18 / 20
18
しおりを挟む
「隣、いい?」
蛍がふわふわと舞う水辺を大きな岩に座ってぼんやり見ていた知臣に、日向は後ろから声をかけた。
あれから、小さな合唱会で笑っていたけれど、優を寝かしつけたあとに知臣は仕事をすると言って姿を見せないでいた。
本当に仕事をしているのだろうかと仕事部屋の前まで行けば、部屋の電気は消えていて人の気配は無く。
どこに行ったのだろうと心配に思ったときに、この川辺のことを思い出した。
一人になりたいのだろうから邪魔をするのもどうかと思ったが、いつまでたっても戻ってこないので結局心配で様子を見に来てしまった。
振り返った知臣が無言で隣をポンと叩いたので、そこに腰を下ろす。
すると、右肩に少しの重さがかかり、色素の薄い髪が首筋をくすぐった。
日向の肩に頭を乗せた知臣の髪をゆっくり梳いてやる。
「なにか歌ってくれるか?」
そんなことを言われたのは初めてで、日向は静かに歌い始めた。
ちらりと視線を向けると、知臣は目を閉じて静かに聞き入っている。
五分も歌った頃。
「日向君の歌は、なによりも気がまぎれる」
「今日は大変だったね」
頭を肩に預けている知臣が、日向の右手に手を重ねてぎゅっと握りしめた。
「うん、さすがに理恵に言われた言葉は堪えた。実際、両親が亡くなる前より余裕のある生活してるからさ」
「あんな奴の言うこと気にしなくていいよ」
握っている手に左手を重ねて、ぎゅっと力を込めてやる。
大丈夫というように。
「別に贅沢してるわけじゃないし、一人で三人を育ててるんだ。あんな奴の言うことを気にすることも、それこそおばあさんたちに引け目も感じなくていいよ」
きっぱりと言い切ってやれば、くすりと知臣の方から吐息が聞こえた。
「まさか、理恵を引っぱたくなんて思わなかった」
「だってムカつくじゃないか。あんな小さい子を怖い目に会わせて、知臣さん傷つけて謝りもしないで。女だからちゃんと手加減したよ」
ふっとまた吐息で笑うと、頭を上げた知臣が顔を近づけて。
「ありがとう」
囁いて、そっと唇を寄せた。
何度かちゅっちゅっと唇を重ねて、お互いの柔らかさを感じあうと、知臣が上唇を優しく吸って離れた。
「さ、もう帰って寝な」
「知臣さんは?」
はふりと頬を赤らめたまま聞くと、返ってきたのは苦笑だった。
「ちょっと今夜は眠れそうにないからさ」
「だったら俺もここにいる」
きっぱりと言い切れば、少し困ったように知臣の眉が下がった。
「今日は駄目だ」
「どうして?こんな状態の知臣さん一人にしたくない」
「今日は傍にいたら、ひどく甘えたくなるから」
「それなら余計、一緒にいる」
言うなり、日向はぎゅうと知臣を抱きしめた。
少し高い体温が一瞬震えるけれど、抱きしめ返してはこない。
だから、よけい腕に力を込めればおずおずと抱きしめ返された。
いつもしてもらったように、その色素の薄い髪を撫でる。
しばらくそうしていたけれど、背中をぽんと小さく叩かれて日向は手を緩めた。
知臣も手を離し日向の顔を見返す。
「やっぱり帰れ」
拒絶の言葉に、日向は泣きそうになった。
自分では知臣がしてくれたように力にはなれないのかと。
けれど、苦笑した知臣は困ったように眉を下げてはいたけれど、拒絶の色は見えなかった。
「……好きな奴抱きしめて何もしないでいられるほど、お綺麗な男じゃないんだ」
その言葉の意味に、カアッと日向は顔を赤くした。
だけど、嫌だとか困るとかは一ミリも思わなくて、むしろ出来るのならばもっと近づきたいとすら思った。
日向は知臣の頬を両手で挟むと、小さくその唇にキスをした。
「日向く」
「甘えるだけ甘えればいい」
皆まで言わせず、ハッキリと言い放つ。
知臣が目を驚いた表情をするのを、してやったりとさえ思った。
しばらくじっと見てくる眼差しは、日向に怯えがないことを確かめているようだ。
そんなもの、欠片もないのに。
「……いいのか?流されて後悔するぞ」
「そんな生半可な気持ちで言ってない。知臣さんこそ、俺をお綺麗な男と思わないでよ」
もう一度、唇を啄む。
それを合図に、知臣の舌先が唇をなぞった。
躊躇なく口を開けると、ぬるりと舌が入り込んでくる。
くち、と濡れた音を響かせながら、蛍の舞うなかで二人はしばらく唇を重ねた。
ようやく知臣の唇が日向の下唇を柔く食んで離れていく。
「……帰るか」
