幼女となった社畜は異世界の救世主となる

第3部

5章騎士の高潔さ

朝の光が王宮の大食堂を包み込む中、ルイスとミユは朝食を楽しんでいた。暖かな日差しが差し込み、テーブルには彩り豊かな料理が並んでいる。

「昨日の剣技大会、見応えがあったな。」ルイスがカップを手に取りながら言った。「ライアンの試合、どう思った？」

「とても素晴らしかったです！」ミユはにっこり笑って答えた。「ライアン様の剣さばき、堂々としていて感動しました。」

「そうか。彼は真面目で努力家だからな。信頼できる部下だよ。」ルイスは満足そうに頷いた。

その時、大食堂の扉が勢いよく開き、侍従が駆け込んできた。「ルイス殿下、セドリック卿から急報です！ 騎士団内で揉め事が起きているとのこと！」

ルイスの表情が一瞬で険しくなった。「揉め事？ 詳しく話してくれ。」

「詳細は分かりませんが、訓練場で貴族出身と庶民出身の騎士たちが衝突している模様です。」

ミユも驚いた様子で立ち上がり、ルイスを見つめた。「ルイス様、私もご一緒してよろしいですか？」

「もちろんだ。行こう。」ルイスは席を立ち、ミユと共に訓練場へと急いだ。

訓練場に到着すると、そこには緊迫した空気が漂っていた。しかし、中心に立つセドリック卿の落ち着いた声が響き渡り、場は少しずつ静まり返っていた。

「お前たち、自分たちが何をしているのか分かっているのか？」セドリック卿は鋭い目で騎士たちを見渡しながら問いかけた。「騎士とは、己の剣で国と仲間を守る者だ。互いを貶めてどうする？」

ルイスとミユは少し離れた場所からその様子を見守っていた。ミユはセドリック卿の毅然とした態度に圧倒されつつも、どこか安心感を覚えた。

「セドリック卿が収めているようだな。」ルイスは穏やかに微笑みながらミユに話しかけた。「さすがだよ。あの人の前では、誰も逆らえないからな。」

「本当に……素晴らしい方ですね。」

ミユは感心しながら頷いた。


セドリック卿は冷静に騎士たちを諭した後、剣を構え直した。

「お前たちには、まだ理解が足りていないようだ。今から稽古をつけ直す。」

「稽古ですか？」

カインが驚きながら尋ねると、セドリック卿は頷いた。

「そうだ。実力も人格も未熟な者が騎士団にいるならば、私が鍛え直す。それができるまで、お前たちは互いを責める資格などない。」

そう言うと、セドリック卿は一人ずつ稽古相手を指名し、基本に忠実な動きを叩き込むように指導を始めた。貴族出身の騎士も庶民出身の騎士も、彼の前では対等に扱われ、その厳しい稽古を受けていった。

訓練を見守るルイスは、時折笑みを浮かべながらミユに語りかけた。

「セドリック卿の指導は厳しいが、公平だ。それが彼が信頼される理由だよ。」

「公平……」

ミユはその言葉を噛み締めるように繰り返した。

訓練場の隅で、ルイスが穏やかな笑みを浮かべる姿を見たミユは、心の中に微かなざわめきを感じた。

「ルイス様はこんなに立派な方なのに……私が知ってしまったことを、どう伝えればいいのだろう。」

ミユは記録室で見つけた王家の秘密を思い出し、胸が重くなった。

「もしルイス様が本当にエルフィナスの血を引いていないとしたら……それを私が伝えるべきなの？」

彼女は訓練場での稽古の様子を見つめながら、次第に自分の中で迷いが深まっていった。