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第一部 地球編

26 氷姫

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「治せそうか?いや治してくれ!」 

 オールロードの残骸の所にカーナとテュールが集まった。マスターウェザーの願いも虚しく。二人ともオールロードを見て首を横に振った

「ごめんなさい。死んだ人は治せないの」

「同じく。能力を分けられない」

 A.C.T アクトもCAも関係なく、彼の死を悲しんだ。今まで、任務で死んでいくことはあっても、戦士が戦士に殺されることはなかった。彼が死んだのは私のせいだとレッドマジシャンは罪悪感にさいなまれ。スノーメロディーは気絶し、トリックスターは目が死んでおり、他の人も動いてなかった。暗い空気になってる。そこに一般人の対処に向かってたビーストソウルが戻ってきた。すぐにみんなの所に駆け寄った

「どうした?」

 オールロードがバラバラになってるのを見つけた。そしてレッドマジシャン、トリックスター、スノーメロディーを見て、予想できたらしい

「レッドマジシャン、トリックスター。嘘だよな?殺してないよな」

 ビーストソウルは真っ直ぐな眼差しで、二人を見た。レッドマジシャンは目をそらした。トリックスターは自らの日本刀で自分を殺そうと、心臓めがけて突き刺そうとした。しかし、サンストーンに強制的に止められた

「やめろ」

 止められたトリックスターはサンストーンを見た。死なしてくれ!という表情をしてる。責任を取らないといけない。そんな目だ

「戦いに参加した時点で、命をかけるのは、彼も承知だったはず。死んだのは自らの責任だ」

 自分を責めるな。サンストーンなりの励ましだ。ビーストソウルは気絶して、倒れてるスノーメロディーに駆け寄り抱き抱えた

「辛いだろう・・・悔しいだろう・・・」

 ビーストソウルはそう言いながら、スノーメロディーの涙を拭いた

「ごめんな。側にいてられず。僕のせいだ・・・」

 強く抱きしめた。レッドマジシャンがビーストソウルに近づき、肩に手をのせた

「違うわ!あなたでもトリックスターでもなく。私が悪いのよ。私は戦いの最中にスノーメロディーが裏切り者だと気付いたの。正確には分からないけど、本気で戦ってるように見えてた二人の戦いは、お互いがお互いに手加減し、あえて技を外したりと、いわば茶番だったことが分かったの」

 周りのざわつきを無視して、一人で淡々と喋りだした

「私は二人を、A.C.T アクトにもCAにも渡さずに、個人として事情を聞こうと考え、二人同時に捕まえようとした。スノーメロディーを殺そうとすれば彼が走ってくることは分かってたわ。致命傷にならないように彼女の肩に刀をあえて突き刺し、走って止めようとしてるオールロードを捕獲する。頭の中の三人だけの行動の計算では上手くいってた。けど私が背後から殺されそうになってるのを見たトリックスターが助けにきた。これは予想できてなかった。オールロードも平常時だったらなんなく反応できたはずよ。けど私が焦らせたから、反応が遅れた」

 誰も口を挟める感じではなかった

「私が彼を殺した」

 次の瞬間空気が変わった。CAの連中だけ、次々に倒れていった。マスターウェザーが、自分から注意が逸れたので倒したらしい。CAもレッドマジシャンの話をのめり込んで聞いてなければ、気付けただろう。マスターウェザーは最後にスノーメロディーに近づいた

「カーナ。彼女の意識戻せるか?」

 カーナがスノーメロディーに触った。変化がない

「体は治したわ。けど心のダメージで恐らく気絶してる。体は治せても心まで治せないわ」

「ジャンヌの能力でも無理だな。仕方ない一度本部へ連れて帰り、目が覚めてから話を聞く。帰るぞ!」



 スノーメロディーはそのまま三日間、目を覚まさなかった。ただ彼女はベッド等で横にさせてもらってはおらず、椅子に拘束したまま三日間過ごさせた。CAは全員独房に入り、誰も何も言わず、何の行動も起こさず、ただ時間だけが過ぎていった。A.C.T アクトもそれぞれの傷を癒し、お互いの会話が減っていた。スノーメロディーが目を覚ますと、尋問が始まった。尋問をしたのは、レッドマジシャンだった



 スノーメロディーは尋問室の中で目を覚ました。目の前にはレッドマジシャンが壁にもたれ掛かって立っている。他の戦士達は、離れたところで二人のやり取りを映像で見てた

「おはよう。スノーメロディー」

 スノーメロディーはレッドマジシャンを見るなり、椅子に拘束された体をガタガタと動かした。飛びかかりたかったのだろう

「あなた。三日間気絶してたわよ」

 スノーメロディーは体が動かせないと分かると、レッドマジシャンの方を真っ直ぐと見つめ、沈黙を続けてる

「オールロードはあの時、死んだわ」
 
 それでも反応を示さない

「あなたとオールロード。八百長の戦いをしてたわね。なぜ私が気付いたと思う?」

「・・・」

「私を撃ったことで気付いたわけじゃないわ。いや、それもあるけど」

「・・・」

「違和感を覚えたのは、クイックと戦った時からよ。あなたがいつもより反応が遅れ、別のことを気にしてるようだった。今考えれば分かるけど、オールロードのことを気にしてたんでしょ?ヒランとビーストソウルにやられてないかって。だからクイックとの戦いも、集中できてなかった。私はあの時、調子が悪いだけだと思ってたわ」

「・・・」

「なんか反応してくれない?」

「・・・」

「仕方ないわね」

 レッドマジシャンが部屋を出ていった
 


 レッドマジシャンが部屋に戻ってきた

「オールロードが死んだところは見てたわね」

「・・・」

 レッドマジシャンがため息をついた

「入って!」

 レッドマジシャンの一言後、トリックスターが恐る恐る入ってきた

「メロディー・・・」
 
 トリックスターを見るなり、スノーメロディーは小さい声で何か言った。レッドマジシャンは反応を見るなり

「オールロードを殺した二人を目の前にしてどう?」

 スノーメロディーの声が徐々にでかくなっていく

「憎い・・・憎い・・憎い・憎い!人殺し!」

 声が大きくなり、憎悪の言葉だけが部屋中に響き渡ってる

「あなた。決定的なミスを犯したわ!」

 レッドマジシャンが追いうちをかけていく

「憎い!殺す!」

「多くの人を騙してきた。その涙。けど嘘泣きだから、ジャンヌの能力後も泣いていた。あれは負の感情を消してくれるはずなのに」

 憎い、殺すと言い続けてるスノーメロディーの体が変化してきた。体が震えだし、椅子がガタガタといい。血管が浮き出し始め、目は充血した

「オールロードを殺したのは、トリックスターと私とあなたよ!」

 スノーメロディーが発狂した。室内の気温が一気に冷えた。トリックスターはすぐさま部屋を出た。レッドマジシャンはさらに煽ってる。スノーメロディーがさらにおかしくなっていった。次の瞬間。複数のつららみたいなものがスノーメロディーの体から飛び出し、つららは壁や床、天井に突き刺さった。レッドマジシャンはそんなことが起こっても、その場から動かなかったので、氷が首筋の横をかすり血が出た。この影響で拘束器具が壊れてしまい。スノーメロディーの体が自由になった

「全員・・・殺す」

 目から血が溢れ出ている。まるで別人だ。すると、部屋にビーストソウルが入ってきた。映像の中継を見て助けに来たのだろう

「何したんだ?」

「溜め込んでるものを全部出させてあげようと」

「どうやら逆効果だったな。最悪だ!」

「殺す・・殺す・・・殺す」

 スノーメロディーが氷の槍を創作し飛ばしてきた。二人が辛うじて避ける。さらに部屋の気温が下がってきてる

「早く助けないと。彼女、我を失ってるよ」

「あなたほどじゃないわ。『トリックスターの能力』」

 レッドマジシャンがブラスターを取り出し撃った。しかし、氷の壁が彼女の前に現れて防いだ。その上、先程壁等に突き刺さったつららが少しずつ太くなって茨の道になった

「そんなのじゃ助けられないさ。冷えきり、氷ってるのは彼女の心なんだから」

 ビーストソウルがスノーメロディーの方に向かって歩きだした。氷の茨をくぐったり、跨いだりしながらゆっくりと。近づくに連れて、温度が下がっており、ビーストソウルの唇が真っ青になった。それでも歩いてく

「殺す・・殺す!」

「彼を殺したのは、君らだけじゃない!僕にも責任がある。僕が戦えず、外されたからこんなことになった。ヴッ!」

 氷の槍がビーストソウルのど真ん中を貫いて風穴が空いた

「ビーストソウル!」

「大丈夫だ」

 ビーストソウルの体から血色がなくなった。凍傷等が引き起こってるようだ。しかし、すぐに再生した

「彼を失った責任は全員にある。この組織の分裂が、彼を殺した。ごめんな。君にも彼にも辛い思いをさせて」

 ビーストソウルがスノーメロディーを優しく抱きしめた。触れた瞬間、ビーストソウルの全身の毛が真っ白になった。スノーメロディーは抱き締められたことに驚き呆然とした。そして彼女は普通に泣き出し、彼女の両手もビーストソウルの背中を触った

「辛いだろ?愛する家族を失って」

「家族?彼は家族でも、友達でも、恋人でもないわ」

 普通の口調に戻った

「家族って何?愛って?」

 その問いに答えたのは二人ともだった

「家族か・・・。私達三人は血が繋がってないわ。けど家族。私達が思う家族は、お互いを信頼し、自分の人生や命でさえも預けれる。また、預かることができるのが家族だと思うわ。だから、本当の両親や兄弟は家族だと思わなかったわ」

「愛ってのは結局正解は誰にも分からない。みんな分からないから、必死に探求してる。相手を思えば思うほど答えが深くなってく。そんな人を思ってもがいて、探求してる過程が、僕は結局愛なんだと思う」

「私達には愛があった?」

「あぁ。ありきたりな言葉では表現できないけど」

 氷が完全に消えた。もう元の温度だ。けどビーストソウルの毛の色は治らなかった

「話してくれるか?最初から」

「えぇ。彼の名誉の為にも」

「強い娘だな」

 ビーストソウルが涙を拭ってあげた
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