2 / 6
2話 推しです
しおりを挟む
チリンとサンキャッチャーが軽い音を立てながら、入口の引き戸が開けられた。
「こんにちは」
店内に入って来たのは知臣だった。
「いらっしゃいませ知臣さん」
にこりと迎え入れ、グラスに水を注ぐ。
コートを脱いでカウンター席に腰を下ろした知臣の前にグラスとメニューを置いた。
ありがとうと笑う顔は、いつも通りの整った美貌だ。
(すっかり常連になったな)
常連になると宣言されたとおり、彼は初日以降は店休日を除いてほぼ毎日来ている。
最初は夕方に来ていたけれど、あまりの整った容姿に知臣目当ての大学生を中心に店に押しかけ騒がれることが続いた。
それに辟易したらしく、今では朝一番で来店するようになっている。
お客が増えた方が嬉しいかもしれないけれど、煩わしいからと謝られた。
烈の店は静かに過ごす常連さんが中心で、騒がれるのは本意ではないから大丈夫と言ったらほっとした顔をされた。
はっきり煩わしいと言ったから騒がれるのは好きじゃないらしい。
美形故の被害や苦労があるのだろう。
「ほうじ茶ラテと……今日はチョコケーキを」
知臣の注文に烈の眉がピクリと動いた。
むむ、と思わずわずかに眉を寄せてしまう。
言おうかどうしようかと迷う烈に、知臣が不思議そうに見上げてくる。
差し出がましいかなとは思ったけれど、いいやこれは大事なことだと己を奮い立たせてから、烈は腹に力を込めた。
「知臣さん」
神妙な顔で名前を呼ぶと、首を小さく傾げられる。
「知臣さんはほぼ毎日、うちに来てますね」
「そうだね。え……もしかして迷惑だった?」
ハッとなった知臣の顔色が変わるのを見て、誤解をさせたと慌てて烈は首を振った。
「違います!来てくれて嬉しいです」
ハッキリ目を見て言えば、あからさまにほっとされる。
そんなにうちの店を気に入ってくれているんだなとほっこりしながらも、本題はこれからだと気を引き締めた。
「そうじゃなくて、うちに来たら必ずおやつ頼んでますよね」
「? そうだね」
あっさり頷かれる。
これは駄目だ。
わかっていない。
烈は腰に手を当てると、ビシリと言い放った。
「駄目ですよ!」
「え?」
「こんな毎日おやつ食べてたら糖尿病一直線ですよ!」
そうなのだ。
血糖値が心配になるくらい毎回しっかり甘いものを食べていく知臣に、烈は彼の体が大丈夫だろうかと気になって仕方がなかった。
けれど知臣はのんびりと笑った。
「そんな大げさな」
「大げさじゃありません。知臣さん何歳ですか?」
「二十八だね。烈君は?」
「二十三です。そうじゃなくて!代謝はどんどん落ちるんですよ。今はよくても将来が心配になります」
知臣はジムで体を動かすこともしているらしく、長身の体は引き締まっているようだけれど、隠れメタボになっていてもおかしくないと烈は思っている。
なので烈はビシリと非情な宣告を口にした。
「今度からうちに来てもおやつは三日に一度にしましょう」
「ええ!?それは待って!今一番の楽しみなんだよ。それに、この店も烈君も僕の推しだからお金落としたいんだ!」
目を剥いた知臣から何だか不思議な単語が聞こえてきた。
「……推し?」
「推し」
反復すると、こくりと真剣に頷かれる。
「え……何ですそれ」
あまり馴染みのない単語だ。
知臣はよく聞いてくれたというように、得意気な顔をした。
「最近よく聞くよね。好きで応援したい対象のことだよ。そしてこの店と烈君は僕の推し。推しには貢ぎたいよね。あと普通におやつ美味しいから食べたい」
つらつらと流暢にされた説明に、烈は驚いた。
そういえば聞いたことがある。
自分の一押しのアイドルや俳優なんかにそんな単語を使うのだと。
「な、なに言ってるんですか!」
まさかそんな扱いを受けているとは予想だにせず、どう反応していいかわからない。
動揺から頬に朱が走った。
「そんな、推しとか」
「真っ赤だ、可愛い」
わたわたとどう反応すればいいのか無意味に手を動かしてしまうと、頬の赤さを知臣に指摘されてますます顔が熱くなった。
何も言えず、目線が下がってしまう。
「だからね、僕の甘味欲と貢ぎ欲をまとめて消化できる機会を奪わないで?」
甘やかに告げられて、いやいやしかしと目線を上げたらじっと青い瞳に見つめられてしまった。
(うっ!顔がいい!)
店の外から見かけた若い女性客が、そわそわしながら入ってくるぐらいの攻撃力だ。
しかしこのまま承諾してしまえば知臣は近い未来糖尿病予備軍になる可能性がある。
ハッと我に返ってぶんぶんと首を振った。
「流されるところだった!駄目ですよ、貢がなくていいんです。充分です。甘味欲も我慢してください」
「流されなかったか」
むうと知臣の唇が尖らせられる。
とても不服そうだ。
「とにかく!売上よりも知臣さんの健康です。今度からおやつは三日に一度!今日はおやつ無しです」
ビシリと言い切ってやった。
ただのカフェの店主が差し出がましいと言われるかもしれないけれど、とそっと知臣をうかがって烈は息を飲んだ。
何故かふんわりと、このうえなく嬉しそうに知臣が微笑んだのだ。
どこにも不満や憤りは見られない。
あれと思ったら、知臣が手をゆるく組んでその上に顎を乗せた。
機嫌が良さそうににこにことしている。
「売上より俺の健康なんだ?」
「え、まあ……常連さんには長く元気に通ってほしいですし」
「ふうん……わかった。今日はおやつは我慢する。ついでにおやつも三日に一度しか頼まない」
これならいいだろうと上目に見てくる知臣にほっと息をついて烈は頷いた。
本来ならただのカフェの店員が言うようなことではないし、知臣も受け入れる必要なんてない。
それでも笑って受け入れてくれた知臣に烈は心がふんわりと温かくなった。
「口出すべきじゃないとは思いますけど、体壊すのは見たくないんです」
すみませんと寂し気に眉尻を下げて謝った。
それを知臣がじっと見つめて、少しの沈黙が店内に落ちる。
「……何かあった?」
「あ、いや、気にしないでください」
慌てて烈がへらりとごまかすように笑って見せる。
それを見つめる知臣が烈君と真剣な顔で名前を呼んだ。
さっきまでの、のんびりとした顔ではないことに烈は少し驚いてしまう。
「僕は君が推しだって言ったね、大切ってことだ。無理に僕に話す必要はないけど、もしも何かあればいつでも頼ってくれると嬉しい」
思いがけない言葉を貰ってしまい、烈はぽかんとしたあと知臣の言葉がじわじわと脳に浸透してからキョロキョロと視線をさまよわせた。
そうして俯いてしまう。
その目尻はほんのりと赤くなってしまっていた。
「ありがとうございます。俺友人とかと疎遠だから、そう言ってもらえるの凄く嬉しいです」
「君は僕に元気でいてほしいって言うけど、僕も烈君には元気に健やかでいてほしいよ」
知臣の柔らかい声音と言葉に、烈は自分の顔がくしゃりと歪むのを自覚した。
お客さんの前なのにと、必死で表情を取り繕おうとするけれど上手くいかなくて、唇が震える。
「そんなこと言ってくれたの……婆ちゃんくらいです」
「お婆さん?」
「一年前に亡くなって……ずっと二人きりで生きてたんですよ。大往生だったけど、やっぱりあちこちガタがきて最期はしんどそうだったから」
「そうか……」
変な空気になってしまった。
「変な話してすみません」
雰囲気を変えるようにパッと口角を上げて、烈はことさら明るい声音を出した。
お茶を楽しみに来ている人を、自分の身の上話で微妙な気持ちにさせている場合ではない。
そんな烈に知臣は組んだ手から顎を上げると、ゆるりと目元を緩めた。
その目はどこか昔を懐かしむように眼差しが優しい。
「いや、俺も可愛がってくれた祖父を三年前に亡くしたから、わかるよ」
「お爺さんですか?」
烈が尋ねると、知臣は自分の青い瞳をちょいと指差した。
「僕の目青いでしょ。祖父譲りなんだ」
「ハーフかと思ってました」
「いや、クォーターだよ……可愛がってくれた人を亡くすのは、寂しいししんどいよね」
「……はい」
こくりと頷いたら、知臣にちょいちょいと手招きされた。
何だろうと不思議に思いながらカウンター側から知臣の方へ身を乗り出すと、知臣が手を伸ばしてポンポンと烈の癖毛の頭を撫でられた。
手が大きくて包むような感触は優しい。
「お婆さんの代わりにはならないけど、元気に通って烈君の傍にいるよ」
ゆったりと喋る知臣の声は陽だまりみたいに温かかった。
一瞬泣きそうになったのをぐっと奥歯を噛みしめてこらえてる。
「……そうしてくれると嬉しいです」
「うん」
頭を撫でる手に何だか恥ずかしくなり、パッと体を引くと烈は空気を変えるように「ほうじ茶ラテ作りますね!」と鍋を出したり忙しなく動き出した。
両親はいなくて、祖母と二人でずっといた。
友人も、祖母を一人にしたくなくて、カフェを後回しにしたくもなくて疎遠になってしまった。
チラリと知臣を盗み見る。
いつも通り柔和な表情で興味深げに烈の手際を眺めていた。
不思議な人だ。
馴れ馴れしいと思ってしまってもおかしくないのに、柔らかい優しい空気にほっとしてそんな気持ちにならない。
頭を撫でられたのは、亡くなる前日に烈を心配した祖母にされて以来だ。
というか、祖母以外から撫でられたことはない。
先ほどの温かい感触を思い出して、耳が熱くなった気がした。
何とかほうじ茶ラテを作るまで顔を上げずにいようと思い、そのあいだにほてりが治まりますようにと願った。
「こんにちは」
店内に入って来たのは知臣だった。
「いらっしゃいませ知臣さん」
にこりと迎え入れ、グラスに水を注ぐ。
コートを脱いでカウンター席に腰を下ろした知臣の前にグラスとメニューを置いた。
ありがとうと笑う顔は、いつも通りの整った美貌だ。
(すっかり常連になったな)
常連になると宣言されたとおり、彼は初日以降は店休日を除いてほぼ毎日来ている。
最初は夕方に来ていたけれど、あまりの整った容姿に知臣目当ての大学生を中心に店に押しかけ騒がれることが続いた。
それに辟易したらしく、今では朝一番で来店するようになっている。
お客が増えた方が嬉しいかもしれないけれど、煩わしいからと謝られた。
烈の店は静かに過ごす常連さんが中心で、騒がれるのは本意ではないから大丈夫と言ったらほっとした顔をされた。
はっきり煩わしいと言ったから騒がれるのは好きじゃないらしい。
美形故の被害や苦労があるのだろう。
「ほうじ茶ラテと……今日はチョコケーキを」
知臣の注文に烈の眉がピクリと動いた。
むむ、と思わずわずかに眉を寄せてしまう。
言おうかどうしようかと迷う烈に、知臣が不思議そうに見上げてくる。
差し出がましいかなとは思ったけれど、いいやこれは大事なことだと己を奮い立たせてから、烈は腹に力を込めた。
「知臣さん」
神妙な顔で名前を呼ぶと、首を小さく傾げられる。
「知臣さんはほぼ毎日、うちに来てますね」
「そうだね。え……もしかして迷惑だった?」
ハッとなった知臣の顔色が変わるのを見て、誤解をさせたと慌てて烈は首を振った。
「違います!来てくれて嬉しいです」
ハッキリ目を見て言えば、あからさまにほっとされる。
そんなにうちの店を気に入ってくれているんだなとほっこりしながらも、本題はこれからだと気を引き締めた。
「そうじゃなくて、うちに来たら必ずおやつ頼んでますよね」
「? そうだね」
あっさり頷かれる。
これは駄目だ。
わかっていない。
烈は腰に手を当てると、ビシリと言い放った。
「駄目ですよ!」
「え?」
「こんな毎日おやつ食べてたら糖尿病一直線ですよ!」
そうなのだ。
血糖値が心配になるくらい毎回しっかり甘いものを食べていく知臣に、烈は彼の体が大丈夫だろうかと気になって仕方がなかった。
けれど知臣はのんびりと笑った。
「そんな大げさな」
「大げさじゃありません。知臣さん何歳ですか?」
「二十八だね。烈君は?」
「二十三です。そうじゃなくて!代謝はどんどん落ちるんですよ。今はよくても将来が心配になります」
知臣はジムで体を動かすこともしているらしく、長身の体は引き締まっているようだけれど、隠れメタボになっていてもおかしくないと烈は思っている。
なので烈はビシリと非情な宣告を口にした。
「今度からうちに来てもおやつは三日に一度にしましょう」
「ええ!?それは待って!今一番の楽しみなんだよ。それに、この店も烈君も僕の推しだからお金落としたいんだ!」
目を剥いた知臣から何だか不思議な単語が聞こえてきた。
「……推し?」
「推し」
反復すると、こくりと真剣に頷かれる。
「え……何ですそれ」
あまり馴染みのない単語だ。
知臣はよく聞いてくれたというように、得意気な顔をした。
「最近よく聞くよね。好きで応援したい対象のことだよ。そしてこの店と烈君は僕の推し。推しには貢ぎたいよね。あと普通におやつ美味しいから食べたい」
つらつらと流暢にされた説明に、烈は驚いた。
そういえば聞いたことがある。
自分の一押しのアイドルや俳優なんかにそんな単語を使うのだと。
「な、なに言ってるんですか!」
まさかそんな扱いを受けているとは予想だにせず、どう反応していいかわからない。
動揺から頬に朱が走った。
「そんな、推しとか」
「真っ赤だ、可愛い」
わたわたとどう反応すればいいのか無意味に手を動かしてしまうと、頬の赤さを知臣に指摘されてますます顔が熱くなった。
何も言えず、目線が下がってしまう。
「だからね、僕の甘味欲と貢ぎ欲をまとめて消化できる機会を奪わないで?」
甘やかに告げられて、いやいやしかしと目線を上げたらじっと青い瞳に見つめられてしまった。
(うっ!顔がいい!)
店の外から見かけた若い女性客が、そわそわしながら入ってくるぐらいの攻撃力だ。
しかしこのまま承諾してしまえば知臣は近い未来糖尿病予備軍になる可能性がある。
ハッと我に返ってぶんぶんと首を振った。
「流されるところだった!駄目ですよ、貢がなくていいんです。充分です。甘味欲も我慢してください」
「流されなかったか」
むうと知臣の唇が尖らせられる。
とても不服そうだ。
「とにかく!売上よりも知臣さんの健康です。今度からおやつは三日に一度!今日はおやつ無しです」
ビシリと言い切ってやった。
ただのカフェの店主が差し出がましいと言われるかもしれないけれど、とそっと知臣をうかがって烈は息を飲んだ。
何故かふんわりと、このうえなく嬉しそうに知臣が微笑んだのだ。
どこにも不満や憤りは見られない。
あれと思ったら、知臣が手をゆるく組んでその上に顎を乗せた。
機嫌が良さそうににこにことしている。
「売上より俺の健康なんだ?」
「え、まあ……常連さんには長く元気に通ってほしいですし」
「ふうん……わかった。今日はおやつは我慢する。ついでにおやつも三日に一度しか頼まない」
これならいいだろうと上目に見てくる知臣にほっと息をついて烈は頷いた。
本来ならただのカフェの店員が言うようなことではないし、知臣も受け入れる必要なんてない。
それでも笑って受け入れてくれた知臣に烈は心がふんわりと温かくなった。
「口出すべきじゃないとは思いますけど、体壊すのは見たくないんです」
すみませんと寂し気に眉尻を下げて謝った。
それを知臣がじっと見つめて、少しの沈黙が店内に落ちる。
「……何かあった?」
「あ、いや、気にしないでください」
慌てて烈がへらりとごまかすように笑って見せる。
それを見つめる知臣が烈君と真剣な顔で名前を呼んだ。
さっきまでの、のんびりとした顔ではないことに烈は少し驚いてしまう。
「僕は君が推しだって言ったね、大切ってことだ。無理に僕に話す必要はないけど、もしも何かあればいつでも頼ってくれると嬉しい」
思いがけない言葉を貰ってしまい、烈はぽかんとしたあと知臣の言葉がじわじわと脳に浸透してからキョロキョロと視線をさまよわせた。
そうして俯いてしまう。
その目尻はほんのりと赤くなってしまっていた。
「ありがとうございます。俺友人とかと疎遠だから、そう言ってもらえるの凄く嬉しいです」
「君は僕に元気でいてほしいって言うけど、僕も烈君には元気に健やかでいてほしいよ」
知臣の柔らかい声音と言葉に、烈は自分の顔がくしゃりと歪むのを自覚した。
お客さんの前なのにと、必死で表情を取り繕おうとするけれど上手くいかなくて、唇が震える。
「そんなこと言ってくれたの……婆ちゃんくらいです」
「お婆さん?」
「一年前に亡くなって……ずっと二人きりで生きてたんですよ。大往生だったけど、やっぱりあちこちガタがきて最期はしんどそうだったから」
「そうか……」
変な空気になってしまった。
「変な話してすみません」
雰囲気を変えるようにパッと口角を上げて、烈はことさら明るい声音を出した。
お茶を楽しみに来ている人を、自分の身の上話で微妙な気持ちにさせている場合ではない。
そんな烈に知臣は組んだ手から顎を上げると、ゆるりと目元を緩めた。
その目はどこか昔を懐かしむように眼差しが優しい。
「いや、俺も可愛がってくれた祖父を三年前に亡くしたから、わかるよ」
「お爺さんですか?」
烈が尋ねると、知臣は自分の青い瞳をちょいと指差した。
「僕の目青いでしょ。祖父譲りなんだ」
「ハーフかと思ってました」
「いや、クォーターだよ……可愛がってくれた人を亡くすのは、寂しいししんどいよね」
「……はい」
こくりと頷いたら、知臣にちょいちょいと手招きされた。
何だろうと不思議に思いながらカウンター側から知臣の方へ身を乗り出すと、知臣が手を伸ばしてポンポンと烈の癖毛の頭を撫でられた。
手が大きくて包むような感触は優しい。
「お婆さんの代わりにはならないけど、元気に通って烈君の傍にいるよ」
ゆったりと喋る知臣の声は陽だまりみたいに温かかった。
一瞬泣きそうになったのをぐっと奥歯を噛みしめてこらえてる。
「……そうしてくれると嬉しいです」
「うん」
頭を撫でる手に何だか恥ずかしくなり、パッと体を引くと烈は空気を変えるように「ほうじ茶ラテ作りますね!」と鍋を出したり忙しなく動き出した。
両親はいなくて、祖母と二人でずっといた。
友人も、祖母を一人にしたくなくて、カフェを後回しにしたくもなくて疎遠になってしまった。
チラリと知臣を盗み見る。
いつも通り柔和な表情で興味深げに烈の手際を眺めていた。
不思議な人だ。
馴れ馴れしいと思ってしまってもおかしくないのに、柔らかい優しい空気にほっとしてそんな気持ちにならない。
頭を撫でられたのは、亡くなる前日に烈を心配した祖母にされて以来だ。
というか、祖母以外から撫でられたことはない。
先ほどの温かい感触を思い出して、耳が熱くなった気がした。
何とかほうじ茶ラテを作るまで顔を上げずにいようと思い、そのあいだにほてりが治まりますようにと願った。
67
お気に入りに追加
67
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
天然くんはエリート彼氏にメロメロに溺愛されています
氷魚(ひお)
BL
<現代BL小説/全年齢BL>
恋愛・結婚に性別は関係ない世界で
エリート彼氏×天然くんが紡いでいく
💖ピュアラブ💖ハッピーストーリー!
Kindle配信中の『エリート彼氏と天然くん』の大学生時のエピソードになります!
こちらの作品のみでもお楽しみ頂けます(^^)
♡・・*・・♡・・*・・♡・・*・・♡・・*・・♡・・*・・♡
進学で田舎から上京してきた五十鈴は、羊のキャラクター「プティクロシェット」が大のお気に入り。
バイト先で知り合った将が、同じキャンパスの先輩で、プティクロシェットが好きと分かり、すぐ仲良くなる。
夏前に将に告白され、付き合うことになった。
今日は将と、初めてアイスを食べに行くことになり…!?
♡・・*・・♡・・*・・♡・・*・・♡・・*・・♡・・*・・♡
ラブラブで甘々な二人のお話です💕
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜
・話の流れが遅い
・作者が話の進行悩み過ぎてる
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談? 本気? 二人の結末は?
美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる