君と運命になっていく

やらぎはら響

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まだ昼間だったけれど、そのあとはお互い無言で帰宅してシャワーを浴びた。
 先にシャワーを浴びた伊織はリルトの寝室でベッドに腰掛けていた。
 寝室は心を通わせてからまた同じにしていたけれど、今日はパジャマではなくバスローブだ。
 緊張で口から心臓を吐き出しそうだった。
 風呂は最初の頃は一緒に入っていたけれど、意識してからは入っていない。
 怪我をしたリルトは湯舟はやめた方がいいということで、寝室は一緒に戻したけれど風呂は別々のままだった。
 膝に置いた手でバスローブをぎゅっと握る。
 乏しい体験はリルトに慰められた一度だけだから、嫌でもその時のことが思い出された。

「前舐められたけど、ああいうことするんだよな……ちゃんとできるかな」

 その時のことを思い出してしまい頬を赤くしたとき、タイミングがいいのか悪いのか部屋の扉が開いた。
 バスローブ姿に髪が湿ったままのリルトが部屋に入ってくる。
 普段のパジャマと違って、なんだか色気が凄かった。
 鼻血を吹かないか心配になる伊織だ。
 ゆっくりと伊織の前までやってきたリルトの右手がそっと頬を撫でた。
 それにぴくりと反応しながらも、バスローブ越しにそっと包帯の巻かれている腕に触れる。

「腕大丈夫?傷開いちゃわないかな」
「傷が開いても本望だ」
「何それ」

 軽口に笑ってしまい、緊張がほぐれた。
 ほっとしてリルトがゆっくりと伊織をベッドに押し倒すのに、体を任せた。
 広いベッドがキシリとかすかに揺れる。
 のしかかってきたリルトの体は、やっぱり大きくて伊織はすっぽりと隠されてしまいそうだった。
 そっと顔を覗き込んできたので、覚悟は出来ているのだとぎゅっと目を閉じる。
 すると吐息で笑う気配がして、キスの雨が降ってきた。
 柔らかく何度も唇が押し当てられる。
 それがふわふわとして、そっと伊織は目を開けた。

「あの……また、その、舐めるの?」

 おそるおそる聞くと、リルトはキョトンとした顔を浮かべたあとに、ひどく蠱惑的に微笑んだ。

「舐めるよ」

 言うなり、バスローブの紐がほどかれる。
 待ってと言う間もなく前が開かれた。
 全裸をベッドの上で晒していると思うと恥ずかしくて仕方がない。
首筋から鎖骨と唇が触れるたびに、熱い手のひらが体を辿るたびにびくびくと腰や背中が跳ねた。
胸元の突起に息がかかった時には大げさに体が震えた。

「ひゃっや、あ」

 乳首を甘噛みされて舌で嬲られれば、甘ったるい声が伊織の喉から漏れた。
そんなところを触られると思っていなかった伊織はすでに半泣きだ。

「そんなとこ、まで、や、なめる、の?」
「舐めるよ。全部、全身、キスして舐めるから、覚悟して」

 予想外の言葉に、伊織は眉を下げてひんひん泣いた。
 上半身だけでなく、背中も足先までキスマークを残しながら唇で辿られて、息も絶え絶えだ。
 しかも体力がもたないだろうからと、唇の愛撫だけで勃ち上がった性器を握られて射精をさせてもらえていない。
 頭は熱で茹っていっぱいいっぱいだった。

「や、いかせて、もう、いかせて」

 泣きじゃくったら。

「そうだね、そろそろいいかな」

 と言ったのでほっとしたのも束の間。
 最初に宣言したとおり、すっかり勃ち上がった性器を唇に迎えられた。

「や、まって、あ、やぁ」

 舐めしゃぶる音が卑猥に部屋に響いても、伊織にそれを気にしている余裕はなかった。
 限界はあっという間に訪れて、びゅくびゅくと腰が震えて白濁をリルトの口に放っていた。
 放心したようにぼんやりと荒い息を繰り返していると、体をころりとうつぶせにされる。
 されるがままになっていると腰を持ち上げられて足を開かされた。
 最奥まで見える体勢にさすがに恥ずかしすぎるけれど、すでに抵抗する体力は伊織にはなかった。

「はずかし、よぉ」
「大丈夫、綺麗だよ」

 何も大丈夫じゃない。
 背中にちゅっちゅっとキスの感触が降ってきてくすぐったい。
 体を震わせていると、その唇がどんどん下がっていき伊織はまさかと身構えた。

「りる、まって、ああっ」

 制止はしたけれど、聞いてはもらえなかった。
 腰を抱え上げられ、後孔へと舌が這わされる。
 ぬるりとした濡れた感触に肌が粟立った。

「ひゃ、や、あっああ」

 泣きぬれた甘ったれた声しか出てこない。
必死でシーツを握りしめるしか伊織には出来なかった。
そのあいだに舐めしゃぶられた後孔に指が差し込まれる。
痛いとか苦しいとかそういったものはなかったけれど、リルトの指が入っていると思うだけで恥ずかしさに伊織はぐすぐすと泣き出した。
指を増やしながらも、そんな伊織にリルトが顔を寄せて耳を舐めてしゃぶる。

「泣かないで伊織」
「はずか、しい、ぁっ、へんに、なっちゃ」
「変になって」

 外耳にかしりと歯を立てられて背筋が震えた。
 優しいのに優しくない。
 手も唇も声も優しいのに、猛攻はゆるめてくれなくて伊織は何度も意地悪と泣いた。
 何本入っていたのかわからない指が抜かれた。
肩越しに振り返るとリルトがバスローブを脱ぎ落した。
 その性器は腹に反り返るくらいついていて、はち切れそうだ。

「伊織、俺を受け入れて」

 そっとこめかみにキスをされて、こくこくと必死に頷く。
 リルトが柔く瞳をしならせてから、性器を二、三度しごくと後孔に熱いものがピタリと当てられた。
ふわりと甘い匂いがして、優しく包まれたことに安堵する。

「ゆっくり入れるから力を抜いて」
「ん」

 右手をシーツの上でさまよわせたら、リルトの右手が重ねられて握られた。
 それにほっとして体の力が抜ける。
 その瞬間、熱い楔が伊織のなかに挿いってきた。

「ん、う」

 ゆっくりと、何度も少しずつ腰を揺らしながらリルトの性器が挿いってくる。
 指なんかとは比べ物にならなくて苦しい。

「は、伊織、伊織」

 名前を呼ばれるたびにキュウキュウとリルトの性器を締め上げて、そのたびに自分にも甘やかな刺激がもたらされた。

「全部、はいったよ」

 ちゅっと項にキスをされる。
 ビリビリとした快感が背筋を走った。

「ああ、ん、そこ、やあ」
「はは、ここは敏感だもんな。やっと噛める」

 満干の想いを込めたような声に、泣きそうになった。
 ずっと待っててくれた伊織のアルファ。
 早く、噛まれたいと思った。

「りる、りる、はやく、かまれたい」
「そういう可愛い事いわないでくれ。必死で理性を繋ぎとめてるんだ」
「や、だって、あ」

ゆるゆるとリルトが動き出すと、意味のある言葉は紡げなくなった。
必死に振り返ると、リルトの眉が寄せられ熱い眼差しが降ってくる。
最初は大型犬なんて思った。
認識が子犬になってからは可愛いとしか思ってなかった。
ギラギラとした眼差し。
今は狼だ。
食べられる。
パチュパチュと水音と互いの呼吸だけが部屋に籠っていく。
限界まで広げられている後孔が、さらにぐぐっと広がる感触がした。

「や、やあっ、なに」
「亀頭球だ、大丈夫、根本が膨らんで抜けなくするだけだ」

 ハッハッと呼吸の合間に説明をされても、伊織の茹った頭にはまともに届かなかった。
 ぐっとリルトの性器が質量を増した瞬間。

「俺のだ」

 熱い飛沫が体内にぶちまけられるのと、項に硬い歯が突き立てられて快感に頭が焼き切れたのは同時だった。

「あ、う」

 ひくひくと過ぎる快感に体が言うことを聞かない。
 最後の一滴まで出し切るように腰が揺らされたあとずるりと性器が抜かれる感触に、腰が跳ねて声が漏れた。
 リルトに体を抱き上げられて、あぐらをかいた膝へと抱えあげられた。
 ようやくそこで自分も射精していたことを、ドロリと汚れた下腹部を見て気づく。
 ゆるゆると閉じていた瞼を上げれば、満ち足りたような顔でリルトが笑っていた。

「伊織、ありがとう。幸せだ」

 ぎゅっと抱きしめてくる肩は少し震えていて、リルトの目元が当たっている首筋がかすかに濡れていく。
 その頭を、伊織は両腕で抱え込んでよしよしと撫で続けた。

「俺を待っててくれて、ありがとうリル」
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