幼女となった社畜は異世界の救世主となる

藤原遊

文字の大きさ
上 下
67 / 74
第3部

25章結晶の暴走

しおりを挟む
砦の中心に立つセシル王子は、赤く脈動する結晶を高く掲げていた。その光は周囲に溢れ出し、空間全体を不安定にしている。

「これが世界を変える力だ!」

セシル王子の声は高揚し、狂気が滲んでいた。

「この力で、私は誰よりも強く、誰よりも偉大な存在になる!」

「止めろ、セシル!」

ルイスが剣を構えながら叫ぶ。

「その力はお前を滅ぼすだけだ!」

「滅ぼす? この力を恐れているのか、ルイス!」

セシル王子は嘲笑を浮かべながら、結晶の光をさらに増幅させた。

その瞬間、地面が激しく揺れ、砦の壁が崩れ始めた。

「結晶が暴走している……!」

エリオットが眉をひそめながら魔力の乱れを感知する。

「ミユ、光の力で暴走を抑えられるか?」

ライアンが焦りの中で問いかける。

ミユは息を整えながら頷いた。

「試してみます……!」

ミユは結晶の前に進み出ると、手のひらに光を集め始めた。その光は暖かく、柔らかい力を持ちながらも、結晶の暴れ狂う力に圧されていた。

「やめろ!その光は……!」

セシル王子が一瞬たじろいだ。

ミユは祈るように手を差し伸べた。


「この世界を守るために、どうか力を静めて……!」

結晶から溢れる赤い光とミユの光がぶつかり合い、一瞬の閃光が砦全体を照らす。その光景を見守るルイスは、彼女の小さな背中に目を奪われていた。

「君がこの世界に来た理由……それを、今掴もうとしているのか。」

ルイスは剣を握り締めながら、彼女を見守ることしかできない自分を悔いていた。

「くそっ、私はまだ……!」

セシル王子は結晶を取り戻そうと足を踏み出したが、セドリック卿がその前に立ち塞がった。

「ここまでだ、セシル殿下。」

セドリック卿は重々しく剣を構えた。

「その行動は、これ以上許されない。」

ライアンも援護に入り、王子を押さえ込む。彼の叫び声が砦中に響くが、次第に力を失っていった。

一方、ミユの光が結晶の暴走を完全に押さえ込んだ瞬間、赤い光が静かに消え、結晶は砕けるように散っていった。

「砦が崩れるぞ!」

エリオットが叫び、全員が脱出を図る。瓦礫が崩れる音と共に、砦の構造は次第に崩壊していった。

ミユは光の余韻に包まれながら立ち尽くしていたが、ルイスが駆け寄り、彼女の手を引いた。

「ミユ、早く!」

ルイスの声に、ミユははっと我に返り、共に走り出した。

砦から脱出した一行は、遠くで砦が完全に崩壊するのを見届けた。ミユは胸に残る結晶の破片を見つめ、複雑な表情を浮かべていた。

「結晶は……私に何かを託したような気がします。」

彼女は静かに呟いた。

「その答えを探すために、次の一歩を踏み出そう。」

ルイスが優しく答えた。

「女神に返すべきだと思うなら、僕たちも全力で協力する。」

「はい……この結晶の光を、女神様の元へ返しに行きます。」

ミユは決意を固めた瞳で、ルイスを見上げた。

彼は彼女の決意を受け止め、小さく頷く。

「共に行こう、ミユ。君が選んだ道を支えるために。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

傷心令嬢と氷の魔術師のスパイス食堂

ゆちば
恋愛
【スパイスオタク令嬢×傲慢魔術師×歪んだ純愛】 王国の男爵令嬢フィーナは、薬師業の傍ら、大好きなスパイス料理の研究をしているスパイスオタク。 ところが、戦地に遠征中の婚約者の帰りをひたすら待つ彼女を家族は疎み、勝手に縁談を結ぼうとしていた。 そのことを知ったフィーナは家出を計画し、トドメに「婚約者は死んだのよ!」という暴言を吐く義妹をビンタ!! そして実家を飛び出し、婚約者がいるらしい帝国を目指すが、道中の森で迷ってしまう。 そこで出会ったのは、行き倒れの魔術師の青年だった。 青年を救うため、偶然見つけた民家に彼を運び込み、フィーナは自慢のスパイス料理を振る舞う。 料理を食べた青年魔術師は元気を取り戻し、フィーナにある提案をする。 「君にスパイス料理の店を持たせてあげようってコトさ。光栄だろ?」 アッシュと名乗る彼は、店を構えれば結婚資金を稼ぎながら、行方知れずの婚約者の情報を集めることができるはずだと言う。 甘い言葉に釣られたフィーナは、魔術師アッシュと共に深夜限定営業の【スパイス食堂】をオープンさせることに。 じんわりと奥深いスパイス料理、婚約者の行方、そして不遜で傲慢で嫌味でイケメンなアッシュの秘密とは――? ★全63話完結済み

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!

碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった! 落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。 オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。 ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!? *カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

一日5秒を私にください

蒼緋 玲
恋愛
1.2.3.4.5… 一日5秒だけで良いから この胸の高鳴りと心が満たされる理由を知りたい 長い不遇の扱いを受け、更に不治の病に冒されてしまった少女が、 初めて芽生える感情と人との繋がりを経て、 最期まで前を向いて精一杯生きていこうと邁進するお話。 その他外部サイトにも投稿しています

目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜

楠ノ木雫
恋愛
 病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。  病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。  元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!  でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...