幼女となった社畜は異世界の救世主となる

藤原遊

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第2部

5章 呪いの片鱗

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ミユは朝の光を浴びながら中庭を歩いていた。昨夜、地下で見たエリオットの姿が頭から離れない。彼の「君を巻き込みたくない」という言葉は、どこか遠い距離感を感じさせるものだったが、その苦しそうな様子を見て黙っていることはできなかった。

「エリオット様……本当に一人で抱え込まないでほしいのに」

ミユは小さく呟き、自分にできることを探すため、足を進めた。

中庭に着くと、エリオットが一人で座っていた。杖を膝に置き、ぼんやりと空を見上げるその姿は、普段の軽い調子とは違い、どこか物憂げだった。

「エリオット様」

ミユは迷いながらも声をかけた。

彼はゆっくりと振り返り、少し驚いたような顔をした。

「ミユか。朝からこんなところに何の用だ?」

「少しだけ、お話ししたくて……」

ミユは彼の隣に座り、そっと顔を上げた。

エリオットは彼女を見つめたまま、いつもの軽い笑みを浮かべた。

「まさか昨日のこと、まだ気にしてるのか?」

ミユは真剣な表情で頷いた。

「気にしています。エリオット様があんなに苦しそうな姿、放っておけません」

彼は一瞬言葉に詰まり、視線をそらした。

「……別に大したことじゃない。ただ、ちょっと俺の個人的な問題に付き合ってただけさ」

「でも、あの影……エリオット様を苦しめているんですよね?」

ミユはためらいながらも切り込んだ。

「私には分からないことばかりですが、エリオット様を助けたいんです」

その言葉に、エリオットは苦笑いを浮かべた。

「助けたい、か……。優しいんだな、ミユは。でも、これだけは本当に俺一人の問題なんだ」

ミユが目を伏せて黙り込むと、エリオットはため息をつき、空を見上げた。そしてぽつりと呟いた。

「……あの影、あれは呪いだよ」

その言葉に、ミユは驚いて顔を上げた。

「呪い……ですか?」
「そうだ。俺は、ある契約を背負わされていてな。そいつのせいで、いろいろと自由が利かないんだ」

エリオットの声は淡々としていたが、その裏には深い苦しみが垣間見えた。

「どうして……そんな契約を?」

ミユが尋ねると、エリオットは短く笑った。

「どうしてだろうな。気がついたら巻き込まれてた……そんなもんだよ。魔術の才能があるってのも、時には呪いみたいなもんだ」

「でも……それならなおさら、誰かに助けてもらうべきです!」

ミユはその言葉に強い思いを込めた。

エリオットはしばらく黙った後、ふっと微笑んだ。

「……君がそう言ってくれるのは嬉しいよ。でも、こればかりは簡単に解決する話じゃない」

その微笑みがあまりにも儚く見えて、ミユの胸が締め付けられた。

エリオットとの会話を終えた後、ミユは再び歩き始めた。彼の背負っている呪いの重みを知り、それが彼を苦しめていることを理解した。しかし、まだ全てが明らかになったわけではない。

「呪いを解く方法があるなら……私にできることは何だろう」

そう自問しながら、彼女は心を決めた。エリオットの苦しみを解き放つ手助けをするために、もっと自分の力を使えるようになりたい。そして、彼が一人で抱え込まなくてもいいようにしたい。
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