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決別 <デーメテールの決意>
しおりを挟むヘルメスから冥界の様子を聞いたデーメテールも昔むかしの話を思い出していた。
決別 <デーメテールの決意>
ごめんなさい 本当にごめんなさい ハデス。
あなたが、ティタノマキア (神々の大戦)の後すぐに冥界に行ってしまったと 聞いたわ。
でも、私
『 一緒にいようね 』って幼い頃の約束を守る事はできない。
私は、 私を必要としているあの小さき人々を人間たちを見捨てる事はどうしても出来ない。
私は、 この大地の恵、豊穣の女神としての役目がある。それは誰にも代えられない。
私だけが、 あなたの元に行ってしまって、役目を放棄したらこの大地が荒涼の地に変わり果てる。それで人間達が飢えてゆく様を冥界でただ見ているだけ。そして死者としてやってくる人々に対して、どんな顔で会ったらいいのか?もちろん私のせいだと思うし、でも卑怯な私はあなたをも責めてしまうかも知れない。二人の幸せの為にした事だと胸張って言える状況じゃなくなるわ。
私きっと、なぜ冥界に行くのを一言相談してくれなかったのかと、あなたにも責任転嫁をしてしまう汚い自分が見えてしまう。
本当にごめんなさい。
どうしても見捨てられないの。
神にとっては弱き小さき人達だけど、一緒に大地の作物を育て喜び苦労した仲間なの。ただ神に祈るだけではなく、私の事を心から信じてくれた。
時にはあんな、か弱き人たちが私を慰めて励ましてくれた。
そう。 ティタノマキアの直後から地上は雷やら洪水やら地震などなど神々の戦いの爪痕は酷いものだった。大地などただの土の塊で地面でしかなかった。
あんな戦いの後で神の事を信じられなくなっても仕方ないでしょう。
実際、初め誰も再び鍬を持って耕そうとはしなかった。誰も種を蒔こうとはしなかった。草木の一本も生えていない大地を見て茫然としていたわ。大地の恵とは、神はこんな簡単に洪水や吹雪でその恵みを取り上げてしまうものなんだ。
俺たちは何のためにこの年月を畑に注ぎ込んだのか?実をつけるまで丹精込めた木はどこに流された?その怒りが大地に満ちていて私とても苦しかった。
その怒りを涙を茫然としている無気力を少しでも大地の中から回復させる為に一生懸命に力を流し続けたわ。
あまりにも膨大な力を大地の浄化の為に使ってしまい、ある時倒れていた。
気がつくと私の周りに心配そうに見守る人、私の代わりに一生懸命に大地を耕してくれているか弱き小さな人間の姿だった。
それを手伝い、耕した大地に僅かに枯れずに残った湖から、水を運んでるニンフ達の姿だったのよ。
この大地は、これから、人たちの努力で実り豊かにキラキラ輝くわ。また取り戻すのよ。
嫌な事も落ち込む事もあるけど、大地の恵みがあれば大丈夫って言われたの。小さき人も、「美味しいもの食べれば、悲しい事の大概は忘れますよ♪」って。綺麗に実ってる小麦畑や林檎畑は 天上界の景色にも負けませんってニンフ達が言ってくれたわ。
今、ようやく少しずつ 山々や川も緑豊かになってきて、キラキラ輝いてるでしょ? ハデスと幼い頃に二人でよく過ごした朝靄の中のあの泉も もうすぐ元に戻るわ。
でも、いま、私が居なくなったら全て無くなるわ。
今、私が去って、大地の恵みの力が無くなってしまったら。
私は、
私だけの幸せのために、ここの全てを捨てて役目を放り出して、ハデスの行った冥界に降りて行く事は、、ハデスの所に行くことは、
「どうしても、どうしてもできない。
あなたの側には行けない。」
ごめんなさい ごめんなさい 本当にごめんなさい ごめんなさい ごめ(;_;)。
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