冥界の愛

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冥界王の癒し

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 (ハデス視点の言い訳)




 お前たちは、その子の側で眩しく無いのか?

 実際には、モニターで見るのとは訳が違う。圧倒的な光に目眩がおきないのか?まともに見る事が出来るのか?まぶしくて目が開けられない事はないのか? 
あの子がここに来るとなって、何か光を遮れる物を置いてもらった。

 お前たちは、平気でそばで話しかけれるのか?凄いな。やっぱりミノスは仕事人って皆から頼られてるし、ヘカテーは女王様って呼ばれてるようだし、ケイロンは賢者様で、カロン爺は年の功が理由だな。



 あの子は、
 冥界に流れ落ちてきた時から まるで地上の夜空の彗星の様に光り輝きながら現れた。



 俺は、現れたと同時に地上の監視室へと急いだ。

 この光はあの子だ!間違いない。
 でも、なぜここであの子の光を感じるのか?地上から流れてきたのか?
 どうなってるんだ?まさか地上で何か起きたのか?
 それでデーメテールがこちらに寄越したのか?



 ずっと見守るつもりで見ていたデーメテールの丘で、花々の中に笑顔の女の子が、彼女の娘コレーだった。成長していく中で色々な葛藤もあり泣いている姿もあった。
 いつも間にか見守っているつもりが、俺の安らぎになっていた。
 あの子を守ってやりたいと思う自分に驚き戸惑っていたが、どうしても目を逸らす事が出来なかった。

 もちろん他の世界にも見張りの水仙花を送り込んでいる。 色々と世界は陰謀や、どこに悪が隠れて生まれているか、闇の支配が始まっているかなど見張っていなければならないから。
 でも、地上界のこの水仙の花だけは別室(モニター)で見守ってる。


 最初は泣いているデーメテールが気になった。それでも自分の決断に、後悔はしてほしくなかったから、落ち込んでいる姿を見るのが辛くもあった。

 けれど、この大地で生きていくと決意したデーメテールは 小さき人たちの営みと一緒に楽しんでる、喜んでいる、泣いている、働いている、苦しんでいる、それはともに生きている。その姿はやっぱりデーメテールは[大地神で豊穣神]だった。君の決断は正解だったよ。

 遠い昔のデーメテールの涙と決意を懐かしく思い出す。



 その後もデーメテールと娘には関わる事は無かった。俺はこの冥界に居続ける宿命だし。関わりは避けるつもりだったがもう会う事もないと思っていたから。

 だけど、宿命とは何より強いものなんだろう。


 今回、こんな形であの子がこの世界にやってきてしまう。
 何がデーメテールが寄越しただ?こっちの水仙が誤作動して界渡りをおこしてしまったじゃないか。


 避けなければならないと思っていたが、どうも時間もない様子でそんな配慮はしてやれなくなって来ていた。
 そんな中で俺に会いたいとあの子が伝えてくる。
 冥界に来て落ち込んでいたあの子に少しでも元気に戻してやりたかった。花も結界もあの子を守ってやりたかった。
 無事に地上界に帰せるまで、界渡りの花ももう少しだった。

 あの子は、冥界のあちこちで眩しい笑顔と膠着した問題を破壊して解決する力を振りまいて、ここの皆に好かれていった。人間の優しく強い魂が傷付いていたのさえ救っていった。



 そしてここでの名前が欲しいと、俺の前に来ている。

 しかし、名をつける事によって私とあの子に関係が生まれる。出会い関係ができる事を、避けたかった。

 一度でも繋がった絆で、優しいあの子は私が消滅する時に心が引きずられない事を願うだけだ。
 優しい君だからと心配だ。しかし逃れる事ができないから宿命なのか。

 せめて、出来る限りの事はしたかった。避けれるだけ接点を少なくする。面会しないといけないなら、顔を見られないようにカーテンを用意する。もちろんまぶしくて用意したと言う理由もあるが。




ーーーーーーーー







 ハデス様。ここ現代の人間界では、盗撮とか、ストーカー規制法にかかります。
 いえ、それ以外にも色々ともっと大きく問題はありますが…。
 まぁあくまで、遠いギリシャの神々の舞台設定なので平に御容赦くださいませ。


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