魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊

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12章 ローブの男の襲撃

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アリアとイアン、そしてユーゴは、街の防壁へと駆けつけた。外壁の上から見下ろすと、街の外には複数の魔物が集結している。その中心には黒いローブをまとった男が立っていた。

「やっぱり、あのローブの男……!」

アリアが剣を握りしめながら呟く。

「奴が魔物を従えている。指揮官として動いている可能性が高いな。」
ユーゴが冷静に分析する。

イアンはローブの男を見据えながら言葉を紡いだ。

「彼が放つ魔力……以前よりも強大になっている。」

「つまり、強くなって帰ってきたってわけだね。でも、私たちも負けてないよ!」
アリアが力強く答えた。


突然、ローブの男が杖を高く掲げた。その先端から放たれた黒い魔力が、防壁を覆う結界に激しくぶつかり、火花が散る。

「結界が持たないぞ!」
防壁の上にいた冒険者が声を上げた。

ユーゴが杖を振り、結界を補強するための魔法陣を描く。

「私が結界を維持する。君たちは奴を止めろ!」
ユーゴの命令に、アリアとイアンが同時に頷いた。

「イアン、行こう!」
アリアが剣を構え、壁を飛び降りる。

「無茶をするな!」
イアンが慌てて後を追った。

二人は魔物の群れを突破するため、息を合わせて攻撃を繰り出した。

「選ばれし刃」の光が魔物を斬り裂き、イアンの氷魔法が周囲を凍りつかせる。

「数が多いけど、これくらいならまだいける!」
アリアが次々と魔物を斬り倒しながら叫ぶ。

「しかし、奴が動き出す前に決着をつける必要がある。」
イアンが鋭い声で返す。

その瞬間、ローブの男が動いた。彼の杖が大地を突くと、周囲の空気が重く淀み、濃密な魔力が広がる。

「来た……!」
イアンが警戒を強める。

ローブの男がゆっくりと二人に向き直る。

「やはり貴様らが出てきたか。選ばれし刃を持つ者よ……そして、魔族の血を引く裏切り者よ。」

その言葉にアリアが剣を握り直し、強い口調で言い放つ。

「剣は渡さない!誰が相手でもね!」

ローブの男は笑みを浮かべるように声を低めた。

「その剣の真の力を知ることなく、私に刃を向けるか……愚か者め。」

彼が杖を振ると、大地から無数の黒い槍が生まれ、二人に向かって飛んでくる。

「避けて!」
アリアが叫びながら飛び退く。

イアンは即座に魔法陣を展開し、氷の壁を生み出して槍を防ぐ。

「奴の魔法は直線的だが、一撃の威力が桁違いだ!」
イアンが冷静に分析する。

「なら、一気に懐に飛び込む!」
アリアが剣を握り直し、全力で男に向かって突進する。

ローブの男はアリアを迎え撃つように杖を振り、強烈な黒い波動を放つ。しかし、「選ばれし刃」がそれを切り裂き、アリアは男の目の前まで迫った。

「やらせるか!」
彼女が剣を振り下ろした瞬間、男は手をかざし、剣を止めた。

「貴様の血では、この剣の真の力は引き出せない……。」
男が嘲笑するように呟く。

「どういう意味!?」

アリアが問い詰めようとした瞬間、男は魔力を放ち、彼女を弾き飛ばした。

「アリア!」
イアンが慌てて彼女の元に駆け寄る。


そのとき、選ばれし刃が淡い光を放ち、イアンの手元に反応を示した。

「これは……?」

イアンが剣に手を伸ばそうとすると、ローブの男が嘲笑するように言った。

「そうだ。貴様の血こそ、この剣を解放する鍵だ。」

「解放……?」

アリアが立ち上がり、剣を握り直す。

「この剣はただの武器ではない。魔族と人間の間で生まれた禁忌の力を封じる器。その真価を発揮するには、魔族の血を持つ者が必要なのだ。」

「イアンの……血が関係してるっていうの?」

アリアが驚きの表情でイアンを見た。

「アリア、奴の言葉に惑わされるな!だが……確かに剣が私に反応しているのは事実だ。」

イアンが剣に触れた瞬間、剣が強烈な光を放った。

その光が二人を包み込み、周囲の魔物を吹き飛ばした。

光が収まると、イアンは息を切らしながら剣から手を離した。

「一体、この剣は……。」

アリアも呆然と立ち尽くしていたが、ローブの男は不敵な笑みを浮かべていた。

「その剣が目覚めるまで、私は何度でも貴様らを狙う。」

そう言い残し、男は黒い霧に包まれて姿を消した。
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