誓いの嘘と永遠の光

藤原遊

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魔王討伐編

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魔王城が目前に迫る中、一行はその威容に圧倒されていた。黒い城壁は空を覆うようにそびえ立ち、その上には雷雲が渦を巻いている。遠くからでも分かる不気味な気配が、全員の肌に冷たい汗を滲ませた。

「……これが魔王城か。」

カイルが剣の柄を握りながら呟いた。

「思った以上に不気味な場所ね。でも、ここまで来たからには進むしかないわ。」

レイナが冷静に杖を握りしめる。

「城の中にはどれだけの敵がいるか分からない。準備は怠るな。」

グレンが大剣を構え、視線を周囲に巡らせた。

「俺たちの鍵が試されるのは、あの門だな。」

ルークが前方を指差す。巨大な黒い門が、魔王城の入口を封じているように鎮座していた。その門には、四つの窪みが彫られており、それぞれが鍵を受け入れる形になっている。

「ここが……鍵を使う場所ね。」

エリスが静かに呟いた。

一行が門の前に立つと、その威圧感に全員が思わず息を呑んだ。門に刻まれた紋様が微かに輝き、鍵を待ち受けるように冷たい光を放っている。

「さあ、鍵を使うぞ。みんな、準備はいいか?」

カイルが全員を見渡して言った。全員が無言で頷き、それぞれが持つ鍵を取り出した。

最初に動いたのはグレンだった。彼は氷の鍵を門の一つ目の窪みに差し込む。

「……行くぞ。」

鍵がカチリと音を立て、氷のような光が門全体を覆う。その直後、鍵が消え去り、窪みが青白く輝き続けた。

次にルークが闇の鍵を取り出し、二つ目の窪みに差し込んだ。

「こんな大事なところで失敗したら笑いものだな。」

軽口を叩きながらも、手は慎重に動いていた。鍵が黒い光を放ち、再び門が震えるように輝いた。

三つ目はエリスの炎の鍵だった。彼女が窪みに鍵を差し込むと、門に炎のような赤い輝きが広がり、全体が徐々に熱を帯びていった。

最後の鍵を持つのは、レイナだった。彼女は雷の鍵を手に取り、一瞬だけそれを見つめた。鍵から放たれる微かな振動が、彼女の迷いを映し出しているようだった。

(ここで鍵を使えば……この旅が終わるわけじゃない。その後、私は……。)

彼女の手が僅かに震えたが、すぐに動きを止めた。そして、何事もなかったかのように雷の鍵を最後の窪みに差し込む。

鍵が青白い雷光を放ち、門全体が大きな音を立てて動き出した。

黒い門がゆっくりと開き、魔王城の内部が姿を現した。闇に覆われた城内からは、不気味な冷気が流れ出し、全員を包み込む。

「いよいよだな……ここからが本番だ。」

カイルが剣を構え直し、全員を鼓舞するように言った。

「魔王城の中で何が待ち受けているか分からないけど、全員で生きて帰るわよ。」

エリスが穏やかな声で言い、杖を握りしめた。

「無茶はするなよ。ここでやられたら、笑い話にもならねぇ。」

ルークが軽く笑いながら短剣を手にした。

「全員、気を引き締めていこう。」

グレンが短く言い、先頭に立った。

一行がゆっくりと城内に足を踏み入れると、黒い壁と高い天井に囲まれた広間が現れた。壁には魔法陣が刻まれており、どこかで低い唸り声のような音が響いている。

「……思った以上に広いな。」

カイルが剣を握りながら周囲を見回す。

「まずはこの広間を調べましょう。罠があるかもしれないわ。」

レイナが冷静に杖を構え、魔力を探った。

(この先で、鍵を失った私は……彼らを裏切ることになる。)

彼女の胸には冷たい決意が芽生えつつあった。しかし、その影に潜むのは、消えない迷いと後悔だった。

レイナの僅かな表情の変化を見逃さなかったのは、ルークだった。彼は何も言わずに彼女の後ろを歩きながら、その様子を観察していた。

(あいつ、鍵を使い終えたことで少し吹っ切れたように見えるが……まだ何かを抱えてるな。)

彼は短剣を弄びながら、無言で考えを巡らせた。

広間の奥にある扉が静かに開き、一行は次のエリアへと進む準備を始めた。魔王城の中で何が待ち受けているのか、それはまだ誰にも分からない。
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