幼女となった社畜は異世界の救世主となる

第3部

20章再訪の地

ヴェルザリアの国境を越え、馬車が森を抜ける道を進む中、ミユは窓の外を見つめていた。深い森と静かな空気――それは彼女に、以前この地を訪れた時のことを思い出させていた。

「あの時は、エリオットさんの呪いを解くために来たんでしたね……」ミユは窓の外を見ながら静かに口にした。

隣に座るエリオットが、苦笑いを浮かべながら答えた。「ああ、懐かしいな。あの時はずいぶんと迷惑をかけたよな。君がいなければ、今頃俺はどうなっていたか分からない。」

「そんなこと……私ができることをしただけです。」ミユは少し照れくさそうに答えた。

「いや、あの時のおかげで俺は本当に救われた。だから、今度は俺が君の助けになる番だと思ってる。」エリオットの真剣な声に、ミユは目を瞬かせながら小さく頷いた。

そのやり取りを聞いていたライアンが口を開く。「今回は呪いではなく、結晶とセシル王子の陰謀だが……前回と同じように、この地で何が起きているのかをしっかり見極める必要がある。」

馬車がヴェルザリアの城門に到着すると、そこにはアレクシス殿下が自ら出迎えていた。彼の穏やかな笑顔と堂々とした姿は、以前と変わらない。

「ルイス殿下、そして皆さん。再びヴェルザリアへようこそ。」アレクシス殿下は礼儀正しく頭を下げた。「こうして再びお会いできることを嬉しく思います。」

「こちらこそ、歓迎に感謝します。」ルイスもまた礼を返し、手を差し出した。「お互いの国にとって良い結果をもたらせるよう、今回の話し合いが有意義なものになることを願っています。」

アレクシス殿下はその手を握り返し、微笑んだ。「もちろんです。私も、そのために尽力する覚悟です。」

そのやり取りを少し離れた場所から見ていたミユは、小さく息を吐いた。「アレクシス殿下は、本当に誠実そうな方ですね。」

セドリック卿が低い声で言葉を足した。「彼は誠実さだけでなく、知略にも優れている人物だ。それだけに、弟であるセシル王子との対立は、この国の大きな問題となっている。」

その夜、ミユたちは城内で休息を取ることになったが、城の廊下を歩くうちにミユは不思議な気配を感じた。胸の奥がざわつき、どこかで聞いたような「囁き声」が微かに耳を掠める。

「また……あの声？」ミユは立ち止まり、廊下の暗がりに目を向けた。

「どうした、ミユ？」後ろから声をかけたのはルイスだった。彼もミユが何かを感じ取っていることに気づいたようだった。

「いえ……また、結晶に関係するような気配が……」ミユはそう答えながらも、その感覚が一瞬で消えてしまったことに戸惑っていた。

ルイスは少し考え込むようにしながら言った。「もしかすると、この地にも結晶に関連する何かが隠されているのかもしれない。明日、アレクシス殿下と話す際に、この件についても探りを入れてみよう。」