幼女となった社畜は異世界の救世主となる

藤原遊

文字の大きさ
上 下
61 / 74
第3部

19章声の導き

しおりを挟む
翌朝、エルフィナス王宮の執務室には緊張した空気が漂っていた。ルイスを中心に、エリオット、ライアン、オーウェン、ミユ、そして騎士団長のセドリック卿が集まり、昨夜の襲撃について意見を交わしていた。

「昨夜の襲撃者たちは、結晶を狙っていたことは明白だ。」ルイスが低く静かな声で話し始めた。「彼らが隣国ヴェルザリア、特にセシル王子の指示で動いている可能性が高い。」

セドリック卿は腕を組みながら頷き、厳しい表情で言った。「その通りだ。昨夜の連中はかなり訓練された動きをしていた。ただのスパイではなく、恐らく隣国の特殊部隊かそれに近い者たちだろう。私たちも油断はできない。」

「セシル王子が背後にいるなら、彼はこれで終わるはずがありません。」エリオットが口を挟む。「奴らは次にもっと大胆な手段を講じてくる可能性が高い。」

「ならば、こちらも動きを加速させる必要がありますね。」オーウェンが研究資料を指差しながら話を続けた。「結晶についての研究を進め、彼らが何を求めているのか、その核心に迫らなければなりません。」

その場で沈黙していたミユが、小さく息を吐きながら口を開いた。「私……昨日の夜、結晶に触れたとき、何かの声を聞きました。」

その言葉に、全員が彼女に視線を向けた。驚きと興味が交じる目が、彼女をじっと見つめる。

「声……?」ルイスが静かに促すように尋ねる。「それは、どんな声だったんだ?」

ミユは少し考え込みながら答えた。「はっきりとは分からないけれど、私に向かって何かを語りかけてくるようでした。『お前の力はここにあるべきではない』と……」

その言葉を聞いたオーウェンは目を細め、深く考え込んだ。「それがもし、結晶そのものに宿る何かの意志だとしたら……この結晶は単なる遺物ではなく、非常に特殊な存在と言えます。」

セドリック卿が険しい顔で問うた。「それが敵にとって何を意味するのかを理解しなければならない。結晶がただの力の塊ではなく、何かの意思を持つものならば、それを制御する術を見つけなければならない。」

その日の午後、隣国ヴェルザリアから新たな使者が訪れ、アレクシス殿下の手紙をルイスに届けた。その内容は、セシル王子が結晶を手に入れようと画策していることがさらに明確になるものであった。

「セシルは、結晶の力を使ってヴェルザリア国内で自らの勢力を拡大しようとしています。」手紙にはそう記されていた。「彼の目的を阻止するため、私はエルフィナスと協力し、この大陸全体の平和を守りたいと考えています。」

ルイスは手紙を読み終え、深く考え込んだ。「アレクシス殿下がここまで具体的に協力を申し出ているのなら、我々もそれに応じるべきだろう。」

セドリック卿が頷きながら言った。「殿下が協力してくれるのはありがたいが、セシル王子はその動きを嗅ぎつけて妨害してくるだろう。彼が裏でどのような策を講じているかも考慮する必要があります。」

「それに、結晶に関する情報が漏れ続けている以上、国内にも内通者がいる可能性が高い。」ライアンが鋭い口調で付け加えた。「内通者を突き止めることも急務です。」

ルイスは全員の意見を聞き、静かに決意を込めて言った。

「ならば、次の行動を二段階で進めよう。まず、結晶のさらなる秘密を解き明かす。そして同時に、隣国でのセシル王子の動きを抑えるため、アレクシス殿下と直接会談する準備を進める。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

傷心令嬢と氷の魔術師のスパイス食堂

ゆちば
恋愛
【スパイスオタク令嬢×傲慢魔術師×歪んだ純愛】 王国の男爵令嬢フィーナは、薬師業の傍ら、大好きなスパイス料理の研究をしているスパイスオタク。 ところが、戦地に遠征中の婚約者の帰りをひたすら待つ彼女を家族は疎み、勝手に縁談を結ぼうとしていた。 そのことを知ったフィーナは家出を計画し、トドメに「婚約者は死んだのよ!」という暴言を吐く義妹をビンタ!! そして実家を飛び出し、婚約者がいるらしい帝国を目指すが、道中の森で迷ってしまう。 そこで出会ったのは、行き倒れの魔術師の青年だった。 青年を救うため、偶然見つけた民家に彼を運び込み、フィーナは自慢のスパイス料理を振る舞う。 料理を食べた青年魔術師は元気を取り戻し、フィーナにある提案をする。 「君にスパイス料理の店を持たせてあげようってコトさ。光栄だろ?」 アッシュと名乗る彼は、店を構えれば結婚資金を稼ぎながら、行方知れずの婚約者の情報を集めることができるはずだと言う。 甘い言葉に釣られたフィーナは、魔術師アッシュと共に深夜限定営業の【スパイス食堂】をオープンさせることに。 じんわりと奥深いスパイス料理、婚約者の行方、そして不遜で傲慢で嫌味でイケメンなアッシュの秘密とは――? ★全63話完結済み

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!

碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった! 落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。 オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。 ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!? *カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

一日5秒を私にください

蒼緋 玲
恋愛
1.2.3.4.5… 一日5秒だけで良いから この胸の高鳴りと心が満たされる理由を知りたい 長い不遇の扱いを受け、更に不治の病に冒されてしまった少女が、 初めて芽生える感情と人との繋がりを経て、 最期まで前を向いて精一杯生きていこうと邁進するお話。 その他外部サイトにも投稿しています

目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜

楠ノ木雫
恋愛
 病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。  病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。  元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!  でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

処理中です...