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第一部 地球編

6 戦士と兵士 (スノーメロディー目線)

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 私は三人の関係に憧れた。お互いを家族の様に認識し、己の命や人生まで預けあっている。そんな風に見えたから。私には妹みたいに可愛がってくれる、オールロードという人がいるが、昔からお互いを知っている訳じゃないし、信頼しきってるわけでもない。だが、私を思って頑張ってくれている事は知っている。戦士になるために一生懸命に頑張ったが、私には銃や剣の才はないと自分で自覚した。オールロードはそんな私を見て

「出来ないことはしなくていい。他の能力でカバーすればいいんだ」 

 と言ってくれた。そんな言葉のおかげで、頑張って近距離攻撃と私の能力である氷雪の能力をひたすら磨いた



 戦士になって初めての任務はオールロードとガンドルドという兵士隊の人とのチームだった。ガンドルドという人の情報は戦士隊を除いては、地球人で最強と言われている三十代の男としか私は知らなかった。任務の内容はテロ組織に潜入している諜報員からの情報で、テロ組織が豪華客船を襲撃するとの事だった。乗船するのは上級階級の人達で、マスターウェザーからは

「上が対象たちには気付かれないように、自分の命を犠牲にしてでも守り抜けと言ってきました。死んでも頑張ってください」

 という激励と皮肉が混ざった言い方をされた。私達三人は三人家族という設定で船に乗船することにした。船に乗る直前に初めてガンドルドに会ったが、最強という噂があったから、さぞ筋肉ムキムキでオーラが凄い人なんだと思っていたら。メガネかけて少し筋肉質な普通のオッサンなことに驚いた

「あの初めまして。勇戦班、班長のガンドルドと申します」

「スノーメロディーです。よろしくお願いします」

「オールロードと申します」

「では家族という設定で船に乗船しますが、船の中での接触は控えるようにします。お二人の能力は訓練データ見たので認識しております。オールロードさんは甲板で空と海を見張り、スノーメロディーさんは船の前方のフロア、私は後方のフロアで巡回を、緊急の場合以外通信機は使わないように」

「了解」

「では行きましょ」

 三人は船に乗り込み、それぞれの持ち場に向かった。船は出航し太平洋の真ん中辺りに来たところで異変があった

「二人ともカジノに来てくれ」

 急にガンドルドからそう連絡があり。非常事態が起こったのだと思い、カジノに走って向かった。カジノに着くとガンドルドが別人と思える雰囲気で立っていた

「パパ。何かあったの?」 

 走ってきたオールロードも合流した

「二人ともカジノで勝ったぞ。パパ凄いだろ!」

 仕事サボって何してんだこのオッサン。そう思った瞬間ガンドルドがオールロードに耳打ちした。オールロードの表情は一変し、すぐカジノから走って出ていった。次は私の耳元で

「まずい状況になっている。航路が少しずれている。カジノのディーラー見えるか?」

 ガンドルドの後ろにアジア系のディーラーが居た

「えぇ」

「あいつもそうだが、恐らくこの船に乗っている1/10はテロリストの人間だ」

「何でそんなこと」

「独特の殺気と銃器特有の豆、そして筋肉の付き方。総合的に判断した」

「もしそうならどうすれば」

「そろそろ太平洋のど真ん中だから仕掛けてくるだろう。その前にこっちから奇襲する」

「けど、もし違ったら」

「俺を信じてくれ」

「分かった。けど三人でこの船のテロリスト達相手に出来ないわよ。被害が抑えられない」

「応援は呼んだ」

「誰を」

「地球人最強」

「マスターウェザーを?どれくらいで来るの?」

「忘れたのか?ここは太平洋のど真ん中だぞ」

「そうか!本部は」

 次の瞬間オールロードから連絡が来た

「隊長が来ました」

「了解。スノーメロディー、このカジノの敵を片付けろ。まずディーラーから」

「あなたは?」

「船内一掃してくる。十五秒後に奇襲しろ。ここを任せたかったから君を呼んだ」

 そういうと、ガンドルドは物凄い速さでカジノを出てった。船内という空間で広範囲に影響が出る能力は使えない。私は音叉を取り出し近くにあった机で叩いて耳に近づけた。そして私は拳に能力を一点集中させた、ディーラーの近くまで歩いていき、

「今宵はジャズね」

 そう急に言われたディーラーは驚いた。驚いて思考が鈍ったところを腹めがけて殴りかかった

「『fフォルテ』」

 殴られたディーラーの腹から血が溢れドレスにかかった。コスチューム持ってくれば良かったと思った。この技はオールロードと共に考えた能力による運動能力や治癒能力の向上を応用し、一点に能力を集めることで破壊力を持たせた技。私とオールロードはこれを考えるのに結構時間がかかった。まぁ、前例でやってた人が居なかったからだけど。すぐに人が真似をできる技ではない。能力の一点集中が上手くできず力が散乱した状態になり、一点に留めておけないからだ。ディーラーを殴りかかった後にすぐ周囲を確認した。大半の人は呆然とこっちを見てから叫びだし目を瞑ったが、恋人らしき二人は一瞬動きが止まってから男がジャケットの内ポケットからハンドガンを取り出した

