幼女となった社畜は異世界の救世主となる

第3部

17章忍び寄る影

エルフィナス王宮の結晶研究所では、オーウェンが結晶のさらなる解析を進めていた。ミユもその場に加わり、光の力がどのように結晶に影響を与えるのかを調べていた。

「結晶が再び反応するかもしれない。ミユ、準備はいいか？」オーウェンがミユに声をかける。

「はい。やってみます。」ミユは頷き、結晶の欠片に手をかざした。すると、柔らかな光が結晶を包み、部屋全体に穏やかな輝きが広がった。

オーウェンは目を細めながらその現象を観察し、測定器の数値を確認する。「これは……ただの魔力ではない。ミユの力が結晶の中に何らかの反応を引き起こしている。」

ミユは目を閉じ、結晶の光に集中していた。だが、その瞬間、頭の中に不意に囁き声が響き渡った。

「……お前の力は、ここにあるべきではない……」

驚いて手を引いたミユは、大きく息を吸い込んだ。「い、今、何かが……」

オーウェンがすぐに駆け寄る。「何が起きた？ 何を感じたんだ？」

「結晶の中から……何かが語りかけてきたような……でも、はっきりとは分かりません。」ミユは不安そうな表情で答えた。

「この結晶、やはり単なる遺物ではないようだな。」オーウェンは深刻な顔で結晶を見つめた。「さらに調べる必要がある。」

その夜、エルフィナス王宮の一角で不審な動きがあった。結晶研究所の外で、黒ずくめの人物が警備の様子を伺っている。

「ここに何が隠されているのか……セシル王子に報告すれば、奴らの動きも封じられるだろう。」黒ずくめの男は呟き、素早く影の中へ消えた。

その頃、王宮内で夜警に立っていたライアンは、わずかな気配を察知し、目を光らせた。「誰だ……？」剣に手をかけながら周囲を警戒するが、すでに不審者の姿はなかった。

「何かがおかしい……」ライアンはその足でルイスの執務室を訪れ、不審な動きがあったことを報告した。

「スパイか。」ルイスは短く呟き、目を鋭く細めた。「研究所を狙った可能性が高い。警備をさらに強化する必要がある。」

翌日、アレクシス殿下からの新たな連絡が届いた。その内容は、彼自身がセシル王子の動きを監視しているというものだった。

「セシルは結晶を利用して、自らの権力を強化しようとしています。彼の部下がすでにエルフィナス国内で活動を始めているとの報告を受けました。」
アレクシス殿下の手紙にはそう記されていた。

ルイスはその手紙を仲間たちに見せながら話した。「アレクシス殿下がここまで具体的に動きを把握しているのなら、我々も迅速に対応しなければならない。ライアン、スパイの動きを追跡できるか？」

「やってみます。」ライアンは力強く答えた。「これ以上の侵入を許すわけにはいきません。」

エリオットも鋭い目で話に加わった。「セシル王子の狙いを完全に突き止めるには、こちらもさらに情報を集める必要があるな。協力者を通じて、隣国側の動きも探ってみる。」

ミユはそのやり取りを聞きながら、胸の奥に重くなる感覚を覚えていた。

「私が感じた結晶の声……あれも、この状況に関係しているの？」