トリプルクラッシュ ~3つの星の時空を越えた運命~

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第一部 地球編

11 音速の戦士

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 八人が真剣な顔になった。空気が重い、気迫が凄い

「勝負!」

 サンストーンの声と共に全員がそれぞれの標的に向かって攻撃し始めた



 一方その頃、EU本部ではトリックスターが警護に就いていた。EU本部のあるベルギーのブリュッセルは冬の夕方で寒いなかでの任務になった。トリックスターはコンピューターから

「国連本部にCAが現れました。警戒体制を取ってください」

 と言われてたので。戦いの準備ができた。武器を手に巡回していた所、奴が来た。そいつとの戦いは、一瞬の余分な動きが命取りとなる。トリックスターは誰がここを襲うのかすぐに分かった。なぜなら速すぎて木々や窓が揺れ、遠くで砂煙が起こるから。『音速のクイック』組織内ではそう呼ばれてる。マスターウェザーと同等。もしくはそれ以上の速さで相手を倒す

「クイックさん。僕はあなたの戦い方を目標にしていた。戦場で縦横無尽な戦いをし、腕力ではなく速さで倒す」

「スピードこそ、最強の攻防なんだよ」

「その強さをもう一度、みんなの為に使ってくれませんか?」

「トリックスター。僕と君が組めば誰も敵わない。世界の頂上という景色見たくないか?」 

「世界のトップに立とうとは思わない」

「弱者の上に立って何が悪い」

「失望しました。今のあなたに負けるわけにはいかない」

「僕に勝気でいるの?年下だからと容赦はしないぞ」

 クイックはそう言いながらメリケンを両手にはめ、マスターウェザーと同じゴーグルをつけた。トリックスターも持っていた花鳥月露をしっかり握り直した。先に動いたのはクイックだった。持ち前のスピードでトリックスターをなぎ倒した

「遅すぎ」

 地面に頭から叩きつけられたトリックスターは

「『チェンジ』」

 すぐに身を引いて、クイックから距離をとる。場所転換の道具をばらまいといて良かったとトリックスターは思った。クイックがすかさず動く。トリックスターはクイックが動いたと認識し

「『解』」

「『チェンジ』」

 一瞬だった。クイックがトリックスターに殴りかかろうとしたとき、トリックスターの手中から爆弾が出てきて爆発した。トリックスターは爆弾を取り出したと同時に瞬間移動していたので無事だった。しかしクイックの姿を爆発による炎と煙で見失った。直後トリックスターは暴風で後ろに飛ばされた、クイックが両腕をグルグルともの凄い速さで回して、風を生み出したのだ。煙と炎はあまりの風で消えた

「やるじゃねえかトリックスター!」

 トリックスターが物をストックしてる空間では時間が止まる。爆発する直前の爆弾が何個か隠し球としてストックしていて、出した瞬間に爆発するようになっていた

「タイミング間違えれば自分も怪我すんだろ?」

「あぁ捨て身だよ。そうでもしないとあんたに勝てないからな!」

「だがいいのか。ストックできる数や大きさは上限があるだろ?時間がかかればかかるほどお前は弱くなる」

「それはあんたも同じだろ。長く速い動きをすればするほど、能力消費が比例するんだろ」

「やはり君と僕は似てるな、短期決戦には自信があるが、長くは戦えない」

 二人が一斉に動く。クイックはトリックスターめがけて音速で走り、トリックスターは手裏剣を四枚投げた。クイックは手裏剣を捕まえ、ポイっと投げた

「こんな遅い武器で僕と張り合うの?僕を倒したいなら、銃出さないと」

「俺は銃が嫌いなんだよ。銃弾の速さじゃ、場所を交換したとき事故る。その時の交換する物の速さがチェンジ後の自分の速さになるからな。『チェンジ』」

 トリックスターはクイックの後ろに落ちた四枚の手裏剣のうちの一枚と場所を入れ換え、クイックの背後を取って斬りかかった。しかしクイックはトリックスターの動きを回避した。その後もトリックスターは武器で斬りかかるが、クイックはトリックスターの動きを馬鹿にするかのように、反撃も防御もせずにひらりとかわしている

「ほら、右だよ。違う左。今度は上。遅すぎて全然当たらないじゃん」

「チッ」

 挑発に舌打ちした

「『全面鬼没』」

 トリックスターは小さなボールを無数に取り出し、クイックを中心とした全方面に投げた。そして、トリックスターはその無数のボール達の間を瞬間移動して、クイックに斬りかかった。鳥籠の中みたいにトリックスターの檻に閉じ込められたクイックは、トリックスターの攻撃に、何ヵ所も傷ついたが、トリックスターが瞬間移動しながら斬ってるので、傷は浅く致命的な攻撃にはならなかった。すぐにトリックスターが移動できるボールは消え、地面に無数のボールが転がっていた

「今のはヤバかったな。しかし片道切符の移動とは残念だ。君の攻撃はどれも浅く、傷を治す程でもない」

「はぁはぁ・・・何で反撃しなかった?」

「ではこちらも聞こう。何で今の攻撃で爆弾を使わなかった?移動の度にさっきみたいな爆弾を使えば、僕を殺せたぞ!」

「それは・・・昔の仲間に情がわいてしまってな」

「違うな。自分が死にたくないだけだろ!」

「あぁ死にたくないね。あんたに命捧げるほど、俺はこの世界が好きじゃない。俺はまだ、家族と一緒にいたいんだ」

「レッドマジシャンとビーストソウルか、お前らは能力得る前から知り合いだったな」

「あんたはいないのか?好きな人とかは?」

「もう死んだ。お前らと入れ換えに」

「どういう意味だ」

「お前らが能力を得ることになった、鉄道橋の事件あったろ?」

「あぁサンストーンが助けた」

「サンストーンの他にも、ライガーとフランという戦士がいた。二人とも死んでしまったが、フランは僕の恋人だった」

「組織内では恋愛は掟で禁止されてるだろ?」

「知ってるさ。だがな好きになってしまった。その日フランは午前中に、ある任務を終え帰還した所、エイリアンが現れたということで、すぐに向かった。任務で能力を結構使い疲労していたのにだ。そして、ライガーを連れて向かった所、戦死した。その日から分からなくなった。フランが弱かったから負けたのか、エイリアンが悪いのか、疲れてるのに行かせた組織が悪いのか。僕は生きる活力が無くなったように思えた。いつ死んでもいいんだ」

「死ぬことを恐れないのか。死の恐怖が無いから強いのか」

「いつ死んでもいいと思いながら戦ってるが、まだ死ぬときじゃないのか、いつも勝ってしまう」

 トリックスターは深く息を吸って大声で言った

「人ってもんは、魂で立ってんだ!あんたが勝つのは、死にたくないと心の奥底で思ってるからだろ!フランさんの為にも生きようって!」

 クイックは天を見上げて

「フラン。悪いがそっちに行くのは先になるかもしれない。もうちょっと待っててくれ!」

「魂込めて戦え!大好きな人の分まで!」

「上等!」

 トリックスターは思っていた、何で敵を本気にしてしまったんだろう。口の方がベラベラと動いてしまった。ヤバイなさっきより勝率下がったわ。と

「殺す気でかかってこい。こちらも本気で殺しに行く」

 クイックが動いた。いや俺は死にたくないんだけど。とトリックスターは思った

「『戦場の踊り子』」

 トリックスターがクイックが来る前から、至るところにばらまいといた物を行き来した。クイックはさっきよりも速く、トリックスターが転移した所まで追いついていた

「逃げるな!戦え!」

「いや。こんな事言いたくないけど、俺がさっき言ったこと全部忘れてさ。さっきみたいに戻ってくれない?」

「無理だ。火がついた」

 その時、トリックスターに通信が入った

「クイック!タンマ!」

 クイックが止まる

「どうした?」

「通信が入った。コンピューター誰からだ?」

「レッドマジシャンからです」 

「繋いでくれ」

「トリックスター!今すぐこっちに応援に来てくれない?ビーストソウルが・・・」

「何?」

「ビーストソウルが暴走した」

 ビーストソウルが暴走?トリックスターは一瞬思考が止まった

「こっちもヤバい状況なんだ。行けたら行く」

 どうしよう。まずいぞ

「クイック。悪いんだけど、今日の所はお引き取り願いたいんだけど?」

「敵に言うのかよ。なんかあったのか?」

「家族が緊急なんだよ」

「分かったと言いたいが、こっちにも立場がある」

「じゃあ。私が相手しよう」

 マスターウェザーが空から急に降りてきて、そう言った

「何でここに?」

「トリックスターがクイックと戦ってるとコンピューターが教えてくれてな。相手がクイックだから心配で来てみたのだ。トリックスター緊急なんだろ?行っていいぞ。君は強敵相手によく持ちこたえた」

 残りの能力で行けるのか?行っても何もできないぞ。いや、行くしかない

「ありがとうマスター。『チェンジ』」

 トリックスターが消えて、ボールが出現する

「クイック。本気のそなたと戦えてとても嬉しいぞ」

「僕もですよ。師匠!」

「教え子だからと手加減はしませんよ」

 二人が同時に動く

「『王者の吐息』」

 マスターウェザーの突風を受け、クイックのスピードが落ちる

「どんな速さも、風には逆らえません」

 クイックも両腕を回し、風で対抗した。お互いの風が打ち消しあった

「『風神演舞』」

「『ザ・ハリケーン』」

 マスターウェザーはものすごい速さでクイックに向かっていき。クイックはその場で体を回転させ竜巻を作った。竜巻が壁になりマスターウェザーを退けた

「『氷点粉雪』」

 マスターウェザーが竜巻に粉雪を乗せた

「クイック。体が冷えると動きが遅くなるだろ」

 竜巻が止まって、中からクイックが真っ青になっていた。クイックはその場で足踏みを猛スピードでして。体温を上げた

「やはり強いですね」

「経験が違いますから」

「師匠!退却しても?」

「いいともクイック。私が地獄の果てまで追いかけますから」

 クイックがぐるりと向きを変え走り出した

「『ゴッドウィンド』」

 マスターウェザーも追いかけた
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