「あの二人か」

 私は二人に向かって突撃した。男は私に向かって撃ってきた

「『アレグロショット』」

 私は親指を立て、人差し指を対象に向け、それ以外を握る銃のような形にした。人差し指のところに氷を凝縮した塊をつくり片手で、それぞれ二人に向けて撃った。撃たった氷は眉間と心臓付近を貫通した。しかし、私も左大腿部と腹部を撃たれていた



 船内のテロリスト達は半分以上片付けた。テロリスト達もこっちからの奇襲を受けて結構反撃してきたが、私とガンドルド、マスターウェザーで一般人を守りつつボコボコにした。甲板はオールロードに任せていたが何の連絡もしてこないので心配になり、私は甲板に出た。甲板の光景を見て絶句した。テロリスト達は数人を人質に取り、オールロードはうつ伏せ状態にさせられていた。テロリストのリーダー格らしき男が私に気付き両手を挙げてこっちに来るようにと行った。そしてオールロードの横で膝付きになるように言われた

「動いたら人質殺すからな」
 
 オールロードが私に向かって

「これからの天気はどうなってる?」

「そろそろ天候変わる頃じゃない?」

「おい貴様ら!勝手に喋るな。だいたいお前ら何者だ?見たところ特殊な訓練受けてるようだか、まだガキじゃねか。こんなガキに計画狂わされるなんて。まぁ逃亡用のヘリは呼んだから逃げるだけだが」

「はい質問!計画って何ですか?」

「あぁ計画ね。上級階級の人達を人質に取って資金調達とそのまま船を湾岸部に突っ込ませようという計画」

「ちょっ!リーダー何話しちゃてるんですか!」

「あっ!何話させてるだテメェ」

 リーダーはそういうと私の事を踏み倒した。その時風が強く吹いて、気付くと人質を見張ってるテロリストの後ろにマスターウェザーが立っていた。マスターウェザーはゴーグルをかけていて、修道服だった。初めてコスチュームを見た

「俺の子供達に何してるんだ?」

 俺?今、俺って言った?凄い怖い表情だ。テロリスト達はマスターウェザーが急に現れたので思考が追い付いてない

「『雷神の審判』」

 マスターウェザーは人質を見張ってるテロリスト数人を手の中でつくった雷を浴びせた。それも人質の誰にも感電させないで、なんという繊細な技術なんだと私は思った

「私の子供に何したと聞いたんだ!」

 リーダー格らしき男を含めテロリスト達持っていた銃器でマスターウェザーを一斉射撃した

「殺せ!」

「『風神演舞』」

 風が一瞬吹き、次の瞬間リーダーの隣に立っていた

「うん。圧倒的強者相手に数人で戦うのは一つの戦法だが、ちゃんと狙って撃てよ!『王者の吐息』」

 マスターウェザーはリーダーにフッ!と息を吹いた。するとリーダーは空中に飛ばされて、そのまま海に落ちた。そのまま残っているテロリストも、ものの数秒で片付けた

「私はまた船内に戻る。残っている敵がいるからな。二人はここに来るヘリコプターを片付けてくれ」

 そういうと駆けていった

「俺らここに居なくても、あのご老人一人で殲滅できるよな」

「えぇ凄いものをみたわ。さぁヘリを片付けましょ」



 数分後ヘリコプターが彼方に見えてきた

「メロディー。あとどれくらい能力残ってる?」

「1/3ぐらいかと」

「分かった、じゃあ二人で片付けよう」

 ヘリコプターが甲板の近くまでやって来た。私とオールロードはヘリコプターに向かって猛スピードで走り、ヘリコプターの前方ボディを狙って

「『ffフォルティッシモ』」

 二人で同じ所を殴った。殴られたヘリコプターは前方部分が破壊されて、バランスを失い海へ落ちた

「いや~。二人でやるとこんな威力出るんだ」

「元々一人でやっても結構な威力だけどね」

「お互いの息が合ってないとできない技だな」

「えぇ。この技あの三人に使ってほしいわ。どれ程の威力が出るのかしら」

「建物でも壊せるんじゃないか?まぁ習得するのに結構な時間がかかると思うが」

「考案者の私が直々に教えるから大丈夫よ。私達は自分達で考えたけど、教科書があるんだから」  

「三人でやるとfが3つだから・・・」
 
「フォルティッシッシモよ」

「あいつらが初任務終えたら伝授しようか」

「そうね」
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