冥界の愛

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give me MYNAME ♪油性ペンでは無いはず♪

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  ~~~ 名前をつけて~~~
 

 「私は、お嬢さんの名前が気に入らないんだ。だってお嬢さんの名前の意味知ってる?」
 ってヘカテーが、問いかける




ーーーーー


 長い旅を一緒に過ごした彼女から名前を聞かれて、コレーはもう我慢がならなくて名前を聞きに行こうとしていた。

 裁きの場から出ようとして、服を着ていない事を思い出した。

 そういえば死者である彼女はさっさと気持ちを切り替えて好きな服を纏っていた。

 裸のお嬢様はコレーだけだったのだ。


 どうしようかなと迷っていると、そこにはヘカテーさんがコレーに新しい服を持ってきてくれていた。


 ヘカテーが、コレーに声をかける。



 「お疲れ様でした。彼女を救ってくれてありがとう。長く長く私達の心配の一つだったんだ。」


 (ヘカテーさんから礼を言われると本当に困る。
 救ったのはミノスさんの言葉だ。ミノスさんが何度も何度も彼女の悲しみ怒りと共に過ごして受け入れるまで付き合ったからだ。)

 何より彼女と旅したコレーは身に染みた実感だった。



 「私は、本当に、何も」

と否定するが、あちこちでありがとうと言われた。


 少し悪いが便乗して、

「じゃあ、私の名前を教えてくれませんか?」

と問いかける。


 ここで冒頭のヘカテーの言葉だった。


 
 「いやいや、言ったらダメだってハデス様から言われてるんだよ。

でもね、一つだけ言えるのなら、私は子どもに一生になる名前をつけるとしたら、それは子どもの為につけるべきだと思うんだ。
決して親の為の名前じゃなくてな。」

 ここで少し申し訳なさそうな顔をチラッとこちらに向ける。

 「だから私はあの女が嫌いなんだ。お嬢さんには悪いとは思うけど。」
そうヘカテーさんは言った。

 「これはあんたのせいでは無いんだよ。ここにいるみんなはハデスの事が大好きだから、あの女の事はあんまりよく思っていない。だけど、だからと言ってあんたに意地悪するような根性の曲がったやつはここ冥界にはいないから、それは安心していいよ。もしいたら私にいいな、このヘカテーが根性を叩き直すから。」

 本当にこの人(女神)はちょっとキツく見えるけど、姉御肌で人情味あるれる人なんだと思う。

 「だから、あんたが思い出すまで、私達が気に食わないと思ってる名前を呼ばなくてもいいんじゃないか?今のところ客人はお嬢さん一人だし、お嬢でいいでしょ?」



 「じゃあ、それなら、此処での冥界での名前をつけてください!

 名前が欲しいんです!
ただ、不便なだけならお嬢さんでもいいけど、私も名前を聞きたくて、忘れたくなくて覚えていたくて。」

 あーあー ヘカテーさんがお嬢さん泣かせてるって他の者の視線が痛い。


 「でも、それもダメって言われたら。私も彼女の事が好き、ミノスさんもカロンのお爺さんもケイロンさんもヘカテーさんも此処の慰めてくれた人達も花達もみんな皆んな好きなんです!

 ここ冥界だけでもいいから名乗ってもいい名前をください。」

 半分泣き叫んでヘカテーさん、ごめんなさい。
でも、何度も名前を聞かれる度に寂しい思いをするの。もう嫌なんです。


ヘカテーが、答える。

 「この世界ではあんまり勝手に名前をつけるのはダメなんだ。わかるだろう?契約する事になるから。縛りが出てくるんだ。お互いにな。」

 うーんと、ヘカテーが迫ってくるコレーにやや後退りしながら言う。

 「この世界で名前をつけれるのはただ主だけだ。」



 コレーは

 「じゃあ、ハデス様の所に連れて行ってください。ハデス様から名前を頂きます。」
 
 ニッコリと笑ってヘカテーに告げた。




ヘカテーは考える。


 あーーー。
 まぁちょうど、ハデス様の面接するって言ったな。
 覚悟決まったかなあ?
 なんでお嬢さんの覚悟じゃなくてハデス様の覚悟なんだか。


 なんだか、急なこのお嬢さん逞しくなった気がする。



 ハデス様、大丈夫かなぁ。



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