誓いの嘘と永遠の光

藤原遊

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魔王討伐編

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浮島の先端に立つ雷光の神殿は、天空に浮かぶ巨大な建造物だった。白い石で作られたその外壁は雷の光を反射して輝き、空を覆う灰色の雲の中にそびえ立っている。神殿全体が微かに振動し、雷鳴が絶え間なく響いている。

「ついに来たわね……最後の試練。」

レイナが杖を握りながら低く呟いた。

「ここを突破すれば、最後の鍵が手に入る。」

カイルが剣を構え、神殿の大扉を見据えた。彼の目には決意の光が宿っている。

「雷の罠も厄介そうだが、今さら怯むわけにはいかないな。」

グレンが静かに言い、肩に担いだ大剣を握り直した。

「おいおい、あんまり緊張するなよ。こんなところで落ちたら笑えないからな。」

ルークが軽口を叩きながらも、短剣をしっかりと手にしている。

「みんな、準備はいい?」

エリスが全員の顔を見渡すと、全員が頷いた。

「じゃあ、行こう。」

カイルが扉を押し開け、全員が雷光の神殿に足を踏み入れた。

神殿の内部は巨大な広間になっており、床には雷の模様が描かれた魔法陣がいくつも刻まれている。天井は異様な高さで、時折、雷が空間を裂いて轟音を響かせていた。

「……気をつけて。この魔法陣は動力源のようなものね。」

レイナが慎重に観察しながら言った。

「近づけば雷を放つ仕掛けになってるかもしれない。」

「罠か……なら、俺が調べる。」

ルークが前に出て、短剣で魔法陣を軽く叩いた。

次の瞬間、魔法陣が青白く輝き、鋭い雷の矢が飛び出した。

「くそっ!」

ルークが咄嗟に身を翻して避ける。雷の矢は床に突き刺さり、激しい閃光を放って消えた。

「やっぱり罠ね……でも、ルークの動きなら大丈夫そうね。」

レイナが冷静に分析する。

「気を抜くなよ、レイナ。お前の魔法がないと、こっちは何もできないんだからな。」

ルークが軽く笑いながら言う。その言葉にレイナは一瞬だけ目を伏せ、答えずに杖を握り直した。

(何も知らないから……そんな風に言えるのよね。)

彼女の胸には、再び重苦しい感情が湧き上がる。しかし、仲間たちの姿を見て、それを押し殺した。

神殿の奥へ進むたびに、罠はさらに巧妙になり、魔物の数も増えていった。

雷を纏った狼型の魔物が一行を囲むように現れた時、戦闘が始まった。

「前衛は任せろ!」

グレンが叫び、大剣を振り上げて狼を薙ぎ払う。

「エリス、回復を!」

カイルが剣を構えながら叫ぶ。エリスは素早く治癒の魔法を唱え、仲間たちの傷を癒す。

「影縛り!」

レイナが呪文を唱え、黒い魔力の鎖で狼の動きを封じる。

「今だ、ルーク!」

「分かってる!」

ルークが影縛りされた狼の喉元を正確に短剣で突き、一撃で仕留めた。

戦闘が終わり、全員が肩で息をしながら体勢を整えた。

「……さすが、全員揃うと頼もしいな。」

ルークが笑いながら言う。

「私たち、いいチームよね。」

エリスが微笑みながら答える。その言葉に、レイナは僅かに胸が痛んだ。

(本当に……いいチーム。)

だが、そのチームを自分が壊す日が来るのだという思いが、彼女の胸に暗い影を落としていた。

神殿の中心部に近づくにつれ、空間全体が光を帯び始めた。雷の音がさらに激しさを増し、足元の魔法陣も次々に反応している。

「ここからが本番ね……!」

レイナが静かに呟き、杖を構え直した。

(これが……最後になるかもしれない。)

彼女は心の中でそう覚悟を決めた。仲間たちの背中を見つめながら、自分に言い聞かせる。

(だからこそ、最後まで……全力でやるわ。)

彼女の瞳には決意と迷いが交錯していた。
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