幼女となった社畜は異世界の救世主となる

藤原遊

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第1部

13章 守る者たちの思惑

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王都防衛戦の翌夜、城内の応接室には、ルイス、セドリック卿、ライアン、エリオット、オーウェンの姿があった。戦いの後片付けを終えたばかりの疲労が彼らの顔に滲んでいたが、誰もその表情に緩みはなかった。

「まずは王都を守れたことに感謝すべきだな」とセドリック卿が重い声で言った。

「だが、これが終わりではない。この動きには何らかの意図があると考えなければならない」

「その通りだ。魔物の統率ぶり、そして最後の指揮官クラスの個体――どれも自然に発生するものではない」

オーウェンが杖を軽く回しながら、思案するように言葉を続けた。

ライアンは真剣な表情で頷きながら、「次の動きをどう読むべきですか?」と尋ねた。

オーウェンは静かに目を閉じ、短く息を吐いた。「次なる敵の拠点を突き止める必要がある。だが、そのためには……」

「例の塔か」

セドリックが低く呟く。

その一言に、全員の視線が彼に集まった。オーウェンが深く頷いて言葉を継ぐ。

「王都周辺で最近発見されたあの塔――報告によれば、魔物たちの動きがその周辺を中心にしているらしい。これが偶然とは思えない」
「つまり、あの塔が魔物の巣であり、全ての中心だということですね」

ライアンが冷静に分析した。

「間違いないだろう。問題は、そこにどうやって侵入し、何をすべきかだ」とオーウェンが地図を指し示す。

エリオットが笑みを浮かべながら口を挟んだ。

「まあ、塔を目指すのはいいけど、僕らの力だけで大丈夫かな? 前回の戦いでもギリギリだったし」
「だからこそ、今夜集まったんだ。ミユをどう守るかも含めて、これからの方針を固める必要がある」とセドリック卿が険しい表情で言った。

その言葉に、全員が一瞬黙り込んだ。ミユが王都防衛戦で見せた力がどれほど大きな助けになったかは、誰もが知っていた。しかし、彼女が幼い子どもであることもまた事実だった。

「ミユの力は確かに必要だ。だが、あの子を戦場に立たせること自体がどう考えても間違いだろう」とセドリック卿が厳しい声で続けた。「俺たち大人がいる以上、あの子にこれ以上の負担を背負わせるべきではない」

ライアンが同意するように頷いた。

「彼女はまだ幼すぎる。護身術を教えたとはいえ、実戦で敵を倒すことなど想定していない」
「でも、彼女の力がなければ、今回の戦いは勝てなかった。だからこそ、次も彼女が必要になるかもしれないよ」とエリオットがやや控えめな声で言った。

「エリオットの言うことも分かる」とオーウェンが静かに口を開いた。「ただし、ミユの力を使うのであれば、同時に彼女を守る責任をさらに強く認識する必要がある。それを怠れば、彼女の存在が戦場で逆に危険を招く」

全員が頷く中、ルイスだけが静かに椅子に座ったまま、考え込むように黙っていた。

「ルイス、お前はどう考えている?」

セドリック卿が問いかける。

ルイスはゆっくりと顔を上げ、少しだけ微笑みを浮かべた。

「ミユが戦いたいと思っている以上、僕たちはその意思を尊重すべきだと思う。ただし、それは彼女が安全であるという前提のもとでだ」

その言葉に、セドリック卿は眉をひそめた。

「つまり?」
「彼女を守るために全力を尽くす。彼女が戦いの場で力を発揮してくれるのなら、それが僕たちにとっても最善の結果をもたらすだろう」
「お前は……ミユに対して、ただ庇護欲だけでそう言っているのではないか?」

セドリック卿が真剣な目で問いただす。

その言葉にルイスは短く息を吐き、視線を少し遠くに向けた。

「……最初はそうだったかもしれない。けれど今は違う。彼女が何かを成し遂げたいと思っているなら、僕はその背中を支えたい。守るだけじゃなく、彼女が自分の足で歩いていくための力になりたいんだ」

その言葉に、エリオットが意外そうに口笛を吹いた。

「へぇ、ルイスがそこまで言うなんてね」

ライアンが真面目な顔を崩さずに言った。

「では、それが王子としての意思ということで受け取ります」

ルイスは少しだけ笑みを浮かべながら頷いた。

「そうだ。王子としてでも、ただの人間としてでも、ミユを守り、支える。それが僕の決意だ」

その静かな言葉に、一同は何も言わずに頷き、改めてミユを守る覚悟を固めた。
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