46 / 81
魔王討伐編
44
しおりを挟む
いつものようにエリスの手から光が放たれ、レイナの体を包み込んでいた。しかし、その光はすぐに弱々しく消えていく。
「……嘘でしょ……!」
エリスは焦りに満ちた声を上げる。
「魔力が……もう残ってない……!」
「エリス! 何とかならないのか!?」
グレンが声を張り上げるが、エリスは泣きそうな顔で首を振った。
「私……もう……魔法が……!」
エリスの声は震えていた。魔王との戦いで、彼女はすでに魔力を使い果たしていたのだ。
「こんな時に……!」
ルークは苛立ちを抑えられず、拳を床に叩きつけた。
「待って……何か……何か方法があるはずだ……!」
カイルが必死に考えを巡らせる。自分がレイナを守り切れなかったことへの自責が、心に重くのしかかっていた。
その時、ふと頭に浮かんだのは、旅の途中で手に入れたエリクサーだった。あの街で特別な花を手に入れ、苦労して完成させた究極の回復薬。
「……エリクサーだ!」
カイルが声を上げると、全員が彼を見た。
「そうだ……街で作ったあのエリクサー! あれなら……!」
「それって……!」
エリスが目を見開き、希望の光を取り戻したように顔を上げた。
「どこだ……?」
カイルは急いでバッグを漁り、中にしまっておいた小さな瓶を取り出した。澄んだ緑色の液体が瓶の中で揺れている。
「これだ……! レイナ、絶対に助ける!」
カイルは慎重に瓶の栓を抜き、レイナの唇にそっとエリクサーを注いだ。その液体が彼女の口に流れ込むと、ほんの一瞬だけ部屋全体が光に包まれた。
レイナの傷口がゆっくりと塞がり、血の流れが止まる。彼女の顔に少しずつ血の気が戻り、呼吸が穏やかになるのを全員が見守っていた。
「……よかった……!」
エリスが手を口に当て、涙をこぼしながら呟いた。
「本当に……助かったのか?」
グレンが恐る恐るレイナの顔を覗き込む。
「……まだ分からないけど、確かに傷は治っている……!」
ルークも安堵の息をつき、短剣を収めた。
やがて、レイナの瞼がゆっくりと開いた。
「……カイル……?」
彼女の声は弱々しいながらも確かだった。
「レイナ……! よかった……!」
カイルが彼女の手を握りしめ、目に見えて緊張を解いた。
「何で……?」
「お前は仲間だ……それだけだよ。」
カイルの言葉に、レイナの目が潤む。
「ありがとう……本当に……ありがとう……。」
全員がその場に座り込み、疲労と安堵が一気に押し寄せてきた。誰もが無言だったが、同じ気持ちを共有していることは明らかだった。
カイルはレイナの手を握り続けながら、静かに呟いた。
「全員、無事でよかった。本当に……。」
彼の言葉に、全員が深く頷き、玉座の間には静かな感謝の空気が広がった。
「……嘘でしょ……!」
エリスは焦りに満ちた声を上げる。
「魔力が……もう残ってない……!」
「エリス! 何とかならないのか!?」
グレンが声を張り上げるが、エリスは泣きそうな顔で首を振った。
「私……もう……魔法が……!」
エリスの声は震えていた。魔王との戦いで、彼女はすでに魔力を使い果たしていたのだ。
「こんな時に……!」
ルークは苛立ちを抑えられず、拳を床に叩きつけた。
「待って……何か……何か方法があるはずだ……!」
カイルが必死に考えを巡らせる。自分がレイナを守り切れなかったことへの自責が、心に重くのしかかっていた。
その時、ふと頭に浮かんだのは、旅の途中で手に入れたエリクサーだった。あの街で特別な花を手に入れ、苦労して完成させた究極の回復薬。
「……エリクサーだ!」
カイルが声を上げると、全員が彼を見た。
「そうだ……街で作ったあのエリクサー! あれなら……!」
「それって……!」
エリスが目を見開き、希望の光を取り戻したように顔を上げた。
「どこだ……?」
カイルは急いでバッグを漁り、中にしまっておいた小さな瓶を取り出した。澄んだ緑色の液体が瓶の中で揺れている。
「これだ……! レイナ、絶対に助ける!」
カイルは慎重に瓶の栓を抜き、レイナの唇にそっとエリクサーを注いだ。その液体が彼女の口に流れ込むと、ほんの一瞬だけ部屋全体が光に包まれた。
レイナの傷口がゆっくりと塞がり、血の流れが止まる。彼女の顔に少しずつ血の気が戻り、呼吸が穏やかになるのを全員が見守っていた。
「……よかった……!」
エリスが手を口に当て、涙をこぼしながら呟いた。
「本当に……助かったのか?」
グレンが恐る恐るレイナの顔を覗き込む。
「……まだ分からないけど、確かに傷は治っている……!」
ルークも安堵の息をつき、短剣を収めた。
やがて、レイナの瞼がゆっくりと開いた。
「……カイル……?」
彼女の声は弱々しいながらも確かだった。
「レイナ……! よかった……!」
カイルが彼女の手を握りしめ、目に見えて緊張を解いた。
「何で……?」
「お前は仲間だ……それだけだよ。」
カイルの言葉に、レイナの目が潤む。
「ありがとう……本当に……ありがとう……。」
全員がその場に座り込み、疲労と安堵が一気に押し寄せてきた。誰もが無言だったが、同じ気持ちを共有していることは明らかだった。
カイルはレイナの手を握り続けながら、静かに呟いた。
「全員、無事でよかった。本当に……。」
彼の言葉に、全員が深く頷き、玉座の間には静かな感謝の空気が広がった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……



【完結】どうやら魔森に捨てられていた忌子は聖女だったようです
山葵
ファンタジー
昔、双子は不吉と言われ後に産まれた者は捨てられたり、殺されたり、こっそりと里子に出されていた。
今は、その考えも消えつつある。
けれど貴族の中には昔の迷信に捕らわれ、未だに双子は家系を滅ぼす忌子と信じる者もいる。
今年、ダーウィン侯爵家に双子が産まれた。
ダーウィン侯爵家は迷信を信じ、後から産まれたばかりの子を馭者に指示し魔森へと捨てた。

だいたい全部、聖女のせい。
荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」
異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。
いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。
すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。
これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。

踏み台(王女)にも事情はある
mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。
聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。
王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる