魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊

文字の大きさ
上 下
145 / 182
27章 事件の黒幕

しおりを挟む
魔法陣が崩壊し、砦の広間に満ちていた魔力の光が徐々に消えていった。アリアの剣が深々と魔法陣の中心を貫き、反乱勢力のリーダー、レオニスは杖を支えに膝をついた。

アリアが剣を引き抜き、ルイスがレイピアを肩に乗せながら近づいた。

「終わりだな、バルグレン侯爵。君の計画もここまでだ。」

ルイスの冷淡な声に、レオニスは苦々しい笑みを浮かべた。

「終わりだと?笑わせる……この程度で私を止めたつもりか?」

その言葉と同時に、砦全体が揺れ始めた。壁の隙間から魔力が噴き出し、崩落の危険が迫っている。

レオニスは杖を掲げ、再び魔法陣の残骸から魔力を引き寄せた。

「この砦は我が命と共に滅ぶ。だが、貴様らを道連れにするには十分だろう!」

彼の言葉にアリアが剣を構え直し、ルイスが即座に障壁を展開する。

「アリア、引け!この砦は崩れる!」

イアンが叫び、杖を振って崩落する瓦礫を氷の魔法で支えながら後退を促した。

「でも……あいつを逃がすわけにはいかない!」

アリアが一歩前に出ようとするが、ルイスがその肩を掴んで引き止めた。

「彼を止めるには、今ここで死ぬ覚悟がいる。だが、君が死んでしまえば、守るべき未来も消える。それでいいのか?」

ルイスの言葉にアリアは歯を食いしばり、剣を下ろした。


レオニスは杖を振りかざし、砦の奥に魔力の扉を出現させた。

「貴様らに真の計画を阻止することはできない。いずれまた会おう、冒険者ども!」

彼が扉の中へと消えると同時に、砦全体が大きく崩れ始めた。

「全員、外に出るぞ!」

イアンが叫び、氷と炎の魔法を駆使して崩れ落ちる瓦礫を切り開きながら、三人は一気に出口へと向かった。


ようやく外に飛び出した三人は、遠くから崩れ落ちる砦を見つめていた。瓦礫の音と共に立ち昇る砂埃が、広い空に舞い上がる。

「……逃がしたか。」

アリアが悔しげに呟いた。剣を握りしめたまま、彼女の視線は崩壊した砦に釘付けだった。

「悔やむのは後だ。今は生き延びたことを喜ぶべきだろう。」

ルイスが静かに言葉をかける。彼の顔には余裕が見えるが、その目は何かを計算しているように鋭かった。

「でも、あいつの計画がまだ残ってるなら……」

アリアが言葉を継ごうとしたが、イアンがそっと肩に手を置いた。

「君がいる限り、僕たちはまた立ち向かえる。だから、今は冷静になるんだ。」

イアンの言葉に、アリアは小さく頷き、剣を収めた。


砦から持ち出した魔法陣の断片と、残された呪具の破片を調べるため、三人は一旦街へ戻ることにした。ルイスは砦を背にしながら、わずかに口元を歪めた。

「レオニスが今どこへ向かおうとしているか、検討はつく。だが、君たちにその話をするのは少し先になりそうだ。」

「どういう意味?」

アリアが振り返ると、ルイスは軽く首を振った。

「まだはっきりしていない。ただ……彼の行動には必ず理由がある。逃亡してなお、何かを狙っているはずだ。」

その言葉を聞いて、イアンは僅かに眉をひそめた。

(ルイスが気にしているのは、レオニス個人の動機だけじゃない……彼の過去も含めて、何か知っているに違いない。)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

婚約破棄までの168時間 悪役令嬢は断罪を回避したいだけなのに、無関心王子が突然溺愛してきて困惑しています

みゅー
恋愛
アレクサンドラ・デュカス公爵令嬢は舞踏会で、ある男爵令嬢から突然『悪役令嬢』として断罪されてしまう。 そして身に覚えのない罪を着せられ、婚約者である王太子殿下には婚約の破棄を言い渡された。 それでもアレクサンドラは、いつか無実を証明できる日が来ると信じて屈辱に耐えていた。 だが、無情にもそれを証明するまもなく男爵令嬢の手にかかり最悪の最期を迎えることになった。 ところが目覚めると自室のベッドの上におり、断罪されたはずの舞踏会から1週間前に戻っていた。 アレクサンドラにとって断罪される日まではたったの一週間しか残されていない。   こうして、その一週間でアレクサンドラは自身の身の潔白を証明するため奮闘することになるのだが……。 甘めな話になるのは20話以降です。

氷の令嬢と岩の令息 〜女として見れないと言われた令嬢と脳筋令息〜

ごどめ
恋愛
マリアージュ男爵家とグランドール公爵家はとっても仲良し。そんな両家には仲睦まじい姉妹と兄弟がいる。マリアージュ家の長女リエラはとある日、突然婚約者であるグランドール家の長男、ルイスに「女として見れない」と言う残酷な言葉と共に婚約破棄されてしまう。 氷の令嬢と名高いリエラはそれでも表情を崩す事なくそれを甘んじて受けるが、実はその婚約破棄にはルイスの勘違いな思いやりがあり……。 ※短めのお話で全10話です。 ※ざまあ要素皆無の、ほのぼのらぶらぶコメディ系です。 ※この作品は小説家になろう様の方にも掲載しております。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)

青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。 だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。 けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。 「なぜですか?」 「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」 イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの? これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない) 因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完結】拾ったおじさんが何やら普通ではありませんでした…

三園 七詩
ファンタジー
カノンは祖母と食堂を切り盛りする普通の女の子…そんなカノンがいつものように店を閉めようとすると…物音が…そこには倒れている人が…拾った人はおじさんだった…それもかなりのイケおじだった! 次の話(グレイ視点)にて完結になります。 お読みいただきありがとうございました。

悪役令嬢らしいのですが、務まらないので途中退場を望みます

水姫
ファンタジー
ある日突然、「悪役令嬢!」って言われたらどうしますか? 私は、逃げます! えっ?途中退場はなし? 無理です!私には務まりません! 悪役令嬢と言われた少女は虚弱過ぎて途中退場をお望みのようです。 一話一話は短めにして、毎日投稿を目指します。お付き合い頂けると嬉しいです。

処理中です...