その言葉にこくりと頷き、二人で手を繋いで足早に帰路へとついた。
道中は、胸がドキドキしすぎて何も会話がない沈黙で、それがこれから起こることを意識してしまい日向の顔を赤くさせる。
ノウゼンカズラの花が風に揺れるなか、裏庭の縁側に乗り上げた頃にはキスを再開されて頭が沸騰しそうだった。
もどかし気に仕事部屋に入ると、両肩を掴み、ゆっくりと畳の上に押し倒された。
覆いかぶさられ、キスをする。
両耳に指先を入れてくすぐられると、くちゅくちゅとした舌の混じりあう音が脳内に響いてひどく恥ずかしい。
こくりと送り込まれる唾液を飲むと、知臣の手がシャツのボタンを外し始めた。
「ま、まって」
「ん?」
「俺、体の方もでかい傷跡あって、いや見られたことあるけど、だから、脱がせない方が……」
視線をさまよわせながら早口で言いつのると、知臣は日向の前髪をかきあげて傷跡に何度もキスを降らせた。
「傷跡全部にキスしたい。全部含めて好きだ」
涙が滲みそうだと思った。
「でも本当に嫌なら見ねーよ」
知臣がシャツのボタンから手を離したが、日向は震える手で自らのシャツのボタンを全部外した。
そこには日に焼けていない白い肌と、引き攣れた違う色の皮膚がある。
「ほんとに、きもちわるくない?」
不安そうに聞く日向に、知臣はちゅっと一番大きく引き攣れている場所に唇を落とした。
「気持ち悪いなんてあるわけねえ」
きっぱりとした物言いに、滲んだ涙を頬に流して日向はふにゃりと笑った。
「よかった」
何度も傷跡にキスが降ってくる。
そのたびに日向は体を震わせた。
そして、舌で体の表面を舐められるたびに、あられもない声が出るのが恥ずかしい。
「ふっ……あ、あ」
温かい手のひらがはだけたシャツのあいだから体の形を確かめるように撫でていく。
卑猥なことをしてるはずなのに、それがひどく安心した。
傷跡から舌を這わせ、左乳首を唇に食まれると、ことさらびくりと体が揺れた。
愛撫を受けるたびに体温が上昇して、傷跡の部分がうっすらと赤味を帯びていく。
執拗に左胸を舐められ、右胸を指先でこねられる。
それがジンジンとして、日向は口元に手の甲を当て必死に声を押し殺した。
「んん、あ、も、なめちゃやあ」
「そう?好きそうだけどな」
笑いながら、ふうっと息をそのしこりに吹きかけられれば、唾液で濡れそぼったそこは敏感に快感を拾った。
びくりびくりと腰が跳ねるのを楽しそうに撫でながら、ハーフパンツのウエストから右手が差し入れられる。
下着越しにペニスを撫でられて、びくりと日向は背をそらせた。
「ん、や、あ、あ」
そのままやわやわと揉まれてしまえば、自然とそこは固くなって腰が揺れだした。
「やだ、出るっ出るから」
ぬがせて。
吐息交じりの声に、知臣は唇を舐めるとそのまま下着ごと日向の足からハーフパンツを引き抜いた。
ぷるんとすでにしっかり立ち上がったペニスが飛び出したことに、日向の顔が羞恥で赤くなる。
けれど知臣は可愛いと囁いて。
「ひあん」
その小さな臍に舌をねじ込み、右手では下生えを撫ぜて肝心なところへの愛撫をしてくれない。
もう少しでいけるのにと、自分で手を伸ばそうとすれば、すぐにその手を掴まれてしまった。
「知臣さんいじわるだ」
涙目で睨みつけると。
「そんなことねーよ」
言うなり日向のペニスをじゅるりと口に咥えた。
「はっああ、あっ」
太ももを抱えられて足を開かされた状態は恥ずかしくて、声を出さないように両手で必死に口を押さえた。
「あっや、はなして、はなして」
「ひもひいい?」
「しゃべんない、で」
もごもごと唇を動かされて腰を震わせる。
尿道をぐりりと舌先でえぐられ、日向は声
も出せずに吐精した。
はあはあと荒い息を吐いていると、顔を上げた知臣の口がごくりと喉を動かす。
「知臣さん飲んじゃったの?」
「うん、飲んだ」
いつもの明るい笑顔なのに言っている事は淫猥だ。
くたりと力のなくなったペニスをゆるく撫でて、先走りがしたたり落ちて濡れそぼっていた後孔との間をつつっと指先で撫でられる。
びくりと太ももの内側が引きつった。
すりすりとそこを指先ですられると、じれったい熱がまた腰に溜まっていく。
そのまま指先が日向の更に最奥へと届いてゆっくり指が挿入された。
「んんっ」
知臣の指が自分の中に入ってくる違和感と羞恥とがないまぜになって、生理的な涙が滲む。
