冥界の愛

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『DO NOT DISTURB 』か 引きこもりか?

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 ポトってなんか、おちてきた。お手てにあたってちょっとつめたい。
なぁに?と、おもって目をあけるとママだった。

ママ ないてるの?
どうしたの? どこかいたいの? さみしかったの?わたしが寝てておしゃべりできなかったから? ちがうの?
おなかすいたの?

って言ったらママが笑ってくれた。お腹空いた?ってニッコリ笑って聞いてくれたから うん!って言った。そうしてギュッと抱きしめてくれた。




ママが、かあさまが、泣いてる。






久しぶりに小さな頃の夢を見た。
ゆっくりと意識が上がってくる。

 時々、私の寝顔を見ながら泣いていたの知ってたわ。時々、違う名前呼んでたでしょう?謎だったけど、いつもニコニコのお母様が本当に切なそうな声で呼ぶから結局、誰の事か聞けなかった。
 だって私への愛情は疑いもなくたっぷりと注いでくれた。
 側のニンフ達が「ホント食いしん坊の所は良く似てますね」って言われたけど。幼い頃はママと似てると言われて嬉しくて一緒に声を揃えて

「これ、おいしいね~」

とよく言ったわ。大きくなって段々とわかって来た。
私と母はあまり似てないんだわ。
母は私が似てると言われると上機嫌になるから余計にあんな風に声を揃えていたのね。
どこか不安そうだった。まるで間違いなく私の娘だからって何か大声で言いたがってる様な不安定感が、時々心配だった。
 でも、母は紛れもなく私の本当の実母だったし、見た目はともかく私達の力は瓜二つだった。
もちろん私の力の使い方を教えてくれたのが母だから、そうだと思っていたが、そういう問題では無いとニンフ達が教えてくれた。


「〇〇様は将来、お母様の様な大地の女神の役目を引き継ぐんでしょうね。」







  え? なんて言ったの? 〇〇様って何ーーーー! えーーー!


ガバっと枕から頭を起こした。


どこまでが夢なんだか?
もうわからないけど、後一歩もう少しで自分の、名前思い出したのに~。
このタイミングで目覚めるのか~い。


 がっくりと頭を垂れていたが、周りの良い香りに気がつくと部屋中お花だらけ💐🌼🌸だった。
せめてこっちの夢 見ようよと思ったけど女子力の無さは仕方ない。

たっぷりな水を吸って綺麗に咲いている花を見ながら(ごめんね)って謝った。
少し力を流すと自ら花びらを揺らす。
(いいのよ、選ばれて嬉しいわ)
って返って来た。

たくさんの花達の為に少しでも長く生きてもらえる様に せめて風を送ろうと立ち上がりお部屋の窓を開けに行く。

少しだけ窓を開けると気持ちの良い風が丘の方から流れて来た。
部屋の花達もみんな嬉しそうに揺れていた。
部屋の全ての花達に回復の力を流した所で、控えめにドアがノックされる。




