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第二部 エリミア編

41 記憶喪失

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「リッゾルの空白の記憶は、どうにかならないのですか?」

「うーん。脳は繊細で難しいのですよ。記憶を消すのは簡単でも、本人すら何があったか分からないのに、どうにかなるのでしょうか?フェルムスやリンドルズ学校、唯一王や元老院。全ての、組織や団体の力を使っても、おそらく不可能でしょう」

「けど、可能性はゼロではないのですよね?」

「もちろんゼロではないですよ。ですが、失敗すれば全ての記憶が消えると思いなさい。自分が何者かも分からない、脱け殻。記憶を全て失うくらいなら、死んだ方がマシだと言う人がいますが、全ての記憶を失ったら、死を望むことすら、覚えてません。残酷だと思いませんか?」

「残酷ですか・・・」

「話は以上です。二人を呼びなさい」

 ガルクは部屋を出ようとすると、校長が

「ガルク。伝え忘れましたが、ネオルノ先生とアイリン・クルトナが話があるそうです」

「え?分かりました」

 ガルクは部屋を出ていった。少しして、フェーナとフィオルが入ってきた

「フェーナとあなたは?」

「フィオルです」

「あー!そうでした。フェーナの事故以来、顔は知っていたのですが、名前が思い出せなくて・・・」

「校長。フィオルのことより、リッゾルは?」

「うーん。これが難しくてですね。何も覚えていないようです」

 シュリオンやガルクと違い。二人には記憶を見せなかった

「記憶を見たんじゃないの?」

「見ましたよ。ですが、たいした情報は何も」

 この時、必死にフェーナは読心術を使っていたが、何も読めていなかった

「ところで、フィオル。フェルムスの人達が、テロリスト逮捕に貢献してくれて感謝してましたよ」

「え?あ、ありがとうございます!え?テロリストの記憶を見れば・・・」

「フィオル。生徒が気づく前に、大人達はとっくにやってますよ」

 校長が笑った

「いつも、自爆されてましたが。今回は何人か捕まえましたから」

「結果はどうでした?」

「今、フェルムス本部で取り調べの最中ですよ」

「犯人達の記憶を見れば、事件の真相が見えてくるのでしょうか?リッゾルのこととか」

「それは」

「無理でしょう」

 答えたのはフェーナだった

「どうして?」

「捕まることも想定済みでしょ?それれに、自爆していく特攻隊みたいなものなのだから、重要な情報なんて持ってるのかしら」

「フェーナ。流石ですね」

「そうか。生徒でそこまで考えられることなんて、フェーナにしかできないよ」

「もう、行きなさい」

「え?これだけ?!」

「不満でも?」

「もっと、事件につい分かったのかと・・・」

「事件について、調べたかったのに、どっかの三人が喧嘩しだすものですから」

 校長の言葉を聞いて、フェーナとフィオルは思った。止めに来いよ!と。特に、フィオルは
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