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第一章 ドタバタの集団転生。
第1話 神様!スキルって何?
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この日はよく晴れて暑い夏の日差しが降り注いでいる。
ニュースでは記録的な猛暑になる予報だ。
彼女の名前は永野珠洲音、都内の修徳高校に通う女子高生だ。
彼女は17歳で、修学旅行に行くために空港に向かっていた。
母親の運転する車で空港まで送ってもらったのだ。
空港のロビーには既にクラスメイトが集まっていて、楽しそうに騒いでいるのが見える。
「ママ、行くね」
車を降りると、肩まで伸びた茶色い髪が風でゆらゆら揺らいでいた。
母曰く、珠洲音は天然な所もあるが素直で曲がった事が嫌いらしい。
可愛らしい容姿とは裏腹に言いたい事は物怖じせずにハッキリと言う一面もある。
母に似たらしい。
「珠洲音、楽しんできてね。それとこれはお守り!」
珠洲音の実家は地方でも有名なお寺で、特にお守りは念ずれば願いが叶うと有名なのだ。
渡されたお守りは不思議な絵が書かれているお守りで、珠洲音が知っているお守りとは違い初めて見る物だった。
「このお守りは?」
よく見ると緑色に輝く万華鏡を覗き見たかの様な輝きと五芒星が描かれて、読む事は出来ない文字の様な物も書かれていた。
「ちょっと特別なお守りよ。我が家の秘伝のお守り!」
珠洲音は丸い目を輝かせてお守りを握りしめた。
「ありがとう、ママ!」
お守りを制服のポケットに入れると珠洲音は女友達の所に駆け寄って楽しく話していた。
出発の時間となり飛行機に乗り込むと、飛行機の中でも楽しそうに話す女子高生たちの声が機内を包んでいた。
飛行機は無事に離陸すると上空に高度を順調に上げて安定飛行に入っていった。
どれくらいの時間が経ったのか、楽しく話している者も居れば、映画を見ている者、寝ている者様々だ。
そして、上空で飛行機は突然爆発して墜落した。
何の前触れも無く、何かが機内で爆発した様だ。
真っ白な世界に、珠洲音とクラスメイトは立っていた。
「ここは?」
誰かが呟く。
そこは見渡す限り真っ白な世界。
「珠洲音~。」
「美里~」
珠洲音の親友の美里が駆け寄ってきた。
「私たちどうなったの?」
美里は挙動不審にキョロキョロしながら珠洲音にしがみ付いた。
「わからないよ~、確か飛行機が揺れて…」
そこから記憶が無くなっているのに気がついた。。
「皆さん。よく来ましたね。」
目の前に突然、一人の美しい女性が現れた。
銀色と言うのか白いと言うのか、仄かに光り輝いていてハッキリしないが、その長い髪は腰のあたりまで伸びている。
瞳は青く肌も白い為眩さから皆目を細めた。
「誰?」
男子のクラスメイトが声を上げた。
「私の名前はフェリス。この神界の入り口を守る門の神です。」
流暢な口調は心地良さすらも感じさせる。
「神界の入り口…….」
神界とはいわゆる天国のことである。
視界には真っ白な世界が広がっているが、この先に魂が安らぐ世界がある。
そんな事は今は考える余裕がある訳もなく、美里に至ってはあれからずっと珠洲音の腕にしがみついていた。
「あなたの名前は?」
真っ先に珠洲音の事が目に入ったのか、何かを感じ取ったのかフェリス神は珠洲音の方をじっと見て優しい笑みを浮かべている。
「永野珠洲音です。」
実家がお寺と言う事もあるのか、神様と聞いて尊敬の念をいだいている。
そう言う事もあって、珠洲音は軽く会釈をした。
「とても可愛らしいわね。」
ニッコリと微笑んで、フェリス神は珠洲音の顔を覗き込んだ。
「珠洲音は修徳高校の今年のミス修徳優勝者だもんね。」
「もう~、美里やめてよ。」
顔を赤くして、慌てて美里の口を塞いだ。
「そうなんですね。可愛らしく聡明な雰囲気ですものね。」
恥ずかしそうにしている珠洲音を可愛らしく感じたのか、フェリス神は珠洲音の頭を撫でた。
「私の事は、良いですから、私達はどうなって……」
慌てて後退りした。
「どうなったと言うと、あなた達の乗っていた乗り物は爆発して、その結果死にました。残念ですが、この場所は死した者が来る場所なのです。」
誰もが唖然としていた。
死んだと言われても、存在しているためどう捉えて良いのか解らない者が多そうだ。
「これからどうなるんだよ?」
「これは夢なの?」
皆クラスメイトとザワザワと話し始めた。
「突然の事で混乱するのはわかります。先ずは落ち着いてください。」
死と言うものを「はいそうですか」と簡単に受け入れられる者は、そう多く無い何人も受け入れて来たフェリス神はいつもこの様な光景を見てきた。
「え~、死んだの~」
「うそ~、やだ~」
「おい、死んだって、マジかよ」
「え?パパやママは、え?どう言う事」
ザワザワとして泣き始める者もいた。
ちょっと慌てた様で
「ちょっと、ちょっと待ってよ!」
珠洲音は急にいろいろな事が起こったので混乱している。
「私たちはどうなるのですか?フェリス様?」
それでも持ち前の責任感がしっかりとしなければと気持ちを後押ししていた。
「もう現世には残念ですが、帰る肉体が無いのです。予期せぬイレギュラーの事故で死んでしまいましたが、今後の身の振り方としては、このまま天界で魂となって過ごすか、異世界に転生して生きるか、どちらかを選べます。」
異世界~
全員の声が空間に響き渡った。
誰もが不安そうな表情で話し合っている。
「どうする?」
その声は担任の先生、桂木だった。
この中では唯一の大人だ。
珠洲音も自分達の事で頭が一杯だったが、大人が居るのは心強い。
「みんなとバラバラなんて嫌だよ~」
女子の一人が泣きながら大きな声で叫んだ。
「こうなったら異世界に全員で転生して生きるしか無いんじゃ無いか。」
何が正解かはわからないが、何となくだが全員の気持ちが転生と言うワードに惹かれつつあった。
現世に戻れないのは悲しいが、珠洲音も同意見だった。
「そうだよ。それしか無いよ」
今までざわついていたクラスメイト達も桂木の言葉に賛同し始めた。
「そろそろかな?」
また1人、今度は男性の神様らしい者があられた。
男性は黒髪で短髪、結構なイケメンで恐らく神なのであろう、神というのは美形の設定なのかと珠洲音は思った。
そして男性は、ニコニコしながら珠洲音たちに近寄ってきた。
「あら、ゼルニウス。そうね、大体事情は話したかしら。」
「では、転生の為のスキルを覚醒させるかの~」
2人目の神様が現れた事で、一瞬全員の空気が緊張に変わった。
いろいろ起こっていると言うのもあるが、この場面になっても得体の知れない存在には身が強張る。
「あの~、スキルって何ですか?」
自分達に対する何らかの処置を考えてくれている事は何となく理解出来たが、珠洲音にはスキルと言う知らないものに違和感を覚えた。
「今から転生する世界は魔物と人間とが争っている世界なの。だから、あなたの安全を少しでも助けるために特別な能力を覚醒させるのよ。」
少なからず理解している者もいる様だ、特に男子はゲームなどでお馴染みの用語。
確かにアニメや漫画などでそんな用語が有った様に思い起こす者もいた。
「ちょっと待って!転生する世界は魔物とかいるの?」
「もしかして、魔法とか使えるの?」
魔物に関しては、皆がその用語に顔が強張った。
「そうですね。急な事なので転生先は、今から転送すら世界しか空きが無くて。元々転生をさせる場合は、来る事が分かっていて、いろいろ斡旋できる様にしてるんだけど、今回はイレギュラーだからそこしか無いの。だからお詫びの意味も込めて特別にスキルを覚醒しますね。」
なるほど!っと珠洲音の心の中で納得はしたが、男子達はスキルという用語と異世界と言うワードに反応していた。
程なく全員が納得するに至り、スキル覚醒の儀式が始まろうとしている。
ゼルニウス神は覚醒の神らしく、異世界と聞いてドキドキしている男子達から覚醒の儀式が始められた。
一人、また一人とゼルニウス神によって覚醒されていく。
「お~、氷結魔法強化だってよ」
一人の男子が声を挙げた。
氷結魔法強化は氷属性の魔法が通常の1.2倍になる魔法だ。
「あら、レアスキルですね。」
フェリス神は喜ぶ男子に微笑みかけて話しかけた。
スキルには通常スキル、その上にレアスキルがあり、上級になるとグレートスキルとその上にエクセレントスキル、最上級となるとアルティメットスキルがある。
人間ではエクセレントスキルに行けるものは稀であり、魔物は自らの体内で魔力を生み出せるが、人間は基本的に空間に存在する魔力を使用する為、魔物とは明らかな魔力の差がある。
その為、習得はグレートスキルまで行けばかなり優秀と言える。
「お、俺は剣鬼だって。」
身体が少し光って、少し嬉しそうに話すのは男子の聖哉だ。
剣鬼のスキルは剣攻撃強化の強化版で剣による攻撃が通常の1.2倍になる代わりに魔法攻撃が0.75倍になるスキルだ。
リスクもある為魔法剣士には向かないスキルになる。
「あら、あなたもレアスキルですね。」
男子達も全て覚醒が終わり、女子達の番になって、一人ずつ覚醒が始まった。
女子は恐る恐るの子が多く、不安そうな表情を浮かべている者が多い。
「あ~、見てみて、私のスキル!状態異常耐性だって!」
ステータスは両手を重ねて開くとホログラムの様に空間に表示される仕組みらしい。
飲み込みの早い子は他の子のスキルも確認し始めた。
「あ、奈瑠美のスキル可愛い~、花魔法強化だって」
「え~良いなぁ~」
花魔法強化は木属性の魔法で、主に回復系の魔法になる。
花魔法の効果が通常より1.5倍になると言う強力なスキルだ。
女子達は各々のスキルを見せ合って騒いでいた。
そして、珠洲音の番になった。
殆どの女子が覚醒が終わっていて、周りを見渡すと自分が最後だと気がついた。
「お願いします。」
少し怖いのか珠洲音の顔は強張っている。
「では、いくぞ」
ゼルニウス神の手が珠洲音の頭の上で光り始めると、珠洲音の全身がひかり始めた。
「ん?」
明らかに他の者達とは反応が違うとゼルニウス神は感じていた。
珠洲音の制服のポケットから、母親に貰ったお守りが空中にふわっと浮かび上がると光っている珠洲音の身体の中に溶ける様に消えたかと思うと、珠洲音の身体は眩い光を放ち周りが真っ白になる程光放った。
暫く光った後、珠洲音のスキル覚醒は終わったのか、珠洲音はゆっくりと目を開けた。
「あ~、スッキリした~、身体が軽くなったみたい」
覚醒の様子が明らかに違う事に、違和感を感じてフェリス神は珠洲音のスキルを見ようと神技超鑑定を使ったが。
「見えない……」
超鑑定はエクセレントスキルだが、あらゆる制限を受ける事なく鑑定が可能のはずなのだが、何故か見る事が出来なかった。
「ゼルニウス?珠洲音さんのスキル鑑定してみて!」
「ん?どうした」
フェリス神と同様にゼルニウス神も珠洲音のスキル鑑定を行ったが。
「ダメだな。何か珠洲音のスキルが干渉して俺の鑑定が無効化されるな。」
2人は同じ結論に達していた。
珠洲音のスキルはとんでも無い物だと。
「珠洲音さん。ステータスを開いてスキルを見せてくれる?」
身体が軽くなった事や自分の身体に変化を感じた珠洲音は腕を回したり、軽く飛び跳ねたりしていた。
「はい」
手の平を合わせて開くとステータス画面が開いた。
「む、無限回廊だと~」
先ず最初にゼルニウス神が大声を挙げた。
「無限回廊って、確か…、ゴッドスキルですよね?」
口を手で押さえながら、2人とも驚きを隠せない。
ゴッドスキルが覚醒するのを見た事がなかったからだ。
「無限回廊は人間が取得できるスキルじゃ無いぞ。何が起こった?」
あまりの驚きに二人は唖然としていた。珠洲音は友達のスキルが気になるのか、友達達がいる所に走っていった。
そして友達とスキルを見せ合ってはしゃいでいる。
「え~、花魔法とか可愛いのが良かった~」
二人の神様の心配を知る筈もなく。
珠洲音は友達のスキルが可愛いと嘆いている。
「珠洲音さん?」
フェリス神ははしゃぐ珠洲音を手招きしながら、自分たちの元に来て欲しいと訴えた。
「はい。」
友達とスキルを見せ合っていたが、フェリス神に呼ばれて珠洲音は駆け寄った。
「神様~、私のスキルってどんなスキルなんですか?」
確かに名称だけだと可愛らしくは無い。
その性能など今の珠洲音には然程必要としていなかった。
「無限回廊って言うスキルよ。」
複雑な表情になっている2人の神達は皆から少し珠洲音を連れて離れた。
「ねぇ~、ステータスの数字が全部"1"なんですけど、これじゃあ、すぐ死んじゃうよ~」
ステータスの数字を見ながら、涙目になって珠洲音は2人の神達をみている。
「…….、珠洲音さん。あのね、スキルの事なんだけど…、そうね、ちょっと待ってて。」
そう言うとフェリス神は珠洲音を残して、皆の所に近づいて、担任の桂木の前に立ち止まった。
「あのですね。全員がスキル覚醒終わりまして、新たな新天地に転送しますが、珠洲音さんはちょっとスキルの事で説明が特別に必要ですので、1時間くらい遅れて皆さんの所に転送しますね。それと転送先には私の代わりに案内役を用意しているので詳しくはその者に聞いてください。」
事情についてはハッキリとわからなかったが、珠洲音を残して慌てて自分達の元に駆け寄って来たので、何か大事な事があるであろう事は桂木も察した。
「わかりました。先に私達だけで行きます。永野の事よろしくお願いします。」
フェリス神に向かって桂木は深々と頭を下げた。
「珠洲音~、先行くね~」
親友の美里が手を振って珠洲音に大きな声で言うと、フェリス神は皆を転生先の新天地に転送した。
あっという間に誰も居なくなると、2人の神達は珠洲音の前に近づくとスキルの事を説明する事にした。
「先ずゴッドスキルと言うのは、アルティメットスキルが究極に洗練されて時間と空間を凌駕し途方も無いほど超越した先にあるスキルで神だけが使う事を許されたものだ。」
果てない時を思うかの様に静かにゼルニウス神は語った。
「無限回廊と言うスキルは本来人間には取得出来ないスキルなの。でも、珠洲音さんが持っていたお守り?かな?それが何らかの起因になって珠洲音さんに無限回廊を取得させたみたいね。」
「お守りはママがくれた特別なお守りなんです。」
ふと空港での母親の事が頭を過った。
珠洲音の目には少し涙が滲んでいた。
転生出来るとはいえ、家族に会う事はもう二度と出来ない、それくらいの事は珠洲音も恐らくクラス全員わかっている。
皆の事も思うと辛い気持ちになっていた。
「珠洲音さん。大丈夫?」
女の子が死んで自分の前に現れて、自分の死を受け入れなければならい。
そんな場面は何度も見てきた。
神と言えど、辛い。
『強くなって、珠洲音さん』
神としての願いであった。
「スキル無限回廊について説明するね。
無限回廊には、
アルティメットスキルの超絶神技。
エクセレントスキルの神眼、神術、神剣、神速、神技を一切の制限なく使用できるの。
アルティメットスキルの超絶無効。
全てのステータス異常、攻撃、防御、術を無効化しつつ一切の制限、影響を受けないの。
アルティメットスキルの超絶再生。
超精神エネルギー体の本体を超速再生出来、自我でイメージしたものを再生出来るの。
アルティメットスキルの超絶破壊。
物質化、エネルギー体の対象をあらゆる制限を無視して破壊できるスキル。
分子の分解や吸収も出来るの。
この4つが無限回廊には備わってるの」
フェリス神は珠洲音のスキルを見せながらゆっくりと説明した。
「神様?この真理(まこと)って言うのは何ですか?」
スキルが映し出されている無限回廊の下に確かにそのスキルは映し出されていた。
「え?真理(まこと)?これは…見たことないスキルね」
「ん?こんなスキルあったか?」
2人の神達は珠洲音のスキルを覗き込んでいた。
「聞いたことが無いスキルだな。」
ゼルニウス神は左手にスキル辞典を取り出すと調べ始めた。
この世に存在するスキルでゼルニウス神が知らないスキルは無い。
「無いぞ…」
「新しいスキルでしょうか?」
