転生しても、皆んなで楽しく過ごしたいだけなんですけど。

馳 影輝

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第一章 ドタバタの集団転生。

第4話 訓練再開。また滅びゆく世界を訓練がてら救おう2 王都編

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何となくフェリス神のご機嫌が悪い事にずっと珠洲音は気が付いていた。
恐らく、フゼンがいる事についてだろう。

「珠洲音さん。ちょっと」

セリザワとフゼンを残して少し離れた所に珠洲音は連れてこられた。

「珠洲音さん、魔法も剣術も戦い方もバッチリ会得したようですね。」

「はい。2人のお陰で急成長です。」

「そうよね。そこで!力試しに救って欲しい世界があるの。ちょっと大変かも知れないけど。」

「わかりました。今なら何でも出来そうです。」

今回の修行で珠洲音の表情は明らかに自信に満ちたとフェリス神は感じている。
それは珠洲音が自分の力に自信を持つ事が出来たからだ。

「今回は変な物を連れて来ないでね。」

かなり具体的に嫌味を言われた。

「……わかりました。」

悪い事をしたとは思っていないが、フェリス神のフゼンを見る目がヤバイかった。
今にも戦いでも始まるのでは無いかと思う程だった。

「それでは、転送しますね。今回は世界に勇者はいません。状況としては魔族8対人間2ですね。そして魔王は3人居ます。」

「わかりました。では行ってきます。」

珠洲音達の足元に魔法陣が浮かび上がるといつもの様に転送した。

転送されたのは、大きな街で高台には大きな城が見えている。
恐らく何処かの国の王都らしい。
街の様子からも、話に聞いていた魔族に侵食された世界とは思えない程発展している。

チラッとフゼンを見るとしっかり人間にに擬態していた。
赤い肌もちゃんと肌色に変わっている。
髪は黒色で短髪。
大したものだと珠洲音は感心した。

「へぇ~、人間の姿もカッコいいわね。」

「当たり前だ。」

言われて満更でも無いのかフゼンはドヤ顔でセリザワを見ているが、特に誰もその事に反応していない。

「珠洲音、これからどうする。」

「そうですね。この街の情報を集めましょう。」

街の中は沢山の人達が居て穏やかだった。
特に壊れている建物もあるわけでも無く、珠洲音には分かっていたが街全体に結界が張られている。
特に強力な結界というものでは無く、低級の魔物を防げる程度だ。
現にSクラスのフゼンは難無く行動している。

街の中を歩いていると、宿屋や武器屋、酒場に薬屋、防具屋など冒険に必要であろう店舗が軒を並べていて、それなりに人の賑わいがある。

よく見ると冒険時ギルドの看板が見えた。

冒険者ギルドはあらゆるクエストを統括している。
魔物の討伐や一般人からの細かな依頼。
あらゆる情報が集まる場所でもある。

「宿屋で作戦会議しますよ。」

「この世界の通貨は持っているのか?」

セリザワの指摘の通りこの世界での通貨は絶対不可欠である。

「そうですよね。それだったら何か売ってお金にすれば良いですよね?」

「だったらこれを売れ。」

ポケットからフゼンは魔物の角を取り出した。
その角は白い色で大きさは手の平に収まるくらいだが、立派な物だった。

「ありがとう。この角は魔物の角?」

「ああ、そうだ。俺は倒した奴の一部を持っている事にしている。戦利品だな。」

「そんな大事な物良いの?」

「大事か……、好きに使え。」

早速道具屋に行くと店の主人に魔物の角を鑑定してもらった。
買取は基本的に鑑定スキルで行われる。
レア度が高いほど高額で売れる。

「良い品だ。これなら金貨5枚で買い取るよ。」

「フゼン?どう?」

「お前が良いならそれでいい。」

「おじさん。それでお願いします。」

この国の硬貨が手に入った。
金貨は恐らく高価だろう。
その下が予想では銀貨、そして銅貨となる予定だ。

宿屋の前に、他の通貨も見たくなったので、それ程高値がつきそうも無いアイテムを鑑定してもらった。

やはり、銀貨、銅貨と受け取る事が出来た。

道沿いの目立つ所に少し作りのいい宿屋を見つけた。
そこに3人は入って行くと。
店内は質素な作りだが、良い職人が仕上げた彫りが随所に施されている。
和風というよりは洋風な建築仕様だ。

