誓いの嘘と永遠の光

藤原遊

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魔王討伐編

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カザールの街は相変わらずの賑わいを見せていた。商人たちの掛け声や冒険者たちの笑い声が広場に響き、明るい日差しが石畳を照らしている。

「次は天空の浮島か……名前だけで厄介そうだな。」

ルークがため息混じりに言いながら掲示板を眺めていた。その横で、カイルが地図を広げ、行き先を確認している。

「雷光の神殿は、浮島に点在する足場を渡って進む仕掛けがあるらしい。魔法で雷を放つ罠や魔物も多いみたいだ。」

「浮島を渡る? また面倒な場所だな。」

ルークが顔をしかめた。

「だからこそ、雷に耐えられる装備が必要なの。雷耐性を持つ装備やアイテムを調達しておかないと、誰もたどり着けないわ。」

レイナが冷静に杖を突きながら言う。

「そうね。私も回復魔法に集中するために、防具を強化しておきたいわ。」

エリスが静かに続ける。

「じゃあ、装備を整えるついでに、この街で情報収集もしようか。」

カイルが提案し、全員がそれぞれの準備に散っていった。

ルークは一人、街外れの鍛冶屋を訪れていた。そこはカザールの中心部から少し離れた場所にあり、あまり目立たない店構えだった。彼が扉を押して中に入ると、奥から豪快な笑い声が響いてきた。

「よう、ルークじゃないか!」

店の主である筋骨隆々の男が顔を見せた。その手には、使い込まれたハンマーが握られている。

「久しぶりだな、ジーク。相変わらず鍛冶仕事を続けてるんだな。」

「おかげさまでな。それで今日は何の用だ? また何か大きな騒動に巻き込まれてるんだろ?」

ジークが笑いながら尋ねると、ルークは軽く肩をすくめた。

「まあ、そんなところだ。雷に耐えられる防具が必要でな。あんたのところなら良いのがあると思って来たんだ。」

「雷か……少し待ってろ。」

ジークが奥から分厚い布に包まれた防具を持ち出してきた。それは銀色に輝く鎧で、表面に細かな紋様が刻まれている。

「これは雷を反射する特殊な金属でできてる。ただし、軽いのがいいならこっちだ。」

今度は布製のマントを差し出した。マントには魔法の符号が刺繍されており、薄手ながら強力な魔法が込められているのが分かる。

「さすがだな、ジーク。どっちも助かるが……値段は?」

「お前には特別価格だ。いつも命を張って稼いでる冒険者には頭が下がるよ。」

ルークは少しだけ微笑みを浮かべ、財布を取り出して代金を払った。

店を出たルークは、静かな街の外れで足を止めた。彼は手にした防具を見つめ、ふと笑みを浮かべた。

「……こんなものが必要になるなんて、あの頃は思わなかったな。」

彼の記憶に浮かんだのは、若い頃の自分だった。家族を失い、生きるために盗賊団に身を置いていた時のこと。そこでは人を信じることは許されず、ただ自分のために動く日々だった。

「今は……違うか。」

彼は小さく呟き、腰のポーチに収められた「闇の鍵」に触れた。その冷たい感触が、仲間たちから託された信頼の重さを思い出させる。

「お前らが俺を信じるって言うなら、やってやるさ。今度こそ逃げない。」

彼は防具をしっかりと抱え、再び街の中心部へと歩き出した。

全員が再び集合したのは冒険者ギルドの前だった。それぞれの装備が整い、準備が整った様子だ。

「全員、準備は大丈夫?」

カイルが全員を見渡しながら尋ねると、エリスが頷いた。

「ええ。これで雷の罠にも対応できるわ。」

「私も大丈夫よ。」

レイナが冷静に答えた。

「おいおい、これだけ準備したんだから、すぐにはやられないだろ。」

ルークが笑いながら言うと、カイルがその言葉に微笑みを浮かべた。

「その通りだ。でも、これが最後の試練だ。全員、気を引き締めていこう。」

全員が深く頷き、次の試練への覚悟を胸に秘めながら旅立った。
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