幼女となった社畜は異世界の救世主となる

第3部

32章新たな未来への準備

聖域での出来事から数ヶ月が過ぎ、エルフィナスは平穏を取り戻していた。ミユは女神に選ばれた聖女として、多くの人々に知られる存在となっていた。彼女の成長や力を目の当たりにした人々は、彼女を尊敬と畏敬の念をもって迎え入れていた。そんな中、ルイスはついに意を決して国中の前で宣言をした。

「私はこの国の王子として、ミユを妻として迎えると決めました。」

その言葉に、城内は静まり返った後、歓声に包まれた。女神に選ばれた聖女という立場がミユの平民出身という身分差の問題を解消し、むしろ彼女が王家の一員となることで国全体の安定を象徴する存在になると多くの人が理解していたのだ。

ミユは緊張した面持ちで彼の隣に立ちながら、しっかりとした声で言葉を紡いだ。

「私も、ルイス様と共にこの国を支えることができるよう、努力して参ります。」

彼女の謙虚で誠実な言葉に、参列者たちはさらに歓声を上げた。

結婚式の準備は着々と進められた。大聖堂で行われることが決まり、城内では装飾や衣装の準備が大忙しだった。ミユは自分の役割が重いことを実感しながらも、ルイスと共に新たな未来を切り開く覚悟を固めていた。

式の日が近づくにつれ、仲間たちもそれぞれの思いを胸に抱いていた。エリオットは一人になると、少しだけ笑みを浮かべて自嘲気味に呟くことがあった。「あいつが選んだのは当然ルイス様だよな。俺がどうこう言える話じゃない。」

一方で、セドリック卿は部下たちに厳しく訓示を与えつつ、心の中では王子としてのルイスの選択を誇らしく思っていた。ライアンはいつも通りの真面目な態度で、ミユを温かく見守りつつ、エリオットの様子を心配していた。

そして、式の当日を迎える。

大聖堂の鐘が高らかに鳴り響き、エルフィナス城に隣接する広場は純白の花々で埋め尽くされていた。空は青く澄み渡り、祝福の光が降り注ぐ中、参列者たちはそれぞれ華やかな衣装を纏い、喜びに満ちた表情で集まっていた。

ミユは聖女としての白いドレスを身に纏い、女神から贈られた美しいアクセサリーをつけていた。その姿は気品と神聖さを備え、誰の目にも完璧な花嫁として映っていた。彼女は深呼吸をしながら祭壇に向かい歩き始める。

ルイスは祭壇で彼女を待ちながら、穏やかな笑みを浮かべていた。ミユが近づくと、その瞳は彼女に向けられたまま微動だにしない。やがて彼女が彼の隣に立つと、彼は静かに囁いた。

「よく似合っているよ、ミユ。」

ミユはその言葉に小さく微笑みながら、少し照れたように答えた。「ありがとうございます、ルイス様……」

誓いの儀式が始まり、二人は神官の前でお互いに誓いの言葉を交わした。ルイスは彼女の手を握りしめながら力強く語った。

「僕はミユを生涯大切にし、この国と共に歩んでいくことを誓います。」

ミユも彼の目を真っ直ぐに見つめながら答える。「私も、ルイス様を支え、この国を守るために力を尽くすことを誓います。」

その言葉に続き、二人は指輪を交換した。人々の歓声が大聖堂に響き渡り、純白の花びらが空から舞い降りる中、二人は誓いの口づけを交わした。

その様子を見つめていたエリオットは、杯を手にしながら祝宴の場から少し離れた場所に立っていた。遠くからミユの笑顔を見つめる彼の表情には、どこか寂しさが滲んでいた。

「美しいな……本当に。」彼は自分でも気づかないような小さな声で呟いた。

「どうした、エリオット？」隣に現れたのはライアンだった。エリオットは一瞬驚いたが、すぐに軽く笑みを浮かべて肩をすくめた。

「いや、何でもないさ。ただ、俺も鈍いなと思ってな。あいつを好きだったって、今さら自覚したよ。」

ライアンは驚きつつも、真面目な表情で彼を見つめて言った。「それでお前はどうするつもりなんだ？」

エリオットは少し笑いながら杯を飲み干した。「どうもこうもないさ。あいつが選んだのはルイス様だ。俺にできるのは、これからも二人を支えることだけだ。」

その言葉に、ライアンは静かに頷き、グラスを掲げた。「それがお前らしいな。乾杯しよう。」

「そうだな。」エリオットも笑いながら、グラスを掲げ、二人は静かに杯を合わせた。

祝宴が終わり、人々がそれぞれ帰路に就く中、ミユとルイスは城内の広間で二人きりになった。夜空の星が二人を照らす中、ルイスはミユの手を取り、柔らかな声で言った。

「ミユ、これからも君と共に、この国を支えていきたい。これが僕の願いだ。」

ミユは彼の目を見つめ、静かに頷いた。

「私も、ルイス様と共に歩んでいきます。それが私の幸せです。」

星空の下で二人は微笑み合い、新たな未来へと進む決意を胸に、夜の静けさの中でそっと手を繋いでいた。