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「さて、次は」

 次はどこに行くのだろうとリッカがセルフィルトを見上げると。

「やっぱ、あそこかな」

 彼は不敵に、ニッと笑った。
 そうして連れてこられた店に、リッカはふわあと思わず感嘆の声を上げていた。
 店内はガラスケースに入った色とりどりのキャンディーやグミ、ビスケットなどが壁一面に並べられている。
 子供たちがそれらを真剣に吟味する姿が店内のいたる所で見られた。
 二人が来たのは有名なお菓子屋だった。
 ポップな色合いの店内はいっそチカチカするほどの色に溢れていて、リッカはすっかり圧倒されていた。

「欲しいお菓子をこれに入るだけ詰めな」

 セルフィルトが店員から一番大きな袋を受け取って、リッカに差し出した。

「え、えら、んで、いい、の?」
「もちろん」

 渡された袋を両手で持つと、リッカは右に左に一歩踏み出しかけては足を戻した。
 沢山ありすぎて、どこから見たらいいのかわからないのだ。
 それに気づいたセルフィルトが、くっと喉奥で笑うとリッカの背を柔らかく押してクッキーのコーナーへと導いた。

「クッキーとかグミが種類が多いから、美味しそうなのを選んでみな」
「う、うん」

 頷いて、おそるおそるガラスケースに付属しているスプーンを取り、七種類の色があるグミのケースの蓋を開けた
 赤、黄色、と二つ袋に入れるとリッカはそれが自分の手元に来たことに、頬を紅潮させた。

「こ、これ、たべ、て、いい、の?」
「屋敷に帰ってからな。それよりもっと入れな。袋がいっぱいになるまで入れていいから」

 セルフィルトの言葉にぽかんとリッカは口を開けると、手元の袋を掲げて見た。
 まだグミが二つ入っているだけの袋には、余裕がありすぎる。
 はわわとまたもや、どうしたらいいのかと忙しなく店内を見回すリッカに、セルフィルトはその動きがおかしくて仕方なかった。

「手伝おうか?」

 助け船を出せば、リッカはこくこくと何度も頷いた。
 そうしてリッカが我知らずくぎ付けになったり、目を輝かせたお菓子をセルフィルトが片っ端から袋に詰めていった。
 支払いを済ませて店内を出ると、リッカは嬉しさを噛みしめるように口元をむずむずさせていた。

「あと、これもな」

 セルフィルトはリッカに目線を合わせると、レジの後ろの棚に置かれていた飴のガラズ瓶を差し出した。

「そ、それ……」

リッカが目を丸くして見やったそれは、宝石のような赤い飴玉が入っている。
娼館でセルフィルトに貰い、けれど店の人間に取られてしまったものと同じ飴だった。

「これは取られちゃった飴の代わりな」

 初めて人から貰った、とても大事にしていたものだ。
 おそるおそる手を伸ばすと、セルフィルトはリッカの小さな手にそれを持たせてくれた。
 それがとても嬉しくて。

「だ、だん、なさま、あり、ありが、とう」

 つっかえながらもリッカにしては大きな声で精一杯のお礼を言った。
 それにセルフィルトは満足気に藍色の瞳をしんなりとさせた。
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