転生しても、皆んなで楽しく過ごしたいだけなんですけど。

馳 影輝

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第一章 ドタバタの集団転生。

第5話 訓練がてら滅びゆく世界を救おう2。王都編その2

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地下の牢獄は薄暗い場所で、周りに窓はない。
特に椅子なども無く、ベッドの様な洒落たものもない。
あらゆる魔法効力を無効にする効果が壁一面に施されている所を見ると、何かを警戒して作られた部屋かも知れない。

"フェリス神さまは、私に嘘をついている。"

"神が嘘を付くというのは、どんな嘘なんだ?"

"私の友人達は別の世界に私より先に転生された筈なんだけど、フェリス神さまもそう言ったけど、皆んなはまだ天界にいる。"

"何故天界にいると分かるんだ。"

"私のスキル無限回廊は一度行った場所や出会った人、触った人、親しい人、大切な人の思念を感じる事ができる。それが例えどれ程遠くても。
師匠達の世界から帰った時、やっぱり天界にいる事を感じられたの。"

神妙な面持ちだった。
それは兎も角、フェリス神が何故嘘を付く必要があるのか気になるところだ。

"フェリス神様のお考えはまだ分からないけど、今はこの世界を救う事が最優先ね。"

とは言うものの珠洲音の表情は晴れないままだ。

暫く沈黙が広がったが、入り口の施錠が開く音がすると。

「4人とも出ろ。」

警備の王国兵が入って来た。

「行きましょう。」

熟睡しているセラフィを起こすと何事が起こっているか理解していないようで、動揺しているのが見て分かる。

ニコニコしながら珠洲音は3人に微笑みかけると王国兵に付いて部屋の外に出た。

王国兵は階段を登り広い部屋に移動して来た。
その後を歩いて同じ部屋に4人もやって来ると、そこが外から見えていたお城の中らしく、綺麗な装飾の壁、そして王族の自画像がある。

「此処でまて。騎士団長が来られて話が有るそうだ。」

王国兵は部屋の奥にあるドアの側で止まると珠洲音達のことを見ている。

4人は部屋の丁度真ん中辺りで待っている。

「あのう~、えっと、どう言う事ですか?」

「あ~、セラフィさんは巻き込まれました。」

「あ、え?何に?何故牢獄に?」

「まあ~、話すと長くなるので後で話しますね。でも、大丈夫ですよ。」

戸惑いは隠せないほど動揺している。
それもその筈、連れて来られ、牢獄に入れられていつの間にか寝てしまい、起こされたら連行されて、普通なら処刑でもされるのかと思っても仕方ない。

奥の扉から数人の王国兵らしき人達が入って来ると、珠洲音達の方に向かって歩いて来た。
人数は3人で明らかに真ん中の立派な鎧の人物が騎士団長である事が、珠洲音にはすぐ分かった。

"Sクラス、パラディンあたりか……相当の力量ね"

王国兵と騎士団長らしき人物は、迷う事なく珠洲音の前にやって来ると。

「私の事をあれこれ詮索する前に、己の命の心配をした方が良いぞ。」
凄まじい気迫と覇気を放って威圧している。
短髪の金髪で角張った顔に鋭い目をしていて、かなり鍛えているのか筋肉質な体型で珠洲音は見上げるほど背が高い。

見た目と気迫の威圧感だが、珠洲音は特に恐怖を感じている様子はない。

「命の心配はしてませんが。」

お互いの威圧感がビリビリと周りのもの達に伝わってくる。

「カイザードラゴンの討伐はお前か?」

「カイザードラゴンは討伐してませんよ。私が屈服させました。あのドラゴンはこの辺りの生態系に大きな影響を与えているので、討伐はしてませんよ。」

「お前は何者だ。」

騎士団長の覇気に殺気が混じっている事を珠洲音は感じ取った。
腰に付けている剣を素早く抜いて騎士団長は珠洲音に剣先を向けた。

「女だからと手加減はせんぞ。」

「一国の騎士団長さんが、無抵抗の少女に剣を向けるなんて。」

「只の少女がカイザードラゴンを捩じ伏せられる訳がなかろう。」

剣には魔法がかけられているのか、薄く光を放っている。
剣先はしっかりと珠洲音を捉えたまま動く事はない。

「カイザードラゴンを捩じ伏せられる私ならこの世界救えるかもしれませんよ。」


「得体の知れない者に頼む道理はない。」

「勇者でも、……ですか?」

「勇者だと?お前のような小娘が勇者だと!」

着用している鎧からも気が溢れている。
鋭い瞳は血走っている。

「はぁ~、騎士団長さまは女性を下に見る方なのですか?」

「勇者だと言うなら、私と剣を交えてもらおうか。」

断る理由も無いので珠洲音と騎士団長との一騎打ちが王宮の外にある格闘場で行われる事になった。

「そのレベルでカイザードラゴンを捩じ伏せられるなど不可能だ。
命乞いをするなら今のうちだぞ。」

「どうぞ、いつでも始めてください。」

かなりの訓練を重ねて来て覇気やオーラは身体から一切溢れていない。
完璧にコントロールしている。

それに比べて騎士団長は覇気が溢れていて分かり易かった。

先に剣を抜いたのは騎士団長だった。
珠洲音はまだ微動だにせず立っているだけだ。

剣を横に構えると素早く珠洲音に斬りかかり、剣先は空を切る、珠洲音は後ろに軽く交わした。

騎士団長の攻撃は激しさを増した。
だが、只空を切るだけで珠洲音に触れる事が出来ない。
珠洲音も特に表情を変える事なく軽く交わしていく。

「逃げるだけでは勝てないぞ。」

騎士団長の振った剣を素早く抜刀して身体の横で受け止めた。

「そろそろ実力をお見せしますね。」

受け止めた剣を跳ね除けると高速で騎士団長の懐中に入り込むと刀の柄の部分でお腹に突きを入れると騎士団長は大きく体制を崩しつつ後ろに倒れ込んだ。

致命的なダメージでは無かったので、ゆっくりと騎士団長は立ちあがってきた。

「そこまでですね。」

奥の扉から一人男性が入って来た。
男性は細身の長身で全身を鎧を身に付けている。
鎧は豪華なプレートを使用している為、ある程度の身分の者である事は推測できる。

「ブラト騎士団長。そこまでです。国王陛下がそちらの女性とお会いになるそうです。」

「…….、アルファルド親衛隊長殿。」

騎士団長を諌めつつアルファルド親衛隊長は珠洲音の前に来ると、礼儀正しく軽く一例をした。

「失礼いたしました。国王陛下がお会いしたいそうです。」

「そうですか。わかりました。」

入り口から外に出ると国王に会う為に来賓室に通された。
それまでとは違って礼を尽くされた客人の扱いを受けている。

「で、この後どうするんだ?」

部屋の中では豪華な椅子とテーブルが並んでいてフゼンとセリザワは椅子に腰掛けた。
珠洲音は大きな窓の側に居て外を眺めたりしている
外を見ている珠洲音に対してフゼンが気になっていたのか、話し始めた。

「この国って豊かよね?此処以外の国は如何なんだろう?」

「そこか?」

豊かさには沢山の人の努力や苦労がある事は想像できる。
国王と謁見前に珠洲音の心は揺れていた。
カイザードラゴンと魔王の話。
国王がどの様な交渉をして来るのか?
それにフェリス神の嘘。
気に止むところが多い。

1時間程待たされただろうか。
迎えの騎士が部屋に入って来ると、謁見の為、国王の待つ部屋に到着した。

部屋の扉は大きな作りで豪華な装飾が施されている。
恐らく謁見の間とでも呼ぶのであろう。

扉が開くと赤と金の刺繍が施された絨毯が足元に敷かれている。
その奥には大きな椅子があり其処には国王らしい人物が座っている。
その周りには10人程の騎士とあの親衛隊長と呼ばれていた人物が立っていた。

「よく来られた。待たせて申し訳ない。」

親衛隊長のアルファルドが、珠洲音達に近づいて声をかけて来た。

「国王ラルクベルト3世陛下です。」

珠洲音達の前には国王が大きな椅子に座ったまま見つめていた。

「よくぞ来られた。国王のラルクベルト3世だ。」

国王の椅子の前には5段ほどの階段がある。
その階段の少し後ろに4人は並んで立っている。

「私は永野珠洲音と申します。
こちらは仲間のフゼンとセリザワトウゴ、セラフィです。」

一歩珠洲音が前に出て軽く会釈すると3人を紹介した。

「其方がカイザードラゴンを屈服させたと言う冒険者か?」

「そうです。」

「まだ若い様だが、歳は幾つになる?」

「17歳です。」

「何と、まだ子供では無いか!」

国王の質問に何の意味があるのか、珠洲音には疑問でしか無かったが、年齢を聞いて騎士達もざわつき始めた。

「………、それで私達に何か聞きたい事が有るのではないですか?」

「む、失礼した。まさかそれ程若いとは思って居なかったものでな。」

"若い若いとうるさいおっさんだなぁ~"と珠洲音は心で呟いていた。

「……。で、御用とは?」

「おお、そうであった。其方はかなりの強さと聞いておる。故に騎士団長との剣を交えている所を見させてもらった。
如何だろうか。
世に仕える事を許すぞ。」

"覗き見してたのね。趣味悪"
顔には出しては居ないが、気分が悪くなる。

「どういう言う事でしょうか?」

「この国を守る騎士の称号を与えられるという事だ。」

「騎士……、ですか。
   ………お断りします。」

珠洲音の発言に騎士達が一瞬ざわめいた。

"おい、珠洲音。なんだこの茶番は?"

"フゼン。ここは私に任せて。"

珠洲音自身も国王の発言にイライラして来ていたが、フゼンもイライラしている。

「何と!断ると!」

「其方ら、国王陛下のご好意を下にすると言うか?」

騎士の中によく見ると騎士団長のブラトが立っていた。
そして、珠洲音の発言に怒りを露わにしている。

「では、力尽くで私の膝を地に着かせますか?」

「何だと!」

殺気立っている騎士団長のブラトは珠洲音の側に歩み寄り睨み合う形になった。

「ブラトよ、下がれ。」

「は!」

2人の様子を見て国王はその場を制すると騎士団長のブラトは軽く頭を下げて元の位置に戻っていった。

「中々、骨のある娘よ。騎士団長の威圧を見ても下がらぬとは。」

「私から国王陛下にお尋ねしたい事が有るのですが、宜しいでしょうか?」

珠洲音は今いる場所から一歩前に出た。

「発言を許すぞ。」

「ありがとうございます。それでは早速お尋ねいたします。
この国は裕福に見えます。ですが、魔王3人が他の国を占領していると思うのでが、それを如何お考えですか?」

「うむ、その事か。このシャルネゼ国にはSクラスの騎士、騎士団長のブラト、親衛隊長のアルファルド、十王魔術師団団長のクリスなどを有しておる。それだけでも十分魔王3人に対する牽制になっている。魔王3人もお互いに牽制しあっている事もあって此方まで戦力を割く余裕が無いと思われる。
それがこの国を裕福に見せている事実だ。」

国王の発言に珠洲音は神妙に聞き入っていたが、決して笑顔を見せる事は無かった。
この国の安心材料だけ見れば喜ばしい事ではあるのだが。

「そうですか。私がカイザードラゴンから聞いた話とはかなり違うようですが。」

「ほお、王たる竜(カイザードラゴン)は何と申しておったのだ。」

珠洲音の発言に国王の表情が少し曇ったのをセリザワは見逃さなかった。

"珠洲音?なんだ今の国王の反応は?"

"師匠。作戦変更です。"

"何だ何だ!面白くなって来たな"

"え?え?え?"

3人の反応は様々だ。
セリザワは警戒を強めているし、フゼンは薄ら笑いを浮かべている。セラフィは訳が分からなくてオドオドしている。

「カイザードラゴンは………。」

"みんな私の所に集まって"

思念により3人は珠洲音の側に集まると同時に。

"バーディン"

その瞬間、珠洲音の足元に大きな魔法陣が現れた。
それと同時にその場が騒然となった。
そして、カイザードラゴンが召喚された。
珠洲音は召喚魔法を使ったのだ。

「バーディン頼みます。」

召喚されたカイザードラゴンの背に4人は乗せられると、カイザードラゴンは部屋の壁を突き破り高速で飛び街の外に飛び出した。

カイザードラゴンはそのまま火山の方角に飛び続けて、火山麓の地上に降り立った。

4人は地上に降り立つと、珠洲音以外は混乱した様な表情をしている。

「バーディン。ありがとう。」

"あの様な場所に呼び出すとは、まあ良いがな。"

カイザードラゴンと珠洲音は親しそうに話をしているのを3人は見て固まっている

「おい!説明しろ」

先ずはセリザワが口を開いた。

「なんだなんだ、面白くなって来たと思ったら撤退か?」

「カイザードラゴンとは血の契約を結んでいつでも召喚できる様になったの。
こう言う事もあるかも知れないと想定はしてたから、助かったわ。
それに戦う選択も考えてたけど、ちょっとはっきりしない事も増えたし、セラフィさんのレベルだと私も守り切れないと思ったから。」


「あ、あ、あ、すいません。」

カイザードラゴンの頭を撫でながら珠洲音は話しをしている。
その様子も3人には疑問でしか無かった。

「この世界の魔王は3人。その1人がシャルネゼ国の国王ラルクベルトよ。」

一瞬間があったが。
え~!
なんと!
へぇ~!
3人は驚いて同時に声を挙げた。

辺りはすっかり暗くなっていた。
今日はこの場所で休む事にした。
幸いにも山小屋があり、カイザードラゴンは自分の住処に帰っていった。

山小屋は今も使われているのか、綺麗に整備されている。
暖炉やベットも幾つかあり、この周辺の調査に来る者の為に用意されている物だろう。

珠洲音とセラフィは山小屋の奥に小部屋があり、そこで着替えをしている。

「やっぱり似合う。」

2人が出て来ると。
珠洲音はピンク色のモフモフした上着にフードが付いていてフードには動物の耳の様な飾りが付いている。
そして、モフモフの短パンにモフモフの靴下。
セラフィも全く同じ格好で出てきた。

「ねぇ、可愛いでしょ。」

「お!可愛いぞ。」

2人は並んで立って、珠洲音はフゼンとセリザワに自慢げに自分の姿を見せている。
セラフィは恥ずかしそうにしている。

「私の生まれた国では寝る時とか部屋にいる時はこう言う格好なの。」

「そうなのか。」

4人は暖炉の前に集まると床に座って談笑をしていた。

「そう言えば、魔王の一人がシャルネゼ国の国王ラルクベルトだと言うのは本当なのか?」

3人はやはりその事が気になっていた。

「バーディンの話だと、あ、カイザードラゴンの名前ね。
数年前から国王の精神を乗っ取って魔王がラルクベルトに寄生してるらしいの。
でも、それだけじゃ無い。家臣の何人かは魔王の配下ね。」

「配下の何人かが魔王の……。これからどうする。」

冷静な行動はセリザワの得意技でもあるが、セリザワとしても国王の城での対応は気になっていた。

「魔王だって言うんだったら、一気に乗り込んで倒せば良いだろう。」

いつもの様にフゼンは血の気が多い。

「そうも行かないわ。家臣の何人かが手先で、何人かは人間。乗り込んで誰を倒して誰を助ければ良いのか。今はわからないから。」

「見抜く方法を考えないとダメですね。」

今までよく考えてみるとセラフィはドタバタで成り行きに任せて此処まで来ている。
今は冷静に話していたが、珠洲音もセラフィに事情を話していない事に気がついた。

「あ、そうよね。セラフィさんはよく分からないままついて来てるよね?」

「あ、そうです。」

「私達は別の世界から転送されて来たの。」

「え?そうなんですか?」

「そうなの。この世界を救う為に。」

「珠洲音さまは勇者なのですか?」

「そうね。一様勇者よ。」
勇者と言うワードにセラフィの瞳が輝いていた。

「凄いですね。勇者なんて、この世界の勇者さまに会った事があるんですけど、おじさんでした。」

「会った事があるのね。この世界の勇者の話をまた聞かせてね。魔王の事をバーディンから聞いた事を話すね。」

カイザードラゴンから聞いた話を3人にも詳しく話した。

1人目の魔王は西を支配している残虐の死神バロン。
バロンはSSクラスで、支配している領土の人間を殲滅してしまっているらしい。
詳しい能力は不明だけど即死系のスキルとアンデッド軍団を有してるらしい。

もう一人は北を支配しているインビジブルカオスと呼ばれているイスラ。
その名の通り誰も姿を見た事がない。
SSクラスで北の地を毒土に変えてしまって人が住める場所では無いらしい。

そして、シャルネゼ国に国王ラルクベルトを乗っ取り支配している夜叉鬼ザンキ。
SSクラスで精神支配を得意としている。

どの魔王も一筋縄ではいかない強さだ。

「東にこの国の元騎士団長がレジスタンス活動をしているそうだから、その人達と合流するのが良いかもしれないわね。」

「明日にもそのレジスタンス達と連絡を取って合流するか?」

「その前に師匠にお願いがあるんですけど。」

「ん?何だ。」

「レジスタンスの合流の前に私はセラフィさんのレベルアップをしておきたいの。それで同行して鍛えて欲しくて。」

「え?」

一番びっくりしたのはセラフィかも知れない。

「私も一緒に行動して良いんですか?」

「はい。セラフィさんのステータスを見させてもらいましたが、レベル25、魔導士で能力的には魔力高めなので鍛えれば強くなるし、補助系魔法と風魔法、光魔法が得意なのね。戦力は多い方が良いし。師匠にレベル50くらいまでは上げてもらいたいです。」

「わかった。任せろ。」

こう言う事はセリザワが適任なのを珠洲音は知っている。
責任感も強く魔導士のパートナーとしては剣士が相性が良く、指導には慣れている。
これ以上の適任は無かった。

「俺はどうする?」

「フゼンは私と楽しいお仕事よ。」

ニッコリと珠洲音はフゼンに微笑んだ。
フゼンも親指を立てて、笑みを浮かべていた。
楽しいお仕事という言葉が気に入ったらしい。

「トウゴ。俺は珠洲音と楽しい事が出来るそうだぞ。」

「……。それがどうした?」

「羨ましいだろう。」

「………。何を言っている。」

「明日から珠洲音を独り占め出来るのか~。」

男二人の様子を珠洲音とセラフィは黙って見ている。
珠洲音はこの二人が自分に好意を抱いている事は知っているが、そんな2人の様子も面白いと思っている。

暫く2人のやり取りは続いた。
その日は、このまま寝る事にした。
今後どうなるか考えていると珠洲音は中々眠れずにいた。

「セラフィさん、寝た?」

「いえ、寝れなくて。」

「いろいろ考えてたら私も寝れなくて。」

男達は床でベッドは2つしかないので珠洲音とセラフィが使う事になった。

「そう言えば、良かったらセラフィさんの事聞かせてもらって良いですか?」

「良いですよ。……、私は西の国で元々はタルタニアと言う王国の騎士団に父は所属していて、剣の腕でも名を馳せて居たので、勇者さまと魔王討伐の軍を率いて居ました。
私は父に憧れて騎士団に入りたかったのですが、凄く反対されてしまい。
冒険者の道に進みました。
魔法が得意だったので今の魔導士の職業を鍛えて来ました。
魔王は元々3人では無く、1人だったのですが、どこからとも無く2人の魔王が現れて父も勇者さまも死んでしまいました。
どの様な経緯で死んでしまったのかは分かりません。
私は西のタルタニアから南に降ってこのシャルネゼ国に辿り着きました。
この国は難民も受け入れて居ましたので、助かりました。
母も父も魔王軍に殺されてしまい。
天涯孤独になってしまって。
私程度の実力では魔王に一矢報いる事も叶わず。
少し心が腐っている所をフゼンさまが声を掛けてくれたんです。」

「お父様は立派な方だったのですね。ご冥福をお祈りします。」

2人はベッドで寝ながら天井を見ながら話をしている。
夜は静かで虫の声が外から聞こえるだけだった。

「私、珠洲音様のことも知りたいです。」

「え?、私?ですか?………、私の生まれた世界ではこの世界とは違う発展をしてて、スマホとかテレビとか車とか、便利な世界なんです。
私なんて毎日スマホばっかり触って見てました。
あ~、スマホって言うのは手の平より少し大きい位の機械なんですけど。
両親は父が会社を経営してて、母は専業主婦。
私は修徳高校と言う学校に通ってました。
結構有名な進学校で将来は大学に行って、会社に就職して、誰かと結婚して、子供を産んで育ててって言う人生プランあったんだけどなぁ~、事故で死にました。
学校の友達達と一緒に死んでしまって。
転生者なんです。
パパとママは私が死んで悲しんでいるだろうなぁ~って時々考えちゃいます。
とっても親不孝な娘でごめんねって。
セラフィさん、私と一緒に魔王を倒しましょう。
もう誰の悲しむ姿も見たくないし、悲しむ人を作りたくない。」

「私が珠洲音さまの力になれますか?」

「大丈夫。セラフィさんにしか出来ない事がきっと有ります。」

夜が深くなっても2人はたわいも無い話しを過ごした。
どちらが先に寝てしまったのか、分からないまま2人は深い眠りについていた。
お互い話す事でより理解を深めていく事ができた様だ。
明日から始まる魔王との壮絶な戦いなどこの時は知る由もなかった。
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