魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊

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28章 旧バルグレン領の地下遺跡

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ルイスとバルグレン侯爵の剣が激しくぶつかり合う音が遺跡の広間に響き渡る。侯爵の魔力で形成された剣は激しい光を放ち、ルイスのレイピアと火花を散らしていた。

「貴様、王族の懐刀を自称するテミス家の剣士としては、少々荒削りではないか?」
侯爵が冷ややかに嘲笑を浮かべる。

「自称ではない。僕たちは王を護るためにこの力を磨いてきた。そして、今はこの国を守るために戦う。それだけだ。」
ルイスが剣を繰り出しながら静かに返す。

二人の戦いが続く中、アリアとイアンは周囲の魔物の残骸を警戒しながら戦闘を見守っていた。

「ルイス、集中してるけど、大丈夫かな?」
アリアが不安そうに呟く。

「彼は強い。だが、相手もただの貴族ではない。この状況、そう簡単には終わらないだろう。」
イアンが杖を構えながら答える。

戦いが続く中、侯爵は不意に後ろへ跳び、魔法陣の中央に立った。唇が僅かに動き、古代語で呪文を唱え始める。

「何をする気だ!?」
ルイスが詰め寄ろうとするが、侯爵の周囲に結界が張られる。

「貴様らには理解できまい。この力を解放することで、私は真の支配者となる!」
侯爵が叫ぶと、魔法陣が眩い光を放ち始めた。

「まずい、あの結界をどうにかしないと!」
アリアが盾を構えながら叫ぶ。

「結界を破るには時間がかかる。アリア、奴の妨害に集中してくれ!」
イアンがすぐに指示を飛ばす。

アリアは結界に向かって走り出し、盾を構えてその表面を殴りつけた。衝撃波が広間に響き渡るが、結界は微動だにしない。

「こんな頑丈なの、どうすれば……!」
焦りが滲む声。

イアンは杖を振り、土魔法で結界の周囲を崩そうと試みる。

「魔力の結界には物理的な干渉が有効だ。盾の使い方を工夫すれば……!」
イアンの言葉にアリアはすぐに切り替えた。

「物理的な干渉……分かった!」
アリアは盾を低く構え、走りながら結界の表面に突進。全力で衝撃を加えると、結界に亀裂が走った。

「効いてる!もう少し……!」
アリアが歯を食いしばりながら盾を再び振りかざす。

その瞬間、魔法陣の光がさらに強まり、侯爵の体が浮き上がった。広間全体に魔力の波が広がり、アリアは思わず体を盾で覆った。

「まさか……封印された力が解放されたのか!」
イアンが驚愕の表情を浮かべる。

侯爵の体を中心にして黒い霧が立ち上り、その中から異形の存在が姿を現した。それは魔族の力を宿した巨大な獣であり、侯爵の意思とは別の存在として動き始めていた。

「こいつ……!」
ルイスがレイピアを構え直す。

「この怪物をどうにかしないと、遺跡が崩れる!」
アリアが叫びながら剣を構える。

「アリア、盾で前線を抑えろ。僕が後方から援護する。」
イアンが杖を振り、火の魔法で怪物の動きを牽制する。

「奴の本体はおそらく中心にいる侯爵だ。僕がそこを狙う!」
ルイスが鋭い声で指示を飛ばす。

アリアは怪物の攻撃を盾で受け流しつつ、剣で足元を切り裂いた。イアンは火と土の魔法を駆使し、怪物の動きを封じる。

その隙を突いてルイスが怪物の体を駆け上がり、中心部にいる侯爵へとレイピアを突き立てた。

「ここで終わりだ!」
ルイスの声と共に、レイピアが侯爵の胸を貫いた。

怪物は凄まじい咆哮を上げ、やがてその体が霧となって消え始めた。魔法陣が再び輝き、遺跡全体が静寂を取り戻す。

「終わった……のか?」
アリアが盾を下ろし、息を切らしながら呟く。

「いや、まだだ。封印が不完全なままだと、また別の危険が生まれる。」
イアンが冷静に言葉を続ける。

「……僕が手伝おう。この封印を再生するために、テミス家の知識を使う。」
ルイスが前に出る。

「君が?」
アリアが驚いた顔で尋ねる。

「これは僕の責任だ。貴族として、この遺跡の力を再び封じる。」

ルイスの言葉にイアンも静かに頷いた。
「頼む。僕も協力する。」
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