12 / 74
第1部
12章 守られた光、見え始める影
しおりを挟む
魔物の群れとの戦いは、刻一刻と激しさを増していた。空には弓矢と魔法の光が飛び交い、地上では兵士たちが魔物を防ぐために奮闘していた。
ミユは光の力で負傷した兵士たちを回復しながら、何とか自分の役割を果たそうとしていた。体力が削られていくのを感じながらも、彼女は手を止めることができなかった。
「ミユ、無理をするな!」
ルイスが遠くから声を上げる。彼は剣を振るいながら、魔物たちの猛攻を必死に防いでいた。
「でも、私も皆さんの力になりたいんです!」
ミユは力を込めて叫び返した。その声には彼女自身も驚くほどの強い意志が宿っていた。
ルイスはその言葉に一瞬驚いたようだったが、すぐに微笑みを浮かべ、再び前線へと向かっていった。
その時、森の奥からさらに大きな影が現れた。それはこれまでの魔物とは異なり、異様な威圧感を放つ存在だった。巨体を持つその魔物は、周囲の魔物たちを従えているかのように動き、王都の防衛線をさらに圧迫していた。
「なんだ、あいつは……!」
ライアンが険しい声を上げる。
「新しい指揮官クラスの魔物かもしれない!」
エリオットが声を張り上げ、魔法で応戦する。
その魔物は巨大な腕を振り下ろし、城壁に大きな衝撃を与えた。周囲の兵士たちが次々と倒れる中、ミユは震える手で再び光を放ち、兵士たちを癒そうとした。
しかし、その瞬間、魔物の視線がミユに向けられた。まるで彼女の力を見抜いたかのように、その巨体が彼女に向かって突進してきた。
「ミユ、下がれ!」
ルイスが剣を構え、魔物の進路を遮ろうとする。しかし、その勢いは凄まじく、彼一人で防ぎきれるものではなかった。
「……やめて!」
ミユは必死に祈るように光を放った。その力が魔物を一瞬怯ませたが、完全には止められなかった。彼女が次の一手を考える間もなく、魔物の腕が迫ってきた。
その時、ライアンが盾を構えて彼女の前に立ちはだかった。
「俺が守る! ミユ、早く後退しろ!」
彼の叫びに、ミユは躊躇いながらも後ろに下がった。その間にルイスとエリオットが連携し、魔物に次々と攻撃を加えた。その姿を見て、ミユは胸の奥で強く何かを感じた。
(私は守られてばかり……でも、私だって……!)
ミユはもう一度力を解き放ち、その光が魔物を包み込む。魔物は苦しそうに呻きながら後退し、その隙を見たルイスが剣を振り下ろした。彼の一撃が魔物の首を切り裂き、その巨体が地面に崩れ落ちた。
戦場に静寂が訪れると、兵士たちの間から安堵の声が漏れ始めた。
「勝った……!」
ミユはその場にへたり込んだ。全身が疲れ切っていたが、仲間たちの顔を見ると自然と笑みがこぼれた。
戦いの後、ミユは城内で仲間たちと共に戦いを振り返っていた。ルイスは傷を負った兵士たちの様子を確認しながら、全体の指揮が滞りなく行われたことを報告していた。
ミユはその姿を見つめながら、戦場で聞いた「殿下」という言葉を思い出した。
(やっぱり……ルイス様は王子様だったんだ)
彼女の表情に戸惑いが浮かんでいるのを見たエリオットが、彼女の隣に座ってニヤリと笑った。「ミユ、気づいた?」
「えっ……何のことですか?」
「ルイスが王子だってこと。隠してたわけじゃないけど、君だけ知らなかったみたいだからさ」
その言葉にミユは動揺しながらルイスを見た。彼は報告を終えてこちらに歩いてきていた。
「エリオット、余計なことを言うな」とルイスが軽く笑いながら言った。
「だって、今がタイミングだろ?」エリオットは肩をすくめて立ち上がる。
ルイスはミユの前に立ち、少しだけ申し訳なさそうな顔をして言った。
「驚かせてしまったね。僕が王子であることを知らなかったのは、君にとって自然なことだ」
ミユは少し混乱した様子で答えた。「どうして隠してたんですか?」
「隠していたわけじゃない。ただ、僕自身が君をただの仲間として見ていたかっただけだ。王子という立場ではなく、一人の人間として接したかった。それだけだよ」
その言葉に、ミユの心は不思議と温かくなった。彼の優しさが、自分を特別に思ってくれているように感じたからだ。
「……ありがとうございます。でも、ルイス様が王子様なら、もっと頼っていいんですね?」
彼の目が驚いたように見開かれた後、柔らかな笑みを浮かべた。
「もちろん。君が僕を頼るなら、僕はどんな時でも君を守るよ」
ミユの胸の中に静かに灯った感情が、さらに強くなった気がした。
ミユは光の力で負傷した兵士たちを回復しながら、何とか自分の役割を果たそうとしていた。体力が削られていくのを感じながらも、彼女は手を止めることができなかった。
「ミユ、無理をするな!」
ルイスが遠くから声を上げる。彼は剣を振るいながら、魔物たちの猛攻を必死に防いでいた。
「でも、私も皆さんの力になりたいんです!」
ミユは力を込めて叫び返した。その声には彼女自身も驚くほどの強い意志が宿っていた。
ルイスはその言葉に一瞬驚いたようだったが、すぐに微笑みを浮かべ、再び前線へと向かっていった。
その時、森の奥からさらに大きな影が現れた。それはこれまでの魔物とは異なり、異様な威圧感を放つ存在だった。巨体を持つその魔物は、周囲の魔物たちを従えているかのように動き、王都の防衛線をさらに圧迫していた。
「なんだ、あいつは……!」
ライアンが険しい声を上げる。
「新しい指揮官クラスの魔物かもしれない!」
エリオットが声を張り上げ、魔法で応戦する。
その魔物は巨大な腕を振り下ろし、城壁に大きな衝撃を与えた。周囲の兵士たちが次々と倒れる中、ミユは震える手で再び光を放ち、兵士たちを癒そうとした。
しかし、その瞬間、魔物の視線がミユに向けられた。まるで彼女の力を見抜いたかのように、その巨体が彼女に向かって突進してきた。
「ミユ、下がれ!」
ルイスが剣を構え、魔物の進路を遮ろうとする。しかし、その勢いは凄まじく、彼一人で防ぎきれるものではなかった。
「……やめて!」
ミユは必死に祈るように光を放った。その力が魔物を一瞬怯ませたが、完全には止められなかった。彼女が次の一手を考える間もなく、魔物の腕が迫ってきた。
その時、ライアンが盾を構えて彼女の前に立ちはだかった。
「俺が守る! ミユ、早く後退しろ!」
彼の叫びに、ミユは躊躇いながらも後ろに下がった。その間にルイスとエリオットが連携し、魔物に次々と攻撃を加えた。その姿を見て、ミユは胸の奥で強く何かを感じた。
(私は守られてばかり……でも、私だって……!)
ミユはもう一度力を解き放ち、その光が魔物を包み込む。魔物は苦しそうに呻きながら後退し、その隙を見たルイスが剣を振り下ろした。彼の一撃が魔物の首を切り裂き、その巨体が地面に崩れ落ちた。
戦場に静寂が訪れると、兵士たちの間から安堵の声が漏れ始めた。
「勝った……!」
ミユはその場にへたり込んだ。全身が疲れ切っていたが、仲間たちの顔を見ると自然と笑みがこぼれた。
戦いの後、ミユは城内で仲間たちと共に戦いを振り返っていた。ルイスは傷を負った兵士たちの様子を確認しながら、全体の指揮が滞りなく行われたことを報告していた。
ミユはその姿を見つめながら、戦場で聞いた「殿下」という言葉を思い出した。
(やっぱり……ルイス様は王子様だったんだ)
彼女の表情に戸惑いが浮かんでいるのを見たエリオットが、彼女の隣に座ってニヤリと笑った。「ミユ、気づいた?」
「えっ……何のことですか?」
「ルイスが王子だってこと。隠してたわけじゃないけど、君だけ知らなかったみたいだからさ」
その言葉にミユは動揺しながらルイスを見た。彼は報告を終えてこちらに歩いてきていた。
「エリオット、余計なことを言うな」とルイスが軽く笑いながら言った。
「だって、今がタイミングだろ?」エリオットは肩をすくめて立ち上がる。
ルイスはミユの前に立ち、少しだけ申し訳なさそうな顔をして言った。
「驚かせてしまったね。僕が王子であることを知らなかったのは、君にとって自然なことだ」
ミユは少し混乱した様子で答えた。「どうして隠してたんですか?」
「隠していたわけじゃない。ただ、僕自身が君をただの仲間として見ていたかっただけだ。王子という立場ではなく、一人の人間として接したかった。それだけだよ」
その言葉に、ミユの心は不思議と温かくなった。彼の優しさが、自分を特別に思ってくれているように感じたからだ。
「……ありがとうございます。でも、ルイス様が王子様なら、もっと頼っていいんですね?」
彼の目が驚いたように見開かれた後、柔らかな笑みを浮かべた。
「もちろん。君が僕を頼るなら、僕はどんな時でも君を守るよ」
ミユの胸の中に静かに灯った感情が、さらに強くなった気がした。
2
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説