「今日から泊まりたいのですが、部屋は空いてますか?私が一部屋と、この2人に一部屋。」

「そうですね。大丈夫でございます。1人部屋が3部屋でもご案内出来ますが、2部屋で宜しいですか?」

「じゃあ、3部屋でお願いします。」

部屋の鍵を店主から渡されると其々に鍵を渡した。

「部屋に荷物を置いたら私の部屋に集合で。」

其々部屋に荷物を置くと、珠洲音の部屋に集まった。

「私の作戦なんですけど、3人も魔王が居るので、ババハーンと行くのはちょっと辛そうだし、魔王のクラスもまだわかって居ないので情報収取を兼ねて冒険者ギルドに登録するのはどうかな?」

「慎重に行動する事は大事だ。情報収集は必要だろうな。」

「俺は珠洲音に任せるぜ。3人の魔王か~ワクワクするな。」

「じゃあ、冒険者ギルドに登録して、情報収集!これで行くね。」

珠洲音としては、慎重に行動しつつ情報を集めて確実にこの世界を救いたいと考えている。

「その前に。2人の装備を渡します。」

「装備?」

「そう、先ずは師匠の剣。」

手の平を上に向けると空間から一振りの日本刀が現れた。
黒い鞘はシンプルだが所々に金色の装飾が施されている。
柄の部分も黒い柄巻、柄頭には黒色の金属製の物が付いている。
鐔は代表的な円型で銀色の素材だ。
全て珠洲音の創造によって作られたオリジナル品になる。

「フゼンと戦った時に折れちゃったから、私の剣と同じ素材で作りましたよ。」

「そうか、昨日作って居たのは装備だったのか。ありがたく使わせて貰う。」

鞘から剣を抜くと綺麗な薄い青色の素材で出来ていて刃紋も綺麗に入っていた。

この世界に来る前にせっせと作っていたのだ。
セリザワ自体は予備の剣を持っていたが、今度は簡単に折れないようにと、珠洲音なりに考えての事だった。

「それと防具も作りました。」

剣に続いて防具も取り出した。

「防具は着物風に作りましたよ。繊維は私の防具と同じ素材で肩と脇腹背中にプレートを遇らってます。」

「日本刀に合わせてくれたのか。ありがたく使わせてもらうよ。」

防具と言うよりは日本の着物を参考にした防具となっている。
それとは別に具足と小手も着けて日本の武士の様な装備だ。

「フゼンには、手甲ね。
どんな物を使っているか分からなかったから、私なりに考えて作ってみたの。
素材は私の武器と同じだから丈夫よ。」

同じようにして空間から取り出すと、白を基調として、赤と黒を織り交ぜた立派な手甲を作っていた。


「中々、良い出来だぞ。俺は武器は使わんが、珠洲音が作ってくれたのであれば喜んで使うぞ。」


「それと防具も。
フゼンには軽装で、プレートタイプにしたよ。
左胸から背中に回す作りで腰巻きと具足になってる。」
防具の色は燻銀の色になっていて、渋い使い込まれた雰囲気を出している。

それぞれ武器を装備すると剣を抜いてみたり、眺めてみたり喜んでいる姿に珠洲音も満足だった。

「あ、それと師匠には腕輪とフゼンにはベルト。」

また空間から取り出すと、それぞれを2人に渡した。

「これも良いのか?」

「はい。それは私の指輪と同じでフェイクスキルを作るためのフェイクアイテムです。そのままだとレベルが2人とも高いし、クラスもSだからギルドに登録する時いろいろ詮索されそうで。」

「なるほどな。これを付けるとステータスが変わるのだな。」

珠洲音から受け取ったベルトを装備したフゼンは自分のステータスを見てみると。

「俺はレベル30か、全体的に平均的な能力値だ。
職業は格闘家。良いじゃ無いか。」

「格闘家はファイターの派生上位職だからフゼンにはピッタリでしょ。」

腕輪も同じようにセリザワが装備するとステータスを確認した。

「なるほど。レベル30。
職業は侍か。装備にあってるな。
能力値も特に飛び抜けた感じがない。」

「師匠は侍って感じじゃないですか。
侍は剣士の派生上位職だし、日本刀によく合うでしょ。」

「私はもう既に使っているので、レベルは今は28、職業は魔法剣士。実はレベル上限突破しているので中々上がらないんですけど。」

「ん?レベルが上限を突破している?」

セリザワは珠洲音の発言に反応して不思議そうな顔をしている。

「まあ~いろいろあって。そんな事より冒険者ギルドに登録に行きますよ。」

笑顔で腕を上げて、珠洲音は嬉しそうに立ち上がると部屋を出て冒険者ギルドに向かった。

「こんにちは。冒険者ギルドに登録したいのですが。」

冒険者ギルドには多くの冒険者が集っていた。
珠洲音達が入って来ると、そこに居た全員の視線が注がれた。

「登録かい?どこから来た?」

ギルドの登録カウンターには年配の男性が座っている。
その男性以外には何人かの女性スタッフがいるようだ。

「西から王都はまだ安全だと聞いて来たのですけど。」

「ノベルトか?あそこはもうダメだからな。このシャルネゼ王国の王都グランポリスは平和なものさ。」

「あちらでも冒険者をしていたのですが、新たに登録した方が良いですよね?」

今まで恐らく経験のない話をしているが、セリザワもフゼンも珠洲音の淡々と熟す姿に感心していた。

「登録はして貰わないとクエストの受注は出来ないよ。」

「では、3人登録します。」

「じゃあ、ステータスを確認するからこの水晶な手をかざして。」

ギルドの受付にはステータスを確認するための装置がある。
ステータス以外にもクラス表示や職業などの確認も出来る。

「登録完了だよ。3人とも冒険者ランクCだね。それに見合ったクエスト受注出来るから、クエストカウンターで受注してくれ。」

「登録完了~、クエスト見よう。」

クエストボードと言うものがあり、そこにランク毎のクエストが掲載されている。
上機嫌の珠洲音は一つ一つクエストを確認している。

「あ、これにしょ。」

それは討伐クエストだった。

「ファイヤーリザードの討伐か。」

クエストボードからフゼンが依頼書を外すと内容を確認している。

「これを受付に出せば良いのか?」

「私が出してくる。」

依頼書を受付には出すと詳細が書かれた依頼書と交換され細かな条件が書かれている。

「ファイヤーリザードが街の外れのダンジョンに発生していて交易の妨げになっているようだな。」

「じゃあ、私行ってくるね。」

依頼書をフゼンからサッと取るとあっという間に行ってしまった。

「あれ?」

「珠洲音の奴」

何かを考える間も与えない程手際良く珠洲音は行動した。

"あ~、街でも見廻ってて。"

すぐ思念伝達で珠洲音が伝えてきた。

仕方が無いので、フゼンは酒場に、セリザワは道具屋に顔を出していた。

酒場は冒険者達の集まる場所でもあり、情報には事欠かない。
気性の荒い冒険者も多いのか、所々喧嘩をしているもの達もいる。
酒場の中は外から見るよりも広い印象で、30席ほどテーブルが並んでいて満席に近い賑わいだ。
そんな中、一番奥のテーブルに女性が一人で座っていた。

赤い髪が印象的で背中辺りまで伸びている。
座っている椅子の横には杖を置いているところを見ると魔導士か魔法使いを職業としているのだろう。
何となくその女性が気になってフゼンはそのテーブルに近づいた。

「ここは空いてるか?」

「え?あ、空いてますけど。」

「一緒に飲もうぜ。」

話を聞いていると別の街から今日やって来たらしく。
フゼン達と同じ様に今日冒険者ギルドに登録した話で盛り上がっていた。

道具屋に来ていたセリザワは、この世界の道具に興味を抱いていた。
自分の世界には無いものもあり、幾つか珠洲音にも見せてやろうと買い込んでいた。

そして、2時間くらいフゼンもセリザワもそれぞれの場所で時間が経過した。

酒場を赤髪の女性と出てくると、沢山の騎士に囲まれた。

時を同じくしてセリザワも道具屋から出ると同じ様に騎士達に囲まれた。

「我々は王国騎士団だ。お前は永野珠洲音共に本日この王都にやって来た。者に間違いないか?」


2人ともここで揉め事を起こすのは不味いと考えて、特に抵抗することもなく連行される事を選んだ。

そして。

「おい!珠洲音!何をした?」

「ハハハ、何もしてないよ。」

4人纏めて同じ牢獄に収容された。
その牢獄は窓ない周りを特殊な鉱石で作られた地下にあるらしい牢獄だった。
部屋の広さは4人でいても狭さは感じない。
その中でフゼンは腕組みをして珠洲音を見ていた。

「……、フゼン?誰?」

見た事が無い女性がフゼン共に連れられて来たので、珠洲音は気になっていた。

「あ、セラフィです。」

「何?フゼン、ナンパしたの?」

「はぁ?ナンパ?なんだそりゃ。」

「酒場で意気投合しまして……。」

ふたりが一緒に此処に来た経緯をセラフィは話してくれた。

「まあ、良いわ。」

そう言うと珠洲音はセラフィに向けて人差し指を指した。
それと同時にセラフィは眠りについてしまった。

「ん?」

眠りに入ったセラフィはフゼンの方に倒れかかってフゼンは支えるとゆっくり床に寝かせた。

「ちょっとね。3人で大事な話がしたくて。」

牢獄には窓は無いし、扉は有るがかなり丈夫なドアだ。
人の気配もしない。
特に何かの監視スキルも検知しない。

"ここからは思念伝達で会話をするね"

思念伝達における会話は、精神世界での交信となるため異空間にいる様な感覚になると言われている。
特に珠洲音の無限回廊の効果もあって言葉だけでは無く、魂も繋がって異空間で直接対面して会話できる。

"先ずはこの状況を作りたかったの。
フゼンが持っていたアイテムを鑑定された事によってこの状況が作れるって確信したのよ。"

"あの売ったアイテムか"

"そう、鑑定に出す前に私も鑑定したんだけど。"

道具屋で珠洲音は渡す前に鑑定をすると、アイテムは
"この世界の物質ではありません。鑑定不可能。"
と出ていた。

"それで何故こうなる?"

"鑑定してくれたおじさんが鑑定出来ないから買い取らないと言ってくるか、言わないか、それによってこの国の事情がわかるのよ。"

"どう言う事だ"

意味深な言い回しで2人にはまだ珠洲音の目論見の検討が付いていなかった。

"返して来ないと言う事は珍しいから高値で取引出来ると思ったか、もう一つは国から怪しい物が見つかったら報告する様に義務化されてるか。"

"珠洲音は何故そう思ったんだ。"

結果としては投獄された。
しかし、それは可能性の問題であり、高値で売れる物だと思われたらそれまでだとセリザワは思った。

"この世界の情勢とこの国の平和さを考えたらある程度予測が付きますよ。
フェリス神様からこの世界は魔族が8割の勢力で人間が2割って言ってたのに、この国の平和さは不自然です。
結界は貼られているけど、それ程強固な物でもないし、となると答えは一つ。
あらゆる事に敏感になってて未然に脅威を排除し続けている。
恐らくかなりのクラスの人間も存在してる筈。
それと異世界から転生者も多い。
転生者のチェックも兼ねてる。
そうしたチェック機構がしっかりしてるのだと思ったんです。"

言われてみるとこの国の平和さは不自然な感じもする。
それが珠洲音の読み通りかまでは確信は無いが、可能性として考えられると2人は思った。

"だが、それだけ警戒しているのなら魔族の俺が簡単に侵入出来るのは何故だ。"

確かにフゼンの指摘通り魔族の侵入を簡単に許している。
不自然である事は間違いなかった。

"それは2つ理由があるの。
一つは人間に擬態してる事。
一つは私と一緒に居る事。
この国の結界には低位の魔物用と見た目での判断するように結界に魔法が施されてる。
それと私のスキルの影響で人と認識されてる。
私の"真理"(まこと)は万物の思念を支配する力があるの、恐らく私がフゼンを魔物では無く人間と認識している事で、この世界では人間と認識される。
この街に入った時、自然の思念を読み取った時にフゼンが魔物として認識されて居なかった。
それも確認済みよ。"

"珠洲音にしては、いろいろ考えているんだな"

"珠洲音にしてはって、失礼な!"

2人は珠洲音の成長を感じている。
思って居たよりもいろいろな事を考えているのだと、セリザワは感心していた。
フゼンは腕組みをしながら、珠洲音の思慮深さに頼もしさがあり、これからの成長が楽しみだ。

"それで、フゼンのアイテムが異世界の物だと今頃物議を交わされていると言うことかな?"

"師匠の言う通りです。今頃会議でも開かれてるかもしれません。
そして、王様か皇帝か、わからないけど謁見が出来る状態に持っていければベストですね。"

"だが、それだけで謁見まで行くだろうか?"

"師匠の心配は最もですけど、その辺は大丈夫です。
ちゃんと手は打ってありますよ。"

珠洲音は悪い顔をしている。
2人もまだ含みのあるその言葉に苦笑いしていた。

"何を仕込んだ?"

