誓いの嘘と永遠の光

藤原遊

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魔王討伐編

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パーティがたどり着いた「影の迷宮」は、不気味な闇に包まれていた。巨大な門には絡みつくような彫刻が施され、その中心で赤い宝石がゆらゆらと揺らめくように光っている。冷たい風が絶え間なく吹きつけ、門を見つめる全員の表情が硬くなった。

「ここが……影の迷宮か。」

カイルが低い声で呟いた。

「ただの迷宮じゃないわね。この空気、何かがおかしい。」

レイナが門の模様に目を向けた。彼女の杖が微かに振動している。

「この門自体が魔力を持ってるようだな。」

エリスが慎重に魔力を探りながら言った。

「罠が仕掛けられている可能性が高い。用心しろ。」

グレンが大剣を軽く肩に当てて身構える。ルークは門の周囲を調べ、手元の短剣で模様を軽く叩いた。

「音が変だな……これは内部に何か仕掛けがあるぜ。」

「どうする、カイル?」

ルークが振り返りながら尋ねる。

「進むしかない。ここを越えなければ次の鍵は手に入らない。」

カイルの決意に、全員が頷き、門の前に並んだ。

「開くぞ……!」

カイルが力を込めて門を押すと、低い音を響かせながらゆっくりと動いた。次の瞬間、黒い霧が一気に吹き出し、全員の視界を覆った。

霧が全員を包み込み、冷たくざらついた感触が肌にまとわりつく。気づけば、カイル、グレン、エリス、レイナ、ルークはそれぞれが孤独な空間に閉じ込められていた。

グレンは暗闇の中で一人、静まり返った廊下に立っていた。壁には傷跡のような模様が刻まれ、遠くから不気味な声が聞こえる。

「また守れないのか……」

その声にグレンは硬直した。顔を上げると、霧の中から過去の幻影が現れる。倒れ伏した仲間たちの姿、血に染まった剣、そして彼を責めるかのような彼らの視線。

「どうして……守れなかった……」

幻影が低く呟きながら彼に手を伸ばす。その光景がグレンの胸を締め付けた。

「俺は……お前たちを……」

声が震え、記憶の重さが体を押しつぶそうとする。

「結局、お前には無理だった。」

冷たく鋭い声が響いた。霧が渦を巻き、そこから現れたのは黒い鎧を纏ったもう一人のグレンだった。彼の瞳には冷たい光が宿り、その手には大剣が握られていた。

「お前には守れない。過去も、仲間も、自分自身さえも。」

黒い鎧のグレンが一歩ずつ近づいてくる。その姿に、グレンは体を震わせながら剣を構えた。

「俺は……そんなことは……!」

「否定してみろ。お前がどれほど無力だったか、この剣で思い知らせてやる。」

黒い鎧が剣を振り下ろし、グレンは咄嗟にそれを受け止めた。衝撃が全身に走り、膝が地面につきそうになる。

一方、カイルたちはそれぞれの空間で声を張り上げていた。エリスは光の魔法で霧を振り払おうとし、レイナは魔法の探知で仲間の気配を探していた。

「グレン! 聞こえるなら応えて!」

カイルが叫びながら霧の中を進む。

「彼を助けなきゃ……!」

エリスも焦りの色を滲ませる。

「待って。霧が動いている……彼の場所が分かるかもしれないわ。」

レイナが静かに目を閉じ、魔力を集中させた。その瞬間、霧の中にうっすらと光の筋が見え始める。

「見つけた……!」

黒い鎧のグレンとの戦いは激しさを増していた。剣を交えるたびに、彼の心に過去の記憶が蘇り、動きを鈍らせていく。

「どうしてお前は何も変えられない?」

黒い鎧が冷たく嘲るように言う。その声に、グレンは拳を震わせた。

「俺は……!」

その時、遠くからカイルの声が響いた。

「グレン! お前は一人じゃない!」

その声に霧がわずかに揺れ、黒い鎧の動きが鈍った。

「……カイル?」

グレンが顔を上げると、霧の中から仲間たちが現れた。カイルが剣を構え、ルークが短剣を構えながら走り寄ってくる。

「お前には俺たちがいる!」

「そうよ。過去の幻影に縛られるなんて馬鹿馬鹿しいわ!」

レイナが影縛りの魔法で黒い鎧の足を束縛し、グレンに隙を作った。

「行け、グレン! 今度こそ決着をつけろ!」

エリスが叫び、光の魔法でグレンの剣を輝かせる。その光に導かれるように、グレンは深く息をつき、剣を握り直した。

「俺は……もう迷わない!」

彼は力強く叫びながら剣を振り下ろし、黒い鎧の自分を真っ二つに切り裂いた。
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