「指、増やすぞ」
ゆっくりと、くちゃくちゃと卑猥な音を立てながら指が日向のなかをかき混ぜていく。
ふいに知臣に口づけられた瞬間、指がある一点に触れてびりびりとした快感が背筋を駆け抜けた。
「んーっ」
悲鳴のような嬌声は、すべて知臣の唇に吸い込まれた。
「ん、んん、ふ」
何度も角度を変えて唇を塞がれる。
声が響かないようにしてくれるのはありがたいが、口からの快感と下からの快感にどうにかなってしまいそうだ。
指が引き抜かれて、ほっと吐息を漏らすと知臣が体を離して自分のハーフパンツを下着ごとずらした。
ぶるんとすでに立ち上がっているペニスからは先走りが流れている。
「日向君、いい?」
はあ、と熱い息を吐いて自分の屹立を二、三度しごく知臣に、日向はちゅっと首を伸ばして触れるだけのキスをした。
「きて」
頬を赤く染めながらも、小さく囁いた。
ぶちゅりと後孔にペニスがキスすると、期待するようにひくひくと動く。
「ん、あ、あ」
腰をゆっくり推し進められると、日向の眉がせつなく寄った。
ギッチリと奥まで挿入されると、圧迫感が苦しい。
でもそれ以上に熱い知臣の熱に、満たされるものがあった。
ゆっくりと腰を引かれると、ずるると微肉の引っ張られる感触。
それに息を吐くと、ばちゅんと腰を叩きつけられて。
「ひあっ」
思わず甲高い声が漏れた。
「あっやめ、こえ、でちゃう」
両手で咄嗟に口元を押さえるけれど、腰を容赦なく打ち付けられて、足の指がきゅうと丸まる。
「ん、悪い、キスするから手どけて」
「んんっ」
少し上ずった声に促されて震えている手をどければ、呼吸ごと奪われるようなキスをされる。
必死で舌を絡ませると、いつのまにか立ち上がっていた日向のペニスが知臣の体に擦りつけられ再び精を放った。
「ふ、は」
いった瞬間にぎゅうと内部を締め付け、叩きつけられた熱い飛沫に、知臣も吐精したことがわかった。
意識が引っ張られるように飛ぶなか、左目に降ってくる唇に日向は小さく笑みを浮かべていた。
蛍がふわふわと舞う水辺を大きな岩に座ってぼんやり見ていた知臣に、日向は後ろから声をかけた。
あれから、小さな合唱会で笑っていたけれど、優を寝かしつけたあとに知臣は仕事をすると言って姿を見せないでいた。
本当に仕事をしているのだろうかと仕事部屋の前まで行けば、部屋の電気は消えていて人の気配は無く。
どこに行ったのだろうと心配に思ったときに、この川辺のことを思い出した。
一人になりたいのだろうから邪魔をするのもどうかと思ったが、いつまでたっても戻ってこないので結局心配で様子を見に来てしまった。
振り返った知臣が無言で隣をポンと叩いたので、そこに腰を下ろす。
すると、右肩に少しの重さがかかり、色素の薄い髪が首筋をくすぐった。
日向の肩に頭を乗せた知臣の髪をゆっくり梳いてやる。
「なにか歌ってくれるか?」
そんなことを言われたのは初めてで、日向は静かに歌い始めた。
ちらりと視線を向けると、知臣は目を閉じて静かに聞き入っている。
五分も歌った頃。
「日向君の歌は、なによりも気がまぎれる」
「今日は大変だったね」
頭を肩に預けている知臣が、日向の右手に手を重ねてぎゅっと握りしめた。
「うん、さすがに理恵に言われた言葉は堪えた。実際、両親が亡くなる前より余裕のある生活してるからさ」
「あんな奴の言うこと気にしなくていいよ」
握っている手に左手を重ねて、ぎゅっと力を込めてやる。
大丈夫というように。
「別に贅沢してるわけじゃないし、一人で三人を育ててるんだ。あんな奴の言うことを気にすることも、それこそおばあさんたちに引け目も感じなくていいよ」
きっぱりと言い切ってやれば、くすりと知臣の方から吐息が聞こえた。
「まさか、理恵を引っぱたくなんて思わなかった」
「だってムカつくじゃないか。あんな小さい子を怖い目に会わせて、知臣さん傷つけて謝りもしないで。女だからちゃんと手加減したよ」
ふっとまた吐息で笑うと、頭を上げた知臣が顔を近づけて。
「ありがとう」
囁いて、そっと唇を寄せた。
何度かちゅっちゅっと唇を重ねて、お互いの柔らかさを感じあうと、知臣が上唇を優しく吸って離れた。
「さ、もう帰って寝な」
「知臣さんは?」
はふりと頬を赤らめたまま聞くと、返ってきたのは苦笑だった。
「ちょっと今夜は眠れそうにないからさ」
「だったら俺もここにいる」
きっぱりと言い切れば、少し困ったように知臣の眉が下がった。
「今日は駄目だ」
「どうして?こんな状態の知臣さん一人にしたくない」
「今日は傍にいたら、ひどく甘えたくなるから」
「それなら余計、一緒にいる」
言うなり、日向はぎゅうと知臣を抱きしめた。
少し高い体温が一瞬震えるけれど、抱きしめ返してはこない。
だから、よけい腕に力を込めればおずおずと抱きしめ返された。
いつもしてもらったように、その色素の薄い髪を撫でる。
しばらくそうしていたけれど、背中をぽんと小さく叩かれて日向は手を緩めた。
知臣も手を離し日向の顔を見返す。
「やっぱり帰れ」
拒絶の言葉に、日向は泣きそうになった。
自分では知臣がしてくれたように力にはなれないのかと。
けれど、苦笑した知臣は困ったように眉を下げてはいたけれど、拒絶の色は見えなかった。
「……好きな奴抱きしめて何もしないでいられるほど、お綺麗な男じゃないんだ」
その言葉の意味に、カアッと日向は顔を赤くした。
だけど、嫌だとか困るとかは一ミリも思わなくて、むしろ出来るのならばもっと近づきたいとすら思った。
日向は知臣の頬を両手で挟むと、小さくその唇にキスをした。
「日向く」
「甘えるだけ甘えればいい」
皆まで言わせず、ハッキリと言い放つ。
知臣が目を驚いた表情をするのを、してやったりとさえ思った。
しばらくじっと見てくる眼差しは、日向に怯えがないことを確かめているようだ。
そんなもの、欠片もないのに。
「……いいのか?流されて後悔するぞ」
「そんな生半可な気持ちで言ってない。知臣さんこそ、俺をお綺麗な男と思わないでよ」
もう一度、唇を啄む。
それを合図に、知臣の舌先が唇をなぞった。
躊躇なく口を開けると、ぬるりと舌が入り込んでくる。
くち、と濡れた音を響かせながら、蛍の舞うなかで二人はしばらく唇を重ねた。
ようやく知臣の唇が日向の下唇を柔く食んで離れていく。
「……帰るか」
その言葉にこくりと頷き、二人で手を繋いで足早に帰路へとついた。
道中は、胸がドキドキしすぎて何も会話がない沈黙で、それがこれから起こることを意識してしまい日向の顔を赤くさせる。
ノウゼンカズラの花が風に揺れるなか、裏庭の縁側に乗り上げた頃にはキスを再開されて頭が沸騰しそうだった。
もどかし気に仕事部屋に入ると、両肩を掴み、ゆっくりと畳の上に押し倒された。
覆いかぶさられ、キスをする。
両耳に指先を入れてくすぐられると、くちゅくちゅとした舌の混じりあう音が脳内に響いてひどく恥ずかしい。
こくりと送り込まれる唾液を飲むと、知臣の手がシャツのボタンを外し始めた。
「ま、まって」
「ん?」
「俺、体の方もでかい傷跡あって、いや見られたことあるけど、だから、脱がせない方が……」
視線をさまよわせながら早口で言いつのると、知臣は日向の前髪をかきあげて傷跡に何度もキスを降らせた。
「傷跡全部にキスしたい。全部含めて好きだ」
涙が滲みそうだと思った。
「でも本当に嫌なら見ねーよ」
知臣がシャツのボタンから手を離したが、日向は震える手で自らのシャツのボタンを全部外した。
そこには日に焼けていない白い肌と、引き攣れた違う色の皮膚がある。
「ほんとに、きもちわるくない?」
不安そうに聞く日向に、知臣はちゅっと一番大きく引き攣れている場所に唇を落とした。
「気持ち悪いなんてあるわけねえ」
きっぱりとした物言いに、滲んだ涙を頬に流して日向はふにゃりと笑った。
「よかった」
何度も傷跡にキスが降ってくる。
そのたびに日向は体を震わせた。
そして、舌で体の表面を舐められるたびに、あられもない声が出るのが恥ずかしい。
「ふっ……あ、あ」
温かい手のひらがはだけたシャツのあいだから体の形を確かめるように撫でていく。
卑猥なことをしてるはずなのに、それがひどく安心した。
傷跡から舌を這わせ、左乳首を唇に食まれると、ことさらびくりと体が揺れた。
愛撫を受けるたびに体温が上昇して、傷跡の部分がうっすらと赤味を帯びていく。
執拗に左胸を舐められ、右胸を指先でこねられる。
それがジンジンとして、日向は口元に手の甲を当て必死に声を押し殺した。
「んん、あ、も、なめちゃやあ」
「そう?好きそうだけどな」
笑いながら、ふうっと息をそのしこりに吹きかけられれば、唾液で濡れそぼったそこは敏感に快感を拾った。
