15 / 16
第三章 ブレイブプリンセス。
第15話 帝都アストロイカ
しおりを挟む
バンシラッドの街を出た遠征部隊は一路帝都アストロイカを目指していた。
警備を兼ねて駐留軍として50名程街に残してきた。そのまま街の統治も目的としている。
後日、本国より1000人規模の駐留軍が新たに到着する手筈になっている。
珠洲音達は1日掛けて平原を渡切り、目の前には峠が迫っている。
この場所で一泊する事にした。
「陛下。明日峠を越える手筈です。
今日は野営でテントを貼りますので、暫くお待ち下さい。」
騎士の1人が珠洲音に駆け寄って連絡すると、野営の準備が始まった。
「陛下のテントが先だ。
急げ。」
テントは布製の頑丈な作りになっている。
折り畳んで持ち運びが可能で、収納魔法が得意な物資担当者が数名配備されている。
テントの骨組みは軽い金属製で強い風にも対応できるものになっている。
少し離れたところからでも見える上の方に王国の紋章が描かれている。
「シセリ。周辺の様子は如何ですか?」
「は!配下の者が捜索探査しましたが、特に危険な物はない様です。」
「暫く警戒する様に。」
「は!」
戦闘には不向きな者達も遠征には加わっている。
救護班や物資班は非戦闘員になる。
人数が多いわけではないが、危険は出来るだけ排除した方が良い。
「陛下。テントが出来ましたので、お休み下さい。」
「ありがとう。
皆も準備出来次第休む様に伝えなさい。
それと準備が終わり次第私のテントに幹部は来る様に伝えて。」
「は!」
テントの中はしっかりとした絨毯が敷かれている。
ベッドも置かれていて快適な空間になっている。
中央にはテーブルと椅子があり、5人くらいが集まって話す事も出来そうだ。
「陛下。お飲み物は何か召し上がりますか?」
テントには珠洲音の世話係が常時待機している。
彼女は王宮でも側でいつも珠洲音の世話係として支えている女性だ。
「そうね。暖かい飲み物ある?」
「御座います。
お待ちください。」
彼女の名はナホと言う。
ナホは元々宮廷に仕えていた使用人だったが、周りからもとても機転が効く出来た使用人だと言う事で珠洲音の側付きに抜擢された。
本人は身に余る事で勝手なイメージで女王は怖いと思い込んでいたが、珠洲音に会って可愛い女の子である事を知ると本人からも志願されたという経緯がある。
珠洲音は装備を外してラフな服に着替えた。
幹部達は鎧から服に着替えるタイミングが速すぎるのではないかと言う者も居たが珠洲音はラフな格好が楽なので忠告を聞く事は無かった。
「陛下。今年王国で栽培された茶葉から作られた紅茶でフレグランスティーを入れました。
ご賞味ください。」
「ありがとう。
ナホも一緒に飲みましょ。」
「あ、有難いのですが、私は使用人ですので後程頂きます。
陛下はお疲れでしょうから、私は少し席を外しますので、ごゆっくりお寛ぎください。」
気を使ったのかナホは深々と頭を下げるとテントから出て行った。
珠洲音は静かになったテントの中でゆっくりとティーを堪能する事にした。
暫くすると、ブラト、シセリとロトがテントに入ってきた。
「失礼します。」
「座って。」
テーブルの椅子に3人は腰掛けた。
一緒に使用人のナホも入ってきて3人に飲み物を運んで来ると、珠洲音の分も新たに食器を変えて運んできた。
「報告を聞かせて。」
「はい。先ずは私から報告致します。
周辺に町や集落は存在しませんでした。
人や危険な魔物の気配もありません。
引き続き魔物への警戒を行います。」
真っ先にシセリが立ち上がって報告した。
「では、次は私が。
