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第2部
1章 疑惑の兆し
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塔の調査から戻った一行は、それぞれ王城内での報告作業に追われていた。ミユはルイスたちが手分けして記録をまとめる様子を眺めながら、頭の片隅に引っかかる感覚に囚われていた。
塔の文字――どこかで見たことがある気がする。でも、それがどこだったのか思い出せない。
「何か気になることでもあるのか?」
ルイスが記録用のペンを動かしながら、ちらりと彼女を見た。
「はい……塔で見た文字が、何か引っかかっていて……」
ミユは少し迷いながらも、正直に答えた。
「思い出せそうで思い出せないんです」
エリオットが顔を上げ、軽く肩をすくめた。
「文字なら、王城の図書室にある本で調べてみるのが早いかもな。意外とこういう時、古い本が役に立つもんだぜ」
「図書室……!」
ミユの顔がぱっと明るくなった。
「そうですね、調べてみたいです!」
「じゃあ、案内するよ。暇だしな」
エリオットは軽い調子で立ち上がると、杖を肩に乗せた。
「ありがとう、エリオット様!」
ミユは小さく頭を下げて、彼の後を追った。
広大な図書室に入ると、埃っぽい香りと静寂が漂っていた。壁一面を覆う高い書棚には、王国の歴史を刻む膨大な書物が整然と並んでいる。
「さあて、塔の文字っぽい内容がありそうな本はどこだ?」
エリオットは背の高い書棚を見上げながら、いくつかの本を手早く引き抜いた。
ミユも手近な本を手に取り、ページをめくる。塔の文字を必死に思い出しながら、似たような記号や模様を探していた。
しばらくして、ミユは一冊の古びた本を開いた瞬間、息を呑んだ。
「これ……!」
そのページには、塔で見たものと同じ文字が並んでいた。ミユは本を持ち上げ、エリオットの方へ駆け寄る。
「エリオット様、これです! 塔の文字と同じものが書かれています!」
エリオットは彼女から本を受け取り、表情が一瞬硬くなった。しかし、すぐにいつもの軽い調子を取り戻し、短く頷いた。
「確かに一致してるな。これ、他国の文字だろうな」
「この本……一体どこから来たんでしょうか?」
ミユは疑問を口にした。
エリオットは本の表紙を調べるふりをしながら、視線をそらす。
「さあな。とりあえず、これをルイスたちに見せた方がいいだろう」
彼の態度に微妙な違和感を覚えたミユだったが、その場で深く考えることはなかった。
その夜、ミユは自室のベッドで横になりながら、図書室での出来事を思い返していた。塔の文字を見つけた瞬間のエリオットの反応――彼が本を手に取ったときの一瞬の硬い表情が、どうしても心に引っかかっている。
「気のせい……だったのかな?」
ミユは枕に顔をうずめ、疲れた頭を休めようとしたが、胸のざわめきは消えない。
一方、エリオットもまた、自室で独り杖を握りしめていた。その瞳には焦燥の色が浮かび、何度も繰り返すように低く呟く。
「……もうすぐバレるかもしれない。でも……どうしろって言うんだ……」
その言葉は誰にも届かず、静かな夜の中に吸い込まれていった。
塔の文字――どこかで見たことがある気がする。でも、それがどこだったのか思い出せない。
「何か気になることでもあるのか?」
ルイスが記録用のペンを動かしながら、ちらりと彼女を見た。
「はい……塔で見た文字が、何か引っかかっていて……」
ミユは少し迷いながらも、正直に答えた。
「思い出せそうで思い出せないんです」
エリオットが顔を上げ、軽く肩をすくめた。
「文字なら、王城の図書室にある本で調べてみるのが早いかもな。意外とこういう時、古い本が役に立つもんだぜ」
「図書室……!」
ミユの顔がぱっと明るくなった。
「そうですね、調べてみたいです!」
「じゃあ、案内するよ。暇だしな」
エリオットは軽い調子で立ち上がると、杖を肩に乗せた。
「ありがとう、エリオット様!」
ミユは小さく頭を下げて、彼の後を追った。
広大な図書室に入ると、埃っぽい香りと静寂が漂っていた。壁一面を覆う高い書棚には、王国の歴史を刻む膨大な書物が整然と並んでいる。
「さあて、塔の文字っぽい内容がありそうな本はどこだ?」
エリオットは背の高い書棚を見上げながら、いくつかの本を手早く引き抜いた。
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しばらくして、ミユは一冊の古びた本を開いた瞬間、息を呑んだ。
「これ……!」
そのページには、塔で見たものと同じ文字が並んでいた。ミユは本を持ち上げ、エリオットの方へ駆け寄る。
「エリオット様、これです! 塔の文字と同じものが書かれています!」
エリオットは彼女から本を受け取り、表情が一瞬硬くなった。しかし、すぐにいつもの軽い調子を取り戻し、短く頷いた。
「確かに一致してるな。これ、他国の文字だろうな」
「この本……一体どこから来たんでしょうか?」
ミユは疑問を口にした。
エリオットは本の表紙を調べるふりをしながら、視線をそらす。
「さあな。とりあえず、これをルイスたちに見せた方がいいだろう」
彼の態度に微妙な違和感を覚えたミユだったが、その場で深く考えることはなかった。
その夜、ミユは自室のベッドで横になりながら、図書室での出来事を思い返していた。塔の文字を見つけた瞬間のエリオットの反応――彼が本を手に取ったときの一瞬の硬い表情が、どうしても心に引っかかっている。
「気のせい……だったのかな?」
ミユは枕に顔をうずめ、疲れた頭を休めようとしたが、胸のざわめきは消えない。
一方、エリオットもまた、自室で独り杖を握りしめていた。その瞳には焦燥の色が浮かび、何度も繰り返すように低く呟く。
「……もうすぐバレるかもしれない。でも……どうしろって言うんだ……」
その言葉は誰にも届かず、静かな夜の中に吸い込まれていった。
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