びくりびくりと腰が跳ねるのを楽しそうに撫でながら、ハーフパンツのウエストから右手が差し入れられる。
下着越しにペニスを撫でられて、びくりと日向は背をそらせた。
「ん、や、あ、あ」
そのままやわやわと揉まれてしまえば、自然とそこは固くなって腰が揺れだした。
「やだ、出るっ出るから」
ぬがせて。
吐息交じりの声に、知臣は唇を舐めるとそのまま下着ごと日向の足からハーフパンツを引き抜いた。
ぷるんとすでにしっかり立ち上がったペニスが飛び出したことに、日向の顔が羞恥で赤くなる。
けれど知臣は可愛いと囁いて。
「ひあん」
その小さな臍に舌をねじ込み、右手では下生えを撫ぜて肝心なところへの愛撫をしてくれない。
もう少しでいけるのにと、自分で手を伸ばそうとすれば、すぐにその手を掴まれてしまった。
「知臣さんいじわるだ」
涙目で睨みつけると。
「そんなことねーよ」
言うなり日向のペニスをじゅるりと口に咥えた。
「はっああ、あっ」
太ももを抱えられて足を開かされた状態は恥ずかしくて、声を出さないように両手で必死に口を押さえた。
「あっや、はなして、はなして」
「ひもひいい?」
「しゃべんない、で」
もごもごと唇を動かされて腰を震わせる。
尿道をぐりりと舌先でえぐられ、日向は声
も出せずに吐精した。
はあはあと荒い息を吐いていると、顔を上げた知臣の口がごくりと喉を動かす。
「知臣さん飲んじゃったの?」
「うん、飲んだ」
いつもの明るい笑顔なのに言っている事は淫猥だ。
くたりと力のなくなったペニスをゆるく撫でて、先走りがしたたり落ちて濡れそぼっていた後孔との間をつつっと指先で撫でられる。
びくりと太ももの内側が引きつった。
すりすりとそこを指先ですられると、じれったい熱がまた腰に溜まっていく。
そのまま指先が日向の更に最奥へと届いてゆっくり指が挿入された。
「んんっ」
知臣の指が自分の中に入ってくる違和感と羞恥とがないまぜになって、生理的な涙が滲む。
「指、増やすぞ」
ゆっくりと、くちゃくちゃと卑猥な音を立てながら指が日向のなかをかき混ぜていく。
ふいに知臣に口づけられた瞬間、指がある一点に触れてびりびりとした快感が背筋を駆け抜けた。
「んーっ」
悲鳴のような嬌声は、すべて知臣の唇に吸い込まれた。
「ん、んん、ふ」
何度も角度を変えて唇を塞がれる。
声が響かないようにしてくれるのはありがたいが、口からの快感と下からの快感にどうにかなってしまいそうだ。
指が引き抜かれて、ほっと吐息を漏らすと知臣が体を離して自分のハーフパンツを下着ごとずらした。
ぶるんとすでに立ち上がっているペニスからは先走りが流れている。
「日向君、いい?」
はあ、と熱い息を吐いて自分の屹立を二、三度しごく知臣に、日向はちゅっと首を伸ばして触れるだけのキスをした。
「きて」
頬を赤く染めながらも、小さく囁いた。
ぶちゅりと後孔にペニスがキスすると、期待するようにひくひくと動く。
「ん、あ、あ」
腰をゆっくり推し進められると、日向の眉がせつなく寄った。
ギッチリと奥まで挿入されると、圧迫感が苦しい。
でもそれ以上に熱い知臣の熱に、満たされるものがあった。
ゆっくりと腰を引かれると、ずるると微肉の引っ張られる感触。
それに息を吐くと、ばちゅんと腰を叩きつけられて。
「ひあっ」
思わず甲高い声が漏れた。
「あっやめ、こえ、でちゃう」
両手で咄嗟に口元を押さえるけれど、腰を容赦なく打ち付けられて、足の指がきゅうと丸まる。
「ん、悪い、キスするから手どけて」
「んんっ」
少し上ずった声に促されて震えている手をどければ、呼吸ごと奪われるようなキスをされる。
必死で舌を絡ませると、いつのまにか立ち上がっていた日向のペニスが知臣の体に擦りつけられ再び精を放った。
「ふ、は」
いった瞬間にぎゅうと内部を締め付け、叩きつけられた熱い飛沫に、知臣も吐精したことがわかった。
意識が引っ張られるように飛ぶなか、左目に降ってくる唇に日向は小さく笑みを浮かべていた。
44
お気に入りに追加
110
あなたにおすすめの小説
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する
あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。
領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。
***
王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。
・ハピエン
・CP左右固定(リバありません)
・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません)
です。
べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。
***
2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。
【完結】運命の番に逃げられたアルファと、身代わりベータの結婚
貴宮 あすか
BL
ベータの新は、オメガである兄、律の身代わりとなって結婚した。
相手は優れた経営手腕で新たちの両親に見込まれた、アルファの木南直樹だった。
しかし、直樹は自分の運命の番である律が、他のアルファと駆け落ちするのを手助けした新を、律の身代わりにすると言って組み敷き、何もかも初めての新を律の名前を呼びながら抱いた。それでも新は幸せだった。新にとって木南直樹は少年の頃に初めての恋をした相手だったから。
アルファ×ベータの身代わり結婚ものです。
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜
天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。
彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。
しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。
幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。
運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。
宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている
飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話
アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。
無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。
ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。
朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。
連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。
※6/20追記。
少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。
今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。
1話目はちょっと暗めですが………。
宜しかったらお付き合い下さいませ。
多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。
ストックが切れるまで、毎日更新予定です。
大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!
みづき(藤吉めぐみ)
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。
そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。
初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが……
架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる