幼女となった社畜は異世界の救世主となる

第3部

18章結晶研究所の危機

夜の静寂が王宮を包む中、結晶研究所ではオーウェンとミユが最後の実験を終え、灯りを消そうとしていた。オーウェンが書類を整理している間、ミユは結晶の欠片に目をやりながら、今日の反応について考えていた。

「やはり、あの声が気になる……」ミユは心の中で呟いた。「あれはただの錯覚だったの？ それとも、本当に何かが語りかけてきたの？」

その時、研究所の外からかすかな物音が聞こえた。ミユが顔を上げると、オーウェンも同じように耳をすませていた。

「外だ……誰かがいる。」オーウェンが低く呟き、すぐに杖を手に取った。

「まさか……！」ミユも緊張しながら立ち上がり、周囲を見渡した。

研究所の扉が静かに開き、不審な影が数人忍び込んできた。彼らは黒い装束に身を包み、素早い動きで研究所の中央にある結晶の保管ケースに近づいていた。

不審者たちが結晶に手を伸ばした瞬間、ミユは反射的に光の力を発動させた。柔らかな光が広がり、研究所全体を包み込む。

「これは……！」侵入者たちは目を眩ませ、一瞬動きを止めた。

その隙を突いて、オーウェンが杖を振り、結界を展開する。「この場所で好き勝手はさせないぞ！」

不審者の一人が短剣を抜き、ミユに向かって突進してきたが、光の力が彼らを弾き飛ばした。「なぜ……この少女が……」

ミユは震える手で自分の力を感じながらも、強い意志を持って立ち向かった。「結晶は……あなたたちに渡しません！」


その頃、外で警備をしていたライアンが異変に気づき、エリオットと共に研究所へ駆けつけた。彼らが到着するなり、不審者たちは一斉に退却を始めた。

「逃がすな！」ライアンが鋭い声で指示を飛ばし、騎士たちが追跡を開始する。

エリオットは杖を振り、不審者の一人に向けて魔力を放った。「おい、そこの黒ずくめ！ お前らの目的は何だ！」

不審者たちは一言も発さず、素早くその場を離れていった。結局、全員が王宮の外へ逃げ去り、騎士たちもそれ以上追うことはできなかった。

研究所に戻ったライアンとエリオットは、無事を確認するためにミユとオーウェンに駆け寄った。

「大丈夫か、ミユ殿？」ライアンが心配そうに尋ねた。

「はい……なんとか無事です。」ミユは小さく息を吐きながら答えた。「でも、彼らが結晶を狙っていたのは確かです。」

オーウェンも険しい顔で頷いた。「結晶の力を何かに利用しようとしているのだろう。しかし、あの黒ずくめの連中はただのスパイではない。明らかに組織的な動きだ。」

エリオットは腕を組み、少し考え込んだ。「隣国のセシル王子が背後にいる可能性が高いな。だが、これだけ大胆に動いてきたということは、奴らも結晶の重要性を把握しているということか。」

ライアンが力強く言った。「ならば、こちらも結晶の秘密をさらに深く探らなければならない。それが防衛の鍵になる。」

ミユは静かに頷いたが、その目には迷いが浮かんでいた。

「私が感じたあの声……もしそれが結晶に秘められた何かと関係しているなら、私ももっとその秘密を知るべきだと思います。」