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第2部
3章 囚われの苦悩
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エリオットは深夜の王城の中庭に立っていた。周囲は静まり返り、月の光が冷たく地面を照らしている。彼は周囲を確認し、誰もいないことを確かめると、杖を握りしめた。
「またかよ……こんな時間に……」
低く呟いた瞬間、杖の先から黒い煙が立ち上がり、その煙が彼の身体を絡め取るように動き出した。煙はまるで生きているかのように彼の腕や首筋に這い上がり、微かな痛みと熱を伴いながら全身を縛り付ける。
「……やめろ……!」
エリオットは必死に抵抗しようとしたが、声が上ずり、喉から絞り出すような音しか出てこない。
煙が彼の身体を蝕むように内側へ入り込み、目の奥が焼けるように熱くなった。彼の体温が急激に上昇し、額に滲む汗が月光に反射して光る。彼の指先は震え、杖を握る力が徐々に弱まっていった。
「……俺に……従え……」
低く不気味な声が彼の耳元で響く。その声はまるで甘く囁くようでありながら、冷たい刃のような威圧感を伴っていた。彼はその声に抗おうと必死だったが、身体の力は抜け、膝をつく。
黒い煙が彼の首筋から胸元に這い上がり、脈打つように動くたび、エリオットは顔を歪めながら荒い息を吐いた。汗で張り付いた前髪が月光に輝き、その顔には苦しさと焦りが混じった色が浮かんでいる。
「これ以上……お前に……支配されるなんて……!」
彼の声は震えていたが、その目には必死さが宿っていた。煙が再び彼を包み込むように動くと、彼は最後の力を振り絞って杖を地面に叩きつけた。
「消えろッ!」
杖から放たれた光が黒い煙を弾き、辺りに微かな風が吹き抜ける。煙は一瞬のうちに霧散し、エリオットの身体は解放された。しかし、その代償として、彼の体力は限界を迎えていた。倒れ込むように座り込み、荒い息を繰り返す。
彼のシャツは汗で貼り付き、胸元が激しく上下している。その顔には苦痛の跡がくっきりと残り、かすかな震えが彼の指先まで伝わっていた。
「……まだ終わらない、か」
彼は自嘲気味に呟きながら、手を額に当てて目を閉じた。
同じ頃、ミユは中庭近くの廊下を歩いていた。図書室で読んだ本の内容を思い返しながら、涼しい夜風に当たろうと外に出たのだ。だが、ふと中庭から微かな光と動く影が見え、足を止めた。
「誰か……いる?」
静かに近づくと、そこには疲れ切った表情で膝を抱えるエリオットの姿があった。彼の額には汗が滲み、シャツが肌に貼り付いている。普段の軽い態度とは違う、どこか儚げな雰囲気が彼を包んでいた。
「エリオット様……?」
ミユは戸惑いながら声をかけた。
エリオットは驚いたように顔を上げたが、すぐに薄い笑みを浮かべて立ち上がろうとした。
「ミユか。こんな夜更けに何してるんだ?」
彼の声には疲労が滲んでおり、足元も少しふらついている。それを見たミユは思わず彼の腕に手を添えた。
「大丈夫ですか? すごく疲れているみたいですけど……」
「なんでもないよ。ちょっと体力使いすぎただけだ」
エリオットは軽く肩をすくめて笑ったが、その笑顔がどこか空虚に見えた。
ミユは迷いながらも、もう一歩近づいて彼を見上げた。
「でも、何か隠しているように見えます。もし困っていることがあれば……私にも話してください」
彼はその言葉に一瞬だけ目を見開いたが、すぐに視線をそらし、低い声で答えた。
「……ありがとう。でも、これは俺の問題だ」
ミユはその答えに納得がいかないようだったが、それ以上追及することはできなかった。彼の目に宿る深い苦悩の色が、それを許さなかったからだ。
「またかよ……こんな時間に……」
低く呟いた瞬間、杖の先から黒い煙が立ち上がり、その煙が彼の身体を絡め取るように動き出した。煙はまるで生きているかのように彼の腕や首筋に這い上がり、微かな痛みと熱を伴いながら全身を縛り付ける。
「……やめろ……!」
エリオットは必死に抵抗しようとしたが、声が上ずり、喉から絞り出すような音しか出てこない。
煙が彼の身体を蝕むように内側へ入り込み、目の奥が焼けるように熱くなった。彼の体温が急激に上昇し、額に滲む汗が月光に反射して光る。彼の指先は震え、杖を握る力が徐々に弱まっていった。
「……俺に……従え……」
低く不気味な声が彼の耳元で響く。その声はまるで甘く囁くようでありながら、冷たい刃のような威圧感を伴っていた。彼はその声に抗おうと必死だったが、身体の力は抜け、膝をつく。
黒い煙が彼の首筋から胸元に這い上がり、脈打つように動くたび、エリオットは顔を歪めながら荒い息を吐いた。汗で張り付いた前髪が月光に輝き、その顔には苦しさと焦りが混じった色が浮かんでいる。
「これ以上……お前に……支配されるなんて……!」
彼の声は震えていたが、その目には必死さが宿っていた。煙が再び彼を包み込むように動くと、彼は最後の力を振り絞って杖を地面に叩きつけた。
「消えろッ!」
杖から放たれた光が黒い煙を弾き、辺りに微かな風が吹き抜ける。煙は一瞬のうちに霧散し、エリオットの身体は解放された。しかし、その代償として、彼の体力は限界を迎えていた。倒れ込むように座り込み、荒い息を繰り返す。
彼のシャツは汗で貼り付き、胸元が激しく上下している。その顔には苦痛の跡がくっきりと残り、かすかな震えが彼の指先まで伝わっていた。
「……まだ終わらない、か」
彼は自嘲気味に呟きながら、手を額に当てて目を閉じた。
同じ頃、ミユは中庭近くの廊下を歩いていた。図書室で読んだ本の内容を思い返しながら、涼しい夜風に当たろうと外に出たのだ。だが、ふと中庭から微かな光と動く影が見え、足を止めた。
「誰か……いる?」
静かに近づくと、そこには疲れ切った表情で膝を抱えるエリオットの姿があった。彼の額には汗が滲み、シャツが肌に貼り付いている。普段の軽い態度とは違う、どこか儚げな雰囲気が彼を包んでいた。
「エリオット様……?」
ミユは戸惑いながら声をかけた。
エリオットは驚いたように顔を上げたが、すぐに薄い笑みを浮かべて立ち上がろうとした。
「ミユか。こんな夜更けに何してるんだ?」
彼の声には疲労が滲んでおり、足元も少しふらついている。それを見たミユは思わず彼の腕に手を添えた。
「大丈夫ですか? すごく疲れているみたいですけど……」
「なんでもないよ。ちょっと体力使いすぎただけだ」
エリオットは軽く肩をすくめて笑ったが、その笑顔がどこか空虚に見えた。
ミユは迷いながらも、もう一歩近づいて彼を見上げた。
「でも、何か隠しているように見えます。もし困っていることがあれば……私にも話してください」
彼はその言葉に一瞬だけ目を見開いたが、すぐに視線をそらし、低い声で答えた。
「……ありがとう。でも、これは俺の問題だ」
ミユはその答えに納得がいかないようだったが、それ以上追及することはできなかった。彼の目に宿る深い苦悩の色が、それを許さなかったからだ。
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