幼女となった社畜は異世界の救世主となる

第1部

17章 影との戦い

巨大な影が黒い鎖を振り上げ、一行に向かって勢いよく叩きつけてきた。その一撃は床を大きく割り、破片が四方に飛び散った。全員が咄嗟に身をかわしながら、その攻撃の威力に驚愕していた。

「なんて力だ……！ あの鎖、ただの武器じゃない！」

エリオットが杖を握りしめながら叫ぶ。

「ミユ、後ろに下がれ！ 危険すぎる！」

ルイスが鋭い声を上げた。

ミユはすぐに後退しながらも、仲間たちを見つめていた。彼女の心には、不安と責任感が入り混じっていた。

（私も……皆さんと一緒に戦わなくちゃ）

影は再び鎖を振り回し、ルイスやライアンに向かって攻撃を仕掛けた。ライアンが盾で受け止めようとしたが、その衝撃で体が大きく後退した。

「くっ……重い……！」

ライアンが息を切らしながら体勢を立て直す。

エリオットがその隙を埋めるように火球を放ったが、鎖がその魔法を弾き返した。

「効かない……！？」
「エリオット、奴の動きを止められるか？」ルイスが鋭く問う。

「やってみるけど、時間を稼げるかどうか……！」

エリオットが再び魔法を放ち、影の周囲に炎の壁を立てた。その一瞬、影の動きが鈍くなったが、鎖を振り回して炎を吹き飛ばした。

「……攻撃が通らない。ミユ！」

ルイスが振り返り、彼女に視線を送った。

「君の力で弱点を探れるはずだ！」

ミユは強く頷き、光の力を呼び起こした。その光は影を包み込み、一瞬だけその体を透かすように輝かせた。

「左肩……！」
「余計なことを！」

ミユが叫ぶと同時に、ライアンが剣を振り下ろした。しかし、影の鎖がすぐに反応し、攻撃を阻んだ。

「まずい……！ 奴の攻撃に対応できない！」

ライアンが叫ぶ。

その時、影が一気に動きを速め、一行に向かって猛攻を仕掛けた。鎖がルイスの剣を弾き、エリオットの魔法を封じ、ライアンを押し戻す。その間に、影の鎖がミユに向かって伸びてきた。

「ミユ！」

ルイスが咄嗟に前に飛び出し、鎖を受け止めようとした。しかし、影の力は凄まじく、彼の体は大きく吹き飛ばされた。

「ルイス様！」

ミユが叫び、すぐに駆け寄ろうとしたが、影の鎖が再び彼女を狙ってきた。

(私も戦わなきゃ……！)

ミユは光の力を全身に集め、その輝きで鎖を弾き返した。影が一瞬動きを止めたその隙に、彼女はさらに力を解き放った。広間全体が眩い光で満たされ、影の動きが鈍くなった。

「皆さん、今です！」

ミユの声に反応し、全員が一斉に攻撃を仕掛けた。

ライアンが剣で影の体を切り裂き、エリオットがその鎖を魔法で封じた。そして、ルイスが立ち上がり、剣を構え直した。

「ミユ、君が作ってくれたこの隙で終わらせる！」

ルイスは全力で走り出し、剣を高く掲げた。

影が最後の力を振り絞って反撃しようとしたが、ミユの光がその動きを完全に封じ込めた。その瞬間、ルイスの剣が影の中心を貫いた。

「終わりだ！」

彼の一喝とともに、影が大きく揺らぎ、黒い霧となって消え去った。


広間に静寂が戻り、結晶もまた暗い光を失い、ひび割れて崩れていった。一行は疲れ切った体を支えながら、それぞれの無事を確認した。

「勝ったのか……」

ライアンが剣を下ろしながら息を吐いた。

「皆さんのおかげです……」

ミユは涙を浮かべながら微笑み、周囲を見渡した。

ルイスが彼女のそばに歩み寄り、優しく声をかけた。

「ミユ、君のおかげだ。本当にありがとう」

彼女は少し照れながらも、はっきりと言った。

「私も皆さんの役に立てて……嬉しいです！」

エリオットが杖を肩に乗せ、ニヤリと笑った。

「それにしても、大変な戦いだったけど、ミユの力がなかったら絶対無理だったな」

「だが、油断するな。この塔が持つ意味をまだ完全に理解していない」とルイスが険しい表情で結晶を見つめながら言った。

「ここで終わりではないだろう」