トリプルクラッシュ ~3つの星の時空を越えた運命~

設楽 件

文字の大きさ
上 下
31 / 160
第一部 地球編

28 分岐点

しおりを挟む
 
「よし!彼女一人でいる。今なら行けるぞ」

 食堂で一人で食事してるスノーメロディーを見てビーストソウルがトリックスターに言った

「なんて声かければいい?」

「何でもいい。一緒に食べてもいい?とか。ただし、怒らせることは言うなよ」

「怒らせるような事言わなくても、僕は元々嫌われてる」

 トリックスターが深呼吸して、料理の乗ったトレーを持って近づいた。食堂はG7事件の国連会見のあと、兵士隊の人数が少なくなったので、席が少し空いている

「やぁメロディー。ここ座っても」

 満面の笑みで喋りかけてきたトリックスターを睨んでから、手でどうぞとスノーメロディーはした

「ありがとう」

 トリックスターが座った瞬間に、スノーメロディーはトレーを持って立ち上がり、離れた席に座った。その光景をビーストソウルは遠くで頭を抱えながら見てたら、後ろから声をかけられた

「ビーストソウル?何してるの?」

「やぁレッドマジシャン。トリックスターがスノーメロディーをお食事デートに誘ったけど、見事に振られたね」

「何であの二人って仲が悪いんだっけ?オールロードの事抜きで」

「根本的な原因は分からないけど、僕が思うに二人とも似ているんだよ」

「似ている?だったら仲良く」

「逆だよ。似すぎていて、噛み合わないんだよ」

「なるほど。パズルに例えると一人一人違った凹凸があり、それが上手くはまると仲良くなれるけど、同じ形ははまらないのね」

「そうだ。本当はこの世でお互いを一番理解し合える存在なんだけどね」

「そこに。オールロードの件が入ってしまったのか・・・。彼は私が、彼女はあなたが話を聞いてあげて、そしてそろそろ仲良くしてもらわないと。こっちが疲れる」



 レッドマジシャンがトリックスターの座ってる席に腰かけた

「トレーの上が生ワサビと鮫皮おろしって食事する気ないじゃない」

「食うか?」

「いいえ。あなたが心配で来たのよ。ソーンさんのカウンセリング通ってるんでしょ?」

「ソーンさんがカウンセラーって違和感があるが、もう精神がおかしくなりそうでね。プロにアドバイスもらわないと」

「そうね。悩み事は友達や家族よりプロに相談した方がいいから。結局、友達や親に相談したところで、素人だから、いい対処ができなくて余計に苦しめるだけ。ところでスノーメロディーとはどうなの?」

「オールロードの事は口ではあなたに責任は無いと言ってくれてるが・・・。どう接していいか距離感が分からん」

「まだ心が追いついてないのね。私達も受け入れることが難しいのに」

「ねぇ!話があるんだ」

「奇遇ね。私もあったのよ」



 ビーストソウルがスノーメロディーに話しかけた

「ねぇ!座ってもいい?」

 スノーメロディーは嬉しそうに頷いた。ビーストソウルが腰をかける

「白髪馴染んできたろ?」

「髪の毛の事はごめんなさい。それ以外のことも・・・」

「いいや。君の苦しみの方が辛いだろ?」

「あのさ!私、この組織から一旦距離を置こうかなと思ってるんだけど」

「どうして?」

「もうここには居られない気がして。マスターは承諾してくれた。一緒に来ない?」

 ビーストソウルの頭に薬の事が過る

「えっ!駆け落ちするってこと?予定空いてるかな?・・・真剣に答えると、少し考える時間が欲しい」



 CAの連中が隊長室に集まっていた

「マスター。CAはもうこの組織には残れません。世話をかけることもできません」

 ガントンが代表して話してる。A.C.T アクトとCAの戦いにより、隠蔽班改め修繕班の人達にはものすごい迷惑をかけていた

「上は君らを消せと言ってきました。野放しにするのは危険だと」

「それは彼らにとってはそうでしょう。だが、勝負には負けたし、もうこの組織と揉めたくはありませんよ。だからもう、襲撃することなんかありません。この世が彼らのせいで朽ちていかない限り」
 