フェリス神もゼルニウス神も辞書を見つつ考え込んでいた。
新しくスキルが生まれる事もある。
しかしながら、新しく生まれたとしてもスキル辞典には自動で登録される。
ゼルニウス神は全てのスキルを管理している神様なのだ。
「もしかして、アンシェントスキル(古代スキル)かもしれない。」
そう言うとゼルニウス神はもう一冊辞典を取り出した。
「これは封印されたアンシェント、古代のスキルを記した辞典なのだが、アンシェントスキルは封印されていて覚醒する事は無いと思うのだが。」
2人の神達は辞典をペラペラとめくり調べ始めた。
珠洲音はと言うと、2人の神達が戸惑っている事に少なからず不安を感じている。
「おぉ!あったぞ」
ゼルニウス神が見つけたのか、目を丸くしてフェリス神に見せた。
「真理(まこと)
このスキルは、天地のあらゆる願いを我が物として身に纏い、万物の思念を読み取る力目覚める。
内訳は……
アークスキルの天我進化制限唯一。
使用者の進化は何者にも制限されず、唯一の願いは新たな進化へと導かれる。
進化制限超越スキルだな。所謂、限界突破という奴だな。
アークスキルの唯我独尊。
たった一つこの世の誰からも支配を受ける事は無し。
唯一無二の存在なり。
神魔支配超越スキルだな。
これはいかなる精神や肉体支配も無効化するようだな。使用者制限を受けている物も無効化する様だな。
使用にも制限を受けないと来てる。」
内容を理解した2人の神達は珠洲音に近づいて来て、そのスキルの凄さに驚くと同時に深く呼吸をした。
「どうやら、俺たちの鑑定スキルが無効化されたのはこの真理(まこと)が影響したようだな。」
腕組みをしてフェリス神の事を見た。
「その様ですね。でも、これで誰も珠洲音の本当の力も見抜けない……。ポジティブに言えばこれ程珠洲音さんにとって有利なスキルは無いわ。」
その通りだ。
このスキルがある以上、誰も珠洲音の真の力を見抜く事が出来ない。
強力な勢力にも気付かれ無いという事だ。
2人の会話について珠洲音は特に関心を示していなかった。
と言うより、自分の事を言われている事に気が付いていない。
「珠洲音さん。あなたの取得したスキルは本来神々が使うスキルなの。」
珠洲音の肩に手を添えてフェリス神は和かに微笑んだ。
「え?そんなに凄いんですか?」
スキルの内容云々と言うより神しか使えないものが、自分に使えると言うだけでも少し怖い。
珠洲音の顔が強張っていた。
「そうね。だから力の使い方を教えます。そうで無いとあなたが大事な人たちを傷つけてしまうから。」
しっかりとそれでいて力強いフェリス神の言葉は笑顔も消えて真剣な表情だ。
「え?危ない力なんですか?」
「大丈夫よ。使い方を学べばあなたが大事な人たちを守る事が出来る力よ。」
珠洲音に対する思いやりのある深く優しい口調で語りかけた。
「私がみんなを守る事が出来る力……」
塞いだ表情はフェリス神の言葉で生気を取り戻して決意の強い顔に変わった。
「フェリス様!私頑張ります。それとスキルの名前は可愛い感じに変えられたり出来ないんですか?」
スキルの凄さは何となく理解出来た様だが、やはりまだまだ子供の部分もある年齢なのか、女子高生は可愛さ重視なのだろう。
言葉の内容とは裏腹に表情は真面目だ。
「ん~、フェリスよ。この子で大丈夫か?」
心配そうなゼルニウス神とは違ってフェリス神は和かな表情で。
「大丈夫。珠洲音さんは私に任せて。」
ぽんぽんっとフェリス神の肩を2回叩いてゼルニウス神は去っていった。
「さあ、先ずはスキルもそうだけど珠洲音さんに伝えなくてならない事があるの。」
「はい。なんですか?」
表情がまた真剣な面持ちになって、2人に緊張感が漂っていた。
「珠洲音さんが取得した無限回廊は人間では扱う事が出来ないスキルっていうのは、先程伝えたと思うんだけど、それはね。
無限回廊を使うのに膨大なエネルギーが必要なの。
本来人間がそれだけの大きなエネルギーは持ってないから。
もし取得するとしたら、永遠の命を得た上で、一万年以上過酷な修行を積んでそれでやっと取得出来るかどうかくらい凄いスキルなの。
珠洲音さんがスキルを覚醒させる時に身体が凄く光ったでしょ。
それは珠洲音さん自体の肉体が超絶進化して超精神エネルギー体になっていく時に細胞の一つ一つが、精神エネルギー体に変換されてたの。
だから身体が軽くなったように感じなかった?エネルギー体になると質量自体は軽くなるから。」
数時間前まで普通の女子高生だった珠洲音には難しい話であった。
「人間では無くなったとか?ですか?」
エネルギー体と細胞が変換されたとか、言われてイメージは出来るが、人で無くなったらどの様な存在なのか、気になるところだ。
「大丈夫、人間よ。身体を切ったらちゃんと血がドバドバでますよ。」
リアルに怖い話をしている。
『確かに身体は軽くなった。それになんと言うか、何でも出来そうな気がする。』と心で呟いた。
手を握ってみたり、飛び跳ねてみたり珠洲音は身体の変化を確認した。
「さて、珠洲音さん。そろそろやりましょうか。スキルの使い方を。」
パチンって手をフェリス神は打って珠洲音に微笑みかけた。
珠洲音の異世界ライフのスタートだ。
この後、珠洲音の取り巻く環境は様々な様相を呈し、本人もまだ知らない未来が待っていた。
珠洲音の願いは一つ。
皆んなで楽しく過ごしたい!
ただ、それだけ。
ニュースでは記録的な猛暑になる予報だ。
彼女の名前は永野珠洲音、都内の修徳高校に通う女子高生だ。
彼女は17歳で、修学旅行に行くために空港に向かっていた。
母親の運転する車で空港まで送ってもらったのだ。
空港のロビーには既にクラスメイトが集まっていて、楽しそうに騒いでいるのが見える。
「ママ、行くね」
車を降りると、肩まで伸びた茶色い髪が風でゆらゆら揺らいでいた。
母曰く、珠洲音は天然な所もあるが素直で曲がった事が嫌いらしい。
可愛らしい容姿とは裏腹に言いたい事は物怖じせずにハッキリと言う一面もある。
母に似たらしい。
「珠洲音、楽しんできてね。それとこれはお守り!」
珠洲音の実家は地方でも有名なお寺で、特にお守りは念ずれば願いが叶うと有名なのだ。
渡されたお守りは不思議な絵が書かれているお守りで、珠洲音が知っているお守りとは違い初めて見る物だった。
「このお守りは?」
よく見ると緑色に輝く万華鏡を覗き見たかの様な輝きと五芒星が描かれて、読む事は出来ない文字の様な物も書かれていた。
「ちょっと特別なお守りよ。我が家の秘伝のお守り!」
珠洲音は丸い目を輝かせてお守りを握りしめた。
「ありがとう、ママ!」
お守りを制服のポケットに入れると珠洲音は女友達の所に駆け寄って楽しく話していた。
出発の時間となり飛行機に乗り込むと、飛行機の中でも楽しそうに話す女子高生たちの声が機内を包んでいた。
飛行機は無事に離陸すると上空に高度を順調に上げて安定飛行に入っていった。
どれくらいの時間が経ったのか、楽しく話している者も居れば、映画を見ている者、寝ている者様々だ。
そして、上空で飛行機は突然爆発して墜落した。
何の前触れも無く、何かが機内で爆発した様だ。
真っ白な世界に、珠洲音とクラスメイトは立っていた。
「ここは?」
誰かが呟く。
そこは見渡す限り真っ白な世界。
「珠洲音~。」
「美里~」
珠洲音の親友の美里が駆け寄ってきた。
「私たちどうなったの?」
美里は挙動不審にキョロキョロしながら珠洲音にしがみ付いた。
「わからないよ~、確か飛行機が揺れて…」
そこから記憶が無くなっているのに気がついた。。
「皆さん。よく来ましたね。」
目の前に突然、一人の美しい女性が現れた。
銀色と言うのか白いと言うのか、仄かに光り輝いていてハッキリしないが、その長い髪は腰のあたりまで伸びている。
瞳は青く肌も白い為眩さから皆目を細めた。
「誰?」
男子のクラスメイトが声を上げた。
「私の名前はフェリス。この神界の入り口を守る門の神です。」
流暢な口調は心地良さすらも感じさせる。
「神界の入り口…….」
神界とはいわゆる天国のことである。
視界には真っ白な世界が広がっているが、この先に魂が安らぐ世界がある。
そんな事は今は考える余裕がある訳もなく、美里に至ってはあれからずっと珠洲音の腕にしがみついていた。
「あなたの名前は?」
真っ先に珠洲音の事が目に入ったのか、何かを感じ取ったのかフェリス神は珠洲音の方をじっと見て優しい笑みを浮かべている。
「永野珠洲音です。」
実家がお寺と言う事もあるのか、神様と聞いて尊敬の念をいだいている。
そう言う事もあって、珠洲音は軽く会釈をした。
「とても可愛らしいわね。」
ニッコリと微笑んで、フェリス神は珠洲音の顔を覗き込んだ。
「珠洲音は修徳高校の今年のミス修徳優勝者だもんね。」
「もう~、美里やめてよ。」
顔を赤くして、慌てて美里の口を塞いだ。
「そうなんですね。可愛らしく聡明な雰囲気ですものね。」
恥ずかしそうにしている珠洲音を可愛らしく感じたのか、フェリス神は珠洲音の頭を撫でた。
「私の事は、良いですから、私達はどうなって……」
慌てて後退りした。
「どうなったと言うと、あなた達の乗っていた乗り物は爆発して、その結果死にました。残念ですが、この場所は死した者が来る場所なのです。」
誰もが唖然としていた。
死んだと言われても、存在しているためどう捉えて良いのか解らない者が多そうだ。
「これからどうなるんだよ?」
「これは夢なの?」
皆クラスメイトとザワザワと話し始めた。
「突然の事で混乱するのはわかります。先ずは落ち着いてください。」
死と言うものを「はいそうですか」と簡単に受け入れられる者は、そう多く無い何人も受け入れて来たフェリス神はいつもこの様な光景を見てきた。
「え~、死んだの~」
「うそ~、やだ~」
「おい、死んだって、マジかよ」
「え?パパやママは、え?どう言う事」
ザワザワとして泣き始める者もいた。
ちょっと慌てた様で
「ちょっと、ちょっと待ってよ!」
珠洲音は急にいろいろな事が起こったので混乱している。
「私たちはどうなるのですか?フェリス様?」
それでも持ち前の責任感がしっかりとしなければと気持ちを後押ししていた。
「もう現世には残念ですが、帰る肉体が無いのです。予期せぬイレギュラーの事故で死んでしまいましたが、今後の身の振り方としては、このまま天界で魂となって過ごすか、異世界に転生して生きるか、どちらかを選べます。」
異世界~
全員の声が空間に響き渡った。
誰もが不安そうな表情で話し合っている。
「どうする?」
その声は担任の先生、桂木だった。
この中では唯一の大人だ。
珠洲音も自分達の事で頭が一杯だったが、大人が居るのは心強い。
「みんなとバラバラなんて嫌だよ~」
女子の一人が泣きながら大きな声で叫んだ。
「こうなったら異世界に全員で転生して生きるしか無いんじゃ無いか。」
何が正解かはわからないが、何となくだが全員の気持ちが転生と言うワードに惹かれつつあった。
現世に戻れないのは悲しいが、珠洲音も同意見だった。
「そうだよ。それしか無いよ」
今までざわついていたクラスメイト達も桂木の言葉に賛同し始めた。
「そろそろかな?」
また1人、今度は男性の神様らしい者があられた。
男性は黒髪で短髪、結構なイケメンで恐らく神なのであろう、神というのは美形の設定なのかと珠洲音は思った。
そして男性は、ニコニコしながら珠洲音たちに近寄ってきた。
「あら、ゼルニウス。そうね、大体事情は話したかしら。」
「では、転生の為のスキルを覚醒させるかの~」
2人目の神様が現れた事で、一瞬全員の空気が緊張に変わった。
いろいろ起こっていると言うのもあるが、この場面になっても得体の知れない存在には身が強張る。
「あの~、スキルって何ですか?」
自分達に対する何らかの処置を考えてくれている事は何となく理解出来たが、珠洲音にはスキルと言う知らないものに違和感を覚えた。
「今から転生する世界は魔物と人間とが争っている世界なの。だから、あなたの安全を少しでも助けるために特別な能力を覚醒させるのよ。」
少なからず理解している者もいる様だ、特に男子はゲームなどでお馴染みの用語。
確かにアニメや漫画などでそんな用語が有った様に思い起こす者もいた。
「ちょっと待って!転生する世界は魔物とかいるの?」
「もしかして、魔法とか使えるの?」
魔物に関しては、皆がその用語に顔が強張った。
「そうですね。急な事なので転生先は、今から転送すら世界しか空きが無くて。元々転生をさせる場合は、来る事が分かっていて、いろいろ斡旋できる様にしてるんだけど、今回はイレギュラーだからそこしか無いの。だからお詫びの意味も込めて特別にスキルを覚醒しますね。」
なるほど!っと珠洲音の心の中で納得はしたが、男子達はスキルという用語と異世界と言うワードに反応していた。
程なく全員が納得するに至り、スキル覚醒の儀式が始まろうとしている。
ゼルニウス神は覚醒の神らしく、異世界と聞いてドキドキしている男子達から覚醒の儀式が始められた。
一人、また一人とゼルニウス神によって覚醒されていく。
「お~、氷結魔法強化だってよ」
一人の男子が声を挙げた。
氷結魔法強化は氷属性の魔法が通常の1.2倍になる魔法だ。
「あら、レアスキルですね。」
フェリス神は喜ぶ男子に微笑みかけて話しかけた。
スキルには通常スキル、その上にレアスキルがあり、上級になるとグレートスキルとその上にエクセレントスキル、最上級となるとアルティメットスキルがある。
人間ではエクセレントスキルに行けるものは稀であり、魔物は自らの体内で魔力を生み出せるが、人間は基本的に空間に存在する魔力を使用する為、魔物とは明らかな魔力の差がある。
その為、習得はグレートスキルまで行けばかなり優秀と言える。
「お、俺は剣鬼だって。」
身体が少し光って、少し嬉しそうに話すのは男子の聖哉だ。
剣鬼のスキルは剣攻撃強化の強化版で剣による攻撃が通常の1.2倍になる代わりに魔法攻撃が0.75倍になるスキルだ。
リスクもある為魔法剣士には向かないスキルになる。
「あら、あなたもレアスキルですね。」
男子達も全て覚醒が終わり、女子達の番になって、一人ずつ覚醒が始まった。
女子は恐る恐るの子が多く、不安そうな表情を浮かべている者が多い。
「あ~、見てみて、私のスキル!状態異常耐性だって!」
ステータスは両手を重ねて開くとホログラムの様に空間に表示される仕組みらしい。
飲み込みの早い子は他の子のスキルも確認し始めた。
「あ、奈瑠美のスキル可愛い~、花魔法強化だって」
「え~良いなぁ~」
花魔法強化は木属性の魔法で、主に回復系の魔法になる。
花魔法の効果が通常より1.5倍になると言う強力なスキルだ。
女子達は各々のスキルを見せ合って騒いでいた。
そして、珠洲音の番になった。
殆どの女子が覚醒が終わっていて、周りを見渡すと自分が最後だと気がついた。
「お願いします。」
少し怖いのか珠洲音の顔は強張っている。
「では、いくぞ」
ゼルニウス神の手が珠洲音の頭の上で光り始めると、珠洲音の全身がひかり始めた。
「ん?」
明らかに他の者達とは反応が違うとゼルニウス神は感じていた。
珠洲音の制服のポケットから、母親に貰ったお守りが空中にふわっと浮かび上がると光っている珠洲音の身体の中に溶ける様に消えたかと思うと、珠洲音の身体は眩い光を放ち周りが真っ白になる程光放った。
暫く光った後、珠洲音のスキル覚醒は終わったのか、珠洲音はゆっくりと目を開けた。
「あ~、スッキリした~、身体が軽くなったみたい」
覚醒の様子が明らかに違う事に、違和感を感じてフェリス神は珠洲音のスキルを見ようと神技超鑑定を使ったが。
「見えない……」
超鑑定はエクセレントスキルだが、あらゆる制限を受ける事なく鑑定が可能のはずなのだが、何故か見る事が出来なかった。
「ゼルニウス?珠洲音さんのスキル鑑定してみて!」
「ん?どうした」
フェリス神と同様にゼルニウス神も珠洲音のスキル鑑定を行ったが。
「ダメだな。何か珠洲音のスキルが干渉して俺の鑑定が無効化されるな。」
2人は同じ結論に達していた。
珠洲音のスキルはとんでも無い物だと。
「珠洲音さん。ステータスを開いてスキルを見せてくれる?」
身体が軽くなった事や自分の身体に変化を感じた珠洲音は腕を回したり、軽く飛び跳ねたりしていた。
「はい」
手の平を合わせて開くとステータス画面が開いた。
「む、無限回廊だと~」
先ず最初にゼルニウス神が大声を挙げた。
「無限回廊って、確か…、ゴッドスキルですよね?」
口を手で押さえながら、2人とも驚きを隠せない。
ゴッドスキルが覚醒するのを見た事がなかったからだ。
「無限回廊は人間が取得できるスキルじゃ無いぞ。何が起こった?」
あまりの驚きに二人は唖然としていた。珠洲音は友達のスキルが気になるのか、友達達がいる所に走っていった。
そして友達とスキルを見せ合ってはしゃいでいる。
「え~、花魔法とか可愛いのが良かった~」
二人の神様の心配を知る筈もなく。
珠洲音は友達のスキルが可愛いと嘆いている。
「珠洲音さん?」
フェリス神ははしゃぐ珠洲音を手招きしながら、自分たちの元に来て欲しいと訴えた。
「はい。」
友達とスキルを見せ合っていたが、フェリス神に呼ばれて珠洲音は駆け寄った。
「神様~、私のスキルってどんなスキルなんですか?」
確かに名称だけだと可愛らしくは無い。
その性能など今の珠洲音には然程必要としていなかった。
「無限回廊って言うスキルよ。」
複雑な表情になっている2人の神達は皆から少し珠洲音を連れて離れた。
「ねぇ~、ステータスの数字が全部"1"なんですけど、これじゃあ、すぐ死んじゃうよ~」
ステータスの数字を見ながら、涙目になって珠洲音は2人の神達をみている。
「…….、珠洲音さん。あのね、スキルの事なんだけど…、そうね、ちょっと待ってて。」
そう言うとフェリス神は珠洲音を残して、皆の所に近づいて、担任の桂木の前に立ち止まった。
「あのですね。全員がスキル覚醒終わりまして、新たな新天地に転送しますが、珠洲音さんはちょっとスキルの事で説明が特別に必要ですので、1時間くらい遅れて皆さんの所に転送しますね。それと転送先には私の代わりに案内役を用意しているので詳しくはその者に聞いてください。」
事情についてはハッキリとわからなかったが、珠洲音を残して慌てて自分達の元に駆け寄って来たので、何か大事な事があるであろう事は桂木も察した。
「わかりました。先に私達だけで行きます。永野の事よろしくお願いします。」
フェリス神に向かって桂木は深々と頭を下げた。
「珠洲音~、先行くね~」
親友の美里が手を振って珠洲音に大きな声で言うと、フェリス神は皆を転生先の新天地に転送した。
あっという間に誰も居なくなると、2人の神達は珠洲音の前に近づくとスキルの事を説明する事にした。
「先ずゴッドスキルと言うのは、アルティメットスキルが究極に洗練されて時間と空間を凌駕し途方も無いほど超越した先にあるスキルで神だけが使う事を許されたものだ。」
果てない時を思うかの様に静かにゼルニウス神は語った。
「無限回廊と言うスキルは本来人間には取得出来ないスキルなの。でも、珠洲音さんが持っていたお守り?かな?それが何らかの起因になって珠洲音さんに無限回廊を取得させたみたいね。」
「お守りはママがくれた特別なお守りなんです。」
ふと空港での母親の事が頭を過った。
珠洲音の目には少し涙が滲んでいた。
転生出来るとはいえ、家族に会う事はもう二度と出来ない、それくらいの事は珠洲音も恐らくクラス全員わかっている。
皆の事も思うと辛い気持ちになっていた。
「珠洲音さん。大丈夫?」
女の子が死んで自分の前に現れて、自分の死を受け入れなければならい。
そんな場面は何度も見てきた。
神と言えど、辛い。
『強くなって、珠洲音さん』
神としての願いであった。
「スキル無限回廊について説明するね。
無限回廊には、
アルティメットスキルの超絶神技。
エクセレントスキルの神眼、神術、神剣、神速、神技を一切の制限なく使用できるの。
アルティメットスキルの超絶無効。
全てのステータス異常、攻撃、防御、術を無効化しつつ一切の制限、影響を受けないの。
アルティメットスキルの超絶再生。
超精神エネルギー体の本体を超速再生出来、自我でイメージしたものを再生出来るの。
アルティメットスキルの超絶破壊。
物質化、エネルギー体の対象をあらゆる制限を無視して破壊できるスキル。
分子の分解や吸収も出来るの。
この4つが無限回廊には備わってるの」
フェリス神は珠洲音のスキルを見せながらゆっくりと説明した。
「神様?この真理(まこと)って言うのは何ですか?」
スキルが映し出されている無限回廊の下に確かにそのスキルは映し出されていた。
「え?真理(まこと)?これは…見たことないスキルね」
「ん?こんなスキルあったか?」
2人の神達は珠洲音のスキルを覗き込んでいた。
「聞いたことが無いスキルだな。」
ゼルニウス神は左手にスキル辞典を取り出すと調べ始めた。
この世に存在するスキルでゼルニウス神が知らないスキルは無い。
「無いぞ…」
「新しいスキルでしょうか?」
フェリス神もゼルニウス神も辞書を見つつ考え込んでいた。
新しくスキルが生まれる事もある。
しかしながら、新しく生まれたとしてもスキル辞典には自動で登録される。
ゼルニウス神は全てのスキルを管理している神様なのだ。
「もしかして、アンシェントスキル(古代スキル)かもしれない。」
そう言うとゼルニウス神はもう一冊辞典を取り出した。
「これは封印されたアンシェント、古代のスキルを記した辞典なのだが、アンシェントスキルは封印されていて覚醒する事は無いと思うのだが。」
2人の神達は辞典をペラペラとめくり調べ始めた。
珠洲音はと言うと、2人の神達が戸惑っている事に少なからず不安を感じている。
「おぉ!あったぞ」
ゼルニウス神が見つけたのか、目を丸くしてフェリス神に見せた。
「真理(まこと)
このスキルは、天地のあらゆる願いを我が物として身に纏い、万物の思念を読み取る力目覚める。
内訳は……
アークスキルの天我進化制限唯一。
使用者の進化は何者にも制限されず、唯一の願いは新たな進化へと導かれる。
進化制限超越スキルだな。所謂、限界突破という奴だな。
アークスキルの唯我独尊。
たった一つこの世の誰からも支配を受ける事は無し。
唯一無二の存在なり。
神魔支配超越スキルだな。
これはいかなる精神や肉体支配も無効化するようだな。使用者制限を受けている物も無効化する様だな。
使用にも制限を受けないと来てる。」
内容を理解した2人の神達は珠洲音に近づいて来て、そのスキルの凄さに驚くと同時に深く呼吸をした。
「どうやら、俺たちの鑑定スキルが無効化されたのはこの真理(まこと)が影響したようだな。」
腕組みをしてフェリス神の事を見た。
「その様ですね。でも、これで誰も珠洲音の本当の力も見抜けない……。ポジティブに言えばこれ程珠洲音さんにとって有利なスキルは無いわ。」
その通りだ。
このスキルがある以上、誰も珠洲音の真の力を見抜く事が出来ない。
強力な勢力にも気付かれ無いという事だ。
2人の会話について珠洲音は特に関心を示していなかった。
と言うより、自分の事を言われている事に気が付いていない。
「珠洲音さん。あなたの取得したスキルは本来神々が使うスキルなの。」
珠洲音の肩に手を添えてフェリス神は和かに微笑んだ。
「え?そんなに凄いんですか?」
スキルの内容云々と言うより神しか使えないものが、自分に使えると言うだけでも少し怖い。
珠洲音の顔が強張っていた。
「そうね。だから力の使い方を教えます。そうで無いとあなたが大事な人たちを傷つけてしまうから。」
しっかりとそれでいて力強いフェリス神の言葉は笑顔も消えて真剣な表情だ。
「え?危ない力なんですか?」
「大丈夫よ。使い方を学べばあなたが大事な人たちを守る事が出来る力よ。」
珠洲音に対する思いやりのある深く優しい口調で語りかけた。
「私がみんなを守る事が出来る力……」
塞いだ表情はフェリス神の言葉で生気を取り戻して決意の強い顔に変わった。
「フェリス様!私頑張ります。それとスキルの名前は可愛い感じに変えられたり出来ないんですか?」
スキルの凄さは何となく理解出来た様だが、やはりまだまだ子供の部分もある年齢なのか、女子高生は可愛さ重視なのだろう。
言葉の内容とは裏腹に表情は真面目だ。
「ん~、フェリスよ。この子で大丈夫か?」
心配そうなゼルニウス神とは違ってフェリス神は和かな表情で。
「大丈夫。珠洲音さんは私に任せて。」
ぽんぽんっとフェリス神の肩を2回叩いてゼルニウス神は去っていった。
「さあ、先ずはスキルもそうだけど珠洲音さんに伝えなくてならない事があるの。」
「はい。なんですか?」
表情がまた真剣な面持ちになって、2人に緊張感が漂っていた。
「珠洲音さんが取得した無限回廊は人間では扱う事が出来ないスキルっていうのは、先程伝えたと思うんだけど、それはね。
無限回廊を使うのに膨大なエネルギーが必要なの。
本来人間がそれだけの大きなエネルギーは持ってないから。
もし取得するとしたら、永遠の命を得た上で、一万年以上過酷な修行を積んでそれでやっと取得出来るかどうかくらい凄いスキルなの。
珠洲音さんがスキルを覚醒させる時に身体が凄く光ったでしょ。
それは珠洲音さん自体の肉体が超絶進化して超精神エネルギー体になっていく時に細胞の一つ一つが、精神エネルギー体に変換されてたの。
だから身体が軽くなったように感じなかった?エネルギー体になると質量自体は軽くなるから。」
数時間前まで普通の女子高生だった珠洲音には難しい話であった。
「人間では無くなったとか?ですか?」
エネルギー体と細胞が変換されたとか、言われてイメージは出来るが、人で無くなったらどの様な存在なのか、気になるところだ。
「大丈夫、人間よ。身体を切ったらちゃんと血がドバドバでますよ。」
リアルに怖い話をしている。
『確かに身体は軽くなった。それになんと言うか、何でも出来そうな気がする。』と心で呟いた。
手を握ってみたり、飛び跳ねてみたり珠洲音は身体の変化を確認した。
「さて、珠洲音さん。そろそろやりましょうか。スキルの使い方を。」
パチンって手をフェリス神は打って珠洲音に微笑みかけた。
珠洲音の異世界ライフのスタートだ。
この後、珠洲音の取り巻く環境は様々な様相を呈し、本人もまだ知らない未来が待っていた。
珠洲音の願いは一つ。
皆んなで楽しく過ごしたい!
ただ、それだけ。
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