誓いの嘘と永遠の光

藤原遊

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魔王討伐編

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いつものようにエリスの手から光が放たれ、レイナの体を包み込んでいた。しかし、その光はすぐに弱々しく消えていく。

「……嘘でしょ……!」

エリスは焦りに満ちた声を上げる。

「魔力が……もう残ってない……!」

「エリス! 何とかならないのか!?」

グレンが声を張り上げるが、エリスは泣きそうな顔で首を振った。

「私……もう……魔法が……!」

エリスの声は震えていた。魔王との戦いで、彼女はすでに魔力を使い果たしていたのだ。

「こんな時に……!」

ルークは苛立ちを抑えられず、拳を床に叩きつけた。

「待って……何か……何か方法があるはずだ……!」

カイルが必死に考えを巡らせる。自分がレイナを守り切れなかったことへの自責が、心に重くのしかかっていた。

その時、ふと頭に浮かんだのは、旅の途中で手に入れたエリクサーだった。あの街で特別な花を手に入れ、苦労して完成させた究極の回復薬。

「……エリクサーだ!」

カイルが声を上げると、全員が彼を見た。

「そうだ……街で作ったあのエリクサー! あれなら……!」

「それって……!」

エリスが目を見開き、希望の光を取り戻したように顔を上げた。

「どこだ……?」

カイルは急いでバッグを漁り、中にしまっておいた小さな瓶を取り出した。澄んだ緑色の液体が瓶の中で揺れている。

「これだ……! レイナ、絶対に助ける!」

カイルは慎重に瓶の栓を抜き、レイナの唇にそっとエリクサーを注いだ。その液体が彼女の口に流れ込むと、ほんの一瞬だけ部屋全体が光に包まれた。

レイナの傷口がゆっくりと塞がり、血の流れが止まる。彼女の顔に少しずつ血の気が戻り、呼吸が穏やかになるのを全員が見守っていた。

「……よかった……!」

エリスが手を口に当て、涙をこぼしながら呟いた。

「本当に……助かったのか?」

グレンが恐る恐るレイナの顔を覗き込む。

「……まだ分からないけど、確かに傷は治っている……!」

ルークも安堵の息をつき、短剣を収めた。

やがて、レイナの瞼がゆっくりと開いた。

「……カイル……?」

彼女の声は弱々しいながらも確かだった。

「レイナ……! よかった……!」

カイルが彼女の手を握りしめ、目に見えて緊張を解いた。

「何で……?」

「お前は仲間だ……それだけだよ。」

カイルの言葉に、レイナの目が潤む。

「ありがとう……本当に……ありがとう……。」

全員がその場に座り込み、疲労と安堵が一気に押し寄せてきた。誰もが無言だったが、同じ気持ちを共有していることは明らかだった。

カイルはレイナの手を握り続けながら、静かに呟いた。

「全員、無事でよかった。本当に……。」

彼の言葉に、全員が深く頷き、玉座の間には静かな感謝の空気が広がった。
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