遠征部隊陛下の精鋭部隊、先のバンシラッドに残した50名については、後程無事かどうか確認をとります。こちらに200名全員点呼いたしました。
特に異常はありません。
救護班10名、物資班20名共に問題なし。
体調の悪化を訴える者も今の所ありません。
食糧や薬品、武器に資材共に収納魔法で管理しております。
異常は有りません。」
「次は私が。
本国より駐留軍明日にもバンシラッドに到着いたします。
そのまま50名も待機を命じております。
このまま帝都アストロイカへはあと1日と半日程で到着予定です。
明日1日掛けて峠を越えてから野営を貼ります。
その後半日で帝都アストロイカに到着です。
陛下には不自由をお掛けしますが、もう暫く我慢下さい。」
「報告ご苦労様です。
私は不自由など感じていません。
皆の安全を最優先でお願いします。
特に非戦闘員に危険がない様気を配って下さい。
今日の疲れを労ってあげて下さい。
では、皆も休んでゆっくりしてください。」
「は!」
3人はそれぞれの部下達に労いの言葉と明日からの打ち合わせのためテントを後にした。
翌日、峠を越える為早めの出発する事になった。
峠は馬車でも進める道の広さが有り、崖が危険だが魔物のに注意しながら一日掛けて越える事が出来た。
峠を超えると再び平原が広がっていてこの先に帝都アストロイカがある。
平原を少し進んで安全な場所で野営をする事にした。
部隊に少し疲れが見え始めていた。
王国でも屈指の精鋭部隊だが、これ程日数をかけた遠征はそうある物ではない。
「ブラト。
皆に休息を。」
「は!」
テントを設営すると早めに皆を休ませた。
食事も早めに済ませて珠洲音は部隊の騎士達に早めの就寝を命じた。
珠洲音はと言うと、直ぐに就寝はせず周りを警戒していた。
シセリにも早めの就寝を命じて、この日ばかりは皆のために珠洲音が周囲の監視に当たっていた。
「陛下。代わりますぞ。」
テントや外を見回っていた珠洲音の側にブラトが声を掛けて来た。
「ブラト。
頼みます。
また、後で交代しますから。」
「陛下はお休み下さい。
この後はシセリとロトを警戒に当たらせますので。」
「そうですか。
わかりました。
後は任せます。」
「明日は帝都アストロイカに到着です。
何が有るかわかりませんからな。
十分に休息をとって頂かないと。」
風もなく穏やかな夜で物音すら聞こえて来ない。
草原には魔物も居るはずだが、珠洲音の勇者覇気を感じ取っているのか、この場所に近づく者の気配は無かった。
「星がとても綺麗よ。
明日も良い天気になりそうね。」
夜空には満点の星空が広がっていた。
ブラトも見上げると魔王との戦いも別の世界の話の様に感じてしまう。
「星ですか。
陛下はロマンチストですな。
こうして夜空を見上げる時間はここ最近ありませんでしたな。」
「皆が安心して星空を見上げられる日を一緒に掴み取りましょう。」
「そうですな。
陛下とならば出来そうな気がします。」
そして、次の日の朝。
日が登りきらない内に出発する事にした。
少しでも早く帝都アストロイカに到着したいからだ。
予定よりも早く帝都アストロイカの近くまで遠征隊は到着した。
アストロイカには旧帝国の将軍が3人市民と共に暮らしている事は諜報部の調べて分かっている。
「街の様子を見ながら将軍達に接触する方法を考えましょう。」
「は!
隠密スキルを有する私が潜入して参ります。」
今回の帝都アストロイカへのアプローチに関しては街の様子が重要になる。
こちらの動きを察知して警戒しているのか?
出入りする人に関して関所を設けているか?
千差万別の状況は推測されるためシセリの隠密スキルは役に立ちそうだ。
旅人の服装に着替えると街の城壁に入り口があり中に入れた。
門番は何処にも見当たらない。
往来は自由な様だ。
街並みは整備されていて人の往来も多い。
バンシラッドと比べても人口は多そうだ。
情報はやはり酒場か商店。
看板から酒場らしい場所を見つけた。
ドアを開けて中に入ると沢山の人で賑わっている。
「この街は初めて来たのですが、冒険者ギルドは有るのですか?」
カウンターに店主らしき人物が居てテーブルが多数店内には置かれている。
「ギルドは無いよ。何処から来たんだ?」
「バラン-カランよ。」
「遠くからご苦労さんだな。」
「おすすめのお酒貰おうかしら。」
店主がグラスにお酒を注いでくれた。
淡い赤色のお酒だ。
「旅って訳でも無さそうだな。」
「帝国3将軍を探してるの。」
「ああ、あの方達なら居城で皇帝陛下の一族を守ってるよ。」
情報を得たシセリはお酒を一気に飲み干して、酒場を出ると居城の場所を道行く人に聞きながらたどり着いた。
壊れている部分もあり以前の繁栄は面影も無い。
居城の入り口の門には兵士らしき2人の男が立っている。
「私はシセリと申します。我が主人の命により3将軍にお会いしたく参りました。
取り次いで頂くことは可能でしょうか?」
「それは出来ない、帰れ。」
冷たく手で行けという素振りされ、シセリはそれ以上何も言わずその場を立ち去った。
そして、逸早く珠洲音の元に戻った。
一様シセリは戻る時に警戒したが、後を付けられたり、探索スキルを使われている形跡は無かった。
「陛下。戻りました。」
珠洲音が休んでいるテントに戻ってきた。
テントの外にシセリは控えている。
「シセリご苦労様でした。
どうでしたか、街の様子は?」
珠洲音は入り口の垂れ幕を手で開けてシセリを中に招き入れて、珠洲音は椅子に座るとシセリはその前で片膝を突いて控えた。
「街並みは整備されていて人の往来も多い事を確認いたしました。
それなりに自給自足なり流通なりの手段で人々は生活できている様子です。
ギルドの様な組織的な団体は存在しない様です。
酒場に行き3将軍の事を聞き、住んでいると言われた居城にも行きましたが、会う事は出来ませんでした。」
「ご苦労様でした。
短時間で良くそこまで調べてくれました。
感謝します。」
「は!勿体ないお言葉。
3将軍に接触出来なかったのが残念です。」
「そう何もかも上手く行くとは思ってなかったから、シセリは私が望む以上の働きをしてくれたわ。
ありがとう。」
「勿体無いお言葉。
陛下のお役に立てた事嬉しく思います。」
「これからもよろしくね。
ブラトとロトを呼んできてくれるかしら。」
「は!お待ちください。」
シセリはテントを出て行った。
少し嬉しそうな笑みを浮かべた様に珠洲音には見えた。
暫くして、ブラト、ロト、シセリが珠洲音のテントに集合した。
「シセリが街に行って様子を見て来てもらったんだけど、3将軍にどうやって接触するか。
少し意見が欲しいの。」
テントの真ん中で全員が椅子に座ってテーブルを囲んでいる。
「ヴァルーレ王国の旗を掲げて街を占領すれば出て来るでしょうな。
ストレートに一番分かり易い方法が成功すると俺は思うのですが。」
「ブラトの意見ももっともね。
それが確かに正攻法とも言えるわね。」
「他に意見は?」
「私もブラトさまの意見に賛成です。
下手に策を練るより占領してしまうのが分かり易いと思います。」
ロトもブラトの意見に賛同した。
珠洲音もそれが一番良いと思えた。
「私も2人の意見に賛成です。
スズネ様の安全の為、3将軍と交戦になる場合は私どもにお任せ下さい。」
「では、そういう事で遠征部隊を街に侵攻する事で決定とします。
早速準備を。」
「は!」
部隊の侵攻準備に入った。
編成はブラト率いる王国騎士団精鋭部隊100人が先発隊として侵攻を開始。
それに続いてロトとシセリの部隊が侵攻していく。
珠洲音は部隊の一番最後に非戦闘員達とついて行く形で帝都アストロイカに入った。
街の人々は何事かと騒ついているが、ブラトは気にせず街の中央あたりの広場まで行進した。
「これよりこの街はヴァルーレ王国が統治する。
この街の領主は何処だ?」
声高々にブラトは叫んだ。
そこに居る人々にその声は響き渡った。
そして、ざわめきが街を包んだ。
警備を兼ねて駐留軍として50名程街に残してきた。そのまま街の統治も目的としている。
後日、本国より1000人規模の駐留軍が新たに到着する手筈になっている。
珠洲音達は1日掛けて平原を渡切り、目の前には峠が迫っている。
この場所で一泊する事にした。
「陛下。明日峠を越える手筈です。
今日は野営でテントを貼りますので、暫くお待ち下さい。」
騎士の1人が珠洲音に駆け寄って連絡すると、野営の準備が始まった。
「陛下のテントが先だ。
急げ。」
テントは布製の頑丈な作りになっている。
折り畳んで持ち運びが可能で、収納魔法が得意な物資担当者が数名配備されている。
テントの骨組みは軽い金属製で強い風にも対応できるものになっている。
少し離れたところからでも見える上の方に王国の紋章が描かれている。
「シセリ。周辺の様子は如何ですか?」
「は!配下の者が捜索探査しましたが、特に危険な物はない様です。」
「暫く警戒する様に。」
「は!」
戦闘には不向きな者達も遠征には加わっている。
救護班や物資班は非戦闘員になる。
人数が多いわけではないが、危険は出来るだけ排除した方が良い。
「陛下。テントが出来ましたので、お休み下さい。」
「ありがとう。
皆も準備出来次第休む様に伝えなさい。
それと準備が終わり次第私のテントに幹部は来る様に伝えて。」
「は!」
テントの中はしっかりとした絨毯が敷かれている。
ベッドも置かれていて快適な空間になっている。
中央にはテーブルと椅子があり、5人くらいが集まって話す事も出来そうだ。
「陛下。お飲み物は何か召し上がりますか?」
テントには珠洲音の世話係が常時待機している。
彼女は王宮でも側でいつも珠洲音の世話係として支えている女性だ。
「そうね。暖かい飲み物ある?」
「御座います。
お待ちください。」
彼女の名はナホと言う。
ナホは元々宮廷に仕えていた使用人だったが、周りからもとても機転が効く出来た使用人だと言う事で珠洲音の側付きに抜擢された。
本人は身に余る事で勝手なイメージで女王は怖いと思い込んでいたが、珠洲音に会って可愛い女の子である事を知ると本人からも志願されたという経緯がある。
珠洲音は装備を外してラフな服に着替えた。
幹部達は鎧から服に着替えるタイミングが速すぎるのではないかと言う者も居たが珠洲音はラフな格好が楽なので忠告を聞く事は無かった。
「陛下。今年王国で栽培された茶葉から作られた紅茶でフレグランスティーを入れました。
ご賞味ください。」
「ありがとう。
ナホも一緒に飲みましょ。」
「あ、有難いのですが、私は使用人ですので後程頂きます。
陛下はお疲れでしょうから、私は少し席を外しますので、ごゆっくりお寛ぎください。」
気を使ったのかナホは深々と頭を下げるとテントから出て行った。
珠洲音は静かになったテントの中でゆっくりとティーを堪能する事にした。
暫くすると、ブラト、シセリとロトがテントに入ってきた。
「失礼します。」
「座って。」
テーブルの椅子に3人は腰掛けた。
一緒に使用人のナホも入ってきて3人に飲み物を運んで来ると、珠洲音の分も新たに食器を変えて運んできた。
「報告を聞かせて。」
「はい。先ずは私から報告致します。
周辺に町や集落は存在しませんでした。
人や危険な魔物の気配もありません。
引き続き魔物への警戒を行います。」
真っ先にシセリが立ち上がって報告した。
「では、次は私が。
遠征部隊陛下の精鋭部隊、先のバンシラッドに残した50名については、後程無事かどうか確認をとります。こちらに200名全員点呼いたしました。
特に異常はありません。
救護班10名、物資班20名共に問題なし。
体調の悪化を訴える者も今の所ありません。
食糧や薬品、武器に資材共に収納魔法で管理しております。
異常は有りません。」
「次は私が。
本国より駐留軍明日にもバンシラッドに到着いたします。
そのまま50名も待機を命じております。
このまま帝都アストロイカへはあと1日と半日程で到着予定です。
明日1日掛けて峠を越えてから野営を貼ります。
その後半日で帝都アストロイカに到着です。
陛下には不自由をお掛けしますが、もう暫く我慢下さい。」
「報告ご苦労様です。
私は不自由など感じていません。
皆の安全を最優先でお願いします。
特に非戦闘員に危険がない様気を配って下さい。
今日の疲れを労ってあげて下さい。
では、皆も休んでゆっくりしてください。」
「は!」
3人はそれぞれの部下達に労いの言葉と明日からの打ち合わせのためテントを後にした。
翌日、峠を越える為早めの出発する事になった。
峠は馬車でも進める道の広さが有り、崖が危険だが魔物のに注意しながら一日掛けて越える事が出来た。
峠を超えると再び平原が広がっていてこの先に帝都アストロイカがある。
平原を少し進んで安全な場所で野営をする事にした。
部隊に少し疲れが見え始めていた。
王国でも屈指の精鋭部隊だが、これ程日数をかけた遠征はそうある物ではない。
「ブラト。
皆に休息を。」
「は!」
テントを設営すると早めに皆を休ませた。
食事も早めに済ませて珠洲音は部隊の騎士達に早めの就寝を命じた。
珠洲音はと言うと、直ぐに就寝はせず周りを警戒していた。
シセリにも早めの就寝を命じて、この日ばかりは皆のために珠洲音が周囲の監視に当たっていた。
「陛下。代わりますぞ。」
テントや外を見回っていた珠洲音の側にブラトが声を掛けて来た。
「ブラト。
頼みます。
また、後で交代しますから。」
「陛下はお休み下さい。
この後はシセリとロトを警戒に当たらせますので。」
「そうですか。
わかりました。
後は任せます。」
「明日は帝都アストロイカに到着です。
何が有るかわかりませんからな。
十分に休息をとって頂かないと。」
風もなく穏やかな夜で物音すら聞こえて来ない。
草原には魔物も居るはずだが、珠洲音の勇者覇気を感じ取っているのか、この場所に近づく者の気配は無かった。
「星がとても綺麗よ。
明日も良い天気になりそうね。」
夜空には満点の星空が広がっていた。
ブラトも見上げると魔王との戦いも別の世界の話の様に感じてしまう。
「星ですか。
陛下はロマンチストですな。
こうして夜空を見上げる時間はここ最近ありませんでしたな。」
「皆が安心して星空を見上げられる日を一緒に掴み取りましょう。」
「そうですな。
陛下とならば出来そうな気がします。」
そして、次の日の朝。
日が登りきらない内に出発する事にした。
少しでも早く帝都アストロイカに到着したいからだ。
予定よりも早く帝都アストロイカの近くまで遠征隊は到着した。
アストロイカには旧帝国の将軍が3人市民と共に暮らしている事は諜報部の調べて分かっている。
「街の様子を見ながら将軍達に接触する方法を考えましょう。」
「は!
隠密スキルを有する私が潜入して参ります。」
今回の帝都アストロイカへのアプローチに関しては街の様子が重要になる。
こちらの動きを察知して警戒しているのか?
出入りする人に関して関所を設けているか?
千差万別の状況は推測されるためシセリの隠密スキルは役に立ちそうだ。
旅人の服装に着替えると街の城壁に入り口があり中に入れた。
門番は何処にも見当たらない。
往来は自由な様だ。
街並みは整備されていて人の往来も多い。
バンシラッドと比べても人口は多そうだ。
情報はやはり酒場か商店。
看板から酒場らしい場所を見つけた。
ドアを開けて中に入ると沢山の人で賑わっている。
「この街は初めて来たのですが、冒険者ギルドは有るのですか?」
カウンターに店主らしき人物が居てテーブルが多数店内には置かれている。
「ギルドは無いよ。何処から来たんだ?」
「バラン-カランよ。」
「遠くからご苦労さんだな。」
「おすすめのお酒貰おうかしら。」
店主がグラスにお酒を注いでくれた。
淡い赤色のお酒だ。
「旅って訳でも無さそうだな。」
「帝国3将軍を探してるの。」
「ああ、あの方達なら居城で皇帝陛下の一族を守ってるよ。」
情報を得たシセリはお酒を一気に飲み干して、酒場を出ると居城の場所を道行く人に聞きながらたどり着いた。
壊れている部分もあり以前の繁栄は面影も無い。
居城の入り口の門には兵士らしき2人の男が立っている。
「私はシセリと申します。我が主人の命により3将軍にお会いしたく参りました。
取り次いで頂くことは可能でしょうか?」
「それは出来ない、帰れ。」
冷たく手で行けという素振りされ、シセリはそれ以上何も言わずその場を立ち去った。
そして、逸早く珠洲音の元に戻った。
一様シセリは戻る時に警戒したが、後を付けられたり、探索スキルを使われている形跡は無かった。
「陛下。戻りました。」
珠洲音が休んでいるテントに戻ってきた。
テントの外にシセリは控えている。
「シセリご苦労様でした。
どうでしたか、街の様子は?」
珠洲音は入り口の垂れ幕を手で開けてシセリを中に招き入れて、珠洲音は椅子に座るとシセリはその前で片膝を突いて控えた。
「街並みは整備されていて人の往来も多い事を確認いたしました。
それなりに自給自足なり流通なりの手段で人々は生活できている様子です。
ギルドの様な組織的な団体は存在しない様です。
酒場に行き3将軍の事を聞き、住んでいると言われた居城にも行きましたが、会う事は出来ませんでした。」
「ご苦労様でした。
短時間で良くそこまで調べてくれました。
感謝します。」
「は!勿体ないお言葉。
3将軍に接触出来なかったのが残念です。」
「そう何もかも上手く行くとは思ってなかったから、シセリは私が望む以上の働きをしてくれたわ。
ありがとう。」
「勿体無いお言葉。
陛下のお役に立てた事嬉しく思います。」
「これからもよろしくね。
ブラトとロトを呼んできてくれるかしら。」
「は!お待ちください。」
シセリはテントを出て行った。
少し嬉しそうな笑みを浮かべた様に珠洲音には見えた。
暫くして、ブラト、ロト、シセリが珠洲音のテントに集合した。
「シセリが街に行って様子を見て来てもらったんだけど、3将軍にどうやって接触するか。
少し意見が欲しいの。」
テントの真ん中で全員が椅子に座ってテーブルを囲んでいる。
「ヴァルーレ王国の旗を掲げて街を占領すれば出て来るでしょうな。
ストレートに一番分かり易い方法が成功すると俺は思うのですが。」
「ブラトの意見ももっともね。
それが確かに正攻法とも言えるわね。」
「他に意見は?」
「私もブラトさまの意見に賛成です。
下手に策を練るより占領してしまうのが分かり易いと思います。」
ロトもブラトの意見に賛同した。
珠洲音もそれが一番良いと思えた。
「私も2人の意見に賛成です。
スズネ様の安全の為、3将軍と交戦になる場合は私どもにお任せ下さい。」
「では、そういう事で遠征部隊を街に侵攻する事で決定とします。
早速準備を。」
「は!」
部隊の侵攻準備に入った。
編成はブラト率いる王国騎士団精鋭部隊100人が先発隊として侵攻を開始。
それに続いてロトとシセリの部隊が侵攻していく。
珠洲音は部隊の一番最後に非戦闘員達とついて行く形で帝都アストロイカに入った。
街の人々は何事かと騒ついているが、ブラトは気にせず街の中央あたりの広場まで行進した。
「これよりこの街はヴァルーレ王国が統治する。
この街の領主は何処だ?」
声高々にブラトは叫んだ。
そこに居る人々にその声は響き渡った。
そして、ざわめきが街を包んだ。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。



王太子に転生したけど、国王になりたくないので全力で抗ってみた
こばやん2号
ファンタジー
とある財閥の当主だった神宮寺貞光(じんぐうじさだみつ)は、急病によりこの世を去ってしまう。
気が付くと、ある国の王太子として前世の記憶を持ったまま生まれ変わってしまうのだが、前世で自由な人生に憧れを抱いていた彼は、王太子になりたくないということでいろいろと画策を開始する。
しかし、圧倒的な才能によって周囲の人からは「次期国王はこの人しかない」と思われてしまい、ますますスローライフから遠のいてしまう。
そんな彼の自由を手に入れるための戦いが今始まる……。
※この作品はアルファポリス・小説家になろう・カクヨムで同時投稿されています。

せっかく転生したのに得たスキルは「料理」と「空間厨房」。どちらも外れだそうですが、私は今も生きています。
リーゼロッタ
ファンタジー
享年、30歳。どこにでもいるしがないOLのミライは、学校の成績も平凡、社内成績も平凡。
そんな彼女は、予告なしに突っ込んできた車によって死亡。
そして予告なしに転生。
ついた先は、料理レベルが低すぎるルネイモンド大陸にある「光の森」。
そしてやって来た謎の獣人によってわけの分からん事を言われ、、、
赤い鳥を仲間にし、、、
冒険系ゲームの世界につきもののスキルは外れだった!?
スキルが何でも料理に没頭します!
超・謎の世界観とイタリア語由来の名前・品名が特徴です。
合成語多いかも
話の単位は「食」
3月18日 投稿(一食目、二食目)
3月19日 え?なんかこっちのほうが24h.ポイントが多い、、、まあ嬉しいです!


お願いだから俺に構わないで下さい
大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。
17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。
高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。
本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。
折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。
それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。
これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。
有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる