22 / 107
身代わりの娘
しおりを挟む[ やめよ ]
ハデスの命がほんの少しでも遅ければ、ヘルメスの体には無数の剣が突き刺さる事になっていた。
一番にヘルメスに怒りの剣を貫こうとしていたのは、なんとドアの外にいて入ってくる瞬間にヘルメスの無礼な言葉を聞いた冥界の戦神ヘカテーだった。
その素早さは、速き事風の如し。
ヘルメスの心臓を狙って剣と暗器ナイフが多数。
あとは死神タナトスがいつもしている様に後ろを取って喉を掻き切ろうとしており、
愛犬ケルベロスが腹に食らいつき内臓を食い破ろうとしている直前だった。
主の命には逆らえない。
ピタッと体は硬直し、指先すら動かす事はできないが、ヘルメスを睨み続けている二人と 一匹?(3頭?)
ハデスが椅子に取り残されてるヒュプノスに向かって言う。
「 そこの花を持って来てくれ 」
ヘカテーが部屋に入って来るなり落とした花をヒュプノスがハデスの元に届ける。
「 はいどうぞ、ハデス様」
「 ありがとう ヒュプノス 」
へへへへ~
ハデスに礼を言われて嬉しそうなヒュプノスの締まらない笑声が皆の硬直を溶かす。
まだまだ怒りが治らない
ハデス様に無礼は許さないとヘカテーが灼眼を燃え上がらせる。タナトスが黒いオーラを纏わせてヘルメスに向けてスーッと目を細める。獲物を狙う豹の眼だ。
ハデスの足元に帰ったケルベロスはもう無視を決めた様で3頭共にあちらを向いてる。
そんな触発の中 ハデスが花を手に取るとボウっと光り始める。
そこには
地上でコレーが界渡りの花に話しかけてる所から、力を流し出した時、冥界の結界を破りここに来てしまった事など
全ての事情がわかる記憶が映し出された。
ハデスが攫って来たわけでもなく、コレーが役目として花に力を流した結果、界渡りの花が作動してしまった。
じっと花の記憶を見ていた皆がヘルメスに謝罪の言葉を要求する様に再び見つめる。
しかし、ヘルメスも大凡はわかっていた様子であまり驚いたりはしていない。
なぜあんな事を言ったのか?
皆を怒らせてまでハデスの何を見たかったのか?試したかったのか?
相変わらず、真実を隠す油断ならない使者だ。
「ご無礼を申し訳ございません。
事情はわかりました。
では、デーメテール様の御子神様は私が一緒に地上まで御連れして帰りますので、よろしくお願いします。
どちらにいらっしゃるのですか?お迎えに参りますが。」
そう言うヘルメスに向かってハデスは はっきりと言った。
「 駄目だ。連れ帰る事は許さない。」
「 なぜですか?
今 花の記憶を見せてもらったらどう見ても事故じゃないですか?
コレー様は自ら望んでこの地にやって来たのではない。だからこちらの事情の時は 再び生き返る事ができるのでしょう?
本来ならこの地に辿り着くまでに三ツ辻四ツ辻で元の道に戻ってしまう様になっているでしょう?
私も長く旅する者に四つ角などで選択をかけての供物を捧げられます。安全に旅する道は?危険の無い道はどれか?どの道が冥界に繋がってしまうのか?などと。ですが山賊の隠れている道は間違える事もあるが、冥界の道は隠れており人たちなどでは例え間違えても戻り道になっており、冥府に行く事はできない。
それはこの冥界が生きたまま冥府に来る事を許していない、結界を破る事ができない証でしょう。
なのに、間違えた訳でもないコレー様に咎を与えて地上に返さないんですか?
このまま冥界にやってきたコレー様を気に入って留めおくつもりでしょうか?」
ヘルメスはハデスを見上げて言う。
「 やはり
かつて恋人同士であったデーメテール様と結ばれなかった代わりとして、コレー様を手に入れたからでしょうか? 」
次は少しお休みします。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説


冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる