幼女となった社畜は異世界の救世主となる

藤原遊

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第3部

28章試練の森

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森を抜けてしばらく歩くと、二人の前には奇妙な静寂が広がっていた。鳥のさえずりも、風の音さえも聞こえない不気味な場所だった。

「……ここは?」

ミユが辺りを見回しながら不安げに尋ねた。

「地図では、聖域への道中にある『試練の森』と呼ばれる場所だ。」ルイスは慎重な表情で答えた。「聖域に辿り着くためには、この森を通らなければならない。」

彼の説明に、ミユは喉を鳴らして唾を飲み込んだ。「試練……って、具体的にどんなものなんでしょうか?」

「記録には何も書かれていない。ただ、入る者の覚悟が試される場所だと伝えられている。」

ルイスは剣を軽く握り直しながら歩を進めた。

「進もう。引き返す選択肢はない。」

森の奥へと進むにつれて、道は次第にぼんやりとした霧に覆われ、視界が狭まっていった。木々の間には見慣れない模様が刻まれており、不思議な光が瞬いている。

「何かがおかしい……」

ミユは立ち止まり、背筋に走る冷たい感覚に息を呑んだ。

その瞬間、霧の中から声が響いた。

「お前たちは何者だ。この先へ進む資格があるのか。」

「誰だ!」

ルイスが声を張り上げ、周囲を見回した。

しかし、返答はなく、霧がますます濃くなり、足元から闇のようなものが広がり始めた。その闇は二人を包み込むように迫り、視界が完全に遮られる。

目を開けると、ミユは一人きりで闇の中に立っていた。ルイスの姿も見えず、辺りは何もない虚無だけが広がっている。

「ルイス様……?」

彼女は声を上げたが、返事はない。

「お前は弱い。何もできない。」

闇の中から低い声が響く。

「お前がこの旅に出たところで、何も変わらない。」

ミユはその声に耳を塞ぎながら叫んだ。

「違う!私は……!」

「違う?お前は仲間たちに守られるだけの存在だ。自分が何かを成し遂げられると思っているのか?」

その声はまるで彼女の心をえぐるようだった。ミユは膝をつき、涙がこぼれそうになるのを必死に堪えた。

「……守られるだけの存在じゃない……私は……!」

彼女は震える声で呟いた。

その瞬間、光が彼女の胸の中から広がった。結晶の破片が微かに輝き、闇を押し返していく。

「私は、みんなのために、この旅を最後までやり遂げます!」

ミユが立ち上がり、強い意志で叫ぶと、闇が霧散し、再び光が差し込んだ。

一方、ルイスもまた孤独な闇の中に立っていた。彼の前には影のような存在が現れ、冷たく笑いながら問いかけた。

「お前は本当に彼女を支えるつもりなのか?その力を持っているのか?」

「……彼女を支える。それが僕の役割だ。」

ルイスは静かに答えた。

「役割?それはお前の偽りの優しさから生まれたものではないのか?」

影の言葉にルイスは眉をひそめる。

「偽りだと?」

「本当は彼女を守ることなどできないと分かっている。お前が恐れているのは、自分の無力さだ。」

ルイスは拳を握り締め、影を睨みつけた。

「確かに、僕は完璧じゃない。守りきれる自信もない。でも、それでも、彼女を見捨てるつもりはない!」

その叫びと共に、ルイスの剣が光を放ち、影を切り裂いた。

霧が晴れると、ミユとルイスは再びお互いの姿を見つけた。二人はほっと息をつきながら、近寄った。

「ミユ、大丈夫か?」

ルイスが彼女の肩に手を置き、心配そうに尋ねる。

「はい……少し怖かったけど、乗り越えられました。」

ミユは微笑みを浮かべた。

「君は強い。」

ルイスのその言葉に、ミユは少し顔を赤らめながら、そっと頷いた。

「ルイス様も……何かを乗り越えられたんですね。」

彼女のその言葉に、彼は静かに笑みを返した。

試練の森を抜けた二人の前に、聖域の入口が姿を現した。それは輝く光に包まれ、神々しさに満ちていた。

「これが……聖域……」

ミユが息を呑むように呟いた。

「女神の力が感じられるな。」

ルイスは目を細めながら頷いた。

「行こう、ミユ。ここからが本当の始まりだ。」

二人は互いに頷き合い、聖域への一歩を踏み出した。
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