう様でも公開しています

処理中です...