「 はい 」

と返事する。

「お目覚めでしょうか?入ってもよろしいですか?」

慌てて居住まいを正す。

「はい、大丈夫です」

と、返事をしたら
ゆっくりと扉が開いてケイロンさんが中に入ってくる。

「お疲れの方はどうですか?少しおやすみになれましたか?外がうるさくて目が覚めてしまったでしょうか?」

と、声をかけてくれる。


「 いいえ。もしかして何度もお声をかけて頂いてだんでしょうか?気がつかずに申し訳なかったです。ぐっすりと休ませてもらって久しぶりに夢を見ました。」

「いえいえ。今、初めてですよ。
いい夢を見れましたか?
うちには望む夢が見られる様な力を持つ者がいてますよ。またおっしゃって頂ければ。」

「へー、面白いんですね。その方はどんな夢でも見られる方はきっと良い夢ばかりなんでしょうね。」

「いやいや、彼は引き受けた悪夢を代わりに見せられる様ですよ。」

「 それはお気の毒です。お願いできないじゃないですか。」

「まぁその人にとっては悪夢をでも、他人から見たら絶世の美人にでも迫られてるいい夢になる事もありますしね。ハハハハハ 趣味嗜好は人それぞれですね。」

「ふーん。 まぁ色々な好みの方が居てる『お陰で世の中が上手く回ってるんですわ』ってのが私の側に仕えてくれてるニンフの格言なんです。それと同じですかね。」

「お? お嬢さん思い出して来ましたか?」

「はい、まだ全部ではないですが所々で思い出してるみたいです。」

「そう、それは良かった。でも、頭が痛くなったり 気持ち悪くなったりしたら少し休んでくださいね。」

「はい、ありがとうございます。でも頭が痛くなったりするんですか?」

「私もお嬢さんに休んでもらってる間に少し調べたんですが、
界渡りの花の記憶障害はそれぞれまちまちみたいです。
 初めからわかって使うときには時間が経てば思い出すように 先に解毒剤の様に薬を飲んどくらしいですが、そんな余裕が無くて緊急の時の記憶障害は結構長くかかる者もいてた様です。
 人や神でない物を送った時に最後まで飼い主がわからない事になったりする例もある様ですが、人や神もしくは神の血を継ぐ者の場合は時間がかかっても、最後まで思い出さないという者は居ませんでした。
 だから、とりあえずは安心なさって下さい。
ただ、さっき言った症状が出る者も居てる様です。
 お嬢さんの癒しの力が回復しない様ならば、本来なら私の薬を飲んでもらいたいんですが。飲んだり食べたりするのが禁止されてるので、誰か痛みを和らげる力を持つ者を呼ぶか、こうしてせめてリラックス効果のある花を並べたんです。」

「素敵なお花達をありがとうございます。お陰で様で癒されました。痛みもなく少しずつ記憶を取り戻しています。ご迷惑をおかけしてますがもう少しだと思います。」

「 それは良かったですが、この花の礼はハデス様に仰ってください。ハデス様が自ら向こうの野原からこの部屋の前まで運ばれてまして、皆あまりの驚きにお声をかけるのも忘れてしまいました。
できれば中に飾って差し上げたいと部屋の外の者から私に連絡が来て、眠っていらっしゃいましたが、失礼して女性陣だけで中に入らせてもらいました。勝手に入ってすみませんでしたね。」

私はヘカテー様にお手数かけたかなと少し頭をよぎりましたが、なんだか察した様でケイロン様が
「皆、ここの手伝いの者達ですよ」と伝えてくれた。
本当にここの方達は心が読めるのかしら?ほら、また首を振って笑ってらっしゃるわ。


 「さてと、お嬢さん。体調の方回復されたのなら少し私と散歩に行きませんか?
ミノスも口煩くしてますし、カロン殿もしばらく休んでる事を心配されてましたよ。
それとももう少しおやすみになりますか?」

 ケイロンさんが外に出る事を誘ってくれたが私は首を横に振った。


「  ここでハデス様の面会を待とうと思います。順調に記憶も戻ってきている様ですし。ケイロン様にもお手数をおかけしました。もし、お会いになるのならばハデス様にお花のお礼を伝えてもらえないでしょうか?」

わたしがそう返事すると、少しビックリした顔をして尋ねる。

「 何かお気に触ることがございましたか?」
「 とんでもないです。本当によくして頂いて反対に申し訳なく思うぐらいです。」
と言うが、ケイロン様は尚も尋ねる。

「では、何故に引きこもろうとするんですか?
思い出して冥界の怖い気持ちが出ましたか?」

私は慌てて否定する。
 「 それこそ本当にとんでもないです。でも、記憶が少し戻っても やっぱりあまり冥界の事は知らないみたいです。怖いとかではなく死後にみんなそこに行くんだという認識程度ですし。」

ケイロン様は尚も私に続きを促す。
仕方なく私は本音をお話しすることなった。

「 ただ、全てを忘れて帰ってしまうにはあまりに ここの方達が素敵なんです。
お別れがこれ以上辛くなるのは、困るんです。」

そう言ってケイロン様から目を逸らす。部屋の花々が慰めてくれる様に揺れ出す。






「もう しばらく 私眠っている事にしていただけませんか?」

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