"え?あ~、師匠達が暇してる時に、ちょっとね"

それは今から4時間前の事。

ギルドの依頼書を手に珠洲音はダンジョンに向かった。
ファイヤーリザードはダンジョンの中に数十匹程居たが、あっという間に片付けると報告用の部位を回収してダンジョンから出て来た。

「ん~、簡単だったなぁ。」

冒険者ギルドに戻り報告すると。
自分たちには縁が無いが、ランクSの依頼に目が行った。

「カイザードラゴン討伐。ランクSで7つ星って最高クラスの難易度か~。」

クエストカウンターに駆け寄ると受付にそのクエスト依頼書を持っていった。

「このクエスト受注って出来ますか?」

受付には女性の担当者が居て、依頼書を珠洲音から受け取ると怪訝そうな表情をした。

「あなたはランクCですよね?無理ですね。」

「そうなんですか?わかりました。」

ギルドから外に出ると街の外に飛行スキルで飛び出していった。
そのまま高速飛行で飛び続けて30分程行くと、活火山が見えて来た。

「あそこね。」

その場所はギルドで見たカイザードラゴンの住処だった。
火山は常に噴煙を上げていて、冷熱無効スキルが無ければ暑さで近づくのも難しいだろう。

「カイザードラゴンは~、何処かなぁ~。」

"絶対零度魔光"
どんな熱源でさえも一瞬で凍りついてしまう最高位の氷結魔法だ。

火山は一瞬で凍りつき、噴煙も止まった。

「ドラゴンって寒いの苦手そうだよね。」

暫くは何も起こらなかったが、火山が大爆発して、その噴煙の中からカイザードラゴンが飛び出して来た。

"お前がやったのか?何しに来た?"

思念で珠洲音の心に直接カイザードラゴンは話しかけて来た。

「ギルドから討伐依頼が出てるから、討伐しに来ましたよ。」

"ん?お前は……、勇者なのか!"

「あ~、わかっちゃいました?そうです。」

"勇者だと……、以前死んだ筈だ。"

「まあ~良いじゃ無いですか。悪いけど私の踏み台になってね。」

腰の鞘から剣を抜くと、高速転移でカイザードラゴンの前に現れると真一文字に切り裂いた。

カイザードラゴンの硬い鱗もバッサリと切り裂いて、鮮血が吹き出した。
その攻撃にカイザードラゴンは怯んだが、素早く後ろに身をかわすと傷口は直ぐに塞がった。

「あ~、やっぱり超速再生使えますよね。困ったなぁ~。」

"人間風情が、この私に勝てると思ったか。"

高速の剣技で無数に斬りつける。
珠洲音の攻撃は凄まじかった。

「ドラゴンは万能の知恵者でもあるわよね?魔王の事はどれくらい知ってるの?」

"魔王の事が知りたいのか?"

「3人の魔王について、教えてくれたら嬉しいんだけど。」

魔王について、カイザードラゴンは詳しく話し始めた。
話を聞いているとカイザードラゴンのお陰でこの国には魔物の出現が抑えられているらしい。
魔王達とは敵対しているわけでは無いらしい。

このままドラゴンを討伐すると生態系に影響が出る可能性があるので、珠洲音はカイザードラゴンの角を少し切って持ち帰る事にした。

ドラゴンには人間に危害を加えない事、そして、必要であれば自分に力を貸す事を条件に討伐はせずに帰る事にした。

街に戻るとギルドにカイザードラゴンの角を渡した。

「報酬は要らない。カイザードラゴンは私が捩じ伏せたから、このクエストはクリアね。」

貼られていたクエスト依頼書は珠洲音が破り捨てると、ギルドを出て行った。

と言う事があったが、2人は知る由もなかった。


セリザワもフゼンも思念空間で珠洲音に向かい合う様になって座っていた。

"それは良いとして、ここなら、フェリス神様からの思念干渉がない。その事が先ず大前提だったの"

"と言う事は、お前とフェリス神様は思念で繋がっているのか。"

"師匠も思念伝達で話はされる事があったと思いますが、フェリス神様からのアプローチが無いと話せなかったと思いますが、私はいつでも話せるんです。恐らくこの部屋は外部からの干渉を遮断する施術と魔法防御でどんな方法でも無理でしょうね。"

思念空間で珠洲音は膝を抱えて座っていた。

"それで、フェリス神とやらに聴かれたく無い事ってなんだ。"

明らかにフゼンの言葉を聞いた瞬間珠洲音の表情が硬くなったのを2人は見逃さなかった。

"…………。フェリス神様は、私に嘘を付いている。"

その答えは衝撃的な発言だった。
神が嘘をついている。
セリザワはフェリス神の事を少なからず知っている事もあって珠洲音の発言は驚く物だった。

その真意を珠洲音は語り始める。


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