幼女となった社畜は異世界の救世主となる

藤原遊

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第3部

26章新たな使命

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セシル王子との激闘を終え、砦の残骸には冷たい風が吹き抜けていた。ミユは光の力で暴走する結晶を沈めることに成功したが、手の中の破片から微かに残る不穏な感覚を覚えながら、無言でそれを見つめていた。

「これで本当に終わったのか?」

ライアンが剣を収めながら、まだ周囲を警戒する。

「終わりではない。」

ルイスの声は冷静だった。

「結晶の力を封じるだけでは十分ではない。これを聖域に返さなければならない。」

その言葉にミユが顔を上げると、彼の瞳は遠くを見据えていた。彼の決意を感じ取った彼女は、小さく頷いた。

王宮に戻った一行は、戦いで疲労した身体を癒す間もなく、結晶の行く末について話し合っていた。ルイスの提案を聞いた仲間たちは、一様に驚きを隠せない様子だった。

「聖域へ返す、か……。確かにその方が安全だが、あの場所の存在を知っている者などごく僅かだ。」

セドリック卿が重々しく口を開く。

「王家の記録によると、聖域は選ばれた者しか入れない特別な場所だ。」

ルイスは広げた古い地図を指しながら説明を続けた。

「そして、その場所に辿り着くためには六つの星の伝承に従う必要がある。」

エリオットが興味深そうに地図を覗き込んだ。

「六つの星の伝承……それが道しるべというわけか。」

ミユはルイスの説明を聞きながら、胸の奥で静かな決意を固めていた。彼女はそっと結晶の破片を手に取り、静かに口を開いた。

「私が行きます。この結晶を、女神様の元にお返ししなければ。」

その言葉にルイスが少し驚いたように彼女を見つめたが、すぐに優しい微笑みを浮かべた。

「その役目なら、君が最適だ。」

「でも、ミユ一人では危険すぎる!」

ライアンが思わず声を荒げた。

「もちろん、一人では行かせない。」

ルイスが静かに答える。

「僕も一緒に行く。王家の者として、この旅を見届ける責任がある。」

セドリック卿とエリオットは一瞬視線を交わした後、軽く頷いた。ライアンは不満げだったが、ルイスの目を見てそれ以上反論するのを諦めた。

旅立ちの日、朝の光が静かに城を照らしていた。門の前で集まった仲間たちは、それぞれの思いを胸にルイスとミユを見送っていた。

「必ず無事に帰ってきてください。」

セドリック卿は彼らの肩に手を置き、力強く言葉を送る。

「楽しい旅になるといいね!」

エリオットはいつものように軽口を叩くが、その笑みの裏にはどこか寂しさが滲んでいた。

「気をつけてください。僕たちはここで待っています。」

ライアンは真剣な表情で二人を見つめ、深く頭を下げた。

ミユはその一人ひとりに感謝の言葉を伝えながら、最後にルイスの方を向いた。

「準備は整いましたか?」

「もちろんだ。」

ルイスが頷くと、二人は馬車に乗り込み、門が静かに開いた。

彼らの姿が城の外へと消えていく中、仲間たちはその背中を見送りながら、それぞれの心に祈りを抱いていた。

馬車が揺れる中、ミユは窓から外の景色を眺めていた。広がる草原、風に揺れる木々、そして遠くに見える山々。そのすべてが彼女にとってはまだ馴染みのない光景だった。

「どうした、ミユ?」

隣に座るルイスが声をかける。

「なんだか、不思議な気分です。この世界に来たばかりの頃は、何もかも怖かったのに……今は、この景色が少しだけ安心感をくれる気がします。」

ミユは小さく微笑んだ。

「それは君が強くなった証拠だよ。」

ルイスは彼女を優しく見つめた。

ミユは少し驚いたように彼を見上げた。

「私、強くなれたんでしょうか……?」

「もちろんだ。」

ルイスは自信に満ちた声で答えた。

「君はもう、一人で抱え込む必要はない。僕たちがいる。僕がいる。」

その言葉に、ミユは少しだけ胸が温かくなるのを感じた。
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