幼女となった社畜は異世界の救世主となる

第2部

8章契約の謎を追え

翌朝、ミユとエリオットはオーウェンの研究室を訪れ、昨夜手に入れた呪いの破片を見せた。オーウェンはその破片を慎重に観察しながら、唸るように呟いた。

「なるほど、これは興味深い……。おそらく、この破片には契約の情報が刻まれているだろう」

「契約の情報……」ミユが前のめりになると、オーウェンは頷きながら言葉を続けた。

「契約型の呪いというのは、契約者と呪われた者を結びつける魔力の束縛だ。この破片は、契約の一部が具現化したものだろう。解析すれば、契約を作った黒幕についての手掛かりが得られるかもしれない」

「解析できるんですか？」ミユが希望を込めて尋ねると、オーウェンは険しい表情で頷いた。

「可能だが、簡単な作業ではない。この破片を正確に解析するには、専用の魔法陣と高い魔力が必要だ。さらに、時間もかかる」

「それでもやる価値はありますよね！」ミユが力強く言うと、オーウェンは少し笑みを浮かべた。

「君のその熱意にはいつも感心するよ。よし、試してみよう。ただし、失敗すれば破片が消滅する可能性もある。それを覚悟しておいてくれ」

エリオットは少し眉をひそめたが、決意を込めて頷いた。「それでもやるしかない。呪いを解くには、これに賭けるしかないからな」


その日の午後、オーウェンの指示でエリオットとミユは研究室の奥にある大きな部屋で魔法陣を準備した。魔力の流れを正確に制御するため、床に複雑な紋様を描き、その周囲にさまざまな魔道具を配置する。

「これが解析用の魔法陣だ。破片をここに置けば、契約の一部を可視化できるはずだ」オーウェンが説明すると、ミユは慎重に破片を中央の円に置いた。

エリオットは杖を握りしめながら、魔法陣の外側に立った。「準備はいいか？」

「いいわよ。行きましょう！」ミユが力強く頷き、オーウェンが呪文を唱え始めた。


魔法陣が光り始め、破片がゆっくりと浮き上がった。周囲の空気がピンと張り詰め、魔力の波動が部屋中を満たす。やがて、破片から黒い光が放たれ、それが紋様に沿って流れ出した。

「これは……契約の一部だ！」オーウェンが驚きの声を上げた。

紋様が形作った魔法陣の中心に、異国の文字と複雑な模様が浮かび上がる。その一部に、塔で見た文字と同じものが含まれていた。

「この文字……間違いない。他国のものだわ」ミユが言うと、オーウェンは頷きながら解析を続けた。

「契約の発信源を辿るためには、この文字の意味を完全に解読する必要がある。それに時間がかかるかもしれないが、方向性は見えてきたぞ」

エリオットが少し険しい表情で尋ねた。「発信源が分かれば、そいつに直接行けるのか？」

「理論上は可能だ。ただ、発信源が分かるということは、相手もこちらの存在に気づくということだ。その時、何が起こるかは保証できない」オーウェンが慎重に答えた。

ミユは迷いながらも、決意を込めて言った。「それでも、やるしかありません。エリオット様を助けるためなら、どんな危険でも覚悟します！」


その夜、ミユは研究室に残り、オーウェンとともに解読作業を続けた。一方、エリオットは廊下で一人、杖を握りしめていた。彼の頭の中には、呪いの契約者に対する怒りと、ミユに対する感謝が渦巻いていた。

「ミユがここまでしてくれるなんてな……俺なんかのために」彼は苦笑いしながら、ふと窓の外を見る。「……本当に、この呪いを解ける日が来るのか？」

その時、彼の背後に微かな気配が現れた。振り返ると、黒い影がまた姿を現し、不気味な声を響かせた。

「エリオット……また足掻くつもりか？」

エリオットはすぐに杖を構え、影を睨みつけた。「当たり前だ！ お前に操られるつもりなんてさらさらない！」

影は冷たく笑い、エリオットの目をじっと見据えた。「そうか。だが、お前の努力は無駄に終わるだろう……契約は絶対だ」

その言葉を聞きながら、エリオットは再び強い決意を抱いた。「ミユがいる限り、俺は負けない！」