18 / 107
お、も、て、な、し って何?
しおりを挟むしばらく経つと、ヘカテーさんが戻って来た。
「 随分と待たされたけど。ヘルメスの奴、そんなややこしそうな案件を持ってきたのか? 」
ミノスさんがヘカテーさんに尋ねた。
「 さっき 地上で地震があっただろ?」
「 いや~知らないな。舟の時かなぁ。」
「 どこから舟に乗った?」
「 うーん 忘却の河レーテ川のそばに倒れてるのを見つけてからはすぐに。そこから舟に乗ったけどな。」
「 そうか。じゃあ地上の地震は船上よりも もう少し前じゃないか。」
「 あー 俺 その時ちょっと飛んでたかも。あんまりいい記憶ねえんだけど、そこ飛んでる感じするわ。」
「 また?お前の時渡りはいつも突然だな。何か前兆とかは無いのか?
急に、いなくなると皆ビックリするから。」
「 今度のは一瞬だったよ、きっと。」
嫌な事を思い出して、避ける様にミノスさんは身震いした。
窓辺にもたれ掛かって話を聞いていたミノスさんに ヘカテーさんが急に詰めより、
「 ちょっと待て。舟って事はカロン殿か?
カロン殿は大丈夫だったのか?
この子を舟に乗せたって事は近距離だっただろう?あの方こそ大丈夫だったのか?
カロン殿は あの闇黒エンボス様と夜闇ニュクス様の息子だそうだ。
眩しすぎる光は我々よりも最もお辛いはずだぞ。」
と、問いただす。
だけどミノスさんは呑気な声で返事する。
「それがさあ, まぁ確かに時々櫂を漕ぐのに少し辛そうな時はあったみたいだけどな。
このお嬢さんの事は随分と気に入った様で、本当に珍しくお喋りだったんだ。
俺は初めてカロン爺さんがあんなに話すのを聞いたな。
ね?お嬢さん。二人で楽しそうだったよね。」
急に話を振られて
「 はい。カロンのお爺さんにはご親切にしていただきました。」
と、ヘカテーさんに言うと じーっと見られた。
「 それよりヘカテー
もう お嬢さんを連れて行ってもいいのかよ?
それともハデス様はこっちに帰ってくるの?
まだまだ地震の後処理はかかりそうなのか?」
そう尋ねてるミノスさんではなく、私の方を向いてヘカテーさんがお返事してくれた。
だけど、
「 冥界の王ハデス様は、お忙しいからお客人とはお会いにならない。
お連れしなくてもよいとの事だ。
そのかわり、そのお嬢さんを [しっかりと 大切にもてなせ] との仰せだ。」
私が会えないんだと、ガッカリする前に隣のミノスさんが声を出した。
「 はっ?
連れて来なくてもいいって、どう言う事?
どうして会わないの? なぜ?W h y?
後で会うって事だよね?地震では死者がたくさんくるの? 」
「 いや、地震はあったが地震による死者はいなかった様だ」
「 じゃあ なぜ?」
「 だから言っただろう?主はお忙しいと。 そのかわり、もてなせと。」
「 お、も、て、な、し?? 」
唖然とするミノスさんが、我に帰った様にハッと顔を上げてヘカテーさんに言い寄った。
「 待て待て!
とにかく このお嬢さんは記憶がなくて、自分の事も誰かわからないし、まず何よ元の世界に帰りたいんだよ。
どうするの?もてなされたくて自分からきた訳じゃないし。なんで、ほったらかされてるのか教えてくれ。」
「 ミノス、控えよ!
主が決められた事だ。言われた通りにせよ。」
ピシャっとヘカテーさんが言い放つ。
納得できない顔のミノスさんがまた何か言いかけるのを見て、私は
「 ありがとうございます。
お忙しい中 お取り次ぎいただきました。
とりあえず、ハデス様がお会いしてくださるまで 待たせて頂きます。しばらく?お世話になります。
ミノスさんも、お忙しい中ありがとうございました。
あと どこで待たせてもらえばいいのか?過ごさせてもらったらいいのか、どこは行ってはいけないのかなど教えて頂けないでしょうか?」
そう返事して頭を下げた。
ミノスさんは少し表情を戻してヘカテーさんに尋ねた。
「 わかったよ。
でも、主はこのお嬢さんが誰なのか、
見ればわかるんだろ?わかるなら教えてくれ。じゃないと、もてなし様もないだろ? 」
「 ミノは本当に知らないんだな 」
ヘカテーさんは厳しい表情を少し和らげて、またそう呟いた。
「 ヘカテーさんは 私の事を知ってらっしゃるのですか?」
私はヘカテーさんを見つめながら尋ねた。
すると、ヘカテーさんは ゆっくりと頷いた。
「 ハデス様も私の事をご存知なんですね?その上でお会いして頂けないと言うことなんですか? 」
私、そんなに神にも人にも嫌われる事は 今まであまり無かった。たぶん。
ヘカテーさんは何も言わずに ただじっと私を見てるだけだった。
「 教えてください。私は誰なんですか?私の名前を知ってるなら 教えてください。」
「 君の名は 」
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる