トリプルクラッシュ ~3つの星の時空を越えた運命~

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第一部 地球編

50 トリックスター (トリックスター目線)

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 南極戦争が終わり、一週間が経っていた。僕は、A.C.T アクトの本部に帰ったのは、一回きりで、世界を回ってた。その日は、日本にある、電車の事故後の偽の遺骨が納められているビーストソウルの墓に来ていた。しかし、墓にはもう花束と飲食物が置いてあった

「レッドマジシャン。来たのか?」

 墓参りを終え、墓地から出ようとしたら、とある親子が話しかけてきた

「私の息子と知り合いだったのですか?」

 僕が振り返ると、ビーストソウルの父親と弟がいた。二人とも、ビーストソウルと顔がそっくりだ

「えぇ。小学生の頃」

 父親が、レッドマジシャンが置いたであろう花束と飲食物を見た

「もう一人、来てたのか?」

「はい。僕が来る前から置いてありましたよ」

「今まで、墓参りに来てくれた友達なんていなかったのに。ありがとう来てくれて」

 父親は昔と違って、ビーストソウルを大事にしてるんだと気付いた。失って初めて大切さが分かったんだろうと

「では、これで」



 その後、渋谷を歩いていると、街の大型テレビに映し出されたのは、A.C.T アクトのエンブレムだった

A.C.T アクト?どうして?」

 テレビから聴こえたのは、レッドマジシャンの声だった

「全世界のみなさん、初めまして。私は、地球を征服した者です」

 街中を歩く人が足を止めて、テレビモニターを見た

「私は、世界中のテレビやラジオ等を電波ジャックして、話しています。私は、みなさんも知っているA.C.T アクトの戦士の一人です。これからは、A.C.T アクトが国連や各国政府に代わって、地球を治めていきます」

 エンブレムから切り替わった映像は、悲惨なライブ映像だった。国連本部はガントンが破壊したので、新しく造り直してあったが、また破壊されている映像。どこかの軍の基地が燃えている映像。世界各地の政府施設が崩壊している映像だった。周りにいる人達は、騒ぎだした

「国会議事堂が瓦礫となってる!」

 騒々しい人達を無視して、レッドマジシャンは話を進めていってる

「これからは、私が地球の唯一王になり、地球を救う!」

 それで、映像は切れた



 僕は急いで、本部に空間移動した。自分の部屋に着くと、部屋の中に置いてあった黒色の日本刀を手に取った。コスチュームも目に入ったが、装備してる暇がないので、発射装置だけ腕に着けた。廊下から、足音が聞こえてきた。足音から、誰が来たのかすぐに分かり、そいつに置き手紙を残して、本部内の違う場所に移動した



 タンクの部屋は僕の部屋とは離れている。随分前に、ごちゃごちゃしてる部屋にボールを落としておいたので、移動できた。部屋の外に出て、何となく廊下を歩いていると、廊下の奥に見覚えのある人がいた

「やぁ。メロディー」

「トリックスター。勝手に入ってきたのね。侵入者は排除する!」

「一戦やるか。と言いたいところだが、レッドマジシャンはどこだ?」

「あの放送聞いたのね」

「なんだあれは?世界の征服者になったつもりか」

「なったつもりか。じゃなくて、なったのよ!」

「許されないぞ!」

 トリックスターは日本刀を鞘から抜いた。スノーメロディーは冷気で廊下を凍らせ始めてる

「レッドマジシャンに直接話がある!そこをどけ!」

「誰も通すなと言われてる。ガンドルドを部屋に行かせたけど。どうしたの?」

「部屋で置き手紙読んで、屈辱を受けてるんじゃないか?」

「あの、役立たず!なんて残してきたの?」

「俺は劣等生だが、お前よりは優秀だ!と」

「私は、あなたが嫌い」

「奇遇だな。俺もだ」 

「けど、殺したくはない!死んでほしくない!これ以上仲間を失いたくない!」

「これも奇遇だな。僕もだ!頼む」

 スノーメロディーはゆっくり道を開けた

「ねぇ!あなたの名前のトリックスター。レッドマジシャンとビーストソウルがつけたんでしょ?」

「何で知ってる?僕の小学生の時のあだ名だ」

「ビーストソウルが教えてくれた。その由来を知ってる?」

「いや」

「あなたの良い行動も悪い行動も、結果的に奇跡を起こすから。二人は自分達の脅威になると予感して、名付けたって」

「そうだったんだ」

「彼女は訓練場Ⅳにいるわ」

「ありがとう」



 訓練場Ⅳに僕が入ると、レッドマジシャンが立っていた

「久しぶり。トリックスター」

「レッドマジシャン」

「メロディーとガンドルドはどうしたの?殺した?」

「いや」

「やはり、あなたの方が優秀ね」

「レッドマジシャン。どうしてあんなことした?」

「あなたも見たでしょ。地球の未来を。私は、地球の未来を守りたい」

「自分が王になるのか?」

「えぇ。そして、人類を半分に減らす」

「は?何を言ってるんだ?」
 
「地球の未来を考えて、人類を減らすのよ。地球を破滅させてるのは人間よ」

「君もその中の一人だな」

「周りを見れば分かるでしょ。人口増加。砂漠化。食糧危機。地球温暖化。全部、人間のエゴが招いたことでしょ?だから、人類を半分減らして、地球の破滅を食い止めるのよ」

「何でいろんな所を壊した?」

「南極にミサイルが飛んできたのは、エイリアンではなく、私達を殺すためよ!そのせいで、マスターウェザーは死んだ!そんな組織達は、壊して当然よ!」

「どこも救ってきたものも多い組織だった!」

「私は救われてない!ねぇ。一緒に世界の支配者になろう」

 レッドマジシャンが手を差し出した。僕は思ってしまった。彼女は、間違えたりしないんじゃないかと。しかし、マスターウェザーの言葉を思い出した

「自分の意思と違ってたら、間違ってると言って欲しい」

 だから、手を払った

「間違えてる!人類虐殺なんて」

「私は、地球の未来を託された!どんな方法を使おうと、守らないといけない!」

「犠牲が大きすぎる」

「どんなものにも、犠牲はある!犠牲無しには何も守れない!」

「レッドマジシャン。君は誰より、命を大事にしてたじゃないか?初めて、人を殺めたときも、ずっと懺悔してたろ?」

「私は弱かったの。逆に聞くけど、ずっと私達の後ろにくっついて歩いてたのは誰?自分の意思なんかなかったのは誰?」

「僕は、君を止めるぞ!例え、殺しても。地球の王になって、人類を半分殺すなんて、レッドマジシャンじゃない!」

「まだ、分からないの?それしか、地球の未来はないの!今、手を打たないと手遅れになる。地球の生命全てが全滅する!そんなことはさせない!止めるのなら容赦はしない。『トリックスターの能力』」

 レッドマジシャンが赤い日本刀を取り出した。それを見て、僕も黒い日本刀を構えた

「なぁ。僕らは」

 僕が最後まで言い終わる前に、レッドマジシャンが口を入れた

「友達だろ?家族だろ?」

 僕は驚いてる。自分の言うことを、当てられたから

「そうだ。だから」

「殺し合うのは間違ってる。あなたが言うことは、全て分かる」

「始まったら、退けないぞ。最後には、どちらかが死ぬことに」

「えぇ」

「僕はここでの日常が好きだった。三人でバカやって、高めあって、先輩達を困らせ叱られる。メロディーと喧嘩してるなら、みんなが仲裁する。そんな、愛し愛されの日常が好きだった。だから、今を守りたい」

「その、日常はもう消えた!」

「誰かが生きてる限り終わらない!」

「あなたを殺しても地球を救う!」

「他に方法は無いのか?」

「ない!」

「未来を救うために、今を捨てるのか?」

「今のために、未来を殺すの?」

 ずっと昔から三人一緒だったが、見てたものは全く違った。ビーストソウルは過去を。僕は今を。レッドマジシャンは未来を見つめてたんだ

「人類半分減らすのは、信念か?」

「そう」

「僕にも信念がある。虐殺はさせない!」

「信念と信念がぶつかってしまったのね」

「勝敗を決めるのは、信念だ!自分の信念が、相手の信念より強ければ、負けたりしない!」 

「この勝負。勝った方が正しい」

 僕は、一度もレッドマジシャンに勝ったことがない。ビーストソウルにもなかった。レッドマジシャンとの戦績は、99戦99敗だ

「トリックスター。勝てると思ってるの?」

「あぁ。絶対に僕が正しい!」

「分からず屋。一緒に来てよ!」

「断る!」

 僕は思い出した、ビーストソウルが最後に言ってたことを

「僕らは三人で一つだ」

 そうだよ、ビーストソウル。三人で一つだった。一人でも欠けると、バランスを失う。三人いるから、良かったんだ。僕は、黒い日本刀で斬りかかった。レッドマジシャン、ビーストソウル、ごめん!レッドマジシャン。本当は君の言ってることが、理解はできる。だが、君にはそんな行為をやってほしくない。もう少し、人類を信じて欲しい!人間は手遅れになる前に、自分達で気づけることを
 
「レッドマジシャン!」

 

 僕は、二人を人類の中で最も神に近い存在だと勝手に思ってる。僕はトリックスター。神の考えに反し、抗う者!
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