幼女となった社畜は異世界の救世主となる

藤原遊

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第3部

1章 結晶の新たな力

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「魔力を持たない者が……魔法を使える?」
オーウェンの声には驚きと疑念が混じっていた。エリオットが頷きながら、手元の書物をめくりつつ補足する。

「間違いない。この欠片にはその特性がある。それだけじゃない、特定の条件が揃えば、力の発揮方法を“書き換える”ことができるようだ。」

オーウェンが結晶の欠片を慎重に持ち上げ、輝きを透かして観察する。「書き換える? つまり、この力をどのように使うかは、外部の意志次第ということか?」

「そうだ。しかも、その条件を満たせるのはおそらく王族だけだ。」エリオットの表情は厳しい。

オーウェンが眉をひそめた。「それは……かなり危険な話だな。善良な王族が使えばこの力は救済となるかもしれないが、悪用されれば、破壊そのものになる。」

エリオットは静かに欠片を置き直し、溜息をついた。「だからこそ、この力が何なのか、誰がこの力を制御すべきなのかを知る必要がある。」

その時、扉の向こうから小さなノックが聞こえた。ミユが顔を覗かせる。「すみません、お邪魔してもいいですか?」

「もちろんだ、ミユ。ちょうど重要な話をしていたところだ。」エリオットが手招きすると、ミユは部屋に入り、二人の間に腰を下ろした。

ミユは欠片を見つめながら、少し戸惑った様子で尋ねた。「その力……どうして王族だけが書き換えられるんですか?」

オーウェンが答える前に、ふとルイスが部屋に入ってきた。「それについては、昔から伝わるおとぎ話がヒントになるかもしれないな。」

「おとぎ話?」ミユが興味深そうに目を輝かせた。

ルイスは軽く笑いながら椅子を引き、語り始めた。「世界ができるずっと前、この大地には六人の女神がいた。彼女たちは自分たちが住みやすいように、広大な大地を創造し、それぞれの理想の国を作り上げた。そして、国々が完成したとき、彼女たちはそれを“楽園”と名付けたんだ。」

ミユは真剣に耳を傾けている。

「でも、女神たちが直接人間と暮らしていたのは短い期間だった。ある時、女神たちは“国を統治する者”として自分の力の一部を人間に託し、姿を消してしまった。それが今の王族たちの始まりだと言われている。」

ルイスの声はどこか懐かしさを帯びていた。「女神たちが作った世界が完全な理想郷になるとき、その時、六つの国は一つに統一され、再び神と人間が共に暮らせる日が訪れるとされている。それが、僕らの知る『楽園の伝説』だよ。」


「女神たちが力を託した王族……その血筋が、結晶に干渉できる理由ってことですか?」ミユがルイスを見上げて尋ねた。

「可能性は高い。」エリオットが頷いた。「でも、その力がどこまで影響するのか、結晶の力自体がどれだけ危険なのかは、まだ分からない。」

ルイスも少しだけ表情を曇らせた。「おとぎ話の中では、女神たちは理想を追い求めて国々を作ったけれど、現実の王族たちがその理想を守り続けているかどうかは分からない。」

ミユは少し考え込んで言った。「それなら、この欠片の力も……誰が持つかで、本当に危険なものになるかどうかが決まるんですね。」

「そうだ。」オーウェンが静かに答えた。「それに、今のこの欠片がどれだけの力を持っているかを完全に解明するには、まだ時間がかかる。だが、一つだけ分かるのは――これは絶対に悪用させてはならないということだ。」

その時、ふとルイスが欠片に触れようとしたが、欠片は全く反応しなかった。それを見たエリオットが眉を寄せる。「……待て、ルイス。君、結晶を全く動かせないのか?」

「え?」ルイスは少し困惑した表情を浮かべた。「何も感じないが……それが何か?」

エリオットとオーウェンが互いに視線を交わし、険しい顔になる。「これは……少し気になることだな。」
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