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第一部 地球編

41 アサルト

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 第一から第七まで軍団は創られた。南極の中心にいる敵を、囲うように配置してある陣形。これは、陣形としては良くはないかもしれないが、絶対に南極から外には出さない為であった。敵は全員が能力者で、技術も進んでいる。敵が船から、出てきた瞬間に兵士の何人かは震えていた。そして、第三と第四軍団に突撃命令が出た。軍団によってそれぞれ役割は決まっている。第一軍団はエドガーやセンス、ケイナン、勇戦班以外の班長といった戦いの司令塔や安全でいないといけない人達のチーム。第二は空中戦に長けたチームで、マスターウェザーやハンドジェット、そして、戦闘機やドローン操縦のパイロットで編成されていた。第三は大西洋側にいる歩兵チームで、テュールやプチューン、バルドル、アフィネ等のCAチーム。第四はインド洋側にいるチームでクイック、タンク、コールドアイ、カーナ、ガンドルド率いるエリート部隊といったバランスが取れたチームだった。第五は太平洋側に位置したチームで、レッドマジシャン、スノーメロディー、ジャンヌ、エスプーマ、ヒランで戦士隊は女性しかいなかった。第六は狙撃専門のチームで、ガントン、ブルズアイ、ワイルドエコーは遠距離攻撃ができるので、山の上から敵を撃っていた。第七は物資の調達や、基地の防衛をするチームで、サンストーンとトリックスター、ビーストソウルがいた。軍団に入ってない戦士もいた。ソーン、ゴース、ディスガイズ、フィート、ヘドロだ。彼らは、どっかの軍団が緊急時の時の援軍と、それぞれ特別に任務があった。それぞれの軍団の中で、さらに部隊が別れていて、戦士一人に、一万を越える兵士がついていた



 第三軍団に突撃命令が出た。もうエイリアンは出てきている。テュール、プチューン、バルドル、アフィネの四人は、テュールの部隊を先陣に置き、突撃することにした。テュールにエドガーから通信が入り、思う存分暴れていいと言われて、テュールは笑ってた。戦士隊ですら、恐怖心を感じているのに、兵士達はさらに怖いだろ。それを感じたバルドルは自分に付く兵士達に演説を始めた

「まずは、ありがとう。俺に付いてくれて。この中には、様々な経歴の奴らがいるな。軍人、警官、殺し屋、テロリスト、医者、エンジニア。みんな、大事な人や大切な場所もそれぞれにあるだろう。俺は、この星が好きだ。この星全てが、我が家で大切な物だ。そんな、我が家に土足で踏み込んできた奴らに教えてやりたい。地球人ってのは、宇宙で一番、勇敢な生物だと!手足を失おうが走れ!死にたくなければ相手を殺せ!安心しろ。世界征服企んだ愚物が一緒だ。全滅したら一緒に死んでやるよ!では突撃しろ!」

 第三軍団が南極でブラスターを手に突撃して行く。スノーモービルに乗り込んで突撃する者、走って突撃する者、雪上車に砲台がついた乗り物で移動する者。様々だ。数十キロ移動したら、初めてエイリアンの一体目と出会った。空を滑空するハンドジェットのような能力者で、第六軍団の射撃を避けながら空を飛んでいる

「『メガスキル』」

 テュールは体を大きくし、エイリアンまで飛び、足を掴んで地面に投げつけた

「どうした!兵士!遅れをとるな!」

 テュールのスピードについてこれる兵士はいなかった。ただでさえ、テュールは移動が速いのに、兵士達は標高2000メートル近くある所と氷の上を何十キロも離れてる敵のところまで移動してるからだ。第三軍団で一人だけ先頭にいるテュールは、投げつけたエイリアンにとどめを刺しにいこうとせずに、敵陣に一人突っ込んでいった

「エドガー。暴れていいんだろ?楽しめそうだ」

 テュールは、今まで自分が楽しめた戦いは少なかった。自分が勝つと分かってしまってるからだ。それが、一対一ならなおさらだ。だから、敵に周りを包囲された状態で戦いたいと思っていた。やがて、テュールの前に地面から少し浮いたスクーターに乗ったエイリアンが大勢現れた。エイリアンの何人かはスクーターから降り、スクーターに乗っている者は、スクーターに付いてる銃器で撃ってきた。スクーターから降りたエイリアンはスライムのように固体と液体の中間にあたるようなものを握った。するとそれが、剣や斧、槍に弓、盾。さらに、魔術師が使うような杖のような形になった

「面白い技術だな!」

 テュールは、エイリアンの一人に向かって飛び蹴りした。だが、エイリアンも能力者だ。地面からトゲのようなものを突き上げた。テュールは持ち前の反射速度で避けた。回避をした隙を狙って、エイリアン達は襲いかかった

「『ギガスキル』」

 テュールの体はさらに大きくなり、全員の攻撃をかわした。すると、エイリアンの一人が、自分の体から砂を飛ばした

「『王者の吐息』」

 飛んでくる砂を吹き飛ばした。すると、今度はエイリアン一人の舌が伸びて、テュールの体に巻き付き、違うエイリアンの爪が伸びてテュールの顔を引っ掻いた。だが、攻撃を受けたテュールは涙を流した

「泣けるな。まるで、お前らの一人が、俺の感受性を上げたようだ。さっきから感情の起伏が激しい。あぁ楽しくて涙が出てくる」

「こいつイカれてる」

「感受性を上げて、恐怖心を増やそうと思ったのが失敗だった」

 テュールを囲むエイリアン達の何人かはざわつき出した。舌で拘束されている地球人が泣くほど喜んでいるのが、不気味なのだ

「知らないのか?地球人ってのはイカれてる。その中でも俺様は飛び抜けて頭がおかしい。お前ら、死んでも覚えとけ!このテュール様を!死ぬ時まで、俺様への恐怖を感じてろ!『テラスキル』」

 体を拘束してた舌が、ただでさえテュールの熱で赤かったのに、焼ききれた

「殺せ!」

 テュールを狙った攻撃が始まった。すると、テュールの部隊がやっと追いついた



 第四軍団はクイック、コールドアイ、カーナ、ガンドルドと今は休息中のタンクの軍団だ。タンクは不在なので、主要メンバーで作戦を立てていた

「それぞれの部隊を一つに小さく固まりながら移動していこう」

「それだと、回避不可能な広範囲の攻撃が来たときに壊滅よ」

「その時は、コールドアイが止めて、退避する。敵軍の数が少なかったら、ガンドルド率いるエリート部隊のマーク達が先頭に出て戦う。そのすぐ後ろにカーナの部隊が援護する。僕とコールドアイは大軍に出会うまで、能力は極力使わない」

「私は攻撃と手当てどっち優先?」

「手当て優先で。敵軍に思わせるんだ、敵の数が減らないって」

「了解」

 第四軍団は第三軍団とは逆で、一人を突っ込ませたりしなかった。やがて、空をバイクのようなもので走ってるエイリアン達を見つけた。エイリアンは第四軍団を見つけると、雷を手から落としたり、炎を飛ばしてきた。雷には苦戦を強いられたが、炎の敵にカーナが怒鳴り、味方の士気を上げた

「炎。地球にはあんたのように、空を飛びながら、炎を放つ卑怯な、炎の能力者はいない!こっちの炎使いは正々堂々と地に足をつけて戦う男!必ず撃ち落とせー!」

 カーナの怒りにビビった兵士達が、炎の能力者を頑張ってスクーターから撃ち落とした。雷の方は、後方にいたコールドアイが能力を使うまで大変だった。コールドアイが動きを止めてくれた為、数十発の弾がそいつに当たり死んでいった。その他の、空を飛んでる奴らも、コールドアイのおかげで全滅させた。そして、エイリアン達の大軍と出会った

「コールドアイとカーナは死んでも守れ!」

 クイックは自分の部隊にそう言い

「突撃ー!」

 と叫びながら、一瞬で敵軍の中まで移動した。エイリアン達は気付いたら、自分達のど真ん中にいるクイックに驚いてる

「やっぱり、少し体が冷えてるな」

 クイックに一人が斬りかかったが、武器を振り下ろした頃には、クイックはそいつの後ろにいた

「遅いよ。だから、死ぬんだ」 

 エイリアンの首もとを引っ掻いた。エイリアンは血が吹き出したが、再生した。第四軍団の兵士達は走って突撃したが、エイリアン達は口々に

「バンッ!」

 と言うと、体が向いてる所の数メートル先で、爆発した。それを見てたカーナが

「あれは能力じゃなく技術ね。コールドアイあれどうにか出来る?」

 カーナが通信機でコールドアイに呼び掛けた

「それじゃあ、敵が声を発した瞬間、動きを止めるので、クイックさんが調べてください」

「了解」

 クイックは、腕の形が変形して鋭利な刃物のようになっている敵の首をへし折りながら、返事をした

「バンッ!」

 エイリアン達がそう言った瞬間に、コールドアイが目を見開いた。すると、コールドアイの所にクイックが走ってきた

「恐らくだが、あいつらが着ている鎧の胸元から、声と共に小さい弾が出てるんじゃないか?俺のスピードでも魔法にしか見えんが、何人か首を折ってきた」

「それ、レッドマジシャンとビーストソウルが言ってた。たしかクラークの法則の三つ目。技術がはるかに進んでると、技術が乏しい方は魔法にしか見えないって」

「魔法にしか見えないのをどうすんですか?先輩方」

「簡単だろ?声を発する前に殺せばいい」

「そう。殺せばいい」

「お二人ともそんな言葉を使う人達でした?」

「情は無用だと。エドガーに言われてるんでね」



 南極半島の連合軍本部では、戦況確認が行われていた

「ケイナン。バリアはどうだ?」

「今のところ、破られた感覚はありません。能力は半分くらいまだ残っています。長く出し続ける為、強固なバリアではありませんが大丈夫ですか?」

「問題ありません。出るのに時間がかかる間に、誰かが殺してくれます。センス。戦況は?」

「第三軍団の死者、約二万六千。第四軍団の死者は、約八千。全部の軍を合わせて五万の死者。第三、第四ともに劣勢ではありません」

「敵は?」

「外に出てきてる奴は、四割ほど倒しましたが、全体の半分以上が、まだ宇宙船内にいます」

「では、二万以上は倒したのですか?」

「恐らく」

「五万死んで、二万倒した。厳しいな」
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