傷心令嬢と氷の魔術師のスパイス食堂
ゆちば
恋愛
【スパイスオタク令嬢×傲慢魔術師×歪んだ純愛】
王国の男爵令嬢フィーナは、薬師業の傍ら、大好きなスパイス料理の研究をしているスパイスオタク。
ところが、戦地に遠征中の婚約者の帰りをひたすら待つ彼女を家族は疎み、勝手に縁談を結ぼうとしていた。
そのことを知ったフィーナは家出を計画し、トドメに「婚約者は死んだのよ!」という暴言を吐く義妹をビンタ!!
そして実家を飛び出し、婚約者がいるらしい帝国を目指すが、道中の森で迷ってしまう。
そこで出会ったのは、行き倒れの魔術師の青年だった。
青年を救うため、偶然見つけた民家に彼を運び込み、フィーナは自慢のスパイス料理を振る舞う。
料理を食べた青年魔術師は元気を取り戻し、フィーナにある提案をする。
「君にスパイス料理の店を持たせてあげようってコトさ。光栄だろ?」
アッシュと名乗る彼は、店を構えれば結婚資金を稼ぎながら、行方知れずの婚約者の情報を集めることができるはずだと言う。
甘い言葉に釣られたフィーナは、魔術師アッシュと共に深夜限定営業の【スパイス食堂】をオープンさせることに。
じんわりと奥深いスパイス料理、婚約者の行方、そして不遜で傲慢で嫌味でイケメンなアッシュの秘密とは――?
★全63話完結済み
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。

聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!
碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった!
落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。
オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。
ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!?
*カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

一日5秒を私にください
蒼緋 玲
恋愛
1.2.3.4.5…
一日5秒だけで良いから
この胸の高鳴りと心が満たされる理由を知りたい
長い不遇の扱いを受け、更に不治の病に冒されてしまった少女が、
初めて芽生える感情と人との繋がりを経て、
最期まで前を向いて精一杯生きていこうと邁進するお話。
その他外部サイトにも投稿しています
目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜
楠ノ木雫
恋愛
病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。
病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。
元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!
でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?
※他の投稿サイトにも掲載しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる