幼女となった社畜は異世界の救世主となる

藤原遊

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第3部

15章隠された陰謀

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ヴェルザリアからの使者がエルフィナス王国を訪れた翌日、王宮の応接室ではルイスとアレクシス殿下の使者との話し合いが行われていた。使者は丁寧な態度を保ちながらも、結晶に関する話題を慎重に切り出してきた。

「我が国のアレクシス殿下も、結晶の研究について深い関心をお持ちです。」使者は微笑みを浮かべながら話した。「それがエルフィナス王国のためだけでなく、大陸全体の平和に繋がるものであるならば、ぜひ協力を申し出たいと。」

ルイスはその言葉をじっと聞きながら、鋭い目で使者の意図を探った。「大陸全体の平和のため……それは素晴らしい提案です。ただ、現時点でこの結晶が具体的に何をもたらすかは、私たち自身も完全には把握しておりません。」

使者は軽く頭を下げながら、さらに話を続けた。

「アレクシス殿下は、貴国との友好関係を深めることを最優先とされています。それゆえ、この結晶についても、力を合わせて研究を進めることが最善であるとお考えです。」

その言葉に、ミユは小さく眉をひそめた。

「でも、ヴェルザリアから結晶を奪おうとする動きがあると聞いているのに……」

ミユの疑念はルイスにも共有されていた。しかし、ミユの疑念をよそに、ルイスは冷静な声で応えた。

「アレクシス殿下のご提案は大変ありがたいものです。しかし、この結晶は未解明の部分が多く、私たちの国でも慎重に研究を進めています。いずれその成果を共有することを検討したいと思います。」

使者は微笑みを保ちながらも、僅かに口調を硬くした。

「それは心強いお言葉です。ただ、結晶が何らかの力を持つものであるならば、大陸全体に関わる重要な遺物と言えます。その所有についても、改めて議論が必要ではないでしょうか?」

その言葉に、エリオットが口を挟んだ。

「所有という話が出るのは少し早いのでは? 今のところ、この結晶が見つけたのは我が国です。それを研究する責務は、まず我々にあります。」

「もちろんです。」

使者はすぐに微笑みを戻したが、その目はわずかに冷たさを帯びていた。

「アレクシス殿下も、それを理解されております。ただ、彼の立場を考えれば、協力が必要である場合には、最大限の支援をお約束できるということです。」

その日の夕方、王宮の一室ではヴェルザリアの使者が密かに報告をまとめていた。その内容は、アレクシス殿下ではなく、その弟である第二王子セシルに宛てたものだった。

「エルフィナスの王族は、結晶を完全に掌握していない様子です。この状況を利用すれば、アレクシス殿下の立場を弱体化させる材料となるでしょう。」

使者はそう記しながら、薄く笑みを浮かべた。

「殿下がこれをどう活用なさるか……楽しみです。」

セシル王子は、かねてより兄であるアレクシス殿下を蹴落とすために機会を狙っていた。彼はヴェルザリアの貴族層の一部を味方につけ、大陸の覇権を狙う中で結晶を利用しようと画策していたのだ。

その夜、王宮の会議室ではルイスたちが使者との会話を振り返り、議論を交わしていた。ルイスは険しい表情で椅子に深く腰を下ろし、言葉を選びながら話し始めた。

「ヴェルザリアの使者が話していた内容には、いくつか不自然な点があった。アレクシス殿下がそこまで積極的に介入してくるのは少し違和感がある。」

エリオットが頷きながら補足する。

「確かにな。俺も隣国の情勢については多少知っているが、アレクシス殿下は実直で外交的だ。一方で、彼の弟セシル王子は野心家として知られている。裏で動いているのはセシル王子の可能性が高いな。」

ライアンも静かに意見を述べた。

「そうだとしても、彼が狙うのは単なる権力の拡大ではなく、結晶の力を利用することだろう。もし彼が手に入れれば、この大陸の平和が脅かされることになる。」

ミユはその会話を聞きながら、自分の中で疑問を抱えていた。

「結晶が本当にそんなに重要なものだとすれば、私たちはどうやってそれを守ればいいんだろう……」

ルイスはミユの表情に気づき、静かに微笑んだ。

「心配するな、ミユ。僕たちにはまだ時間がある。その間に、結晶の力をしっかり把握し、隣国の動きにも対処していく。」

彼の言葉に、ミユは小さく頷いた。

「はい、ルイス様。でも、私も何かお手伝いできるように頑張ります。」
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