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第一部 地球編

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「お前のせいで何人死んだ?」

 鉄道橋の上で二人の男が対峙している。そう叫んだ男は、袴姿で下駄を履き、左腰には長さの異なる二本の刀、右腰には筒のような物とブラスターがぶら下がっている。顔は仮面で隠れて通信機のようなものが左耳にあり、現代では面白いと誰もが思う格好をしていた

「お前らは何人殺した?」

 もう一人の男が冷たい目で睨み、逆に質問した

「私は世界を守っているだけだ」



 その頃、三人の小学生が電車に乗っている。三人とも私立の小学校に通い、登下校を毎回一緒にしている為、駅の職員たちには有名になっている子供達だ。寝ている男の子、宿題をやっている男の子、本を読んでいる女の子。三人とも別々の事をやっているが、起きてる二人が時々喋ってる

「さっきから何読んでるの?」

「ドイツ語で書かれた小説。おもしろいよ!」

「小学生が読む本じゃないよね。ていうかドイツ語わかるの?」

「最近勉強し始めたの」

 とその時、寝ている男の子がいびきをかく。それを聞いた男の子が

「学校で昼飯以外寝てたろ?まだ寝れるのか」

「すごいよね!彼の通知表がね、『関心・意欲・態度』以外の部分の項目は完璧なのに、そこだけ最低の評価なの」

「君らの才能は憧れるよ」



 一方鉄道橋の上の男達は

「世界を守っているだけだから仕方ないのか?私達は地球人を絶対に許さない!」

「何をする気だ!今度は絶対に止めてやる!」

 袴姿の男が二本の刀を腰から抜き構える

「遅かったな。この橋の梁はもう壊してしまった。この上に電車が通ると橋が重さに耐えられなくなり電車は川に落ちる」

 男が嘲笑った

「我らは貴様達などに屈しない!お前は殺すし、電車も止めてやる!」

「やめた方が良い。君じゃ私に勝てない!フンッ!」

 そう言った男の皮膚が、ダイヤの様な鉱石に変わった

「勝てないだと?笑わせるな。これを見てから言えよ!『ラーの憤怒』」
 
 男の体が燃えた。それを見た男は驚いている

「なぜお前が能力を持っている?名前は何だ?」
 
「私はサンストーン。電車が来るまでの数分間でお前を倒す!『イグニッション』」
 
 サンストーンの持っている刀が燃え始めた。燃えるのと同時にサンストーンが走り始め、鉱石の男に斬りかかる。二本の刀に対して男は拳で応戦した

・・・硬くて刃が通らない!

 鉱石の男がサンストーンの腹を殴り、拳がサンストーンの腹を貫通する。サンストーンが男の側から離れた。貫通して風穴が空いてる腹がだんだん再生していき元通りになった。鉱石の男はそれを見て失笑した

「だから君じゃ勝てないと言ったろ?」

・・・ダメだ相性が悪い。まだか?一人じゃ勝てない!

「確かにお前の方が強い。認めよう」

「『千花繚乱せんかりょうらん』」

 突然女性の声が聞こえ、同時に鉱石の男の体に植物の蔓が巻き付いて、そこから花が沢山咲き始めた

「フラン!来てくれて助かったよ」

 サンストーンの後ろからラテン系の綺麗な女性が現れた

「遅くなってごめんなさい。任務から直行で来たのと、ライガーを連れてくるのに手間がかかって。あっ!本部が採血してこいと」

 フランがサンストーンに小瓶の様なものを投げる。その時

「俺のゲームの時間を潰しやがって殺してやる!『死指発頸ししはっけい』」

 太極拳の服を着た男が、二人の横を猛スピードで通り、右手の親指以外の四本の指で、花が咲いた蔓で拘束されている鉱石の男のど真ん中を突いた。巻き付いている蔓が粉砕されるのと同時に声がする

「ヴッ!」

 ライガーの右手の四本指がボロボロになっており、ライガーが後ろに退いた。というより吹っ飛ばされていた

「なるほど衝撃波か、いや~今のは危なかった。硬度を上げといて正解だった。どうやら硬さで衝撃波が通らず、自分自身に返っていったのか」

 鉱石の男が吹っ飛ばされたライガーに向かって走る

「ライガーとか言ったか?お前の能力は危険だから死んでもらおう」

「ライガー!一旦距離をとれ。フラン頼む!」

「『グリーンマリオネット』」

 ライガーが二人の方に逃げる。後を追う鉱石の男の両手両足とライガーの胴体に蔓が巻き付けられた。鉱石の男は身動きが取れなくなり、ライガーは二人の元に引っ張られる。サンストーンが入れ違いに拘束されて動けない鉱石の男の後ろに行く

「ライガーは指を再生しろ!フラン時間を稼ぐぞ」

 ライガーの右指が再生していく。サンストーンが短い刀をしまい、ブラスターを取り出し撃ち出す。しかし、相手は無傷だ

・・・ブラスターが全然効いていない!もうすぐ電車が来てしまう。一般人は巻き込むわけにはいかない。すぐ倒さないと

「ライガー!サンストーンと私はサポートするからメインで攻撃して!」

・・・サンストーンの能力じゃ圧倒的に不利。私の能力も拘束するくらいで倒せはしない。ライガーが勝利の鍵に

 ライガーが両手両足を拘束された鉱石の男に向かって再び走る

「『連破』」

 今度は両手で殴り始める

・・・衝撃波の攻撃を連発し、殴る度に再生していくから能力消費量がヤバいな

 鉱石の男腹にヒビが入り出した

「まずい割れる!硬度最大にしないと」

 ライガーが硬くなったことに気付き後ろに下がった。男は拘束している蔓を無理矢理引きちぎった

「フラン!あいつ硬度上げたから、次の一発に能力全部乗せて決着をつける!」

「わかったわ。サンストーンは・・・」

「分かってる。俺があいつの注意をそらす。『火流かりゅう』」

・・・ずっと体と刀を燃やしてるから結構能力使ったな。ライガーもフランだってもう残ってないだろう。次がラストか

 サンストーンが口から火を吹き、その火が鉱石の男の周囲で渦を巻いた。その隙にフランがライガーに巻いてある蔓を使いライガーを振り回す。そしてライガーをおもいっきり鉱石の男の方に投げた

「『グライドクラッシュ』」

 ライガーの右拳が炎の渦を切り裂いて、鉱石の男の胴体に当たる。ヒビが入るのと同時にライガーの右手が血を吹く

「嘘だろ俺の全力だぞ!」

 鉱石の男がニヤリと笑い、心臓付近を拳で貫通させる。そして、ライガーがその場に倒れた

「嘘でしょライガー!」

 フランは動揺してる。それを見た鉱石の男がフランめがけて殴りかかった。フランは震えてしまって動けていない

・・・ダメ。強すぎる。私にあいつが向かってきてる。けど、体が動かない!

「フラン逃げろ!」

 サンストーンがそう叫ぶが、間に合わず鉱石の男がフランの体を殴り続け殺した。死んだフランとライガーの遺体を男は川に投げ捨てた

「これでまた一対一ですね」

 その時列車が走る音がする。二人とも音のする方を向いた

「列車が来てしまいましたね。誰かさんは、お前は殺すし、電車も止めてやる!とか言ってましたよね」

 鉱石の男が橋から逃げた。サンストーンが後を追った



 その頃電車内では

「橋越えれば、もう降りる駅ね」

「明日の朝も、いつもの時間の電車でいいよね」

 橋に入る直前に寝ていた男の子が起きた

「嫌な予感がする」

「あっ!起きた。てかぁ~ウワッー」
 
 鉄道橋が壊れ、電車が下の川に落ちていく



 ある組織の司令室でサンストーンが鉱石の男を追っているのを、モニターで確認している者達がいた。やがて一人の髭を生やした老人が入ってきて

「橋の崩落は防げませんね。勇戦班と隠蔽班、医療班をすぐに向かわせてください」

 と言うが、誰も反応しない。それをみた違う老人が

「なぜお前ら兵士隊は、戦士隊と協力できない!同じ組織の者だろ!」

 と叱責した。聞いてた職員達が一斉に動き始めた

「すまないマスターウェザー。兵士隊隊長として不甲斐ない」

「いや、君のせいじゃない。能力を持ってない者が、持っている者を嫌うのは仕方ないことだ」



 電車が落ちていく近くで鉱石の男とサンストーンが睨み合ってた

「どうだサンストーン。良い光景だろ!」

「殺してやる!」

 そういうとサンストーンがブラスターをしまい、右腰にぶら下がっている筒のような物を取り出す。

「俺の刀はな、長刀を帝釈天たいしゃくてん短刀を阿修羅王あしゅらおうと言ってな。そしてこれは修羅場といって上下にそれぞれ刀を取り付けて両剣にしてくれる物だ」

 取り出した修羅場に、帝釈天と阿修羅王を取り付け、両剣にした

「いくぞ!」

 サンストーンが鉱石の男に斬りかかり、鉱石の男も体術で応戦する。刀が、鉱石の体に傷をつけている

・・・さっきより硬くない?こいつも力が残ってないのか。強い一撃を与えるか

・・・すぐけりをつけないと、俺が砕けることになる

 サンストーンが一旦引き、帝釈天の方を相手側に向けて構える

「終わりだ!『太陽神の矢』」
 
 サンストーンが燃えている体をさらに燃やして、猛スピードで鉱石の男に両剣で突いた。鉱石の男に当たったその刀は、彼の腹を突き破る

・・・鉄壁の硬さの俺が負けた?あいつらか、あいつらの攻撃が効いていたのか

 鉱石の男は突き破られたところから、一気に全身にヒビが入った。刺された腹回りは砕けてバラバラになっている。やがて元の体に戻り、その場に倒れた。サンストーンは死んだことを確認すると男の血を小瓶に流し込んだ



 電車が川に落ち、周囲一帯が瓦礫や死体で散乱している悲惨な光景。そこでサンストーンは生存者を探していた

「くそっ!生存者がいない」

 サンストーンの視界に三人の小学生が固まって倒れてるのを見つける。サンストーンが駆け寄り、脈を触った

「瀕死だが全員まだ生きてる。だが助けるには」

 サンストーンが先ほど殺した男の血が入った小瓶を取り出し、血を三人にそれぞれ飲ませた。一分後。三人の傷が治りだした

「嘘だろ!三人全員が拒否反応をしない。適合した!」

 そこに数人が駆け込んできた

「医療班と隠蔽班です」

 医療班と隠蔽班の人達が三人の小学生を見た

「まさか適合したんですか?」

「そうだ。すぐ運べ!」

 医療班の者達が三人を連れていった。サンストーンも三人についていく
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