「そうさせないようにA.C.T アクトがあります」

A.C.T アクトが怠けると俺らが出てくることになるかもしれませんから」

「そんな日が来たら、是非とも君達の手で、この組織を滅ぼしてください。私達はそれを受け入れますから」

「これからも自警団としてCAはそれぞれ活動していこうかと考えてます。正義のヒーローがA.C.T アクトなら、影のヒーローとして」

「正義を履き違えることがないよう」

「何が正義かは分かりませんが、あなたから学んだことを実行していきます」

「そうですか。成長しましたね。ここに来た頃とは大違いです。離れていようが、みんな私の可愛い子供たちなのを忘れないでください」

「いろいろ迷惑かけました。これから各々が世界中に散って護っていきたいと思います」

「愛と幸運が全員にあるよう」

「あなたにも」




「えっ!旅に出るの?」

 ビーストソウルが大きな声を出した。それを目の前でうるさそうにレッドマジシャンとトリックスターが聞いてる

「そう言ってるじゃない!」

「横に同じく」

「一緒に?」

「僕は一緒にって誘ったけど、彼女はテュールと隠居生活を送りながら、自分と向き合いたいんだって。それに冤罪の事で組織に不信感しかなくなったって」

「マスターウェザーは許したの?」

「エイリアンの事件も最近起きないし良いって」

「この組織に対する事も、世界に対する不信感も、みんなそれぞれあるだろ?」

「そうね。みんなと居れば救い合えるかもしれない。けどその拠り所が、私を強くする一方、弱くしてるんだと思う。だから、確認してきたいの。あなた達といる方が私は強いって」

「まじか。君らも消えて、メロディーも居なくなるのはキツいな」

「あいつがどうして居なくなるの?」

「彼女も旅に出るそうだ。ここの組織に愛想でも尽きたんじゃない?それより、みんな居なくなると誰と馬鹿やってればいいんだよ!」

「あなたには愛しのサンストーンがいるじゃない?」

 ビーストソウルは目を見開いた。訓練生の時から、少しトラウマがあるらしい

「でもカーナさんの邪魔はしないでよ。地球一の鈍感と奥手の二人なんだから」

「サンストーンの話はどうでもいいけど、二人は何処へ?」

「決まってないわ」

「同じく。けど帰ってきた頃には君らより強くなって帰ってくるから」

「いつ旅立つの?」

「明日」

 二人同時に答えた。その日の夜はビーストソウルの部屋で壁にもたれ掛かって、三人で眠った。昔、電車で寝ていたように。ビーストソウルは寝ている時に暴走するのが怖くて眠れていなかったが、この日はぐっすりと眠れた。二人の側にいるのを安心したかのように


 
 トリックスターが朝早く目を覚ますと、レッドマジシャンは消えていた。ビーストソウルは爆睡してる。起こさないように立ち上がると、タンクの部屋を訪れた

「トリックスター。もう旅立つのか?」

「えぇ。世界中を旅をしながら手帳の謎でも解いてきますよ。もちろん宇宙船も探しながら。あなたは?」

「ガントンが旅立つ前に暗号を教えてくれてな。今度はサンストーンに詰め寄るつもりだ」

「師匠が教えたんだ・・・」

「気になるか?」

「はい。けど知るのは帰ってからでいいや。今、聞いてしまうと残りたくなってしまうから」

「そうか。地球は任せておけよ。俺達がシドニーで逃がしたエイリアンも始末しとく」

「あれは僕の獲物だ。因縁がある」



 トリックスターはタンクの部屋を出て隊長室に向かった。コスチュームと通信機は持っていく事と、別れの挨拶をするために。その後潜水艇乗り場に向かったトリックスターは、潜水艇の所でスノーメロディーと出会った

「出ていくのか?」

「あなたもでしょ?」

 トリックスターは手ぶらなのに対して、スノーメロディーは結構な荷物の上に、楽器を何個か持っていた

「それ持っていくのか?」

「お金に困ったら演奏でもして稼ごうと思って」

「金には僕ら、困らないだろ?」

 A.C.T アクトは給料が出る。全員一生遊んで暮らしたところでお釣りがくるほどの財産を世界中の銀行に入れてあった。ただ全員金持ちになったところで、死んでることになってる上に、金では買えない価値のあることに時間を費やしてるため、消費をせずに貯まっていく日々の人が多い

「毎日、三ツ星ホテルのスイートルームに泊まれるほどね」

「荷物多すぎない?」

「あなたが私の荷物をストックする代わりに、一緒に行かない?ビーストソウルには断られたし」

 スノーメロディーはトリックスターへの嫌がらせで言ったが

「それも、いいかもしれない」

 スノーメロディーには予想外の答えが返ってきた

「じゃあ部屋にある楽器。もう少し持っていこうかな?」

「あぁ」

「一緒に行くんだったら、何か演奏できるようにしてもらうからね」

「分かった」

 トリックスターに、やっぱり一緒に行きたくない。と思わせたかったが、真逆の反応をトリックスターはした。トリックスターはこの時、何を考えていたかというと。スノーメロディーの指にカーナさんがしてた指輪がしてあった為、話を聞きたいと思ってた。その後、本当に楽器を数個取りに戻り、また潜水艇乗り場に行くとビーストソウルがいた

「別れの挨拶は無しか?トリックスター」

「眠ってるのを起こしたくなかったんだよ」

「レッドマジシャンはどうした?」

「僕らが寝ている間に行っちゃた」

「そうか・・・。本当は行かないで欲しい」
 
「僕も離れたくない」

 二人が近づいていきハグをした

「近況報告の連絡は寄越せよ」

「暇ならな。お前が俺達無しでどこまで馬鹿やれるか、楽しみだよ」

 二人が離れる。そしてビーストソウルはスノーメロディーに近づいた

「こいつは悪いやつではないから。二人とも互いと自分を受け入れられたら、一番仲良くなれるさ」

「一番仲良くは無理よ」

「どうして?」

「あなたを越えることは無いもの」

 そう言ったスノーメロディーはビーストソウルの頬にキスをした

「じゃあね」

 二人が揃って言って、潜水艇に乗り込んだ。そして、二人の地獄の旅が始まった
しおりを挟む
感想 55

あなたにおすすめの小説

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

不遇な王妃は国王の愛を望まない

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。 ※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷 ※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

パーティー中に婚約破棄された私ですが、実は国王陛下の娘だったようです〜理不尽に婚約破棄した伯爵令息に陛下の雷が落ちました〜

雪島 由
恋愛
生まれた時から家族も帰る場所もお金も何もかもがない環境で生まれたセラは幸運なことにメイドを務めていた伯爵家の息子と婚約を交わしていた。 だが、貴族が集まるパーティーで高らかに宣言されたのは婚約破棄。 平民ごときでは釣り合わないらしい。 笑い者にされ、生まれた環境を馬鹿にされたセラが言い返そうとした時。パーティー会場に聞こえた声は国王陛下のもの。 何故かその声からは怒りが溢れて出ていた。

【完結】聖女ディアの処刑

大盛★無料
ファンタジー
平民のディアは、聖女の力を持っていた。 枯れた草木を蘇らせ、結界を張って魔獣を防ぎ、人々の病や傷を癒し、教会で朝から晩まで働いていた。 「怪我をしても、鍛錬しなくても、きちんと作物を育てなくても大丈夫。あの平民の聖女がなんとかしてくれる」 聖女に助けてもらうのが当たり前になり、みんな感謝を忘れていく。「ありがとう」の一言さえもらえないのに、無垢で心優しいディアは奇跡を起こし続ける。 そんななか、イルミテラという公爵令嬢に、聖女の印が現れた。 ディアは偽物と糾弾され、国民の前で処刑されることになるのだが―― ※ざまあちょっぴり!←ちょっぴりじゃなくなってきました(;´・ω・) ※サクッとかる~くお楽しみくださいませ!(*´ω`*)←ちょっと重くなってきました(;´・ω・) ★追記 ※残酷なシーンがちょっぴりありますが、週刊少年ジャンプレベルなので特に年齢制限は設けておりません。 ※乳児が地面に落っこちる、運河の氾濫など災害の描写が数行あります。ご留意くださいませ。 ※ちょこちょこ書き直しています。セリフをカッコ良くしたり、状況を補足したりする程度なので、本筋には大きく影響なくお楽しみ頂けると思います。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

【完結】不協和音を奏で続ける二人の関係

つくも茄子
ファンタジー
留学から戻られた王太子からの突然の婚約破棄宣言をされた公爵令嬢。王太子は婚約者の悪事を告発する始末。賄賂?不正?一体何のことなのか周囲も理解できずに途方にくれる。冤罪だと静かに諭す公爵令嬢と激昂する王太子。相反する二人の仲は実は出会った当初からのものだった。王弟を父に帝国皇女を母に持つ血統書付きの公爵令嬢と成り上がりの側妃を母に持つ王太子。貴族然とした計算高く浪費家の婚約者と嫌悪する王太子は公爵令嬢の価値を理解できなかった。それは八年前も今も同じ。二人は互いに理解できない。何故そうなってしまったのか。婚約が白紙となった時、どのような結末がまっているのかは誰にも分からない。

処理中です...